小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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書きたい話が書けて満足

どうやらこの小説を推薦してくれた方がいたようで、本当にありがとうございます。
……誤字は気をつけます。気をつけているんです……


2.6 やらかした朝

男は度胸

女も度胸

 

2.6 やらかした朝

 

 朝一から人の処理能力超える事態を叩きつけるのは勘弁して欲しい。いくらほっぺをつねっても痛いだけだし、何回見ても私の横にいるマリアが消えることはない。

 

「とりあえず頭を回しましょう……」

 

 よくある手を握られていて離れられないなんてことはなく、隣人を起こさないようにゆっくりベッドを降りる。シャワーでも浴びようか思ったけど流石にその間に目を覚まされても面倒くさいし、換気扇の下で喫煙ぐらいにしておきましょう。

 とりあえずケトルでお湯を沸かして換気扇のスイッチを入れる。

 

「世界の歌姫に副流煙吸わすわけにもいかないし、うるさいのは我慢してね」

 

 一人分の量の少なさもあり、すぐにケトルかポン、と音がする。いつもよりも気持ち多めの豆を入れていつもの朝のセットの完成だ。

 

「こんな時、いくら飲んでも二日酔いしない自分の体質に感謝だわ」

 

 落ち着けば昨夜の事が思い出してくる。最初は私を警戒してほとんどなにも口をつけなかったマリアだけど、話している内に愚痴が出てきて慰めている内に食も飲みも進みだして気がつけばあの有様だ。途中背筋の凍るような呼ばれ方をしたりもしたけど彼女は覚えているのかしら?

 部屋を見回せばまあひどい数のアルコールの空き缶やら空き瓶やらが転がっている。確か日付変わるまで店で飲んで追い出された後、この部屋で二次会という名の宅飲みに移行したんだっけ。

 

「う、うーん……」

 

 記憶の旅に浸っている内に眠り姫も起きてきたようだ。彼女の分もお湯を沸かしておきますか。コーヒーは品揃えに自信あるけど紅茶はどうだったかしら。言っても全部インスタントだけど。

 

「……う、ここは……?」

 

 どうやら本格的にお目覚めのようだ。のっそりと座る体勢になったけど昨日そのまま寝たからか髪の毛がすごいことになっている。背筋が曲がっているせいか身長の割には小さく見えて、まるで猫のようだ。

 

「はい、おはよう。コーヒー飲む?」

 

「おはよう、お姉様……、コーヒー飲む……、っ!」

 

 寝ぼけながら返事してるけど途中で目が覚めたのだろう。すごい顔で辺りを見回して最後にこれまたいろんな感情が混じってそうな顔でこちらを睨んでいる。

 

「あ、あなた! 酔った私に何をしたの!?」

 

「なに、人聞きの悪い事言うわね」

 

 そう言われて自分の格好を見直すけど下着は下だけ、後はシャツを羽織ってるだけ。昨日着替えるのも面倒くさくてそのまま寝ちゃったもんね。それでもスーツだけはちゃんと脱いでかけてあるんだから自分を褒めたくなる。

 

「なんとか言いなさいよ! 私をこんな姿にして!」

 

 言われてマリアの方を見れば彼女はもっとあられもない姿だ。酔っ払って裸で寝るとか言い出した時はそっちの気を疑ったわ。そのまま秒で寝たから良かったけど。

 

「同性でしょ? それに貴女結構過激なグラビアも出してるじゃない」

 

 いやほんと、この世に生まれての二十数年に感謝だわ。昔ならこんな姿見せられたら正気でいれる自信なんてなかっただろう。

 

「いつまでそんな格好してても仕方ないでしょ。服は私の貸してあげるから取り敢えずそれ着ておきなさい。下着は……サイズ欠片も合わないでしょうから悪いけど裏返しでもして我慢してね。貴女も起きたことだし私シャワー浴びてくるから適当に過ごしてて。インスタントで良ければコーヒーと紅茶はそこの棚。二日酔いなら水でも飲んでなさい」

 

「な、お前!」

 

 じゃあねーと、反論を無視して浴室に入る。10分もあれば身だしなみ整えて出ていってるでしょう。流石にあの子も敵の自宅でくつろげるほどの大物じゃないでしょうし。

 

 

 

 そうして、気持ち長めにシャワーを浴びて出てみればそこには居心地が悪そうにコーヒーを冷ましながら飲んでいるマリアがいて、私の頭上にはハテナが浮かぶ。

 

「……貴女何してるの? いやほんと」

 

「何って、お姉様がコーヒーでも飲んでなさいって言ったんじゃない! なにか悪い!?」

 

 いやもうホント、この純粋すぎる子にアイドル大統領は無理がありすぎるでしょ。どう考えてもナスターシャ教授の人選ミスでしょ。

 

「まあいいけどね? 私としてはさっさとここから逃げなさいってつもりで言ったんだけどね。一応私貴女と敵対している組織の人間よ?」

 

 それを聞いて心底驚いた顔をするけど、それはこっちの気持ちよ……

 

「それで、ゆっくりするのはいいけど昨日のことは覚えてるの?」

 

「……ええ、あんな無様な姿を敵であるお前に見せてしまうなんて一生の不覚よ」

 

 私の呼び方安定しないなー、なんてのんきな事を考えているとポツリポツリとマリアが話し出す。

 

「貴女とフィーネが本当に友人だったとは知らなかったとはいえ、勝手に名前を騙ったりしたごめんなさい……。でも私にはそうするしかなかったの……」

 

「あの時は貴女のことも知らなかったし戦闘時で頭に血が登ってたけど、貴女も辛いのね。昨日聞いただけでも大分苦労してるじゃない」

 

「優しいのね……。でもこれは自分で決めて始めたこと。それにセレナ、切歌、調まで巻き込んでしまって私には弱音を吐く権利なんて無い。無いはずだったのに……」

 

「そこまで自分を追い込まなくてもいいんじゃない? 何のために蜂起したかは知らないけど、私達にも必要なことなら協力するなり、適切なところに繋いであげるわよ?」

 

「私達は敵同士よ? そんな甘言信じれるわけがない」

 

「その敵同士がゆっくり朝のコーヒーを一緒に飲んでるわけだけどね。話して楽になるなら話してみなさいな」

 

 ずっと思ってたんだけど、マリア達があんな苦労をしなくても二課に助けを求めれば二期はもっとシンプルに終わったはずだ。物語としては駄目でもここは私が生きる世界だ。ウルトラCがあっても誰にも文句は言わせない。

 マグカップで口元を隠しながらマリアの方を覗えば、何かを言おうとして迷っている。今背中を押すのは簡単だけど最後は彼女自身で踏み出さなければ意味がない。

 

「……、いえやっぱり話すことは何もないわ」

 

「やっぱり私は信用できない?」

 

「違うわ、きっとお姉様は私が助けを求めれば助けてくれる。私の勝手な願いがこもっているかもしれないけどきっとそうだと思うわ。でも、でもね?」

 

 ここまで下を向きながら呟くように話していたマリアが初めてこちらを見る。まっすぐとでも今にも泣きそうな、それでも決めたんだ、そういう目だ。

 

「だからこそ、巻き込めない。きっと私達は目的の成就に関わらず行き着く先は地獄でしょう。そんなことに一時でも安らぎをくれたお姉様を巻き込めない」

 

 ……はあぁぁぁぁ、ほんとにこの子は。そんな寂しそうな目でそんな事言われて見捨てれるはずが無いじゃない。

 

「ああもう、分かったわ。取り敢えずシャワー浴びてなさい。下着買ってきてあげるわ。この時間でもコンビニならあるでしょ。サイズぴったりじゃなくても文句言わないでよ?」

 

「え、あ、ありがとう? あ、サイズ教えないといけないわね」

 

「知ってるから大丈夫よ。これでもメジャーデビュ―前からの大ファンですから。今度は逃げていいわけじゃないからね。ちゃんと私が帰ってくるまでおとなしくしてるのよ」

 

 一気に言い捨てて外出する準備をする。適当なジャージに着替えてついでにアタッシュケースを準備する。携帯を見ればそろそろ良い時間だ。

 

 

 

 

 

「ただいま―、いい子にしてた?」

 

 これでいなかったら私の準備が全部無駄になってしまう。もちろんそんなこともなく

 

「おかえりなさい、結構時間がかかったのね」

 

 適当に渡した私の服を着てたマリアが迎えてくれた。朝っぱらだけど帰ったら世界の歌姫が待っててくれてるとか前世の私どんな徳積んだんだ? って前世の記憶は覚えてるか。

 

「はいただいま。これサイズちょっと違うけど我慢してね」

 

 私から袋を受け取りマリアが着替え始める、同性といえど流石にジロジロ見るものでもないし簡単な朝食でも準備しましょう。

 

「服ありがとう。ちょっと胸元がきついけど変じゃないかしら?」

 

 一瞬もいでやろうかと思ったけど、今それするとシャレにならない気がするし適当に返事を返しておく。

 

「さて、簡単だけど朝ごはんを食べましょう」

 

 トーストにジャム。残り物で悪いけどサラダで一応は朝食ぽい雰囲気は出ているはずだ。クリスがこの部屋を出てからも惰性で朝ちゃんとしていたのが役に立ったようだ。

 

「「いただきます」」

 

 二人特に会話もなく黙々と食べ進める。なんとなくだけどテレビをつける気にもならなく二人のうるさくない咀嚼音だけが響く私にしては騒がしい、それでもいつもよりは少しにぎやかな食事の時間だ。

 流石に量も多くはなくあっという間に食べ終わってしまう。食べ終えてコーヒーを飲んでいるとトーストをほんの少し残して俯いて動かないマリアがいた。

 

「どうしたの? 朝ちゃんと食べないと元気でないわよ?」

 

「ふふ、それ、敵に言うセリフ?」

 

 笑顔で返された後また暗い顔に成ってしまった。

 

「突然だったけど、久しぶりにゆっくりできた半日だったわ。私達が立ち上がった日から初めてリラックスできた気がするわ。でもそれももう終わり。この最後を食べてしまえばまた貴女と戦う日常に戻ると思うとね……」

 

 たやマとか言われて色々ネタに成っていた彼女だけど、生きているマリアは普通の女の子なのでしょうね。ただ境遇が彼女にそれを許さなかった。

 

「未練がましいのは嫌いなの」

 

 マリアの皿に残った一欠片をぱっと自分の口に入れてしまう。あ、という声と悲しそうな視線が飛んでくるけど気にしない。そのまま机の上に置いてった端末でいつものところに電話を掛ける

 

『俺だ、紫香君何かあったのか?』

 

「あ、司令おはようございます。ちょっと報告がありまして」

 

 私がどこに電話をかけたのかが分かったのだろうマリアが一瞬絶望した表情をしてすぐにキッと眉を吊り上げる。でも

 

「色々ありましてね、私立浪紫香は二課を裏切ることに成りました」

 

 私の発言に驚いた顔に変わる。今日だけでもいろんなマリアの顔を見れて役得だ。

 

『……君は自分が何を言ってるか分かっているのか? 本当ならどうしてそれを俺に伝えたんだ』

 

「ええ、残念ながら完全に理解していますね。報連相は社会人のマナーですから」

 

『どうしてだ? 脅迫でもされたのか』

 

「これまた残念ながら完全に私の意思ですね。ちょっとほっとけない子が見つかっちゃったので」

 

『そのために他の装者達も裏切ると?』

 

「いやー、それを言われると辛いんですけどね。こればっかりはしょうがないかなって」

 

『……では最後の質問だ。君は()()を裏切るんだな?』

 

「ええ、私は一身上の都合で二課を裏切らせていただきます」

 

『……わかった。では今この瞬間を持ってシンフォギア装者立浪紫香を我々二課の敵と認定する』

 

「お手柔らかに、弦十郎さん」

 

 PIと終話ボタンを押して、端末を机に置く。そして満面の笑みを作ってマリアに言い放つ。

 

「無職にっちゃった、テヘ」

 

 口をパクパクさせてるマリアなんてまたレアなものが見れた。

 

「何考えてるのお姉様! どういうつもり!」

 

「私はねマリア。私を慕ってくれる可愛い妹を見捨てることなんてできないの。ましてやその可愛い妹が色んなものに押しつぶされそうなら自分の肩書ぐらい投げ出せる程度には自分に正直に生きてるの」

 

「ーーー、あ、あ、もう! 巫山戯ないで!」

 

「巫山戯てなんて無いわ。私のことをお姉様って呼んでくれて悩み相談されたなら力ぐらい貸してあげるわ。さ、ここでぼやぼやしてたら何が乗り組んでくるかわからないしさっさと行くわよ!」

 

 もしかしたら朝以上に混乱してるマリアの手を引いて荷物を持って部屋を飛び出す。

 

「あ、そうそう。ちゃんと私の呼び方決めておきなさいよ。混乱してるのはわかるけどさっきまでめちゃくちゃだったわよ?」

 

 エレベーターを待つ気にもなれず階段を駆け下りる。そしてそのままエントランスを出れば

 

「立浪さんおはようございます。今日はお客さんが?」

 

「ええ、ちょっと新しい妹と愛の逃避行を」

 

 いつもの管理人にいつもどおりでない挨拶を返して急いで愛車のもとへ向かう。荷物をトランクに投げ捨てて、マリアを助手席に押し込める。

 

「さあ、行くわよ? 行き先知らないんだからちゃんと貴方達のアジトまでナビしてよね」

 

 私史上一番晴れやかな出勤が始まった。

 




今更なんですが、主人公の容姿ですが血界戦線のK.Kを黒髪にして眼帯外した感じが近いです。胸囲も年齢も(ry

主人公以外の視点の話は読みたいですか?

  • 二課の話が読みたい
  • FIS組の話が読みたい
  • いらない
  • 全部書けば良いのでは?
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