小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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えー、アンケートの結果拙作の読者の中にSな方が100人以上居る事がわかりました(白目 
多少ネタ的な気持ちで書いたのもあるけどここまで偏るとは……
結果をまとめると、
主人公以外の視点で二課組とFIS組のどっちも。いらないという意見もあるので本編を遅らせない

ということで倍の速さで倍の量を書けば解決ですね(

取り敢えず今回文字数のテストとかも兼ねてます。今後それぞれ分けるか、まとめるかなどは文字数とか見ながら考えていきます。

何より、こんなに多くの方に回答もらえると思ってなかったので本当にありがとうございました


2.8 紡ぐ世界

残してきた物はなんですか

取りに行く物はなんですか

 

2.8 紡ぐ世界

 

「ひさしぶりね、友人さん?」

 

 全くこの馬鹿は何しでかすか分かったものではないな。

 

「お久しぶりね、フィーネ」

 

「少しは驚いたらどうだ? 貴様はあれをフィーネだと分かったからこちらに寝返ったのであろう?」

 

 自分でも笑えるぐらいわざとらしい。本当にマリアに私が宿っていると思っているのであれば償いの一つでもさせようかと思っていたがこの有様だ。こいつのことだ、どうせまたいらん世話でも焼いているのであろう。

 

「再会を祝して乾杯といきましょうか」

 

「こんな幼気な子供に酒を飲ませるのか。随分と不真面目な姉も居たものだな」

 

「貴女に姉って呼ばれると寒気がするわね……。せっかく買ってきたこれが無駄にならなくて良かったわ」

 

 そう言いながら取り出してきたのは小さな瓶にこどものビールなんて名前と時代錯誤なイラストが入ったものだ。何なのだこいつは? 頭までヤニでも回っているのか?

 

「いやー、本当なら切歌ちゃんにでも飲ませようかと思ってたんだけど、なんか急に真面目なシーンが始まっちゃってタイミング逃したのよね。いやいやちょうど良かった、今のフィーネならお似合いね」

 

 巫山戯た顔で巫山戯たことを、普通であれば驚く場面ではないのか? こいつの軽口はどこから来ているのか。

 

「……ああそうだな。今の私はお前より一回り以上も若くてな。残念だが仕方ないな」

 

 そう言ってやれば無様な顔を晒してくれる。貴様にお似合いなのはそちらの方だ。

 

「……そうね、ガキンチョのフィーネにはちょうどよかったわ。ああごめんなさい、さっきのお弁当もご飯に旗立てたほうが良かったわね」

 

 お互い言葉と視線で煽り合う。それがどれほど続いたか、どちらともなく小さく笑い出す。

 

「お遊びはこれぐらいにしてまずは乾杯しましょ? 飲み物は悪いけど貴女に再会できたのが嬉しいのは本当よ?」

 

「これ以上無駄な時間を過ごすのも面白くないな。メニューは我慢してやろう。何に乾杯する?」

 

 確かにこれ以上お互い本気でもない意地を張っても仕方ない。一応は他人よりは親しい関係だ。ここは口車に乗ってやるとするか。

 

「そうね、永遠の友人になんてどう?」

 

「気色が悪い。却下だ」

 

 不満げな顔をするな。そんな戯言なぞ言うどころか言われるだけでも鳥肌が立つ。

 

「……じゃあ、こんな素敵な夜だし、あの欠けた月になんていかが?」

 

 先程までと違って少しまともな顔をでそんな事をいう。私の目的を知った上でそんな事を言い出すなど相変わらずの思慮が足らんやつだ。

 

「それで我慢してやろう。では欠けた月に」

 

 私の想いに立ちふさがったあの月が無様な姿を晒しているのだ。少しは溜飲も下がるかもしれんな。

 

「ええ、私達を見守ってくれている月に」

 

 ……本当に性格が悪いな。

 

「「乾杯」」

 

 二人静かに缶と瓶を小さく当てる。どんなものかと飲んでみれば

 

「……ひどい味だな。次はもう少しまともなものを持ってこい」

 

「あら次回のお誘いなんて感激で泣いちゃいそう。わかりました。リクエストはお早めに」

 

 小さく鼻を鳴らして返事してやる。そこからどちらも何も話すこともなく飲み続ける。飲んでいられるかと問い詰めればまともなノンアルコールのまともな物もあるではないか。こちらを先に出さない辺りやはり性格が曲がり切っているな。

 

「さて、再会は嬉しいけど、もう調ちゃんはいなくなっちゃった?」

 

 この娘とは縁もゆかりもないも無いだろうに、そう尋ねる馬鹿の手は震えている。

 

「安心しろ。今代は塗りつぶし私が表に出る気はない。すでに完全に乗っ取れる段階だがこの娘の意識がない時だけしか出る気はない。あれだけ私に啖呵を切ったんだ。貴様達がどんな無様を晒していくか見るぐらいにしてやる」

 

「……そう、でもさっきはあの笑っていたのフィーネでしょ?」

 

「あんな、三文芝居を目の前で見せられたのでつい出てしまった、謝罪が欲しいぐらいだ」

 

 なめた態度で誠意の欠片もない謝罪の言葉を並べてくるが、見逃さなかったぞ? この娘の意識があると知った瞬間の安心した表情。あれな本気のものだろう。そのことでからかってやってもいいが、今はそんな気分になれんな。

 

「じゃあ、後はゆっくり飲みましょうか。今度はせめてお高めのぶどうジュースでも用意しておくわ」

 

「もう少し聞くことがあるのではないのか?」

 

「聞きたいこと、聞かないといけないことは山程あるけど、今夜ぐらいはそんな話よりもゆっくり再会を祝いましょ? だって私達友人でしょ?」

 

「ばかものが」

 

 仕方ない。あんなにも月が綺麗なのだ。今夜ぐらいは茶番に付き合ってやるか。

 結局空がもう少しで白み始めるような時間まで続けてしまったわ。

 

 

 

 

 

「うーーー、変な時間に起きちゃった」

 

 いつもより早い時間に起きたと思ったら、危ないところだった。時間が幸いしてお手洗いに誰も居なくて危機は危機のまま過ぎ去ってくれた。

 

「なんか体が重い……、眠かったりはしないのになんでだろ」

 

 寝る前にいつもより飲み物を飲んだわけでもないのに、今朝は色々と変な感じだ。

 

「二度寝は……できそうもないか」

 

 意識だけはいつもどおりだから眠れそうもないし、どうしようかな。朝の準備もいつもどおりの時間からで間に合うし……

 

「マリアの様子でも見に行こうかな」

 

 一番心配な切ちゃんはぐっすり眠っていたし起こしちゃうと可哀想だよね。昨日も大変だったけど、寝る時はいつもの切ちゃんだった。ベッドに入って二人で色々話せて良かったと思う。だったらあの人が居るはずのマリアの部屋に行くのも良いかも。もしかしたらマリアは寝ずの番をしているかもしれない。そうだったら少しだけでも変わってあげよう。

 

「でも不思議……」

 

 頭でも切ちゃんと一緒の意見だった。あんな偽善者なんて信用できるわけがない。でも私はイマイチ敵視ができないでいる。それどころか少し安心しているのかもしれない。そこだけがまるで私が私でないようで、なにか怖い……

 

 シンフォギアを持っているのを確認して、一応念の為リンカーも一つ忍ばせておく。そしてマリアの部屋のドアを開ける。少し音がたっちゃったけど大丈夫かな? そんな心配しながら部屋を覗いてみれば

 

「あら、調ちゃんじゃない。おはよう、いつもこんな時間に起きてるの?」

 

「……!? マリアは!?」

 

 そこに居たのは昨日よりはラフだけどどう見ても寝起きではないあの人だった。どこから持ち込んだのかデスクライトの明かりの下でコーヒーを入れている。

 

「しーー、マリアが寝てるから。静かにしてあげて」

 

 信じられない言葉を耳に、指さされた先を見れば幸せなそうな顔で寝ているマリアが居る。……見張ってるんじゃないの?

 

「調ちゃんもどう? 少しだけどココアなんかもあるわ」

 

 私を混乱させる元凶はそんな事を言い出す。そんな施し受けたくはないけど、マリアが起きない以上ここを離れるわけにもいかない。

 

「淹れるなら早くして」

 

 せめてもの抵抗でできる限り無愛想に言ってみたけど返ってきたのは、マリアがセレナを眺めるような笑顔と、少し小さなマグカップに入ったココアだ。ココアは甘くて美味しいけど釈然としない。

 

「こんなもので、貴女を認めるわけないから」

 

「そんな下心はないから安心しなさい。どうせならゆっくり実るのを待っているわ」

 

 にらみつける私とそれにほほえみ返すあの人という奇妙な光景はマリアが起きるまで続いた。

 

「し、調!? こ、これは違うのよ!?」

 

「もう良いから落ち着いて。疲れてるなら見張りぐらい私達でもできるからちゃんと言って」

 

 取り敢えず、これの件は切ちゃん、セレナと相談しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

シンフォギア装者ですが本部の空気が最悪です。

 

 ほんとうに私、呪われてるかも。あの日の後本部の雰囲気がすごく暗くというかなんというか……

 

「か、奏さん……、今日この後ご飯でも行きませんか?」

 

「悪いな……。そんな気分じゃないんだ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 この時間私は奏さんと本部で待機になったんだけどさっきから会話もなく気まずい雰囲気が続いている。いつもなら昨日見たテレビの話とか、見つけた美味しそうなお店の話とか、会話が途切れることなんてないのに……

 

「あれ? 二人だけ? 翼さんは?」

 

「今日の待機は私達ですし、来ないかもしれませんよ?」

 

「やっちゃったわね……。お願いしないといけないことあったのに」

 

 困った顔で部屋を出ていく友里さん。あの日からの変化として私達への連絡だったり予定がごちゃごちゃになることが多い。この前聞いたら今までは紫香さんが取りまとめていたらしいけど、それができなくなって色んな所からバラバラに話が来るようになって大変だ。今の所大きな問題は起きていないけどこのままだと時間の問題かも。

 

「……なあ、クリスのやつは今日もか?」

 

「だと思います。学園の方にも来てなかったみたいです」

 

 もう一つ大きな変化といえばクリスちゃんだ。クリスちゃんはあれ以来学園にもほとんど行かずにずっと紫香さんを探しているようだ。連絡をすれば繋がるし、時たま学園でも見かけるから無事なのはわかるけどそれでも心配だ。

 

「二人共悪いが、少し残ってもらう事になりそうだ。連絡ミスで装者がいない時間ができてしまいそうでな。すまない」

 

 いつもよりほんの少し疲れたような師匠がそんな事を言いに来た。師匠は師匠で書類仕事をやらなくなっちゃいけなくなって大変みたいだ。いなくなって改めて分かるけど紫香さんいろんなことしてたんだな。

 

「なあダンナ。いつになったら姐さん達の場所がわかるんだ? このままだと爆発しちまいそうだ」

 

「すまない、捜索は続けているがその紫香君が抜けた穴を埋めるのに人手が取られている。もう少し時間がかかりそうだ」

 

 師匠の申し訳無さそうな声に奏さんもそれ以上何も言えずにまた一人増えただけの沈黙が始まってしまう。師匠も忙しいみたいでこちらを気にしながらもまたどこかに行ってしまう。せっかくの奏さんと二人っきりだってのに、こんな時間を過ごすのはしんどいよ……

 そんなこんなで、私達の時間は終わったと連絡が来た。時計を見たら思ったよりも時間は進んでいなかった。

 

「じゃあな響」

 

「あ、はい」

 

 別れる時の奏さんはいつもの明るさの欠片もない。こんな時私どうすれば良いんだろう。奏さんと翼さんは私達の中で一番紫香さんとの時間が長い。私だって急に未来が私の前からいなくなってそして敵になっちゃったらって考えるとどうして良いかわからない。こんな時にいけないことだけど未来がシンフォギアに関係なくて良かったと思ってしまう。

 そのまま沈んだ気持ちを写したようなどんよりした曇り空の下を一人帰っていく。最近何をしても楽しくない。そもそも何か楽しいことをしようとも思えない。紫香さんとの約束を守るために頑張ろうと思うけどそれでも今のみんなを見ていると私も悲しくなる。もちろんいなくなって悲しいのは私も同じだけど、それでも私は約束がある。紫香さんが誰かを傷つけるなら私が止めるって。今はそれだけを考えておくしか無いのかな……

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさい。今日もやっぱり?」

 

「うん。何の進展もなし」

 

 家に帰れば未来が待ってくれているけどそれでもいつもよりは少し暗い。未来も紫香さんとは仲が良かったし、というよりクリスちゃんと合わせて猫可愛がりされていた。そんな人が急にいなくなってやっぱり未来も不安そうだ。

 

「……ご飯は何かなー!? 今日は待機だけだったけどおなかすいちゃった!」

 

「……そうだね、ごはんにしよっか」

 

 私の空元気を見てか未来も明るく振る舞ってくれる。

 

 ここまで私達を心配させたんですよ? 次はちょっとやそっとの奢りじゃ許してあげませんよ?

 

 

 

 

 

 それから数日私達は全員本部に集合していた。クリスちゃんから呼び出しがあったからだ。そのクリスちゃんがまだだけどやっぱり場の空気が重い。クリスちゃんの話がちょっとは良い知らせだと良いんだけど。

 そのまま少し待っているとクリスちゃんがすごい怒った感じで部屋に入ってきた。でも怒ってるけどどこか嬉しいそう?

 

「わりい、言い出しっぺが遅れちまった。だが、その分いいニュースを持ってきてやったぜ」

 

 そんな少し前までとは違う雰囲気のクリスちゃんの言葉にみんなも興味を持ったみたいだ。

 

「他の奴らには秘密だけどあの馬鹿があたしたちの学園祭に来る。そこで全員でふんじばってぶん殴るぞ」

 

 …………え?

 

「おいクリス! その馬鹿って!」

 

「ああ、あたしらをほっぽりだしてふらついてるあの馬鹿紫香だ」

 

 クリスちゃんの落とした爆弾の破壊力は私の耳に重大な被害を残していきました……て、そんなこと考えてる場合じゃない!

 

「クリスちゃんそれどういうこと! 誰から聞いたの!?」

 

「あの馬鹿本人だよ」

 

「姐さんに会ったのか!?」

 

「どうして私達を呼ばなかったのだ、雪音!」

 

 奏さんと翼さんがすごい剣幕だ。

 

「それに関してはすまねえ。連絡する素振りをしたら逃げるって言われて」

 

 クリスちゃんも本当に申し訳無さそうだ。

 

「でだ、話の本題だがあいつは学園祭に来る。だからそこをあたしたちで見つけてぶん殴ってやろうぜ。ここまで迷惑掛けたんだ。イチイバルで殴るぐらいは許されるはずだ」

 

 ……あれ冗談とかじゃなくて本気の目だ。地の底から聞こえてきそうな笑い声に振り返れば奏さん翼さんもおんなじような顔をしている。紫香さんごめんなさい。私じゃ止められません。その代わり私もこの前のとっておきは使わないと思うんで許してください。

 

「でもクリス、なんで誰にも言わないで私達だけで探すの? 二課の人にも手伝ってもらうほうが良いんじゃないの?」

 

 ここまで静かだった未来がそんな事を聞く。考えればそうだ。師匠や緒川さんに手伝ってもらったほうが良いに決まってる。というかそうしないと逃げられそう。

 

「一つはあいつがどっかに行かないようにだ。この前の作戦説明で聞いただろ? あんな命令を出すような奴らがあの馬鹿捕まえたらどこに連行されるかわからねえ、だったらあたし達で捕まえてここに引きずってくればいい。もう一つは紫香に頼まれた」

 

「それ、捕まらないように騙されてるんじゃないのか?」

 

 奏さんの意見を聞いて、私もそうとしか思えない。

 

「あいつがそんな常識人なわけ無いだろ。あいつが言ってたのは……」

 

 

 

 タッピタピ、タッピオカ―。

そんな歌を歌いながら久しぶりに街で車を走らせる。食事の買い出し担当になってしまって今日も楽しく肉体労働だ。そして同行者なんてものもいない。それもこれも

 

 

「じゃあ、買い出し行ってくるわね」

 

 どうやら食料が尽きかけているらしく、ならと新人らしくパシリに立候補。こうなるだろうと思ってあの朝急いで口座からありったけ下ろしておいて正解だわ。流石にマリアの稼ぎの足元にも及ばないけどこの人数をある程度の間飢えさせない程度には懐は温かい。失敗だったのはカッコつけてアタッシュケースなんて使ったことだ。これでもそれなりに稼いでいたので物理的なお金の重さで腕がパンパンになった。普通考えればキャリーケースかトランクケースにするべきだったわよね。

 

「なにを言っているのかしら……? 貴女を外に出すと思っているのか?」

 

 調ちゃんにはバレかけているけどマリアが頑張って演技する。

 

「いやだって、食料無いんでしょ? こんなとこに配達頼んだらここにいますよーって言っているようなもんだし、買いに行くしか無い。んで行けるの私だけでしょ」

 

「食料が心もとないのは事実だがお前が行く必要はないだろう!」

 

「顔面が有名人に初めてのお使いが3人。車椅子に偏食男。他に選択肢ある?」

 

「う……。 ならせめて監視を付けろ!」

 

「マリア、ナスターシャ教授は外に出られない。ウェル博士は勘弁して。残りの三人は監視になると思う? あの子達が迷子になって二課に見つかるほうが危ないわ」

 

 何も言い返せないのかマリアに唸られる。量あるから早く出かけたいんだよなー。

 

「シンフォギアそっちが持ってるんだし良いでしょ別に」

 

 いつまでたっても平行線の私とマリアに助け舟が出る。

 

「こうしていても時間の無駄です。紫香一人で行ってきなさい」

 

「マム!?」

 

「助かるわ。お土産は?」

 

「ステーキでお願いします」

 

「お元気だこと」

 

 やれやれみたいジャスチャーを大げさにして、おまけでマリアの髪をクシャクシャにして外に向かう。

 

「じゃあ、早めに帰ってくるようにするわねー」

 

 律儀に手を振ってくれるナスターシャ教授と顔を真赤にして地団駄を踏むマリアに見送られ買い出しへ。さ、さっさと済まして帰りましょ。

 

 

 そんな真面目に考えていたのは5分と持たなかった。どうせなら……という悪魔の誘惑に開始10秒K.O負けで昼下がりのドライブを楽しんでいる。そういえば飲んだことがなかったタピオカミルクティーの屋台を見つけ鼻歌を歌うように上機嫌だ。

 

「あ、ちょっと通えないしマスターのコーヒーの飲み納めでもしておきましょうか」

 

 そう考え、いつもの道へハンドルを切る。しっかしマイカーは目立つからって渡された車だけど地味で面白みが無いわね。

 

「マスター、おひさー」

 

「だからお前は久しくないだろ」

 

 そんな軽口を言いながらいつものセットを持ってきてもらう。

 

「俺は奥で帳簿まとめてるから店番してろ。どうせこの時間は客も来ないだろうから問題ないだろ」

 

「一応ここにお客様がいるんだけど」

 

 なんて言いつつもおまけで付いてきたケーキに免じて許してやろう。しかも私が好きなチーズケーキとは流石だ。

 そんな流れで絶賛サボり続行中だ。二課だと最近仕事増えてたからサボる時間なかなか取れなかったんだよな、もう最近は真面目にやらないと終わらない量だったし。机の上の毎日いつの間にか標高が高くなる紙の山を思い出してため息を付く。そんなことを考えてたら誰かが入ってきたのかドアのベルが鳴る。

 

「ごめんなさい、店員さん奥にいるから呼んで……」

 

「ハァ……ハァ……。よう、久しぶりだな。前とは色々逆転したな?」

 

 走ってきたのか肩で息をするクリスがそこにいた。

 

「オッサン! 着いたぞ!」

 

 クリスがそんな大声を出しながら私の向かいにどっかと腰を下ろす。そして奥からマスターが出てくる。

 

「あいよ、これはこいつにツケとくよ」

 

 そういながらクリスの前にも飲み物とケーキが一つ。そして私の方を向いて。

 

「一時間ぐらい買い物行ってくるからその間留守番よろしく。店は閉めておくから安心しろ」

 

 そのまま反論する時間もなく出ていってしまった。ヤロー、さてはグルだな。

 

「さて、あの時とは正反対だな、二課の裏切り者さん?」

 

 あ、やばいこれマジなやつだ。最悪私の原形が残らないやつだ。

 

「取り敢えず話は聞いてやるよ。その後蜂の巣か木っ端微塵か決めてやる」

 

 あー、シンフォギアでやられるのは確定なんですね……。なんとか誤魔化さないと……。えーと、えーと、そうだ!

 

「その前に一つお願いを聞いてくれる?」

 

「遺言か? 良いぜ聞いてやるよ」

 

 キーホルダーから鍵を一つ外してクリスの方に滑らせる。

 

「んだよこれ?」

 

「私の家の鍵。私がいない間掃除とあと家賃立て替えておいてくれない?」

 

「はあ? なんであたしがそんなこと……」

 

「いやー、ちょっと口座のお金無くなりそうで。だって帰る家がないと困るでしょ?」

 

「帰る家?」

 

「そう、家賃は当たり前だけど、人がいなくなった家はすぐにだめになるって言うし面倒見てほしいの。ああ、家にあるお菓子ぐらいなら 食べていいわよ」

 

「お前が帰る家をあたしが面倒みろってことだな」

 

「そう、家がちゃんとしてないと帰る時気分悪いじゃない?」

 

「そうか……帰ってくるんだな……」

 

 最後の方小声で聞き取れなかったけど、クリス落ち着いたし何も言ってこないし誤魔化せたかな? しかしこのまま別れるのも味気ないし雑談でもしましょうか。

 

「ああ、そういえばそろそろ貴女達学園祭よね? クリスは何やるの?」

 

「何って……、お前見に来るつもりか?」

 

「当たり前じゃない、みんなの晴れ舞台なんだから」

 

「お前本当に馬鹿だろ。そんなの聞いたら人呼んで捕まえるぞ」

 

「それは駄目よ。私なんかのためにそんなことしたら折角のお祭りが台無しじゃない。私を捕まえたいなら装者だけで来なさい。他の数を揃えても無駄よ」

 

「……良いぜ、その喧嘩買ってやるよ」

 

 なんかすごく良い顔してるけど良いことでも合ったのかしら? ちらりと時計を見れば結構良い時間だ。

 

「私そろそろ行かないと。私のツケらしいし好きに食べておきなさい。じゃあね」

 

 そろそろ本格的に時間がまずいと急ぎ足で出口に向かう。

 

「お、おい!」

 

 流石に二課を裏切ってこのまま逃げれるなんて都合良すぎかしら

 

「ま、()()()!」

 

 なんだ、ただの挨拶か。

 

「ええ、またねクリス」

 

 さーて、今日は調ちゃんに何作ってもらおうかしらね?

 

 

 

 

 

 




アンケートの回答数嬉しくて仕事終わって10時ぐらいから書き始めて気がついたら4時間とかいう罠
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