生存報告兼ブランク対策兼現実逃避で短いですが更新です
動き始める歯車
ずれ始める歯車
2.11 歯車のかみ合わせ
ああ今日もまたやるせない一日が始まる。奏ちゃんに今までにない真剣な殺意をぶつけられ、フィーネに自分のやらかしてきたことを突きつけられて私のメンタルポイントはドットレベルでしか残っていないのだ。出勤もクソもないのにいつもの時間に目が覚めていつもどおりにルーチンのようにコーヒーを飲むけど胃が重くなるばかり。流石に目的もなく外を出歩けるほどの自由はないしどうしたものか。
「あ、立浪さん、おはようございます」
「ああセレナちゃん、おはよ」
ウジウジと会議室のような場所を陣取っていたらセレナちゃんがひょっこり顔を出す。そういえばこの子ともしっかりと話してなかったかしら。
「マリアでも探してるの? 残念だけどここにはいないわよ」
「マリア姉さんはマムとなにか相談しているみたいなので大丈夫です。立浪さんこそついこの間血まみれで帰ってきたばっかりじゃないですか。安静にしてなくて良いんですか?」
こんな私を心配してくれるなんて、本当にいい子なのだろう。でも私のしでかしたことを知ったら軽蔑されちゃうのかな。
「大丈夫よ。なんでか知らないけど怪我がすぐに治る体質でね。もう普通に動ける程度には元気よ」
「本当ですか? 立浪さんマリア姉さんに似て無理してそうな気がします」
「私なんかをマリアと一緒にしちゃあの子に悪いわ。心配するならマリアだけにしてあげなさい」
そうは言っても納得できないようで心配と不安が半々で混じったような瞳でこちらを見つめてくる。あの姉にこの妹だからね。クソみたいな環境でよくこんな優しく育ったものね。ナスターシャ教授がいてくれたのが本当に救いね。
「ここには面白いものもないしほかを見てきなさいな」
こっちを気にしているセレナちゃんの背中を押してあげる。こんな所で私と居るよりはよっぽど有意義な時間の使い方ができるでしょう。後ろ髪を引かれるようにこっちを気にしながらだけど部屋から出ていく。今の精神状態だと可愛がる元気もないしウジウジは気がつけば感染しちゃうし気をつけないと。
自分でしたことだけど一人で時間をつぶすのは中々に寂しいものだ。そんな事を思いながらボーっとしているとまた部屋の扉が開く。さて今回は切歌ちゃんか調べちゃんかな? そんな事を思っていたら
「ここにいらっしゃいましたか。どうです? 時間があるのでしたら親交を深めるためにも1ゲームでも」
そう言いながらチープなチェスのセットを持って現れたのはウェル博士だった。
「いいでしょう、ちょうど時間持て余していたし、素人の手癖で良ければ」
気分が上がらない時は好きでもない相手と時間をつぶすのも乙かもしれないわね。
二人無言でゲームを進める。私は駒の動き方と問題ない程度のルールを知っているぐらいだ。ウェル博士がどの程度のレベルかすらわからないけど適当に進めていく。こんな時はゲームに集中すれば喋らなくても大丈夫だしある意味ちょうど良いのかもしれない。
「ずいぶんと素直な打ち手ですね。もっと変化球を使ってくると思っていましたよ」
どうやらウェル博士は無言を許してくれないようだ。
「それは貶されてるのか褒められてるのか。どっちに思えば良いのかしらね?」
「いえいえ他意はありませんよ。ただいきなり今までの仲間から寝返ってくるような方ですからね。イメージの問題ですよ」
「残念ながら単純明快な人間よ? 残念だったかしら?」
「まさか、そのような方でしたら、二重スパイなども考えなくてもいいので助かりますよ」
このクソ野郎はにこやかな笑顔でぶっこんでくるな。どうやら腹のさぐりあいをご所望のようだけど今のテンションだとやる気も出ない。
「あらあらそんなこと思われてたのね。心外だわ」
「ただの仮定の話ですよ。これも勝つための盤外戦術というものです。チェック」
「あー、これ詰んでる?」
「僕が見る限りは詰んでいるかと」
「リザインで、良い時間つぶしになったわ、ありがと」
「こちらこそありがとうございました」
お互い本心を隠しながらの会話だけど思ったより踏み込んでこなかったわね。
「さて、勝者の特権というわけでないですが、一つ質問いいですか?」
ここからが本番かしら?
「スリーサイズと体重以外でよければ」
「貴女は英雄というものをどう考えていますか? ルナアタックの英雄でありながら置いていかれてしまった貴女であれば興味深い回答をいただけかと思いまして」
「……そうね、質問が漠然としているから回答もそんな感じになるけど、英雄は死に様で決まると思うわ」
「成し遂げたことではなく死後に決まると?」
「ええ。例えば昔話のジャンヌ・ダルク。彼女は英雄としてふさわしい偉業を成した。そして処刑されることによって真の意味で英雄になったんだと思うわ。もし彼女か生き残って悪政をしたりジル・ド・レェみたいな最期を遂げれば今の評価は正反対になっていたでしょう。死んでこそ人間の評価は決定される」
「ですが、例として挙げられたジャンヌ・ダルクは死後に評価が変わった人物でもあると思いますが?」
「そ、何事にも例外はあるというオチで勘弁してもらえないかしら?」
「ありがとうございます。参考にさせていただきます。しかし貴女も古い学説をご存知なのですね。最近ではジャンヌ・ダルクは処刑されることなく姿を消したという説も有力視されていますが」
「それは単純に私の勉強不足ね、世界史の時間なんて半分は睡眠時間だったし」
それでは、とウェル博士は出ていく。さて結構時間も潰せたし、体が固まらないように散歩でもしましょうか。外には出れないけど少しでも動けば気分転換になるでしょ。
最近立浪さんが元気ないみたいです。この前マリア姉さんと一緒にリンカーを取りに行くって言って出ていったかと思えば血まみれで帰ってきた時は何が有ったのかと思いました。でもその後少ししたら普通に元気になってましたけど、そんなに簡単に治る怪我じゃないと思うんだけどなぁ?
「セレナどうしの?」
「あ、ごめんなさい月読さん。ちょっと考え事しちゃって」
いけない今は月読さんと暁さんとの大事な会議中だった。その名も
「では! マリアと紫香の関係を捜査する会議を始めるデス!」
暁さんの元気な声で会議が始まったけど……
「切ちゃん……、やっぱりその名前はどうかと思う」
「何言ってるデスか! 名前はわかりやすさが大事って言ってたデス!」
結局暁さんの勢いで押し切られて会議の名前が変わることはありませんでした。
「さて、最近マリアがいつもと様子が違うので心配デス。紫香が来てからマリアも監視で大変だと思うので私達でサポートしてきましょう!」
暁さんの言葉通りで、最近マリア姉さんの様子がおかしい事が多い。悩んでいるような表情をしていることもあれば、キョロキョロと周りを警戒しているような時もある。前までは難しい顔していることばっかりだったからその変わり方は少し気になります。
「そうですね。マリア姉さんの話では夜も監視のために同じ部屋に居るし疲れが溜まってるのかもしれませんね……」
あれ? でもこの前は普通に一人で部屋にいたような……
暁さんと相談を進めるけど気がつけば月読さんが難しそう顔をしている。いつもよく話す方ではありませんけど、今日はいつにもまして静かな気がします。
「調? なにかあるデスか?」
「……マリアは多分大丈夫だと思う……」
どうしてか言いにくそうに調さんがそう教えてくれた。理由を聞いても教えてくれなかったけど調さんが大丈夫だと言うのでしたら大丈夫なんでしょう。これからはもしマリア姉さんが辛くなった時に助けられるように注意しましょう。
そのまま結局いつもの雑談になってしまいました。今日は訓練もお休みで夕食の時間まで話し込んでしまいました。
その夜、深夜に目が覚めて飲み物を探した帰り、小さな話し声が聞こえてきた。
「アメ……資料…………」
「アガー……2つ………」
「フィー……今度は……」
話し声の聞こえる方に歩いていくと暗くてよく見えないけど立浪さんと月読さん? こんな時間に何をしているんだろう?
「あらセレナちゃんじゃない? こんな時間に起きてると体に悪いわよ。早く寝なさいな」
眠くてボーと近づいて言ったら向こうから立浪さんに声をかけられた。そっちを見て視線を戻したら月読さんの姿はなかった。私の見間違いだったのかな?」
「さ、おやすみなさい」
「はい……、おやすみなさい……」
ここに立浪さんが居るのがおかしい気もするけど頭がよく回りません……。言われたとおり寝てしまいましょう……
ほとんどよく聞こえなかったけど唯一はっきり聞こえた気がする、胸の歌がない、って何のことでしょうか……?
デスの分量に悩むとかいうシンフォギア二次小説書き特有の悩み
……悩むよね?