小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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なんとか生きてます……
拘束時間15時間の仕事はキツイっす


2.12 友はかすがい

誰かに肩を貸している

誰かの肩を借りている

 

 

2.12 友はかすがい

 

 あの日立浪さんが寝返ったと叔父様から宣告されてから何日たっただろうか。あれ以降二課の空気はどこか重いものになっている。私もそれなり以上に衝撃を受けたがそれよりも奏と雪音の状態がひどい。二人共私や立花以上に立浪さんに救われてきた身だ。私が考える以上にダメージが深刻なのだろう。

 

「こうも雰囲気が重いと中々に辛いものだな……」

 

 今も訓練場で剣を振るっていはいるが心が晴れることはない。それでも体を動かすというのは少しばかりであっても気分転換になる。こういう時はリンカーという制限がないこの身がほんの少し有り難い。

 

「この辺りにしておくとするか……」

 

 そうは言っても今はいつ何が起きるかわからない状況だ。鍛錬も重要だがそれで肝心の時に戦場で無様を晒すわけににもいくまい。今日はこの辺りで上がるとするか。

 汗を流して今日の予定を思い返すが、なにもないということしか思い出せず手持ち無沙汰になってしまう。鍛錬を切り上げた以上体を動かすわけにもいかず、どうしようか迷っていると休憩所に雪音の姿が見えた。何かの雑誌を読んでいるようだが、随分落ち着いているようだな。以前は酷いものだったが先日立浪さんと会ったらしいがそれ以降は以前の雪音に戻ってきているように感じる。

 

「雪音、何を読んでいるんだ?」

 

「あ? ああ、あんたか。なんもかんもねえよ。ここに置いてあったやつを読んでるだけだよ」

 

 声を掛けてみればいつものようなぶっきらぼうな声が返ってくる。立花や小日向の様になれとは言わないが、せめてもう少し先達を敬うということはできないものか。

 しかし、雪音も最初のうちはかなりひどい状況だったはずなのだが、直接会って話したというあの日以降随分と落ち着いたものだ。

 

「今更の話にはなるが、以前に立浪さんと会ったと言っていたが何を話したんだ?」

 

 気軽に、あくまでなんでも無いように意識しながら聞いてみる。どんな答えが返ってくるかと思えば中々返答はなく気になってみてみればそこにはニヤケ顔を隠しきれていない雪音がいた。

 

「悪いな、これはあのバカとの秘密なんでな。全部終わったら話すさ。その時はアンタもあのバカに文句でもぶつけてやるんだな」

 

 それ以上話すことは無いとでも言うようにまた雑誌に意識を戻されてしまった。雪音のこの物言いから最終的には丸く収まるのかもしれない。ここで詳細を教えないことに少し腹も立つがあの人のことだ、また何かろくでもないことでも考えているのだろう。それでも雪音よ、その表情は花の女子高生としてはいかがなものかと思うぞ?

 

 最後は元通りになると無責任に考えていたわけでないと思うが、それでも私の危機感が足りなかったのであろう。それを実感させられたのは立浪さんが我々の本部を襲撃し、奏が倒れたと緒川さんから連絡をもらった時のことだった。

 

 

 

「奏! 大丈夫なの!?」

 

 連絡を受け居ても立っても居られなくなり早退しそのまま飛んできた。不躾なのは重々承知しているが一瞬たりとて待つこともできず医務室の扉を勢いよく開け放つ。

 そこにいたのはベッドの横で丸椅子に腰掛けている緒川さんと

 

「…………」

 

 目線だけをこちらに向けた私の知らない天羽奏がそこに居た。

 

「翼さんも来られたことですし、飲み物でも持ってきます」

 

 気を利かせてくれたのだろう。緒川さんは私と入れ替わるように医務室から出ていった。

 

「奏……」

 

 いつもみたいな明るさもなく、落ち込んでいる時でもこちらをまっすぐに見てくれていた瞳は濁り、生きているのにそこに命がないような状態だ。

 

「奏……、何が有ったの? 私では力になれないことかもしれないけど、それでもまずは話して欲しい……」

 

 そう、懇願するように伝えても奏はなにも話してくれない。……いや違う。きっと探しているのだ。何を、どうやって伝えればいいのか。きっと奏は話したくないではなく話し方がわからないだけだ。

 

「落ち着いて、ゆっくりでいいから。私はいくらでも待つから奏での言葉で教えて欲しい」

 

 そう言いながら、震えるその手をゆっくりと両手で包み込む。触れた瞬間跳ねたその手は少しずつ落ち着きを取り戻し、返すように私の手を握り返す。そこにはちゃんと暖かさが有った。

 

「つ、翼……。姐さんが私達の敵だったんだ……」

 

「ここに襲撃に来たとだけはさっき緒川さんに聞いたわ」

 

「姐さんが、マリアと一緒にここに来て、リンカーも奪っていったんだ。寝返ったなんて冗談か、何かの作戦だと思いたかったのに、何にも教えてくれずに私の前に、あいつの隣に立ってたんだ……」

 

 どうやら奏は襲撃犯の二人、立浪さんとマリア・カデンツァヴナ・イヴの二人と対峙したのだろう。でもそれだけでここまで憔悴するのだろうか?

 

「それで……、アタシは、アタシは……」

 

 震えがまた大きくなる。声音もそうだけどまるでなにかから逃げるように全身が震えている。背を丸めて小さくなっているその姿は今まで見たことも想像したこともないものだ。

 

「大丈夫よ、何が有っても私は奏の味方だから」

 

「アタシは、シンフォギアで、ガングニールで生身の姐さんを殺そうとしちまったんだ……」

 

 その言葉は中々にパンチの効いたものだった。奏が? 立浪さんを? 

 

「対面してもいつも通りな姐さんを見てアタシ達の存在がすごいちっぽけなものだったって言われてるような気がして頭に血が登って、気がついたら姐さんの腹にガングニールが刺さってて、二人共血まみれになって……、うっぉえ」

 

 その時を思い出しているのだろう、えずく奏の背中を擦りながらどうすればいいかを考える。きっとここは間違えてはいけないところだ。そして私にしかできないことだろう。

 

「……大丈夫? ねえ、奏? ガングニールで刺されたぐらいで立浪さんがどうにかなると思う?」

 

「翼……?」

 

「私が知ってるあの人はそれぐらいじゃ死なないと思うし、実際にあの時もそうだったでしょ?」

 

「で、でもあの時はアタシ達もエクスドライブのおかげで回復してたから……! 今度はエクスドライブどころかシンフォギアすら……」

 

「でも、叔父様だってシンフォギア関係なく回復していたでしょう? あの人達はそんなものなのよ」

 

 我ながら無茶苦茶で酷いこと言っているものだ。それでもこれ以上奏が罪の意識を持ってしまえばきっと立ち直れない。

 

「どうせ次に会うときにはピンピンしながら、私達を見たらいつかの時みたい怒られた子供みたいに情けない表情で謝ってくるに決まってるわ」

 

「そ、そうかな……、でも、きっとそうかも知れないな……」 

 

「そうに決まってるわ! さあ、まずは奏はしっかり体調戻して!」

 

 なんとか話がまとまったところで緒川さんがタイミングよく飲み物を持って入ってくる。この辺りは流石としか言えない。また入れ替わりになるけど二人に一言かけて外に出る。

 

「ああああああああ…………」

 

 そのまま私は声にならない叫びを上げながら壁に背を預け座り込んでしまう。裏切るばかりか襲撃して? しかも奏に殺されそうになる? もういい加減にして欲しい。私だって色々限界なんだ。

 

「……よし」

 

 それでもいつまでも立ち止まるわけにはいかない。情けない姿を後輩たちに見せるわけにもいかない。

 しかし、いつぞや立浪さんは私達のことを妹だとか言っていたが、それならそれでちゃんと姉らしくしてほしいものだ。

 

 

 

 

 さて来てしまった、リディアン学園祭なわけで。少し前の私なら問題なくここに来てたんだけど、今はメンタル的に来たくなかった所である。しかし約束してしまった以上こない訳にもいかず、それ以上に……

 

「いいんでしょうか、マリア姉さんやマムに黙って来てしまって……」

 

「大丈夫デスよ! ここでシンフォギアをゲットできれば逆転満塁ホームランで問題なしデス!」

 

「大丈夫、何か有っても今日の引率は紫香だから怒られるのは紫香だけ」

 

 このちびっこ三人組が抜け出していた以上放置もできないのがね……。てか調ちゃん? ちょっとひどくない?

 

「はいはい、私はちゃんとマリア達に連絡してきてますからね。貴女達の事は責任範囲外です」

 

 一応は装者の状態確認兼リハビリという名目でこっちに来ているのだ。それを勝手に抜け出しているちびっこたちと一緒にされては困る。

 

「ええーー!」

 

 元気よく驚いてくれる切歌ちゃんに無言で非難の目を向けてくる調ちゃんにセレナちゃん。はあ、そんな目を向けられて私が勝てるわけないじゃない。

 

「はいはい、わかりました。マリアたちには私の方から話しておくわ、ただし! 条件が一つ」

 

 ピンと立てた私の人差し指を緊張した表情で見つめてくる3人。こう見ると普通の女の子で可愛いんだけどなあ

 

「ちゃんと学園祭を楽しむこと。お小遣いあげますから適当に買い食いなり出店で遊ぶなりしてきなさいな」

 

 どう言いながら大きめのお札を何枚か渡すと先程までの緊張はどこに行ったのか嬉しそうに飛んでいってしまった。

 

「現金ねえ、でもあの年ならそれが普通なのよね……」

 

 さて、マリアたちには護衛で連れ出したとでも言っておきましょうか。

 

 

 その後は恙無く時間は進み、クリスの晴れ舞台もザババコンビだけかと思えばセレナも巻き込んだ飛び込みの熱唱も見ることができた。そのまま勢いで切歌ちゃんが決闘申し込んで学園を後にした。

 

「しっかし、あれ私のこと完全に忘れてるわよね?」

 

 それ以上にさっき一瞬だけマリアからあったコールも気になる。掛け直しても繋がらないしこのタイミングでなにか有ったかしら?

 首を傾げながら帰るために校門を目指して歩いていると突然肩を叩かれる。

 

「は……」

 

 振り返り返事をする前にバチン! という鈍い音と同時に頬に痛みが走る。脳天気すぎる自分に嫌気が刺すが、戦闘態勢を取る前に見知った、でも見たことのない表情の知り合いが居た。

 

()()さん、ちょっとお話しませんか?」

 

 いやー、未来さん、ちょっと勘弁してもらえないですかね?

 

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