小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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G編見返すと後半一気に話動くんですね

お気に入り900ありがとうございます


2.12 花咲くために

命の価値は決められない

命の価値を決めるために

 

2.12 花咲くために

 

 予想していた予想外なんて言いたくないけど、このざまだ……!

 

「ーーーーーーー!!!」

 

 一口食べて満足したわけでは無いでしょうけどネフィリムは少し離れた場所に飛び去っていった。あれに人間的に感情があるとは思えないけどそれでもあのこちらに見せびらかすようにしか見えない顔には腹が立つ。

 そしてそれよりも目の前で声にもならない叫びを上げている響ちゃんだ。

 

「立花! 大丈夫!」

「響! クソ!」

 

「なんなのだこれは!?」

「どうしたらいいんデスか!?」

 

 どっちの陣営もあんまりすぎる光景にまともに動けていない。

 

「いったぁぁ!!!! シンフォギアを!!?」

 

 一人うるさい男もいるけどあれは無視!

 

「うぐぁあああぁあああああ!!!!」

 

「何してんだよバカ!」

 

 場違いのような声に視線をやれば黒く染まった響ちゃんがいる。思っていたより響ちゃんの暴走が早い! あああクソ! 知っているせいで余計に混乱する! 流石に私でも腕一本持っていかれてすぐに動けるわけないじゃない! 脂汗が止まらない顔を無理やり上げてみたらすでに響ちゃんは臨戦体勢だし、ネフィリムはなんかでかくなってるし、少しは待ってくれても良いんじゃない!?

 

「ああもう情けない! マリア! 奏ちゃん! こっちに!」

 

 後なら恥もなにもない、自分だけでどうにもならないなら誰かの手を借りるしか無い。こんなときだけ敵味方もなく泣きつくなんて本当に情けない。

 

「……姐さん!」

「お姉さま! どうするの!」

 

 こんな情けない私でも周りにだけは恵まれているみたいだ。マリアはともかく奏ちゃんまで駆けつけてくれるなんて、

 

「ごめんね、余裕ないから一気に言うわよ。こうなっては決闘もクソも無いわ、気を見てそれぞれ仲間を連れて撤退しなさい」

 

 言いながらでも黒に少しの赤を混ぜた戦いは拮抗している……、拮抗? ちょっとまずいわね……

 

「何いってんだよ! そもそも裏切ったねぇ……アンタの言うことなんて聞く義理はねえ!」

 

「私なんかに義理なんてなくて結構! でも今は他の子が危ないの! お説教でも折檻でも後でいくらでも付き合うからお願い!」

 

「クソ! 都合の良いことばっかり言いやがって……!」

 

「そっちの話は終わったかしら? で私たちは何をすればいいの?」

 

 奏ちゃんの反発は予想通りだしこっちが百悪いから仕方ないけど、情に訴えるなんて我ながら狡い凝った。でもおかげでなんとか話ができそうだ。

 響ちゃんの方を見れば押してはいるけどそれでも圧倒まではいかない。私の腕まで食った分成長したか?

 

「今は響ちゃんがなんとか戦っているけどうなるかわからない。しかも向こうはこっちを文字通り食って強くなる厄介なギミック付き。こんなもん逃げるに限るわ。で二人にはそれぞれの陣営を率いて撤退して欲しいの」

 

「そうは言っても簡単に返してくれるとは思えないわよ」

 

「そこは響ちゃんに期待。どうしようもなかったら私がどうにかするわ」

 

「どうにかって、姐さん自分を良く見ろよ! 腕一本持っていかれれるんだぞ!」

 

「これでも頑丈が売りでね? 全身焼かれようが、お腹を貫かれようがこの通りピンピンよ」

 

「二人共、どうやら話し込んでいる時間はなさそうよ」

 

 マリアの言葉に視線を向ければ響ちゃんの渾身の一発でネフィリムがダウンしている。しかし限界だったのだろう、同じく倒れ込んだ響ちゃんも黒く染まった見た目が解けていきいつもの状態に戻っている。食われた腕もいつの間にか元通りになっている。翼ちゃんやクリスが保護しようとしているがどうやらそう簡単にはいかないようだ。

 

「あいつ! まだやれるのかよ!」

 

 奏ちゃんの叫びを肯定するようにネフィリムがゆっくりと立ち上がる。ダメージは有るようだけどまだまだ戦えそうな雰囲気だ。

 

「さて、本当に時間がないみたい。奏ちゃん、マリア、さっきの流れでお願いね」

 

「……わかったわ。天羽奏、貴女との決着は次としましょう」

 

「……クソっ! わかったよ! 二人共覚えてろよ!」

 

 なんとか二人共納得してくれたようで、それぞれの仲間を連れて離れていく。

 

「さてさて、こんな私でどこまで出来るかしらね。せめてあの子達が安全なところまで行けるぐらいには時間を稼ぎたいところだけど」

 

 なんとか顔に出さないようにはしていたけどそろそろ食いちぎられた腕からの出血も限界に近い。それでもこのまま私が一蹴にされてしまえば目の前の化け物はきっと更に食らうために追いかけてしまうだろう。

 

「 pride valour achilles tron」

 

 静かにいつかの言葉を口にする。どうやら回復のような事もできるようで先程よりもずっと元気なネフィリムに対峙する。

 いつの間にかウェルのクソ野郎もどこかにいって、化け物と二人っきりだ。

 

「さて、腕は食われたが我が足は健在。化け物退治は()の役目じゃねえがそうも言ってられねぇ。てめえごときに槍も鎧ももったいねえ」

 

 そうさ、今更腕の一本無いぐらいで止めれるような生き方はしちゃいねえ。

 

「いざ! 化け物退治! 我が誉れを馳走していやろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところで……、治療しないと……」

 

 

 

 

 

 

「……ここは……?」

 

 ぼんやりと目を開けば知らない天井どころか、見たことも内容な豪華な光景が広がっている。ゆっくりと体をおこねば見るからに高級なベッドに寝かされていたようだ。

 

「確か……私は……」

 

 霞がかかったような思考を深めていく。そうだ、私はみんなを逃してネフィリムと一騎打ちになって……、なってそれからどうした?

 

 「腕がある……」

 

 力を込めればそのままに動く私の腕がそこにある。確かに私の目の前でネフィリムに食われたはずの私の腕がだ。

 

「失礼します……、ああ! 目を覚まされたのですね!」

 

 考え込む私に飛び込んできたのは控えめなノックの音と扉から入ってきた少女の姿だった。

 

「大丈夫ですか? ああ、ちょっと待っていてください。……サンジェルマン様! あの方が目を覚ましました!」

 

 日本ではあまり見ないような髪と瞳の色をし、これまたあまり馴染みのない服装をした少女はせわしなくサンジェルマンとか言う誰か呼びに行ってしまった。

 

「……サンジェルマン?」

 

「ジャネット、あまり騒ぎ立てるものではない。……目が覚めたようだな」

 

 そこに現れたのはこれまた日本という土地に似つかわしくなく、それでいて私には見覚えがある。その人物は

 

「私はサンジェルマンという、この子はジャネット、浜で倒れていた貴女を助けた子だ。お礼ぐらいは言ってやってくれ」

 

 今このときここにいるはずのない、しかしいつかは対峙するはずのパヴァリア光明結社が幹部が一人、サンジェルマンと私の記憶にもない少女が一人そこに堂々と立っていた。

 

 

 

「……そこまで色々手間を掛けていたとわね。助かったわ。本当にありがとう」

 

「いえ! 困っている人がいれば助けるのは当然のことです!」

 

 とりあえず今までの流れを確認すると私はなぜか浜にボロボロの状態で打ち上げられていたようだ。途中経過は全くわからないが今私が五体満足で生きているということは最低限ネフィリムを撃退できたのだろう。そうでなかれば今頃私はあいつの胃の中だ。

 

「しかし、助けてもらった身であれなんだけど、どうして貴女達のホテルに?」

 

「私達は旅行でこちらに来ている。その中で浜で倒れている人間などどう考えても厄介事でしか無いでしょう。だけど、この子がどうしても助けたいと言ったのでね」

 

 サンジェルマンがそう教えてくれる。確かに彼女たちの本当に役割を考えてもどう考えても厄介事にしかならない私を助けようとしたのはこのジャネットというこの優しさなのだろう。改めて誠意を持ってお礼と頭を下げる。

 

「困っているときはお互い様ですから!」

 

 こんないい子がパヴァリア光明結社の一員なんてと思うけど、サンジェルマンの関係者と思えば納得もできるか。この人、どこを切り取っても真面目で優しい人だもんね。

 

「ジャネット、少し使いを頼む。このメモに書いてあるものを買い揃えてきて欲しい。特殊なものもあるから少し時間がかかるかもしれんからすぐに出て欲しい」

 

「わかりました! お姉さんも安静にしておてくださいね?」

 

 にこやかな笑顔で部屋を出ていく彼女に、私は手を振るぐらいしかができない。

 

「……さて、あの子は純粋に善意で貴女を助けたけど、私はそこまで優しくなくてね、せめて事情ぐらいは話してもらいましょうか?」

 

 そらそうだわなと。ここで変なこと言ってややこしくなるもの嫌だし、でもまだお互いの素性は知らない設定だしネフィリムを通り魔にでもして話しましょうかね。

 

 

「……そう、貴女は仲間を助けるために一人驚異に立ち向かったというわけね」

 

「そのまま、かっこよく行けば良かったんだけどね、残念ながらこのざまよ」

 

 一通り話したけどサンジェルマンの反応がよろしくないわね。ここで突っ込んできてお互いややこしくなるようなことを進んでするような人じゃないと思うけど、どうしたものか。

 

「ねえ、貴女は誰かを守れていい気持ちかもしれないけど、残された人の気持を考えたことはあるのかしら?」

 

「というと?」

 

「人間は多かれ少なかれ考える生き物なのよ。貴女がそこまで大事に思っていると言うことは相手も同じ様に考えているのではないか? であればその者たちが一方的に守られて、貴女が傷つくのを見て何も思わないと考えているのか?」

 

 こりゃ驚いた。思った以上に踏み込んだことを聞いてくるのね。

 

「……私も大事な人を守れず残されてしまった人間だ。だからこそ貴女は自分勝手にしか見えない。それは相手のことを思っているという言葉に見を隠した自己満足ではないか?」

 

 ……ああ、確かサンジェルマンも母親に先立たれたのがすべての始まり、大事な人との別れを経てきているのか。

 

「……かもしれないわね。誰も守ってくれなんて言わないのに自分勝手に傷つき、それでも自分以外の誰かをもっと傷つけるだけの愚行かもしれないわね」

 

「そう思えるならこれからはどうするのだ? 生き方を変えられるのか?」

 

 確かにね、今のままでは無責任な生き方かもしれない。でもね

 

「ねえ、花言葉に詳しかったりする?」

 

「何を急に……」

 

 いつかは敵対する彼女かもしれないけど、だからこそ私の本意を伝えてもいいのかもしれない。

 

「さっき名乗ったけど私の名前は立浪紫香。名字も名前も由来は別にあるかもしれない。だけど私はこの名前の生き方をするって決めているのさ」

 

「名前の生き方?」

 

「立浪の草でタツナミソウ、花言葉は「私の命を捧げます」。これだけでも重い女になってしまうのに私の名前は紫香。意味で文字を変えて匂ひ紫。これが和名でヘリオトロープ。こっちの花言葉は「献身的な愛」。私は私の名前を付けられた時から命を掛けた献身を求められているのよ。親も流石に文字通り命をかけるまでは考えていなかった思うけどね」

 

 小さく笑って話してみるけど、サンジェルマンの表情は暗い。これでも今まで誰にも話したことがない私の秘密を話して上げたのに。

 

「……()()は名付けられた事に従って生きているというのか? そこに貴様の意思はあるのか?」

 

 どうやら眠れるなんとかの尾を踏んでしまったらしい。先程までと違いはっきり敵意を感じる。だけどここで引くわけにはいかない。これは私の一番根っこの話なのだ。

 

「最初は貰ったものかもしれないけど、今は私の大事な誇りよ。きっと私が身勝手に守ったと自惚れているあの子達は私なんかよりずっともっと素晴らしい未来を作ってくれる。きっとそこに私の席はない。だったらせめて彼女たちが歩く道を少しでも綺麗にするのが私の生き方よ」

 

「相手はそれを望んでいなくてもか?」

 

「きっとそうなんでしょうね。私は誰よりも私の価値を認められない。だけど自分で自分を否定するなんてそんなの悲しすぎるじゃない? だから私は胸を張って誰かのためにこの生命を使うって決めているの。それが私の生きる意味と、そう決めているから」

 

「はた迷惑な先達もいたものだな」

 

「そうでしょうね、少し間違えれば道を汚して尻拭いを押し付けることになってしまう。せめてそうならないようには日々努力しているつもりよ。命を使い尽くすことでしか残せないなにかもあると、そう思っているんでね」

 

 女二人無言が続く。お互いこれ以上何も言うことはないと。それでもこのまま終わらせるわけにはいかないと。なんとも言えない空気が続く。

 

「……貴女はきっとジャネットには毒になるでしょう。目覚めたばかりで申し訳ないけど動けるのであれば出ていってもらえるかしら?」

 

「嫌われちゃったかしらね、もちろん動ける以上迷惑をかけるつもりは無いわ。なにか私と一緒に流れ着いてなかった?」

 

「貴女が握っていた……ペンダントはそこの机にあるわ。もとの服は着れるものでは無いでしょうから私の予備を着ていくといいわ」

 

 どうやらシンフォギアもすんなり返してくれるようだ。確かに、この段階でパヴァリア光明結社が表に出るのもややこしいもんね。

 

「何から何まで助かったわ。これっきりの縁かもしれないけどどこかでちゃんと恩は返させてもらうわ」

 

「そんなものは必要ない」

 

 これ以上余計なこと言うのは止めておいたほうが良さそうね。思った以上にしっかり動く体を使って服を着替える。サンジェルマンのいつも着ている貴族服が出てきたらどうしようかと思ったけど普通のスーツが出てきて一安心だ。

 着替えも終わって、これでいよいよさよならという場面だ。

 

「じゃあ、行くわね。ジャネットちゃんにお礼を伝えておいてもらえるかしら」

 

「それぐらいはいいだろう」

 

 最後に軽く心の通っていない握手をして、後はこの扉をくぐれば終わりだ。

 

「最後に一つ。ジャネットちゃんには毒って言われたけど貴女にとってはいかがかしら?」

 

「……そうね、いつか違う出会い方をすれば、お茶の時間ぐらいは付き合ってあげてもいいかもしれないわね」

 

 ……最後にほんの少しだけど彼女の笑顔を見ることができた気がした。それだけで満足だ。今度こそ静かに部屋を後にする。

 

 

 

「命をかけることでしかできない献身か……。私が皆に強いてきた道を自ら歩む。そんなおかしな人間もいるのだな……」

 

 

 

 

 

 

 さて、突然の未来のライバルとのエンカウントも終わったし、今の事に頭を戻そう。どうやら携帯は残念がらどこかに旅立ってしまったようで、ホテルで来た限りあの夜から数日は経っているようだ。

 

「さてはてどうしたものかしら」

 

 やることはあるはずだけど、出来ることがわからずにぼんやりと水平線を眺めながら歩いていればどこからともなく聞いた声が

 

「さあ行くぞ!」

 

 勢いで気配を消して隠れて見れば赤ジャージを来た弦十郎さんに二課装者全員が走り抜けていく。よくわからない中国語? の歌がまたよくお似合いで……

 

「そんなことより、ていうことは結構時間が過ぎちゃってるわね……。もうクライマックスまで待ったなし。であれば私に出来ることは……」

 

 今のタイミングで二課に戻っても動きを制限される、FISに戻ろうとも向こうの居場所もわからない。

 

「こんなときは国家権力の使い所かしらね」

 

 

 

 

 

 

『残念ながら君の言ったとおりになったな』

 

『本当にね艦長。でもね、残念が最悪にならないように私がここにいるですよ』

 

 目の前には私達の艦隊を襲撃しようとするノイズの群れ。

 

『あれは……、君のお友達かい?』

 

『……ええ、可愛い妹の一人ですよ』

 

 ノイズの群れ目掛けて空から降り立つはシュルシャガナが調ちゃん。こうなってはいよいよね

 

『では急いで行ってくるといい』

 

『ええ、()()()()()()()()()()()()()()()()が立浪紫香、いざ参る!!』

 

 声に合わせてハッチが開き、潮風が飛び込んでくる。

 

「いざ、最終幕! 根性入れなさい!」

 

 アメリカの手先として私は最後の戦場に出向く

 

 




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