固くなれば脆くなる。
柔らかくなれば曲がってしまう。
7,楽しいお出かけ
響ちゃんのイジメ関係で色々動ける範囲で動いてはいるけれど、残念ながら立花家からは父親が離れ、学校では一番の親友が離れていってしまった。私としてもできるならベッタリと近くで支えていきたいけれどもし、それが原因で依存してしまうのではと考えてしまい、踏み込めないでいる。原作との乖離なんて関係無くそんな不健全な人間にしてしまうなんて絶対に駄目だ。
そして職場内でもどうしてもこの中にライブ事故の生存者を地獄に叩き込んだ実行犯がいると思うとその中にいるだけでストレスを感じてしまう。もちろん業務上の指示に従っただけであってそれで個人を疎ましく思うのは間違っていると理性ではわかっていても感情が納得してくれない。そんな内面が出ているのだろう。以前と比べて少し回りとの距離感を感じてしまっている。
そうなれば生活が崩れていくのなんてあっという間だ。アルコールとニコチンが増え、逆に睡眠時間は減っていく。はたから見ればどんどんやつれて汚くなっているのがわかるだろう。こんな時に声を掛けそうな司令も理由を知っているからか、微妙な距離感になっている。
果たして私は正しいことをしているのだろうか、奏ちゃんの胸の中で固めた決意すら霧散してしまいそうだ。
そんな私を見かねてだろう奏ちゃんと翼ちゃんがお出かけに誘ってくれた。ツヴァイウィングとしての活動を再開し始め、スケジュールもキツイのは明らかなのに私のためになんとか予定を調整してくれたらしい。
年下の子供にまで、心配させて迷惑を掛けて。ほんと自分が情けない。
そうであっても、せっかく二人が準備してくれた機会だ。沈んだ顔でいては誰も得をしない。顔色ぐらいは化粧でどうにかして行こう。
この体になった時と、学生をやめる時の二度、なんで化粧細かく覚えないといけないのかと嘆いていたけどこの歳になって実感できたわ……大人は顔色も誤魔化さないといけないのね……
さて、待ち合わせ場所に十分前に付いたはいいけれど、まだ二人の姿は見えなかった。奏ちゃんは申し訳ないがイメージ通りだけど、翼ちゃんは早めに着こうとすると思うから少し意外。微妙な時間だし未成年と出かけるのにタバコの匂い撒き散らすのは酷すぎるので心のオアシスに逃げ込むことも出来ず、微妙な時間を過ごしている。
(ああ、目の前にいる幸せそうなこの人達も私の選択次第で命を落としてしまうのかもしれない)
やはり駄目だ。気分が落ち込んでいるときは全てをネガティブな方向に考えてしまう。二人には申し訳ないけれどこのまま合流する前に体調不良とでも連絡して帰ってしまった方がいいのかも。
そんな考えれば考えるほど落ち込んでいく中、通りの向こうから目立つ二人がやって来る。二人共有名人ゆえ変装はしているがあれだけの美人だ。隠しきれず回りの男性陣からの視線が集まっている。
「ごめん!遅れちゃった」
「立浪さんごめんなさい。前の仕事が長引いてしまって」
「いやいや、そんなに忙しいのに私なんかのために時間を取ってもらってごめんね」
言い訳より先に謝罪ができる。やっぱりいい子だ。仕事が長引いたのなら早めに切り上げて休ませてあげたほうが良さそうかな。
そんなことを考えていると、さっきまでの申し訳無さそうな表情から一変して怒りを隠そうとしない奏ちゃんがいた。比べるとそこまで露骨ではないけど翼ちゃんも似たような表情だ。私なにか気を悪くさせるようなことしてしまったかな。
「姐さん、今日何があっても私達に謝るの禁止な。一回謝るごとにこのデート一回追加するから」
そうか、これはデートだったのか。しかし女三人でデートとなるとどんな役割分担なのだろう。いや、今突っ込むべきはそこじゃないか。
「謝っちゃいけないってどういうこと?」
「立浪さん最近、というよりここ数ヶ月ずっと暗い顔してました。それだけじゃなくてどんどんやつれていって、私達心配なんです」
「しかも姐さんアタシ達にも何も相談してくれないし。アタシらそんなに頼りないのかよ」
「……子供にまで心配掛けてほんと私情けないわね」
つい、本音がポロッと出てしまった。そしてそれは近くにいた二人にしっかりと聞かれてしまった。次の瞬間、胸に衝撃と息苦しさを感じる。
「アタシたちは子供なんかじゃない!、仲間なんじゃないのか!?」
事態が急すぎて思考が追いつかない。今認識できているのは私は奏ちゃんに胸ぐらを掴まれていること。目の前で怒りをぶつけて来ている奏ちゃんが泣いているということだ。
「ちょっと奏!?」
翼ちゃんも焦っているのだろう。結構大きな声で名前を呼んでしまう。そうなればただでさえ集まってい視線が一気に増える。
そんな中私はこのままだとツヴァイウィングのスキャンダルになってしまうだとか、どうでもいいことを考えてしまう。
「予定変更だ!本部に行くぞ!」
そのまま私は奏ちゃんに手を引かれ、タクシーに放り込まれて二課本部まで連行される。奏ちゃんは怒り心頭だし、私は暗い顔で下を向くだけで車内の空気は最悪だった。事態に置いて行かれている翼ちゃんが泣きそうな顔で気まずい思いをしているのは確実で更に申し訳なくなる。
二課に付いた私達は奏ちゃんを先頭に、司令室へと入っていく。ここが自動ドアで良かった普通の押すタイプのドアだったら今の奏ちゃんなら蹴り開けてそうな気しかしない。
「司令!」
「おお!? 急に入ってきて大声を出すな、びっくりしたじゃないか。どうした?今日は三人で出かけると聞いていたが」
「予定変更だ、模擬戦するから準備してくれ」
「……わかった、至急準備させよう」
私の分からない所で話が進んでいく。私には分かることは何らかの模擬戦をすることと、何かを察した司令がそれに許可を出し、準備が進んでいるということだけだ。トレーニングルームにつくもまだ準備は出来ていないようなので、なぜか付いてきている慎次くんと司令に先程の火消しを頼んでおく。
「ごめん、さっき外で騒ぎ起こしちゃって。ちょっと噂になってないか確認しておいてほしいかも」
「それはいいですけどなにをしたんですか?あそこまで怒ってる奏さんは久しぶりに見ましたよ」
「ああ、あそこまでの怒りは昔の奏くんのようだ。何をやらかしたんだ?」
「いや、それがわからなくて…… 子供に心配掛けて情けないなって呟いたら急にああなちゃって」
なにかヒントが得れるかもとさっき起きたことをそのまま伝える。そうすると二人は苦虫を噛み潰したような、もしくは呆れたようななんとも言えない表情になる。
「司令、これは……」
「そうだな。紫香君、君が悪い。たっぷり絞られて来い」
どうやら、二人は答えが分かったようで私に白い目を向けている。答えを聞こうとするとタイミング悪く準備ができたようだ。諦めて中に入る二人と向き合う。
「……あのーどうしてお二人共シンフォギアを纏ってるんでしょうか?」
「んなの決まってるだろ、今からアタシたち二人と姐さんで模擬戦をするからだ」
どこで虎の尾を踏んだのかわからないけど、これ撤回して貰えそうにないパターンだよね。まあ模擬戦で奏ちゃんの機嫌が戻るならそれでもいいか。適当な所で終わりにしよう。
「もし姐さんが負けたら今なんで悩んでるか教えてもらう。教えてくれないならダンナでも、緒川さんでも分かる人誰かから教えてもらう」
急に負けれない条件出てきた。でもまあ、私が話さなければいいだけか。そう思って油断したけれどどうやら現実は私に対して厳しいようだ。
「いいだろう、俺が理由を知っている。紫香君が負けた場合は責任を持って全て伝えよう。
「司令!?」
突然の裏切りに勢いよく振り返る。勢いを付けすぎて首が少し痛いがそんなのは今は問題じゃない。
「確かに、二人には伝えないように俺から頼んだ。だがしかし隠し通せずに悪影響が出るのであれば腹を括って話すしか無いだろう」
ああそうですか。また私が悪いんですね。なら仕方ない。なんとか負けないようにして秘密は胸の中に置いとかせてもらおう」
「Disastrous psyche achilles tron」
もうここまで来たら自分の力でどうにかするしか無いだろう。覚悟を決めろ。
「やっと、少しはマシな顔になったな。行くぞ翼」
「……ええ。私も今の立浪さんは見てられない。全力で行くわ」
こうして、日常的に行っている模擬戦は、絶対に負けられない戦いとなって火蓋が切って落とされた。
始まって数分が立つが、いつも同じ攻める二人。守る私で戦いは進んでいく。私のアームドギアはご覧の通りただの盾だ。残念ながら刃が付いているわけでもなければ、銃弾が飛んでいくわけでもない。
「どうした、姐さん!守ってばかりだと勝てないぞ!」
そう煽りながら奏ちゃんが攻め立てる。いつ見てもこの槍捌きはすごいとしか思えない。突撃槍の性質を生かした勢いのある突進に、そこからの横薙ぎ。大ぶりだけかと思えば石突を使って牽制までしてくる。そして頭に血が登って単調になってくれれば楽なのだが
「たぁあ!」
近接武器、なおかつ大型な武器同士なおはずなのに連携するための道が常に開かれている。攻めると思えば引き、下がったと思えば別の方向から次が飛んでくる。やっぱりこの二人のコンビネーションはすごい。でもね、私だって負けられないんだ。
「クソ!二人で攻めてるのになんでいつも受け切られるんだ!」
「簡単なことだよ。私に勝つ気がないからだよ。攻めるタイミングはどうしてもスキになるからねっと!」
言葉に勢いを付けてそのまま振り下ろされた穂先を勝ちあげる。踏み込む勢いを流された奏ちゃんは一瞬態勢を崩す。そんなスキは見逃さないが、見逃さないだけで私はそのまま翼ちゃんに意識を向け少し後ろに下がる。
「私が負ければ秘密は明かされるんでしょ?なら勝たなくても負けなければいいでいい。それなら十八番だから」
そう負けなければいいだけなのだ。それだけど千日手になるが向こうには明確な時間制限が有る。流石に司令もリンカーが切れた段階で終了させるだろう。ならそこまで耐えればいいだけだ。
「舐めるんじゃねぇ!」
一層の気迫とともに繰り出されたシンプルな突きを受けきれずに少し後ろに押し込まれてしまう。だけどそれだけだ。
「そうさ!今のアタシじゃその防御を突破することは出来ない、でも!」
私を押し込んだ勢いそのままに更に追い詰めてくる奏ちゃん。彼女一人ならなんとか受けきれただろう。でも
「私だって怒ってるんですから!」
「双翼揃ったアタシたち勝てないものなんて無い!」
正直に言おう。この瞬間全力で対処すればこの必殺の連携もなんとかなったかもしれない。でも私はそうすることが出来なかった。見惚れてしまったのだ。
二人の連携に見入ってしまった?いや、ここまでのものでなくとも近いレベルのものは今まで何度もどうにかしてきた。
そう。私は双翼揃った輝きに見とれてしまったのだ。この瞬間彼女たちと大事な約束を掛けた試合中ということも頭から飛んでいた。そしてそうなれば必然
「ぐっはぁ!」
私の胸にガングニールが突き刺さり、天羽々斬に両断されたのであった。
まあ、もちろんイメージでしか無いのだが、それほどの迫力があった。そしてそれほどの一撃を受けたのだ相応の痛みが襲ってくる。
「いったー!」
「どうだ!アタシたちの勝ちだ!」
そう二人の勝ちで私の負けだ。
あの後、模擬戦の後始末をして別室に場所を移して私達は対面する。しかしどうして司令と慎次くんもまだいるのだろうか。まあいいけど
「さて、約束は守ってもらうからな~、どうせ姐さんは話してくれないだろうから、頼むぜダンナ」
「いやいいよ。私から話すよ。あそこまでの本気をぶつけられたんだ。そうしないと申し訳ない。」
私の意見を180°ひっくり返した態度に周りの驚きがよく分かる。まあいいじゃないか。今の私は気分がいいんだ。
「さて、申し訳ないけど原因に関しては話せない。だけど今の私の心情をすべて話すからそれで勘弁して欲しい」
え~、だとか汚いぞ、だとか色々回りから飛んでくるけど気にしない。
「まあ、ちゃんと話すから許してね?」
それは本心だ。これは負けたからとかではなく、私が話したいのだ。
「まず、今私は色々あって悩んでるの。今までの自分の選択、行いは正しかったのか、そして今の私の立場は本当に自分が目指しているものと一致しているんか。それの答えが出ずに御存知の通りの荒れ方をしていた訳。今までは自分で決めたことは自分で責任を持つ!て息巻いていたんだけど、いざ自分のしたことの結果を見せつけられて決意すら崩れちゃったの。私は余計なことしかしてないんじゃないか。何もしないほうがいんじゃないか。いやもはや私がいることが既に悪なんじゃないかって。それでちょっと個人的な事情もあって誰にも相談できなく気分が落ち込んでたって訳」
とりあえず、今の自分の気持ちを整理もせずに並べていく。案外話しているうちに客観視もできたりだけど、改めて見るとただただ思い込みで落ち込んで回りに迷惑かけるってダメダメね。
リアクションが無いんで周りを見渡すと奏ちゃんと翼ちゃんは泣きそうになってるし、男組二人は葬式のような表情をしてるし、何があったのやら。話しかけようとすると先に向こうから予想外の言葉が飛んできた。
「ゴメンな、そんなに辛いってのにアタシたちなんにも気づけなくて……」
「ごうめんなさい。私達が頼りないばっかりに」
「そこまで君を追い込んでしまっていたのか……」
三人とも私に対する申し訳無さが全開だし、慎次くんも発言こそしてないけど同じようなこと考えてるのは表情を見れば分かる。
「いやいや、私も相談せずにウジウジしてたのが悪いし。そもそも最初から仲間を頼って相談してればよかったわね」
そこまで言った瞬間奏ちゃんと翼ちゃんがすごい勢いで顔を上げるそこには先程までの暗い感情がなくなっている。
「姐さん。今私達を仲間って……」
「言ったわよ?最初から頼りになる仲間に相談したほうが良かったと……
今度は私の話が終わる前に赤と青の残像が私の胸に飛び込んできた。……やめて、まださっきの痛み引いてないから…
「そうだよアタシたちをもっと頼ってくれよ!今までもらいっぱなしでなんにも返せてないんだから!」
「私達立浪さんのことが大好きんなんです。力になりたいんです!」
どこがそんな琴線に触れたのか、いつもと全く違う反応が帰ってくる。ほとんど泣いているような二人から話しを聞くことを一旦諦めて目線で司令に答えを求める。
「いいか、今日二人の態度が変わる直前の発言を思い出してみろ」
必死に思い変えるけど全然わからないので両手を上げて白旗を上げる。司令はため息を付きながらやっと回答をくれた。
「紫香くん、君は二人のことを子供と言っていたんだ。二人からすればお前たちは庇護の対象であり、ともに戦う仲間ではないと受け取ってもおかしくないだろう」
そこまで聞いて私の心の中で何かがストンと落ち、ピースがきれいに嵌った。
そうか、私は勝手に未来の可能性を知っているからと、自分が守らなきゃ、と勝手に思い込んでいたのだろう。彼女たちは私が手を差し伸ばして先導しなければ行けない存在ではないしそれが最善かもわからないと悩んでいた所のはずなのに。私がすべきは前ではなく肩を並べて横に立ち、協力して困難に立ち向かうことだったはずだ。
そこまで分かって私は改で未だに胸の中にいる二人を抱きしめる。
「ゴメンね?そうだよね私達は仲間だもんね。一緒に協力して歩いていかないといけないもんね」
そうして私達三人は落ち着くまでそのままお互いを確かめ合っていた。
いろいろ落ち着いて、司令と慎次くんは仕事に戻り残された私達三人は休憩スペースで飲み物を飲みながら談笑していた。
「しっかし、姐さんのせいでせっかくの今日のデートが台無しだ。翼と色々考えてたのに」
色々吐き出してスッキリしたのかいつも様子で口を尖らせながら私を攻めてくる。
「そうね、緒川さんにも無理を言って日程合わしてもらったのに」
やめて翼ちゃん!その無意識の言葉の槍は致命傷だから!
「私が言うのもあれだけど、もう一回改めてやろうよ、慎次くんに言えばいつでも行けるって」
私達可憐な三人衆のために犠牲になってくれ慎次くん……
「そうだな、もう一回計画してやればいいんだ、チャンスなんてすぐ来るさ」
そう、生きてる限りチャンスは何回だって有るんだ。
「しかし、今日の計画では最後三人で奏での家でお泊りの予定だったのに残念ね」
なに、それは聴き逃がせないぞ。今をときめくアーティスト二人と女子会とかテンション上がらないわけがない。
「それだけでもやりましょう!女子会!女子会やってみたかったんだ」
「女子?この場に女子は二人だけじゃない?……痛い!姐さん痛い!胸がもげる!」
流石にその年齢煽りは聞き流せないので、別の恨みも込めてその自己主張が激しすぎる胸を捻っておく。くっそ、本当にでかくて柔らかいな……
「ま、まあ、なら善は急げというし早速行きましょう!」
翼ちゃんもちょっとテンション上がってる?まあ、あんまりこういうことに慣れてなさそうな感じはあるか
「まあ、じゃあ行きましょうか。女子会には甘いものが必要だし色々買って向かいましょうか、今回は迷惑かけたし私が出すわ」
「やった!おごりだおごり、ダッツのアイス買い込もうぜ」
「私は晩の九時以降は……、いやたまにはいいわよね!」
そうだそうだ!私のアルコールかニコチンにしかならない給料で二人が笑顔になるならお姉さんいくらでも出しちゃうぞー!
さあ、楽しもう。私の知っていることだけじゃないんだ、むしろこのなにもない時を全力で生きないと、そうすればどんな困難だって手をつないで飛び越えていけるはず。
お泊り女子会だって立派なお出かけだ、そこで計画を立てて今度こそ楽しんでやろう!
改めて主人公の二人への愛が重すぎるし、自己評価低すぎてダウナーに勝手に落ちていくし。ドウシテコウナッタ