アイドルマスター 最高への挑戦   作:ヒロ@美穂担当P

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GT-Rで走る意味。
それは速さを求めている内に生まれた。なら答えは1つ。


Memory09 意味

「美世さんのR34って今もあるのかな?」

「わかんない。そもそも海外に持っていくワケにはいかないでしょ」

「それはそうだけど……小日向さんは日本に何回か帰ってきた時にFDに乗ってたんでしょ?」

「それは聞いた。けど美世さんは行ってから一度も帰ってきてないハズだし……。たぶん小日向さんのFDと一緒に何処かに預けられていたんじゃない?」

 

 

 

 

伝説を見てきた美世さんが操った紅いR34。あたしも一度だけ乗ったけどあの車はバトルする事が最高の生きがい、もしR34が意志を持っているのならそう言うと思う。

あのバトル(走り)はGT-Rという車の存在意義を身をもって理解できる。

 

 

 

 

レースで勝つために生まれた車、GT-R。その名前は「勝利」を背負っていて。

相手がどんな車であろうと「勝利」を狙う。それは同じGT-Rでも。

昔のレースで「GT-Rの敵はGT-Rだけ」と言われていたそうだけど実際そうだった。

 

 

 

 

 

あたしのGT-Rと美世さんのGT-R。

世代を越えて争ったGT-R。「怪物」と「伝説」。見据えるのは「最速」ただそれだけ。

 

 

 

 

速さにあたしは憧れたんだ。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

美世さんとのバトルが決まった翌日。

数日後のバトルを前にあたしはというと……。

 

 

 

 

 

「はあああ……」

……深いため息をついていた。希抜きでのバトルは初めて。車の不調をズバズバ言える希がいなければまともな走りができない。

しかも相手はあの美世さん。あの紅いR34を一人で仕上げたであろう彼女の前に希がいたとしてもまず勝負になるのだろうか。

この時点でもうあたしにはネガな要素だらけ。

 

 

 

 

「あたしだけでやらなきゃいけないのは分かってるけどさあ……」

しかし変わらない現実にいつまでも打ちのめされてるワケにはいかない。

あたしはある事をするためにガレージからGT-Rを出して朝早くから街へ向かった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後の夕方。10月とはいえ少し冷え込んできている。

明日の夜は美世さんとのバトルが待っている。あたしは家の近くの公園で黄昏てる。

 

 

 

(明日の走りに……あたしは何を望んでいるんだ?)

(走りにマジになって……失った物を取り戻せるワケでもないのに)

(ガソリン代にオイル代……タイヤ代……)

(そして希……。車に取り憑かれてこうなったあたし)

(……きっと真はわかっていたんだ。こうなるかもしれなくて……真一さんの気持ちがわかってたから降りる覚悟を決められたんだ)

 

 

 

 

「そんな顔してどうしたんだい?」

「真……」

声の主は真。それと。

 

 

「ンなツラすんなよ。生意気でクソ度胸で突っ走るお前はどこ行った?」

「……あんたに慰められるなんて思わなかった」

星名夢斗に慰めになっているのかも怪しい一言を浴びせられたあたしはイラッとして立ち上がる。

「お、それでお前だろ?」

「余計なお世話だし」

 

 

 

 

 

「変……身!!……さぁ、振り切るぜっ!!」

「さぁ、地獄を楽しみな!!……うーん、勇気がいるな」

あたしは仮面ライダーごっこを始めた夢斗と346プロのアイドルだという南条光という少女を見ながら真に心境を打ち明ける。

 

 

「真はスープラどうしたの?」

「今はまだ家にある。処分しようにも廃車にする際の手続きとかそういうのがめんどくさくてね……。まあ、その内に手放すかな」

「明日翔はどうしてるの?明日バトルするんでしょ?」

「うん。あたしだけでやれるかなって」

初めて真にあたしの本音をぶつけた。真は家庭の環境もあって「走り」の知識量の多さに恵まれている。けど、あたしはただ走るのが上手いだけで理論に裏付けされた速さとかはないだろう。あたしの親父が車嫌いであたしを追い出して……その後に自分だけの力で見よう見まねで身につけた技術。はっきり言って限界がある。

 

 

「明日翔は速いよ。だって……あの日に走れたんだから」

「速い……か。でもそれが『明日に繋がっているか』そう考えたら無意味に見えてしまいそうで」

 

 

走り屋って何だろう。自分の欲求のままに法定速度よりもっと速いスピードで公道をぶっ飛ばす、夜な夜な峠でドリフトする、仲間達と走る……。走り屋のやる事はプラスになるような事は無いはずなんだ。

 

 

「でも……そこから夢にする事だってできる。ボクの父さんや美世さんだって『走り屋』がルーツじゃないか」

「自分の気持ち次第なんだよ、きっと。夢を叶えた人達はみんな本当にソレが好きで好きで仕方ないって言えるくらいに気持ちが強いんだよ」

「気持ちの強さ……」

気持ちの強さ。あたしは言うだけなら度胸は誰にも負けないって今まで思っていた。でも、その一方で気持ちの弱さが顔を覗かせるのも知っている。

もしも、あたしが実家を追い出される時に粘って親父を説得すれば状況が変わった可能性もなくは無かったハズだ。でもあたしは弱かった。一方的に突き放されただけだった。

こう言い切る事のできる真の強さが今のあたしには眩しかった。

 

 

「真はアイドルになって心が折れそうになった事はないの?」

あたしは無意識の内に呟いていた。

「心が折れそうになった事はもちろんあるよ。今は慣れたけど765プロに入社した直後は辛い事だらけだった」

「見た目が男っぽいって理由だけで偏見を持たれたり……ボクが望んだフリフリの衣装で生放送に出たらドン引きされて雪歩にも『そんなの誰も望んでない』っても言われた事あるし。ボクの考えるアイドル像とは違う方向に進んでいく事が怖かったんだよ」

 

 

ああ、やっぱり真だって1人の女の子だ。普通に悩む。……内容までは普通ではないけども。

 

 

「でも、場数を踏んだらいつの間にか悩む事が少なくなったんだ。その時は傷ついても『だったら状況を良くするためにどうしたらいい?』って考えれば悩みが小さく見えて」

「だから明日翔だって今悩んでいてもそれはその時だけできっといい事が後で待っているさ」

アイドルらしい笑顔であたしを見る真。真だってあたしと同じような思いをしたんだと知ったらあたしもなんだか気持ちが楽になってきた。

 

 

「そーやって話せるのはいい事だろ?」

「話に入ってこないで」

夢斗が会話に割り込んできたのでちょっとムカッとしたが。

「悩みを誰かに話せるだけ恵まれてると思った方がイイぜ。悩みを周りに伝えられなくて自分だけで抱え込む事程とにかく死にたくなるような状況以外に辛い事を俺は知らねえ。ついさっきまでのお前みたいな事を俺は身をもって体験してんだよ」

「何それ……」

「お前は大学生活に馴染めてるか?んで自分の事を認識してもらえてるか?」

「『認識してもらえない』それ程悲しくて辛いモン以上の地獄を体験してないだけお前は幸せなんだ」

そう話す夢斗の顔に見えた悲しみと同じ物をあたしはつい最近見たばかり。出発する前の希だ。

希は知り合いがいない海外に自分だけで向かった。心細かっただろう。

今はきっとクラスに馴染めてると思うけど、最初は不安だったに違いない。

夢斗は何もかもを見通しているようだ。「根拠」を持った話し方が嘘じゃないとわかるまで時間はかからなかったから。

 

 

 

「スッキリしたトコで美世さんからメッセージだ。見ろ」

夢斗から渡されたスマホの画面に並ぶ文面。

 

 

 

「明日夜11時にC3の新倉PAで集合ね。ちゃんと準備してきて最高の走りをしよう。明日の走りがお互いにいい物に繋がる事を願って」

 

 

 

「美世さんも『同じ』かな?」

あたしと同じく走りに意味を見つけるためにあたしとの走りを望んだ、きっとそうだと思う。

美世さんがバトルをしたいって言うからには美世さんは本気でやるだろう。身体の怪我も気にしてないかもしれない。というよりもう怪我治ってる?

 

 

 

「ま、走るの俺達じゃねえしこんな事しか言えないが……せいぜい頑張ってこい」

「言われなくても、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

そして迎えた当日の夜。

 

 

 

 

 

エンジンを切ってあるGT-Rの車内は静か。集中力を高めていたあたしの前に爆音と共に現れた紅く輝くR34GT-R。オーラを強く感じる圧倒的な存在感がある。

 

 

 

GT-Rから降りてきた美世さんは開口一番に。

「あれ?色変わった?」

「ええ。あの色は『2人』で背負う物だから。コレは今のあたしを意味してます」

そう言ったあたしの隣にあるGT-Rはあの派手なチアフルピンクメタリック(ピンク色)ではなくシンプルなレッド(赤色)に塗り替えられていた。あたし1人、自分だけで塗り替えたんだ。

 

 

 

 

「んじゃ……早速。流れを見ながら5号からC1へ。そこからレイブリを渡って辰巳へ」

「了解です。あたし……全力でやります!」

「その心意気よし。悔いのないようにやろう、明日翔ちゃん」

 

 

 

 

 

2台のGT-Rがゆっくりと動き出す。似た色をしているが車の性格は正反対。

あたしのGT-Rは圧倒的な馬力(パワー)が武器。対して美世さんのGT-Rはどんな状況でも確実に速さを出す安定感が武器。

美世さんのGT-Rに乗った時に感じた完璧とも言えるであろう紅のGT-Rの完成度。もし希が乗っていたらどんな感想を残したのだろう。

そしてドライバー(美世さん)はレーシングドライバーでもあり、「迅帝」を打ち破って「伝説」となった超一流の走り屋でもある。

これだけの相手と走れる事だけでも今のあたしには充分すぎる程に意味がある。

 

 

 

でも、それは表面だけの話。深い意味を見つけるには走りで見つけるしかない。

だから今夜、あたし達は戦う。走ってあたし達に残る物は何か。それを確かめるために。

 

 

 

 

 

 

 

あたしにとって大きなターニングポイントになる今夜の走り。

そんな事を知らないあたしとGT-Rは長い夜の闇に飛び込んでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いよいよ走り出した2人。
その走りで全てが変わる。





《次回予告》
いよいよ始まった美世さんとの走り。
希なしで走るあたしを試すように走る紅いR34GT-Rにあたしは大ピンチ。
追い詰められたあたしに残った最後の手段はGT-Rの終わりを告げる。
挑戦で得た物と失った物は……?
「あたしも本気で行かせて貰うよっ!だから……最後までお願いね、R!!」
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