そして明かされる明日翔達のGT-Rの秘密。
あの人は今も元気だと希には言ったけど実際はどうなんだろう。
あたしもよくは知らない。テレビなんて最近ロクに見てない。
レーサーになってからテレビ見てないし。
まあ、元気だと思う。無責任だなー……あたし。
あたしの次の記憶はあの人……菊地真に会った時の事だ。
「希ちゃん〜」
「どうしたの、彩ちゃん」
希は……丸山彩ちゃんとなんか話してる。
女子力高い希はなにかと頼られる事が多い。たまに男子がアレな事を聞くけどあたしが止めないとそういう女の子の秘密とかも全部言ってしまう。
「91だよ?」と自身のバストサイズを言ってしまった時には大騒ぎになったものだ。
あたしも胸はあるって思ってるけど希には勝てない。80あればいいと思ってたあたしは90以上ある彼女に負けました。
ちなみに言っておくとあたしは当時83くらいだった。
そこ、ヘンな想像しない。というかあたしはヘンタイじゃないからね?
「ダルい」
あたしはバイト疲れでぐったりしてた。
「しっかり休もう?」
「希〜!!あたしも必死にやらないと生きてけないのっ!」
あたしは休む暇がない。何故かって?車のためだ。
「しかし明日翔ってすごいよね。自分の力だけでGT-Rを買うってさ」
「あたしだっていろいろあるんだよ……。ぶっちゃけ車のせいでこうなった」
あたしの実家は実はけっこーな大金持ち。あたしはそこの一人娘だった。
だからあたしの世話は周りの人がやってくれた。
だからあたしはフツーにできることができない。あたしの身分が女子力の無さに直結してるみたいな物。
話を戻すとあたしはどうやってGT-Rを買ったかというと自分で働いてだ。普通の人から見たらそれが当たり前なんだけど。
あたしは実はGT-Rの前にスカイラインに乗っていた。BCNR33って言う型のスカイライン時代のGT-R。
軽い事故を起こした赤いのを格安で買って。ソレを買うのに親の金を勝手に使って家を追い出されて。自業自得ってやつ。
しかも無免。家を追い出された事を気にせずあたしはRを乗り回していた。それが1年前。
Rにガタが来て車を乗り換える事になったけどなかなか決まらなかった。
んでこれだ!となったのがR35。今度はちゃんと自分で働いて買った。とはいえ新車ではなく中古車だけどね。
過走行気味の赤いGT-Rを買った……のはよかったけど維持費が高い。税金だってある。
だからあたしは働かないと終わる。
「あたしのRのエンジンを使った車に乗ってんのはどこの誰よ」
「私だよ?」
「知ってるし!」
希は自分の車を持ってる。意外と知られてない事だ。
あたしのGT-Rに乗ってるイメージが強いらしく、希が車を持ってると知って驚く人が多い。
彼女はシルビアに乗ってる。最後のモデルね。
彼女は某カーアクション映画で登場したモナリザ?って言われてたのに似たシルビアに乗ってる。
シルビアは元はボディだけだったらしい。彼女の実家の工場に持ってこられたそうで彼女が17歳の頃から約1年かけて形にしたそうだ。
肝心のエンジンがないと相談された時はびっくりしたよ。その時にR35を買おうと思ってた頃だったから。
あたしはR33を廃車にするつもりだったけど希にR33を引き取られた。
そしたらシルビアにR33のエンジンが載ってるんだもん。
希が「使える物はシルビアに使うね」と言ってたがまさかあれくらいやられるとは。
足回りとかも全部使われて残った物はRのボディと外装だけだったし。
でも希があまり乗らないんだよね。シルビアに。
だいたいあたしのRに乗る。彼女が自分のシルビアに乗るのはちょっとした買い物くらいなんだとか。
「んであたしのRは赤色だったのになんでピンク色になったんですかねえ」
「趣味♪」
あたしは機械に弱く、当然チューニングもできない。
希にチューニングを依頼したけどね、その際に赤色だったあたしのRがピンク色になって帰ってきたんだよね。まさか趣味だったとは。
そんなワケでそもそもGT-Rって言うクルマで注目される。しかも派手なピンク色。
街中を走ったらイヤでも注目を浴びる。最初こそ恥ずかしかったけど慣れてしまって今はなんとも思わなくなった。
「あれどんなピンク色なの?」
「チアフルピンクメタリック。確かスズキのスペーシアの色だよ」
「軽自動車じゃなかったっけ?」
「軽自動車だよ?カワイイって思って」
……そんな感じで目立つGT-Rに乗るのがあたし。
夜、あたし達は再び首都高へ。
その日のコースはC1エリア外回りだった。
「ブレーキ踏んだ感触が気になるんだけど……」
「冷却追いついてないのかなー……。今はエンドレスのキャリパーにしてたけど」
「前はなんだっけか?」
「ブレンボだったけど初期制動がダメだーって明日翔が言って変えたんだよ」
「うーん……走らせ方なのかな」
GT-Rは非常に
バックミラーに光が入り込み、あたしは視線をバックミラーに移す。
「スープラ……」
あたしは後ろに80スープラがいる事に気づいた。
「ピンク色かー。ああいう車に乗ってみたいよ」
ボクは前のGT-Rのテールを見つめながら言った。
ピンク色って女の子の好きな色だからね。
GT-Rにああいうピンク色も悪くないんじゃないかって思うんだ。
「やるなら……っ!」
あたしはRを加速させる。すると後ろのスープラも追いかけてきた。
「希、ブースト抑えて」
「1.4でいい?」
「そんくらいあればいいっ」
ブースト圧を下げる。普段は1.5kgにセットしているが、C1エリアのようなコーナーが多い所はパワーがあまり意味ない。寧ろコーナリングが重要になる。
「タイヤがタレてる」
「大丈夫?無理しないで」
「まっさか。諦めないよ」
あたしはバトルを続けた。タイヤくらい自分のテクでどうにかすればいい。
「上手いな……。そして車を丁寧に乗ってる」
ボクは前のGT-Rの動きに感心してた。
車にムリをさせない動き。これができるかと聞かれたら実際にできる人はあまりいない。
自分では気づかないけど周りから見たらはっきりと動きがわかる。
「速い!明日翔っ、インへ」
「わかってる!」
レーンチェンジしてコーナーを抜けていく。しかしそれでもスープラは離れない。
この後の区間はストレートがある。短いストレートだが引き離すのにもってこい。
「明日翔、また『アレ』やろうとしてるでしょ」
「……はい」
「それで壊れても私直さないよ」
「やっぱやんない」
秘密兵器を使おうとしたが希に警告されてやめる。しかし『アレ』を使えればスープラをチギれる。
「走らせ方でどうにかするんでしょ?」
「そうだよっ!!」
あたしは根性で攻め込んでいく。
「うっ!?」
前のGT-Rのペースが上がった。タイヤはタレてる。ブレーキもキてるのに何故攻めれるんだ。
「でも……こっちだって負けれない!」
ボクはスープラのアクセルを踏み抜く。
「明日翔、抑えて!水温がっ!」
「くっ!……でもまだやれる!」
あたしは無我夢中で運転していた。
ピンチから逆転するための切り札を使うために。
「……ごめん、やっぱやる」
「えっ!?」
「お願い」
「……もーっ!」
希がブーストコントローラーを操作。モニターには「1.7」と表示された。これがこのRの切り札になる。
「!?」
嘘だ。さらに加速するのか……!?
(絶対引かない)
あたしはその考え以外頭になかった。
Rの切り札。フルブースト1.7kgの時のRの最大出力は……。
「なんだこれ……!?」
GT-Rのテールが離れる。それも先程までとは比較にもならない速度で。
(なんなんだこれっ!?)
「推定」1000馬力。
それがあたしのRのフルパワー。
気がつくとスープラは戦意喪失したらしくスピードを落としていた。
「水温やばい……」
「明日翔のせいだよ」
「はい」
怒られた。それ程までの大出力を持つR。
普段セットしてるブースト圧は1.5kg。それでも750馬力を発揮する。
遡ると希があたしのRをチューンした時になる。
希が組んだ
排気量を4リッターに拡大したと言うVR38はとんでもない結果を示した。
ブースト1.5kgで750馬力。希が言うRが耐えれる最大ブーストの1.7kgにセットして行ったテストで事件は起きた。
800馬力を計測したのを最後に測定不能になってしまったのだ。
燃料の消費量から計算した理論値で「『推定』で1000馬力」という結果になったのだ。
しかもこれはあくまで推定値。実際はこれよりも出ている事になる。
過剰すぎるパワー。
当然負担は大きく、ボディなど補強を入れられる所は全て補強された。
ロールケージはクロモリ?って言う素材で作られた。希が言うにはやたら硬くて重い鉄だそう。
軽量化もしたんだけどね。シートを取ったりしたんだけどボディを補強した分結局重くなった。
希によると
希曰く「軽くする事はできるけどこれだけのパワーだと変に軽くすると危ない」だそうだ。
そりゃそうだ。彼女もこんだけの大パワー車を作るのは初めてだった。試行錯誤しながら手探りで作り上げた。彼女なりの譲れない物があったんだと思う。
「明日翔、スープラが降りる」
スープラが降りるらしい。あたし達も降りることにした。これ以上走る事は不可能と判断したから。
下道の駐車場であたし達はお互いの顔を合わせた。
だが、あたし達は出てきた人に驚いた。
「えっ!?えええ!?」
「真ちゃんだー!」
「あはは……」
スープラから降りてきたのは今や知らぬ人が珍しいくらいであろう有名人。
765プロダクションのアイドルである菊地真だった。
「真ちゃんはこのスープラを自分で?」
「うん。安いヤツだけどね」
「かなり手が入ってるよね」
「実測600馬力あるかな……。もう少しパワーは上げられるんだけど」
ここで希が聞いた。
「そのスープラは『誰』がチューンを?」
真からの返答。
「父さんが。父さんも昔湾岸を走ってたって聞いてる」
あたしは真の父である菊地真一の名を知っていた。
彼はスーパーGTで長年活躍している。そしてあたしの父と関係がある。昔は彼とあたしの父は親友だったそうだ。でもある事があって縁は自然消滅してしまった。その話はもうちょっと後に。
「お父さんが……」
「そうだよ。お父さんに色々叩き込まれてね(笑)」
「クルマも乗れてアイドルかー。真ちゃんすごいや」
「ありがとう……。ボクとしてはもうちょい別の事で褒められたいや」
……希は真の大ファン。彼女のライブの時の希のテンションは高く、その時のテンションを初めて見た人はみんな驚く。普段とのギャップが激しいんだもん。
そんで今自分の目の前に本人がいる。希にとって本当に嬉しい事だろうし。
「んじゃ、ボクはこれで。また走ろう」
「真ちゃんばいばーい」
「今度はゆっくりと走りたいな」
あたし達は真と別れて帰った。
後日、あたしのRの修理をやった希に説教されたけど。
「懐かしいよね。あん時の希はホントキラキラしてた」
「だってー……。嬉しかったもん」
希の気持ちはよくわかる。
あたしだったら有名ドライバーに会えた時くらい嬉しいし。
例えば……岩崎選手とか。今は現役を退いてチームの監督をやってるけど。
「真ちゃんタレントとしても上手だよね。場を盛り上げるのがすごく上手」
「さすが元アイドル」
「真ちゃんは今何乗ってんのかな?」
「さあ……。さすがに『あの』スープラは乗ってないだろうし」
「だよね……。ボディが歪みきっててもう直せないって言われてたもんね」
「……まさかね」
あたしの頭にふとイメージが浮かぶ。妙にリアルなイメージ。それが現実になるかはまだわからない。
「長いなー、こんなゆっくり走ってたら日付変わる」
「大丈夫だよ、全然余裕」
法定速度で走るのはものすごく久しぶり。ゆっくり過ぎて退屈になってくる。それだけスピードを出す事が多かったワケだけど。
「さて……いるよね。あの自由人は」
「……まだダメなの?」
「だってー……。付き合うとろくなことが無い」
「遥さんがいるから大丈夫だと思うよ?」
「遥さんはすごいなー。あの自由人とよくいれるなって。あたしはゴメン」
あたし達のRはコーナーを曲がる。
次に思い出す人物は誰にも止められない自由人で天才ドライバーだ。
明日翔達と同じ大学に通っている今井リサや丸山彩。
「ガルパ」で初登場時に17歳だったバンドリの人物達は全員同じ大学に通ってる設定です。そのため今回登場しなかった人物達もクラスは違えど在籍してます。
《次回予告》
あたし達はGT-Rの調整を終えた帰りに3台のすごい速い車達にぶち抜かれる。
ショックを受けたあたしはある男と衝撃の出会いをする。
「あのな……どっちがいいんだ?」
次回は多少残酷な表現あり。読む際は注意。