アイドルマスター 最高への挑戦   作:ヒロ@美穂担当P

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首都高での出会いは必然的にバトルが待っている。
真の頼みとは……?


Memory06 怪物

「速かったよね……真ちゃんのスープラ」

「うん。あたし達のGT-Rと比べても……ほとんど大きな差がないくらいに。だからもう走れないってなった時の真の悲しみが今でこそわかる」

「明日翔のGT-Rも壊れちゃったもんね」

「……うん」

「GT-Rはどうしてるの?」

「あたしの実家に置いてある。親父をどうにか説得して。真一さんがいなかったらあたしはレーサーにもなれてないしさ」

「明日翔は真一さんにお世話になってるね」

「まーね。真もだけど」

 

 

 

 

 

 

 

真のスープラは速かった。

見かけだけでは終わらなかった本物のマシン。それだけにもう走れなくなったのは残念だと思う。

 

 

 

 

 

そんな怪物(モンスター)ができるまでの過程にあたし達も関わり……そして戦った。

しかし今思うと最初から真を首都高から降りさせるための事だったんだろう。

そうでも思わなければ意図的にスープラを「踏めない」車にするわけがない。

 

 

 

 

 

 

あの怪物とこのGT-Rが戦ったら確実にこのGT-Rは負けるだろう。チューンドカーを知り尽くした者達の手で組み上げられたスープラは現在の首都高でも通用するレベルの車だから。

次に浮かんだのはそんな怪物が生まれるまでの記憶。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

真一さんの元を訪れて5日が経った。

希に買い物を頼まれたのでスーパーで食材を買ったあたしはある車が載せられた積載車を発見する。

 

 

 

「真のスープラ……なんで?」

黒い80スープラが荷台に載っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがてその積載車の運転手であろう人が戻ってきた。あたしはスープラの事が気になり、積載車を追う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ、ヤマモトスピードじゃん」

スープラを載せた積載車を追いかけてたどり着いたのはヤマモトスピード。RGOと並びチューニング業界を古くから引っ張ってきたチューニング業界の大御所だ。

ヤマモトスピードの代表は圭介さんよりも前からGT-Rといった日産系の車のチューンを行ってきた。ヤマモトスピードの代表もCRS(圭介さんのトコ)を知っているそうで前に圭介さんが代表の事を話してくれた。

 

 

 

 

 

 

あたしは気になったが希からの電話で慌てて本来の目的を思い出した。希の家に帰った後に希に怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

希に怒られた後、あたしは電話をかける。

相手は真だ。スープラをどうする気なのかを聞くために。

 

 

 

 

 

 

「もしもし」

「明日翔?こんな時間にどうしたの?」

真の声に混じって誰かが怒ってる声が聞こえる。そしてガッシャーンって音も。

 

 

 

「スープラをなにかするつもりでしょ」

「まー……うん。この間父さんの話を聞いてちょっとやってみたい事があってね。父さんにも内緒にしているんだ」

この時あたしはそれダメじゃね?と思った。だって……。

 

 

 

 

 

「ヤマモトスピードの代表が真一さんの仲間って事は真の事も知ってるんじゃ……」

「……あっ」

真は忘れていた。真一さんの仲間であるヤマモトスピードの代表は真一さんにチューニングの事を話すかもしれないという事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……しまったあああああああ」

「真、うるさい!」

「真ちゃんどうしたの!?」

だんだん電話の向こうの騒ぎが大きくなり、電話はブツっと切られてしまった。

「えー……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。あたしは希に真のスープラの事を話したけど……。

 

 

 

 

 

 

 

「うん、知ってるよ。山本さんが教えてくれたんだ」

なんと希はもう既に知っていた。しかもどうやらスープラのチューンに関わっているらしい。

 

 

 

 

「私は足のセッティングを真ちゃんに頼まれてるんだ。でも……私が仕上げたとしても確認するのは真ちゃんだから」

「もし私のミスで真ちゃんに何かあったら怖くて」

希は自信なさげ。憧れの人物に頼まれてるだけあって緊張感に包まれた希の顔。いつものおっとりした感じがナイ。

 

 

 

 

 

「完成してから渡すんでしょ、希」

「えっ、そうだけども……」

「なら、あたしが試す」

「そーいう怪物はあたしの得意分野だから、なんてね」

普段から1000馬力を発揮するGT-Rに乗ってるからね。

「それにGT-R以外の車を知るチャンスだし」

あたしの狙いがコレ。GT-Rしか知らないあたしにとって他の車に触るチャンスだと思った。ちょっとした事からでも車を知ろうと。

 

 

 

 

 

 

「真ちゃんのように走れるのは明日翔だけだもんね」

この一言で事実上あたしも真のスープラの制作に関われるようになった。

スープラの制作は急ピッチで進む。そんな中であたしは様々な事を学んだ。ボディワークの方法に強いボディの作り方、足回りのセットアップ、ECUのセッティングに……。約1ヶ月があっという間に過ぎた。

その頃には夏が終わり秋が来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュルルルルルッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボォゥオオオオオオオオオッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スープラの完成だ」

「……やった!」

ヤマモトスピードの代表が呟く。あたしはそれに続くように喜びを口にする。

MAX800馬力をマークする2JZ(エンジン)を心臓とするスープラはその分野のプロ達が手がけた。スープラの総合性能は申し分ないものだった。しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも……。本人がここにいない」

ここにいるべき真は今日本にいない。仕事でニューヨークの方に行っているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、それが真の答えか」

背後からの声。

 

 

 

 

 

 

「真一さん……!?」

あたしの後ろには真一さんが立っていた。なんで、と思ったが。

「……山本さん」

「ハハ、やっぱりバレるか」

山本さんが真一さんに裏でこっそり言っていてもおかしくなかったからだ。

「俺のスープラが可愛く見える、このバケモノ」

「俺はああ言ったが……やはり俺の娘だ。言われてもやると決めたら絶対やる。頑固だ」

「菊地の血はしっかりと受け継がれたな」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜひ君の走りを見てみたいな。あのGT-Rは君しか扱えないそうだが」

「みたいです。希にもそんな風に言われて(笑)」

「乗り手を選ぶ車ってワケか……。面白いじゃないか」

真一さんは不敵な笑みを浮かべていた。数多くの走り屋達の中で初めて公道300kmを達成した男はあたしが乗る怪物(R)ですら躊躇なくアクセルを踏み抜きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「真の代わりに運転するんだったな?」

「はい。……言っときますけどナメないでくださいよ。あたしは本気で行くので」

「それは好都合だ。……君がレーサーとしての素質があるか見極めるだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後11時。

あたしが運転する黒いスープラは横羽線を上っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしの隣には希ではなく真一さんが座る。

希はあたし達が帰ってきた後にあたしの感想を聞いて足回りを再び調整する。

真一さんは何も言わずにあたしの運転を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流れが悪くない。トバすにはいいな……」

「真一さんも昔の血が騒いでるんですか?」

「だな(笑)。真にはああ言ったが俺も立派なバカだな」

どこか無邪気な感じな真一さん。真一さんは本当に走る事が好きなんだなって。

 

 

 

 

 

 

 

「如月はどうしている?」

不意にあたしの親父の事を聞かれる。

「……わからないです。あたしはウチを追い出されてからずっと実家の事に興味がなくて」

「まー……勝手ですよね、あたし。良くも悪くも相手を気にしないっていうか」

「……そうか。如月はああ見えて結構人を心配する奴なんだ。だから俺がレーサーになるって言った時も……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度はあたしが聞く。

「真ってなんで車が好きなんですか?希から可愛い物がスキって聞きましたけど。あたしはカッコいいイケメン系女子って思ってましたけど」

 

 

 

 

あたしが持つ真のイメージはそんな感じだ。

ちなみに希が真に憧れてる理由は「カッコよくて大勢の人に自分を見せつけられるから」。

希はクラスで一番可愛い女子と話題が出れば必ず名前が挙がるくらいには人気がある。

 

 

しかし希は実はああ見えて結構繊細な性格。普段おっとりしてるけど周りの目を気にしやすい。

幼稚園の頃に希の実家が自動車整備工場である事からある男の子に「油まみれのばっちい女」みたいな事を言われた事があり、本人はその場では平然としていた。

だがその後園長先生に泣きながらその事を話していた。

それを目撃したあたしはその男の子に報復したんだよね。

その時はあたしは年中組だった。男の子は年長組。

いきなり年中組から報復されるとは思ってなかっただろう男の子はあたしにボコボコにされた後に希に謝りに行っていた。

 

 

 

 

 

たぶんその時の事があってか希は周りの目を気にして行動してる感じだった。今は……そんな気はしないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「真は小さい頃から俺の影響を受けて育った。空手を習わせたりな……。真は黒帯持ちだ」

「空手……?ああー、やってた気がする」

あるテレビ番組で真が空手の型を披露していた覚えがある。

あとこれはネットにあったけどどっかの石油王のボディーガード複数人を一人で相手にした……らしい。本当かどうか知らないけど。

 

 

 

 

 

 

「俺がイベントでカートを運転する事になってな。それを見ていた真は興味深そうに見てたよ。んで実際に自分が運転してみたらよっぽど楽しかったんだろうな。もう1回やりたいって言われたよ」

「真に速く走る方法を教えたら吸収速度がすごいんだ、あっという間に基本をマスターした挙句自分で応用テクニックを作ってしまうんだ。負けたよ」

そう語る真一さんは嬉しそうな表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「横羽の路面はずっと荒れてるな……。ここは得意かい?」

「んー……苦手ではないですけど得意かと聞かれたらそうでも無いです」

「そうか……。真はC1が得意と言っていたが」

「……?何故?」

「真は首都高を走り始めた頃はC1で腕を磨いたそうだ。最高速よりも純粋にドラテクが重視されるテクニカルエリアのC1なら車の差も大きくなりにくい。例として挙げるなら200馬力のシビックが500馬力のGT-Rと互角(タメ)で走れるんだよ」

「真はそこでバトルの基本を自分の身体で覚えていった。そして首都高の走り方を」

「……真はC1だけなら自分が一番速いと思ったらしい。事実真のスープラの前に出れる走り屋はある時までいなかったそうだ」

「でも、それは本物の走りを見ていなかっただけだった。ある時バトルしたが……完敗した。その車が……」

「あたしのGT-R……」

「そうだ。真は自分が舞い上がっていた事に気付かされた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このスープラのチューンは君のGT-Rに対抗する為だろう。しかしこのレベルまで行ったら二度と引き返せなくなる」

「チューン前はギリギリ普段使いができた。でも今は戦う為だけに生きている車だ」

「そして失う物だけが増えていく。得る物なんて本当にちっぽけな物なんだよ。君もそれをわかっているはずだ」

「……もちろん」

こんな事をして得る物はただの自己満足にしか過ぎない。非現実的な事をしているスリルと背徳感。それだけのために人生を狂わせるような選択肢を取っていると同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度横羽を上ると前にはいかにも走り屋感があるインプレッサ(GVB)が。

 

 

 

 

 

「ちょうどいいな……。やれるか?」

「もちろん。このスープラならやれる」

あたしはインプをパッシング。するとインプはギアを落として加速していく。あたしもこれに追従していく。

 

 

 

 

 

 

あたしは羽田方面までペースを維持する。

先程まで結構な時間流していたがスープラは快調を維持している。

 

 

 

 

「行くなら勝島だな……」

真一さんが呟く。この先は緩めのコーナーが多くなる。ワンオフエアロを装備したスープラの独壇場となる。

時速300kmオーバーのスピードで安定して走れるだけのダウンフォースを発生させるエアロ。ならやれる。

 

 

 

 

 

 

あたしはステアリングに取り付けられているミサイルスイッチを押し込む。

するとスープラは先程までとは異質の加速を見せる。

 

 

 

 

インプのテール目掛けて前に前に出る。

加えてインプにプレッシャーを掛けるためにアウトからインへとラインを大きく変える。スープラはインプの懐に潜り込み並走する。

 

 

 

 

 

 

 

「スクランブルブーストってこんな感じなんですね……っ!」

真のスープラの奥の手「スクランブルブースト」。

ステアリングのスイッチを押している間は過給圧(ブースト)を2kgまで上げてMAX800馬力を絞り出す。

あたしのGT-Rとはまた違う方向で大パワーを発揮するスープラはスリップしたインプの前に出た。

インプも追い上げようと試みていたが流れが悪くなってからその行動は無意味となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたし達がインプの視界から消えた後。

「……本当にすごいクルマですよね、スープラって」

「そうだな……。だからこそ真が無事に帰ってこれる事を願ってる」

その一言であたしは我に返った。さっきまでスープラの性能の高さを感じてテンションが上がっていたがこのスープラはあたしのクルマじゃない。真のスープラなんだと。

そしてあたしの隣に座っているのは真の父である真一さん。昔に死にかける程の事故を経験した人。

 

 

 

 

 

 

 

 

娘が自分より早く死んではいけないんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

この後あたし達はスープラの調整のために再びスープラを希達に預ける。3日間の最終調整を経てスープラは本当の意味で完成した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが……スープラ」

あたしはスープラの本来の持ち主である真にスープラのキーを渡す。

キーを渡された真はキーをまじまじと見てからスープラを見る。

真は生まれ変わったスープラを前に何を感じたんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼むよ……スープラ」

真はそれだけ言ってスープラに乗り込む。キーを回してエンジンを掛け、何回かエンジンを煽ってみる。

本物のチューンドカーに生まれ変わったスープラはJZエンジン特有の高いエンジン音を轟かせる。

直列6気筒ならではの官能的なエンジン音は咆哮するかの如く。まるで狼の遠吠えのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日翔、ありがとう。希も……みんなも」

「こちらこそ。あたしはGT-R以外の車も知れたし……何よりも車作りの最前線に近づけた」

あたしの言っている車作りはチューンドカーの製作を意味している。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……父さん」

「わかってる。でもな……俺も心のどこかでこーいう事にまだ未練があるみたいだ。それがあって……俺も関わりたかった」

「ボクにはああ言ったクセに……」

「俺も結局バカだったよ。根っからのな」

会話の中でああ言ってるけども2人は親子だなって思った。だってそうでもなきゃあんな事は言えないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰った後、希が不意にこんな事を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真ちゃんのスープラは長くないかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時のあたしは「どういう事?」って思った。

車について学んだといっても希や山本さんといったプロレベルの人達のような知識なんてない。その時のあたしは希の独り言だと思う事にした。

でも……よくよく考えたらあの時スープラに乗った時点でわかったハズだったんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「希はわかってたの?」

「うん……でも高木さんに聞く勇気がなかった」

「でも……真が知っていたらそれはそれで悪い事になってただろうし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば……明日翔はどう見てるの?」

「んー……マニュアルがないって事がちょっと残念だけど……いいクルマだよ。雑誌の企画で乗せてもらったけど面白いなって」

「最近のスポーツカーってみんなどこかと共同開発だもんね」

「86だってトヨタとスバルの共同じゃん?メーカー単独で作るのも難しいんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪物が生まれたなら必然的に怪物を狩ろうとする存在が現れる。

首都高を本気で走るなら避けては通れないのがバトル。その中で絶対に決めさせられる選択肢。

あたし達が首都高バトルの中で選んだ物は……。




怪物マシンの目覚め。
それに呼応するかのように首都高ランナーは集う……。





《次回予告》
ついに完成した怪物(モンスター)スープラ。
スープラを乗りこなそうとする真。あたし達はそんな彼女にスープラを仕上げた者として走りを教える。その中であたしが気付かされる事もあって……?
そして首都高という舞台(ステージ)で役者が集う!降りる者と残る者。あたし達、そして真の選択は。決断の時が迫る。
「もうちょっとだけお願い!後はボクがどうにかする」
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