板挟み   作:希望光

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致命的なミスがあった為に再投稿させて戴きました。内容は5月6日に投稿したものと同じ内容です。大変申し訳ございませんでした。


余白 表

「……朝か」

 

 自身がいつ床に入りいつ眠りについたのか。それさえわからないまま、彼は朝ということを認識し床を出る。

 そして自室を出てリビングへ向かうと、2人の妹が彼を迎える。

 

「おはよう」

「おはようお兄ちゃん」

「おはよう兄さん」

 

 挨拶を交わした洸夜は、ダイニングテーブルの2人の対面側に座り朝食を摂る。

 

「ねえお兄ちゃん」

「……どうした?」

「今日学校の後、空いてる?」

「空いて……る、はず」

「……誰と何があるの?」

 

 歯切れの悪い洸夜の言葉に、殺気を強めながら問いかける日菜。

 日菜による威圧を前に、言葉を詰まらせる洸夜であったが、なんとか口を動かし言葉を紡ぐ。

 

「……祐治と委員会の仕事」

「それが終わった後は?」

「……空いてる」

「じゃあ、私と遊びに行こ」

「了解。放課後連絡してくれ。ごちそうさま」

 

 日菜に了承の旨を伝えて席を立ち上がった洸夜は自室に戻る。そして、身支度を整えた洸夜は学校へと向かっていくのであった——

 

 

 

 

 

 その日の放課後、祐治と共に委員会の仕事をこなす洸夜。

 

「最近どう?」

「体調?」

「ああ。また、前みたいに突然倒れられても困るからな」

「そういうことね……大丈夫、今はなんともないよ」

 

 微笑しながら応答する洸夜の姿に軽い安堵を覚える祐治。

 

「そうか。それなら良かったよ。でも、あんまり無理はするなよ?」

「うん。ありがと……っと、電話だ」

 

 その場から少し離れ、洸夜は応答する。

 

「もしもし?」

「お兄ちゃん今どこ?」

 

 電話の相手は日菜。そのことに、少しばかり戸惑った表情をする洸夜。だが、すぐに彼女の問いかけに応じる。

 

「今は、まだ校内で祐治と一緒に仕事中だが?」

「どれくらいで終わる?」

「もう時期終わるとは思うが……」

「じゃあ、校門の前で待ってるね」

 

 そう言葉を残され、日菜との通話は終了する。携帯を懐にしまった洸夜は足早に祐治の元へ戻る。

 

「なんだった?」

「この後の約束の催促。早いとこ仕事終わらせよ」

「了解」

 

 頷いた祐治は、彼と共に書類の仕分け作業を行なっていく。そして再開から数分後、作業が終了する。

 

「良し、と。じゃあ祐治、後は任せても大丈夫?」

「OKだ。気を付けろよ」

「うん。マジごめんね」

「良いってことよ」

 

 言葉を交わした後、教室を出て校門へと向かっていく洸夜。そして、見知った姿に言葉をかける。

 

「日菜」

「あ、お兄ちゃん!」

 

 校門の傍に居た日菜は、洸夜に声を掛けられるなり彼に飛び付く。

 

「……危ないだろ、俺でなきゃ転んでたぞ」

「ごめんごめん。じゃあ、行こっか」

「いいけど……何処にだ?」

「ショッピングモール」

 

 首を傾げる洸夜に対し即座に返答する日菜。何気ない顔で行き先を告げてくる日菜に、洸夜はどこか違和感を覚える。

 今まで人目につかない着かない『自宅』という空間に監禁していたにも関わらず、何故いきなり大衆が集う場所であろうショッピングモールへ行くのか。彼にはそこの点が気にかかって仕方がなかった。

 疑念を抱きながらも洸夜は日菜に付き従いショッピングモールへと足を運ぶ。

 

「んで、今日は何するんだ?」

「んーとね……」

「あ、日菜ちゃーん!」

「あ、彩ちゃん! それに千聖ちゃんも」

 

 2人が出会ったのは、日菜が所属するアイドルグループ『Pastel*Palettes』のボーカルである丸山彩と、ベース担当の白鷺千聖であった。

 

「珍しいね、日菜ちゃんがショッピングモールにいるなんて」

「うん、ちょっとねー。そう言う彩ちゃん達は?」

「私達は買い物にね」

「ええ。それで、日菜ちゃんの隣に居る方は?」

 

 洸夜の方に視線を向けながら日菜に問いかける千聖。傍らの彩も日菜との関係性について気になっている様子であった。

 

「私のお兄ちゃんだよ」

「え、日菜ちゃんってお兄さんいたの?!」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「……初耳よ」

 

 日菜の言葉に対し唖然とした様子で返答する千聖だったが、直ぐに切り替え自己紹介を始める。

 

「白鷺千聖です。宜しくお願いします」

「丸山彩です。宜しく!」

「ほら、お兄ちゃんも」

 

 日菜の言葉に頷いた洸夜は、一呼吸置き名乗る。

 

「氷川洸夜です。宜しくどうぞ」

 

 洸夜が名乗った直後、千聖が不思議そうな顔をする。そんな彼女の表情に気付いた洸夜は問いかける。

 

「どうかしました?」

「……もしかして、貴方コウ君?」

「え?」

 

 突如として千聖の口から出た言葉に戸惑う洸夜。そんな彼に対して、千聖は続けて口を開く。

 

「小さい頃、良く公園で遊んだじゃない」

「もしかして……ちーちゃん?」

「そうよ。久しぶりね」

 

 洸夜の言葉に頷いた千聖は彼に対して微笑む。対する洸夜もまた、驚きの表情の後に微笑み返す。

 すると、そんな2人の様子を見ていた彩が2人へと問いかける。

 

「え、えーっと……2人はどう言う関係なの?」

「幼馴染……かな?」

「そうなるわね」

 

 千聖の言葉を聞いた彩と日菜は驚愕する。

 

「え、私その話聞いたことないけど?」

「いや、その……俺も今の今まで忘れてた……」

 

 食い気味の日菜に、歯切れ悪く返答する洸夜。

 

「それに……日菜からPastel*Palettesのメンバーの話とかも聞いたことなかったから」

「ふーん。そうだとしても色々聞きたいことが出来たなぁ」

「私もちょっと興味ある……かな」

 

 日菜の言葉に同調したのは以外にも彩であった。それを聞いた千聖は少し考え込んだ後に口を開く。

 

「そうね、話しましょうか。コウ君も構わないわね?」

「……ああ。じゃなきゃ、日菜も納得してくれない……よな」

 

 視線を日菜から外しつつ、千聖の問い掛けに肯く洸夜。

 

「とにかく、ここで話しているのも目立つし場所を変えましょう」

「どこに移動する?」

「そうね……フードコートにしましょう」

 

 千聖の提案により一同はフードコートへと移動する。そして千聖と洸夜、日菜と彩が隣り合う形で座る。

 

「それで、お兄ちゃんと千聖ちゃんはいつから知り合いなの?」

 

 一同が席に着くなり千聖と洸夜に問いかけ始める日菜。その姿にはどこか必死さが滲み出ていた。

 

「えーっと、アレはいつだったかしら」

「小学校に入る前ぐらいだったと思うが……?」

「え、そんな前からなの?」

 

 洸夜の口から告げられた事実に日菜は戦慄する。自身の身近な人間がまさかここまで兄と密接であったという事実に。

 

「小学校上がってからは遊んだ記憶無いしな……」

「そうね。私も小学校に上がってからは会った記憶が無いわ」

「でもまさか、こうして再会するとはね」

「ほんと、驚いたわ」

 

 互いに微笑みながら言葉を交わす2人。すると、日菜の隣で話を聞いていた彩が洸夜に問いかける。

 

「ねぇねぇ洸夜君、小さい時の千聖ちゃんってどんな感じだった?」

「そうだなぁ……多少無茶振りを言ってくるタイプだったかな」

「コウ君?」

 

 穏やかな笑顔のまま洸夜の方を見据える千聖。対する洸夜は、額から冷や汗を垂らしつつも千聖から視線を外す。そんな彼の手前で、日菜は何かを考え込んでいる様子であった。

 

「彩ちゃんも、あまり人の過去を探ったりするのは感心しないわ」

「ご、ごめんね……」

「今度から気をつけてちょうだいね」

「う、うん」

 

 千聖の言葉に頷く彩。すると、何かを考え込んでいた日菜が顔を上げ口を開く。

 

「ねぇ千聖ちゃん、小さい頃のお兄ちゃんってどんな感じだった?」

「コウ君の? そうね……怖がりだけど、いつでも先を進んでくれていた子、だったわね」

 

 傍の洸夜にどこか懐かしげな眼差しを向けながら微笑する千聖。対する洸夜は、やや驚いた表情でいた。

 

「へぇー……そうだったんだ」

 

 不満気な表情で頬杖をついた日菜は、そのままそっぽを向く。

 

「日菜ちゃんは、随分と貴方のことが好きなのね」

「そう……だな」

 

 千聖の問い掛けに歯切れ悪く肯いた洸夜。その表情はどこか影を帯びていた。

 そんな彼の顔を暫く眺めていた千聖が、不意に洸夜の頭に手を伸ばす。

 

「な、なに……?」

「頭にゴミがついてたわ」

「あ、ありがとう……」

 

 突然のことに戸惑いながらも感謝を述べる洸夜。その直後、2人の様子を眺めていた彩が再度口を開く。

 

「ねぇ、折角だしこの後みんなでショッピングしない?」

「……4人でってこと?」

「うん!」

「私は構わないけど……日菜ちゃんとコウ君は?」

 

 彩の問いかけに応じた後、日菜と洸夜へと問い掛ける千聖。

 

「私は別に良いよ」

「俺も、日菜が構わないのなら……」

「決まりね。それじゃあ、行きましょうか」

 

 頷いた一同は席を立ち、その場から移動する。そしてやってきたのは、彩と千聖の要望によりブティック。

 

「あー、見て見て! この服可愛い!」

「彩ちゃんにはこっちの方が似合いそうだけどなぁー」

「そうかな……? 日菜ちゃんのほうが似合うと思うけど。千聖ちゃんはどう思う?」

「2人共着てみたら良いんじゃないかしら?」

 

 ウィンドウショッピングを楽しむ3人の傍、店内に備え付けられた姿見越しに自身を見つめる洸夜。

 

「なんで……ここにいるんだ、俺」

「お兄ちゃん、ちょっと来て」

 

 呟いた直後、試着室の中に入っている日菜に呼ばれる。

 

「何だ?」

 

 洸夜は、首を傾げつつ試着室の前へと進んでいき辿り着いた途端、日菜に試着室の中へと引き摺り込まれる。

 

「何する……ッ?!」

 

 日菜に問いかけようとした刹那、彼の口は(日菜)の唇によって塞がれ蹂躙されていく。そして洸夜は、日菜が離れると同時にその場に力なくへたり込む。

 

「良いねお兄ちゃん……お兄ちゃんのそう言う顔、ゾクゾク来ちゃう」

 

 瞳の端に涙を浮かべ自身を見つめる兄を眺めながら、怪しげな笑みを浮かべる日菜。先程までの千聖と洸夜のやり取りが、彼女の中にある執念を点火させのだ。

 対する洸夜はというと、これまでにされてきた事柄がフラッシュバックしてしまいその場から動けない状況に陥ってしまった。

 

「誰がなんと言おうと、お兄ちゃんは私とお姉ちゃんの()()だからね……?」

 

 そう言って、日菜は目の前にいる兄を貪っていくのであった。その様子が、姉ではない第三者に聞かれているとも知らずに——

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