とあるオタク女の受難(僕のヒーローアカデミア編)。 作:SUN'S
計画の要である壊理を預けたプロヒーローは健康食品や栄養薬品の製造を手掛けている。壊理の精神面を癒しつつ、ヒーロー界隈の情報を聞き出すために利用している。
利用しているはずなんだが、彼女の作ってくれた料理を食べても蕁麻疹や不快感を引き起こすことはなかった。むしろ睡眠不足だった身体の疲労感や怠さが無くなっているのが理解った。
彼女曰く「活性の個性を使って食材の免疫力を高め、潔癖症の人でも食べられるように調理した」らしい。成る程、彼女は俺を気遣ってくれたようだ。
俺が食べ終えた食器を持っていこうとすれば「お客さんは座ってなさいな」と言いながら台所で食器を洗い始めた。少しばかり距離を開けるように座っている壊理の隣へ移動する。
「壊理、彼女と過ごすのは楽しいか?」
「…ぅん…」
「そうか」
壊理を連れ出すことは簡単なことだが、安定している精神状態ならば個性を暴走させる心配はない。しかし、オヤジの言っていた「しっかりと繋ぎ止めておけ」って言っていたが、俺は壊理を逃がすつもりはない。
「治崎さん、アイス食べます?」
「いや、おれは……」
断ろうとした俺を止めるように壊理がキュッと服の裾を掴んでいた。実験を繰り返していた頃より人間らしさが増えてきたな。
結局、アイスまで食べてしまった。
……そろそろ迎えの車が来るな。壊理を連れて帰りたいが、彼女から引き出せるヴィラン連中の情報を得るためには壊理を連れて帰る訳にはいかない。
「壊理、彼女に迷惑をかけるなよ?」
こくり、一度だけ頷くと家の中に戻ってしまった。俺の後ろに控えている奴等を怖がっているのか?
まあ、御世辞にもカッコイイとは言えない相貌だな。ビビるのは正しい反応だと思う。
「もう少しだけ壊理を頼んだ」
「心配する必要はないさ。エリは立派なレディに育ててみせる」
「そうか、それは楽しみだな」
彼女の言っていることを理解するのは難しい。なんで、壊理をレディに育てるんだ?話の路線を切り換えるタイミングを失ったのは最悪だが、壊理の教養を引き上げるためには必要なモノなんだろう。
「じゃあな」
「はい、気をつけて」
はあ、ぬるま湯に浸かっている気分だ。オヤジのような侠客には程遠い。このクッキーも手作りとか言ってたが、アレルゲンのことを聞いてきたのは、これを作るためだったのか?
ん?良い感じに苦いな。擂り潰した珈琲豆を混ぜ込んでいるのか。こういう工夫を考え付くのは女性だと当たり前なのか?
「嬉しそうでやすね」
「まあな、お前も食べるか?」
「あとで頂きやす」
断ると思っていたが、お前も食べるのか。いや、まあ、聞いたのは俺だからな。もう少しだけ食べてから渡すとしよう。