とあるオタク女の受難(僕のヒーローアカデミア編)。   作:SUN'S

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第36話(死柄木??)

弔の精神的成長を補助するため、メディア出演の多い「スピキュール」との接触を許可した。弔から「オールマイトを殺すために用意した"脳無"をスピキュールが打ち負かした」と聞かされた時は驚いたが、さまざまな個性を奪い取ってきたこの僕だからこそ理解った。

 

彼女の持つ筋肉繊維は常人の数百倍、全盛期のオールマイトと対等に渡り合えるほど優れていた。

 

彼女の持つ個性「活性」は成長する速度を増強させ、治癒力を引き伸ばすことが出来る反面、必ずある上限を越えると自己破壊を始めるモノだった。

 

彼女は無限とも言えるほど成長し続ける身体と平凡な精神や感覚を肉体と結合させるため、十数年と費やしたのだろう。

 

僕もあの個性を欲しいと思ったが、オールマイトに刻み込まれた傷を癒してもらった。

 

こういうのを「やはり」というべきか。強化ガラス越しに見えた宿敵の痩せ細った姿には驚いたが、僕を殺そうとしたことに比べればマシなモノだ。

 

「オール・フォー・ワン、死柄木弔の居場所を教えるつもりはないんだな?」

 

「くどいね、オールマイト。弔は自分の道を歩こうとしているんだ。今更、口出しするなんて大人気ない」

 

この言葉に対して怒るか?

 

そんなことを考えていると「今更なんてことはない」と言葉を返され、オールマイトの腰元には風車のようなモノが内蔵されたベルトが巻かれていた。

 

ああ、そうだったね。オールマイト、君には託せる「後継者」が残っている。僕には紡げる「次の僕」が現れてくれた。

 

きっと僕達の戦いは終わろうとも新しい僕達の戦いは続いていくんだろうね。英雄譚として、喜劇として、悲劇として、そんな下らないモノへと落とされていく―――。

 

君のことを宿敵と思えたことは有意義な時間だったと思えるが、僕の望んできた理想郷を潰したことは赦すことは出来ない。

 

ゆっくり、ゆっくりと閉じていく視界の端に映り込んできた彼の背中を瞼の裏側に刻みつける。死柄木弔、僕の義息子は「ワン・フォー・オールの後継者」に勝てるだろうか?

 

そんなことを思いつつ、部屋を出ていこうとするオールマイトへ向かって言葉を投げ付ける。

 

「オールマイト、弔は強いよ」

 

「オール・フォー・ワン、緑谷少年は強いぞ」

 

どうやら考えていたことは同じだったらしい。拘束具を壊そうと思えば壊せるが、弔達ならば僕やオールマイトの戦ってきた歴史など埋もれるほど想像を絶する世界を作ってくれる。

 

それまで君を見守るのも悪くない。

 

弔、しっかりと学んでいきなさい。

 

 


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