とあるオタク女の受難(僕のヒーローアカデミア編)。   作:SUN'S

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スピキュールのイラストを後書きに記載しています。今回は「うつぶせメーカー」というモノを使用しました。


第40話(治崎廻)

壊理の入園式へ向かうため、玄関の扉を開けると敵連合黒霧死柄木が待ち構えていた。応戦しようとしたが、黒霧は不完全状態の個性の力をの増強させる薬を投薬しているのか。

 

同盟関係の時に見せられた「ワープゲート」とは比べ物にならないほど、巨大な空洞を作り出してきた。そして、気付けば彼女と恋人関係となった場所でもある死穢八斎會の陥没した地下に吹き飛ばされるように出され、壊理を抱き締めるルミリオンと緑谷出久が「俺自身」を追い詰めていた。

 

「治崎が二人にっ!?」

 

ルミリオンは「俺」ともう一人の「俺」を見て唖然とした声で叫んでいるが、片方は偽物という考えは捨てた方が良さそうだな。おおよそ考え付くのは強化された「ワープゲート」の変異により、限り無く近くて遠い並行世界へ飛ばされたと仮定することが出来る。

 

「お前、トゥワイスの個性かっ!!」

 

もう一人の「俺」は、そんなことを叫んでいるが、今度の俺は壊理を守るために戦おう。それが彼女との約束であり、これから死穢八斎會を再建するまで背負うべき使命だからだ。だが、それよりも壊理の服装が気になって仕方ない。

 

おれは毎日のように肌の露出は控えるように言い聞かせているんだがな。俺の服だと大きいかもしれないが、無いよりマシだろう。

 

「壊理、"お父さん"が守ってやる。ミリオ君といっしょに下がっていなさい」

 

壊理を安心させるために、そう言い聞かせながらダウンジャケットを羽織らせる。やはり、もう一人の「俺」とヒーロー達は困惑したような表情を浮かべているな。

 

似合わない行為だと分かっているが、俺は壊理に対して人並みには愛情を注いでいるつもりだ。

 

そんなことを思いながら彼女の作っていたアイテムを取り出し、ヘソの辺りに押し当てる。ナノマシン技術の発展に伴って強さを増していく彼女のアイテムには驚くことしか出来ないな。

 

腰で固定されたドライバーの感触を確かめつつ、ズボンの右ポケットからパウチ容器を取り出してノズルを親指だけで捻り、ドライバーの溝へ挿入する。

 

ROBOT-JELLY(ロボットジェリイィ)!!!』

 

ドライバーの右側に搭載されたレンチを手のひらで限界まで押し込んでいき、ゆっくりと手のひらを退けるとビーカーのようなモノとナノマシンを液状化したモノで全身を覆われる。

 

「変身」

 

やはり、こういうアイテムを使うときは彼女の言っていた言葉を当て嵌めるのがしっくりとするな。

 

CRUSHED(潰れる)!!OOZING(流れる)!!OVERFLOWING(溢れ出る)!!』

 

ROBOT-IN-GREASE(ロボット・イン・グリスゥ)!!』

 

BURRRAAAAAAAAH(ブウゥゥゥルアァァァァァァァ)!!』

 

成る程、彼女の言っていた試作段階の欠陥とはコレのことだな。内側からモノを壊そうとする衝動が溢れるように出てくる。この感覚には慣れるのは無理そうだが、俺自身を相手するには打ってつけだ。

 

「さっさと終わらせるぞ」

 

もう一人の「俺」へ向かって駆けていくと地面の断続的な復元を行いつつ、鋭利な槍となった地面が襲い掛かってくる。ああ、たしかにルミリオンが嫌そうな表情を浮かべる訳だ。

 

「なんだ、なんなんだ、なんなんだよぉ!!お前はあぁぁぁぁ!!」

 

もう一人の「俺」は癇癪を起こしたように叫んでおり、よく見れば「俺」の違うところは他者と合体しているところだが、強力な一撃を叩き込めば個性を解除されることは彼女のおかげで判明している。

 

俺へ向かって伸びてくる石柱の槍を殴り壊しながらドライバーのレンチを押し込み。飛び上がり様に蹴りの体勢へ身体の向きを固定する。

 

「壊理を泣かすヤツは俺が許さん!!!」

 

SCRAP-FINISH(スクラップフィニッシュ)!!』

 

両の肩に搭載されたパウチ容器から飛び散るコーヒーゼリーの推進力を利用しつつ、強烈な右の飛び蹴りを「俺」へ向かって叩き込んだ瞬間、ダメ押しの一撃として左足で顎を蹴りあげる。

 

「やはり、試作段階のモノを使うのは無理があるな。帰ったら改良したモノを頼むか…」

 

壊れたパウチ容器を眺めつつ、構えたまま止まっているルミリオン達の間を通り抜けながら死にかけているサー・ナイトアイを復元する。少しばかり潰れた臓器や飛び出ている肋骨はナノマシンが治療してくれるはずだ。

 

しかし、この世界の壊理は彼女と出会っていないのか?それともヒーローとして活動してないのか?

 

「あ、あの…」

 

「なんだ、緑谷出久」

 

「オーバーホール、ですよね?」

 

「悪いな、今は治崎廻としか名乗っていない。なにより並行世界(仮)のヤツと同一人物と思われたくない」

 

もう一人の「俺」を指差しつつ、苦笑いを浮かべている緑谷出久の後ろに隠れている壊理の目線を合わせるために座り、頭をワシャワシャと撫でる。

 

「壊理、よく頑張った。えらいぞ」

 

どうやら俺の住まう世界とは別の壊理を安心させるほど、俺は壊理と仲良くないらしい。ヒーロー達の増援を眺めつつ、壊理を膝の上に抱えるように座らせる。

 

「壊理、困った時はこの人を訪ねなさい」

 

先日、彼女や死穢八斎會の直属の部下と過ごした花見会の写真を見せる。おっと、彼女の寝顔は極秘なモノなんだ。

 

おい、そんな目を向けるな。

 

 





【挿絵表示】

「起きてくれ、コレを渡せないだろ…」

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