嫌いな人は読み飛ばし。
『こちら八番隊第三席円乗寺辰房。
西流魂街にて旅禍を発見せり。
現在までに判明した情報を伝える。
なお、この天挺空羅は情報の漏洩を
防ぐため、京楽隊長と伊勢副隊長、
砕蜂隊長にのみ接続を行うものである』
「これって・・・砕蜂さん!隊長!」
「あぁ。師匠の予想通りか」
「・・・本当に来たんだねぇ」
八番隊の隊舎に於いて、朽木ルキアに
関することでの情報の擦り合せを
していた三人であったが、辰房からの
天挺空羅を受けたことで話を止め、
彼から齎される情報を聞くことに専念する。
『まず旅禍の数は5人。その内訳は
子供が4人と黒猫に化けた死神が1人』
「子供?」
「黒猫?」
「・・・アンバランス過ぎやしないかな?」
あまりにも不自然な構成に、三人は
陽動の可能性を疑うが、辰房からの
天挺空羅はまだ途切れてはいないので
考察は後回しにして話を聞く。
『構成は少女が1。名はイノウエ。
大柄な少年が1。名はチャド。
滅却師の少年が1。名はイシダ。
死神の少年が1。名はクロサキ。
黒猫が1。名はヨルイチである』
「「ヨルイチ?!」」
「ほぉ~」
黒猫の名がヨルイチであることに反応した
のは砕蜂だけではなかった。
しかしそれも当然だろう。
彼らの世代で死神でヨルイチと言えば、
先代の二番隊隊長である四楓院夜一だ。
さらに現世から見知らぬ死神と
現れたと言うのなら、その見知らぬ
可能性は浦原喜助の関係者か、
もしかしたら子供の可能性もある。
『このうちクロサキを名乗る死神は
現時点で上位席官クラスの力があると
思われる。
これらのことから、彼は現世で行方を
眩ませた浦原一派の関係者と思われる』
「・・・・・・なるほどねぇ。
浦原喜助は今も現世で姿を眩ませた
ままだし、ルキアちゃんも現世で
観測班の観測から姿を隠した。
それなら彼らの子供にも同じような
処置をしていても不思議じゃない、か」
「確かにそうですね。彼らの子で
有れば、当然死神の力も持っているで
しょう。朽木ルキアを助けに来る理由が
良くわかりませんが、向こうにも何らか
の狙いがあると思って良いでしょうね」
「・・・可能性は高いだろうな」
ここで彼らが一護のことを『朽木ルキア
によって死神の力を譲渡された存在』
ではなく『喜助と夜一の子供』と予想
したのは、当然わけがある。
無論彼らは実際に一護を見ていないので、
上位席官クラスの力と言うのが、実力を
隠しているのかさらけ出しているのかが
判断できないと言うこともあるが、最大の
理由はそこではない。
そもそも『朽木ルキアから力を譲渡された
現地の人間』は、現世に赴いた朽木白夜に
よりその力を破壊されていると言う報告を
受けていたからである。
そのため彼らの中では、その『現地の人間』
はすでに終わった存在であり、今回尸魂界
に乗り込んできた死神と関連付けることが
できなかったのだ。
そんな、本人が聞いたらなんとも
言えない顔をすること請け合いの
勘違いはともかくとして
「で、彼らの目的だけど?」
「朽木ルキア。でしょうね」
「だな。しかしその程度の戦力で罪人を
奪還しようと言うわけではあるまい。
他にも何かしらの理由があると見るべきだ」
「だろうねぇ。だったら今回の場合は
『浦原喜助がルキアちゃんに何かを
持たせている。旅禍はそれを回収に来た。
もしくはその為の陽動』と捉えるのが
一番妥当かなぁ?」
「そうですね。普通なら5人でどうこう
出来るものではありませんが、侵入する
だけなら四楓院夜一が居れば決して
不可能と言うわけではありません」
「・・・口惜しいことにな」
旅禍の正体から旅禍の目的へと話題を切り替えた
三人は、彼らの目的が朽木ルキアの奪還
では無く、朽木ルキアが持つ何かに用が
有ると言う推論を立てた。
細かいことは四楓院夜一や浦原喜助に直接
確認を取らなければ不明だが、これが一番
可能性が高いと思われたのだ。
なにせ・・・
『また、これだけ派手に旅禍による
侵入があったにも関わらず、未だに
死神が調査に来る様子がないことから、
連中には十二番隊の観測班、及び二番隊
の調査班に何かしらの伝手がある。
もしくは彼らを誤魔化す技術があると思われる』
「「・・・・・・」」
「・・・むぅ」
砕蜂の手前、辰房もやんわりと言葉を
選んだようだが、言っていることは
単純だ。
曰く『二番隊と十二番隊は信用できない』である。
二番隊の隊長である砕蜂だが、未だに
二番隊の中には四楓院家に対しての
忠義を誓う者がいることは知っている。
実際に幼少の頃から四楓院家に仕えるよう
教育を受けていた砕蜂も、夜一の弟である
夕四郎咲宗と会話するときは当たり前に
敬語であるのだから、そのことに対して
彼女から隊員に文句を言うことは出来ない。
しかし、憲兵としては間違いなく失格である。
だからこそ辰房も、砕蜂に情報を提供
することはあっても二番隊に情報を
提供するつもりはないのだ。
十二番隊も同じだ。なにせ彼らは
先代の浦原が作った技術開発局を
踏襲しているのだから、影響が全く
無いとは言い切れない。
一応隊長である涅マユリは、浦原喜助を
好いてはいないようだが、隊長と隊員は
別だ。
実際今の時点で十二番隊が旅禍を観測
出来ていないと言うのなら、その心根
だけでなく、能力も信用出来ないと
言うことになる。
現時点で内部の裏切り者の存在を
確信している三人からすれば、
これだけでも面倒極まりない事態だ。
しかし、さらに面倒は続く。
『加えて、広範囲に強力な認識阻害か
催眠の術式が展開している模様。
故に京楽隊長と砕蜂隊長は斬魄刀との
対話を密にし、己の認識が狂わされて
いないかどうかの確認をするよう提案
します。
伊勢副隊長に見えているものと隊長に
見えているものの差異を比べれば相手が
何を見せたいかの推察もできますし
術式を解除出来なくとも、自身の認識が
狂わされていることを自覚しているか
否かを知ることは必要かと思われます』
「「認識阻害?」」
「・・・へぇ」
認識阻害にせよ催眠にせよ、自分が嵌って
いることに気付かなければ解除は難しい。
また解除が出来なくとも、斬魄刀から
自分の感覚が狂わされていると言う
ことが分かれば、それだけでも大きな
違いである。
戦闘中に態々斬魄刀と対話をする
暇はないが、平時なら違う。
そう考えた京楽は、即座に自身の
斬魄刀と対話を行い、少なくとも
今は感覚を狂わされて居ないことを
確認した。
「本当なら浮竹にも教えてやりたいところなんだけどなぁ」
思わず。と言った感じでそう呟いた
京楽に対し、七緒と砕蜂は揃って
冷たい目を向ける。
「そしてその浮竹隊長が虎徹三席と
小椿三席に情報を伝え、虎徹三席が
四番隊の虎徹副隊長に伝え、さらに
虎徹副隊長が卯ノ花隊長に伝え、
卯ノ花隊長が総隊長に伝え、総隊長が
全隊長に知らせるんですね?」
「せっかく師匠が我々だけに情報を
流した配慮が無に帰すことになるな。
まぁ直属の上官である京楽隊長殿が
そうしたいと言うなら、私に止める
権限はないがな」
「・・・そうなるよねぇ」
『信用出来る人間だけに情報を渡す』
これだけ聞けば聞こえはいいが、実際は
情報の漏洩である。
京楽が七緒を信用しているように浮竹も
己の部下を信用しているだろう。
さらに自分の部下が操られている可能性
があるなら、それをなんとかしようと
するはずだ。
結果『信用できる部下』に情報が流れ、
その『信用できる部下』も肉親や友人を
失いたくないから情報を渡し・・・と
言った感じで秘匿情報が漏洩されていくのだ。
そんなことになっては、現在危険を冒し
ながらも、単独で旅禍の調査を行い、
こうして情報をくれている辰房の行動に
泥を塗ることになってしまう。
それを懸念している目の前の女性二人から
『そんなことをしたらどうなるか分かっているな?』
と言う視線を受けた京楽は、編笠を
深く被りなおし、浮竹への情報提供を
断念することにした。
そんな隊長達の心温まる会話を余所に
事態は動いていく。
『・・・旅禍が正面から兕丹坊と接触。
どうやら戦闘になるもよう。
状況によっては介入します。以上』
その言葉を最後に天挺空羅は途切れた。
「・・・兕丹坊と戦闘、つまりは紛れもなく敵だな」
「そうですね」
「だねぇ」
クロサキを名乗る死神が正式な任務で
動いているなら、門番である兕丹坊と
戦闘をする理由がない。
正面から向かったと言うのが良く
分からないが、認識阻害によって
通れると判断したのだろうか?
情報が不足しているのでなんとも
判断が難しいが、少なくとも門番と
戦闘をすると言う事実をもって、
彼らは客人ではなく明確な敵であると
言うことが証明された形となった。
これを陽動の可能性が高いと見た京楽で
あったが、ここで警戒をしている様子を
見せるのは悪手と考え、表面上は普段
通り過ごすことを提案し、二人もそれに
納得をすることになる。
「あ、お帰んなさい隊長。こっちは特に異常なしっす」
「(イラッ)・・・破ッ!」
「え? ぐ、ぐわぁぁぁぁ!」
「ふんっ!」
「な、なんで・・・ぐふっ」
期せずして夜一の情報を得て高揚しながら
二番隊の隊舎に戻った自分の前に、侵入者
にも気付かずに油煎餅を食べ散らかし、
あまつさえ『異常が無い』などとのたまう
副隊長を見た砕蜂は、思わず彼を殴り倒す
ことになったとか。
これを不当な暴力と取るか、正当な仕置きと
取るかは人それぞれであろうが、少なくとも
二番隊でこのことを問題にするような隊士は
居なかったと言う。
とりあえずわかったことを報告。
あれだけ派手に登場した原作主人公たちを
何故隠密機動や十二番隊が気付かないのか?
それはどこぞの伊達眼鏡が催眠をかけて認識を
ずらしていたからさ!ってお話。
通信用の鬼道があるなら、伝令を伝える隠密機動の存在意義が無い?
・・・七十番台の鬼道ですので使い手が限られるのと、雇用の創出の為なんじゃないですかねぇ?