オリ展開
嫌いな人は読み飛ばし。
「隠密機動はすぐに着弾予想地点へ向かえ!
旅禍を見つけたなら即座に報告! また、
戦闘になった際は必ず複数であたること。
それと一人は戦闘に参加せず情報収集に撤する
ことを忘れるな」
「「「はっ」」」
「観測班、各々の霊圧を把握しろ。
・・・今度は逃がすなよ」
「「「了解」」」
戦時体制にシフトしてから数日後、瀞霊廷の
上空に展開してある遮魂膜に対して霊圧の
塊のようなものがぶつかって来たことを受け、
各隊の死神はこれを旅禍による侵入行為で
あると判断。各々が警戒を始める。
その霊圧は少しの時間遮魂膜と拮抗した後、
直ぐに散り散りに分散したのだが、相手が
上位席官クラスの実力者であると通達されて
いる彼らは『これで旅禍が死んだ』などとは
思っておらず、確実に旅禍が瀞霊廷の中への
侵入を果たしたと見なすことになる。
これにより護廷の死神たちは、旅禍を狩るために動き出す。
特に熱心なのは先日の汚名を返上する為、
全力で解析と追跡を行おうとしている
二番隊と十二番隊に所属する死神であった。
そんな彼らの健闘は決っして無駄にはならなかった。
「大前田、件の霊圧の弾丸が発射された
場所は確認出来ているか?」
「はい! 西流魂街の外れです。
なんでも志波空鶴って奴の屋敷だとか」
そう隊長の砕蜂が問えば、今回彼女に
代わって二番隊を指揮していた副隊長の
大前田は、煎餅も食わずに真顔で応える。
「ほう。拠点を転々としていたあやつか。
で、何をすべきかは理解しているな?」
「モチロンでさぁ!複数の上位席官と刑軍を
派遣して本人を捕えます!罪状は旅禍の
瀞霊廷への侵入を幇助した現行犯!」
「うむ。それで良い。従わぬなら
死なない程度に痛めつけろ」
砕蜂からすれば四楓院夜一や浦原喜助
との接点など付け足すべきことは多々
あるがそれは今は関係のないこと。
まずは『旅禍に味方した』と言う一点を
以て捕え、それから自身で空鶴の尋問を
行うと言う方針を固めていた。
「へい! 聞いたな?さっさと動けよ!
あぁそれと霊圧の着弾点にも隠密機動を
派遣するのを忘れんな!」
「「「「はっ!」」」」
(ふむ。予想以上に良く働くな。今後は
こう言った訓練もするべきかもしれん)
普段の態度とはまるで違う大前田の働きに
満足げに頷く砕蜂。
そんな砕蜂を背に、大前田はと言えば
(やべぇ。流石に失点が多すぎるぜ。
何とかして挽回しねぇと大前田の家が
潰されっちまう!)
前回の隊首会に於いて名指しで非難された
(二番隊は自分からだが)立場にある
大前田は、白道門で行われた兕丹坊と
旅禍の戦闘に気付かずあまつさえ隊長に
対して『異常有りません』などと言う
報告をしたことを激しく後悔していた。
腑抜け、と言われればその通り。
怠惰、と言われてもその通り。
無能、と言われても返す言葉が無い。
二番隊は隠密機動や刑軍が所属すると言う
隊の編成上、副隊長に求められるのは単純な
戦闘能力ではなく部隊の指揮能力である。
いや、本来これはどこの隊でも変わらない
のだが、二番隊は特にその傾向が強い。
にも関わらず、今回の旅禍の件でこうして失点を
重ねてしまっている今、無能の烙印を押された
大前田は『旅禍との戦いに敗れて殺された』と
言う口実で処分される可能性すらあるのだ。
もしも自分がそうやって殺された場合、残された
家族はどうなるだろう?
表向き殉死したことになる自分に免じて厚遇する?
否。無能が原因で処理された人間の家族を
厚遇するなんてことはありえない。
厚遇しないなら、残る可能性はその逆。
二番隊が殺す相手は罪人だ。そうである以上
骨の髄まで利用するのが流儀であり、自分は
その二番隊の副隊長である。
死んだ暗部の副隊長なんざ、スケープゴート
として考えれば、これ以上使い勝手の良い
存在はそうそう居ない。
大前田が恐れているのはこれだ。
ここで無能を晒して処分された場合、自分に
どんな悪名を課せられることになるのか。
そして残された家族がどんな扱いを受けるのか。
二番隊はいくつもの命令違反を犯した小娘を
庇う十三番隊のような甘い部隊ではないのだ。
それを知る大前田は、最悪旅禍に敗れようとも
『無能』と言うレッテルを貼られて死ぬこと
だけは避けようとしており、結果として
これまで砕蜂が見たことも無いような真剣さを
もって任務に当たることになる。
諜報を担当する二番隊には油断も慢心もない。
「・・・さて、これはどうしたものだろうか」
この事実は死神たちにとっては良くとも侵入者
たる旅禍たちにとっては間違いなくマイナス。
己の意図していないところで己の目的を果たす
為の難易度が上がっていく事実を受け、どこぞの
伊達眼鏡隊長は今後の予定を組み直すことを
余儀なくされていた。
そんな伊達眼鏡隊長を見てどこぞの細目の隊長は
(どーせ最後はなんとかするんやろうけど、
それまでは散々悩んでくれたらええなぁ)
と、心の中でニッコリしていたとかしていなかったとか。
~~~
「砂になぁれ!! 『石破っ!』」
少しして、遮魂膜との衝突によって分断
された霊圧の一つが着弾した、とある
ポイントでは、偶然近場に居た丸坊主で
目付きが悪い死神と自意識過剰なところが
有る死神が二人の旅禍と接敵していた。
「もう一人は知らねぇが、橙色の髪の死神。
そうか。てめぇが兕丹坊を一蹴した
クロサキってやつか?」
「あぁ? 何で俺の名前を知ってる・・・
「当たりか。なら死ね」・・・うぉっ?!」
丸坊主の死神は橙色の髪をした死神、黒崎一護が
話をしている隙を突いて斬り込むも、その攻撃は
頬を掠めるだけで終わってしまう。
「ほぉ。今のを避けるか」
様子見とは言え、それなりの早さ、それなりの
威力で放った攻撃を回避された丸坊主の死神、
斑目一角は、目の前の旅禍が事前の報告通り
少なくとも上位席官クラスの実力を備えている
ことを確信して上機嫌になり口許を弛ませる。
「いきなり何しやがる!」
しかし、次いで放たれた旅禍の言葉が耳に入る
と、上機嫌だったその表情に怒りの色が出る。
「あ? いきなりもなにも。侵入者を相手に
『尋常に勝負』なんかすると思ってんのか?
それとも何か? 手前はいきなり自分の家に
侵入してきた賊と仲良く会話する趣味でも
あんのか? 寝惚けてんじゃねぇぞ」
賊が隙を見せたら斬る。それだけの話だ。
今までどこぞの三席から『弱いくせに戦いが
好きなだけの雑魚』だの『戦闘狂の皮を被った
未熟者』だの『油断慢心する飼い犬以下の
獣モドキ』だの『強いのは声だけ』だのと、
日々散々罵倒された結果、戦闘に対する意識を
矯正されつつある十一番隊第三席斑目一角は、
文字通り目の前に降ってわいた敵を見て、
会話をしながらも隙があったら即座に切り込む
つもりで侵入者の様子を探る。
「いや、そう言われればそうなのかも知れねぇけどっ!」
(・・・なんだこいつ?)
戦士限定でそれなりに人を見る目がある一角が
見たところ、目の前の賊は自分の攻撃を回避
するだけの目と反射神経が有りながら、
その佇まいは隙だらけであり、会話の最中の
呼吸を隠そうともしない未熟者であった。
つまり力の有る未熟者と言っても良い。
これは、ある意味でどこぞの三席が自分達の
隊長である更木剣八に向ける印象に似ているが、
剣八とは違って目の前の死神からは血の臭いが
しないし、刀を振るわれたと言うのにこちらを
殺そうと言う殺気も感じない。
故に現時点で一角は目の前の旅禍を『実戦経験に
乏しい天才』と位置付けることにした。
(さて、こいつはどうしたもんか・・・いや、どうするもこうするもねぇな)
こう言った相手を目の前にした場合、普段の
一角の思考ならば『経験を積ませてから殺す』
と言う選択をするのだが、今回に関しては
話は別である。
何せ現在護廷十三隊に所属する死神には旅禍の
討伐指令が出ているのだ。
そんな状況なので、ここで一角が黒崎を見逃した
としても、すぐに他の隊の連中に殺されるだけ。
さらに言えば、『敵を強くするために』わざと
逃がしたら、隊長は納得するだろうが、間違い
なく十一番隊の名を汚すことになるだろう。
それくらいならここで潰すべき。
「十一番隊第三席、斑目一角だ」
「あぁ? 何だいきな・・『延びろ鬼灯丸』・・り?!」
遊びは無い。ただ殺すべき敵を殺す。
一角はいきなり始解した自分に驚愕して体を
固くした敵を見て、すぐさま攻撃を開始した。
~~~
「はぁ・・・はぁ・・・くそっ!」
遊びは無い。
殺すべき敵を殺す。
・・・そう言いながらも全力を出すことを
忌避するような戦士に勝ちの目など無い。
「―――遅えっ!」
「ガッ?!」
どこぞの三席が見れば『舐めプと舐めプの
じゃれ合い』と評されるであろう茶番は、
ある意味で順当な結果に終わった。
その戦いの内容や結果は、戦闘を観察していた
二番隊の隊士により、即座に護廷の死神たちに
伝達されることになる。
「・・・隊長」
「ん~君が行ったら情報を得る前に殺しそう
だし、そもそもまだ謹慎中の身でしょ?」
「くっ!」
「自業自得だねぇ」
一部の死神は「斑目さんが?!」と、戦いの結果
に対して驚愕の声をあげるも、大半の死神の
興味は一角の敗北よりも、その旅禍が自らを
『浦原喜助の弟子』と名乗ったことにあった。
「くそっ。これで三席かよ・・・」
戦いの後、そう呟いた橙色の髪をした旅禍こと
黒崎一護は、己が意図しないままに、朽木ルキア
の救出と言う目的を達成するための、そして
仲間が生きて帰る為に越えなければならない
ハードルの高さを自ら跳ね上げてしまったことを
未だ自覚していなかった。
ハゲは真面目にやっても負けます。
キャラと声は好きなんですけどねぇ。
中途半端に戦って負けるくらいなら、あく卍解しろよってお話。
大前田? ハハッ。