オリ展開
嫌いな人は読み飛ばし
十一番隊の第三席である班目一角が旅禍に敗北。
この一報は現在瀞霊廷に侵入して来た旅禍を
狩る為に動いていた、各隊の上位席官たちを
震撼させるに十分な出来事であった。
「あのハゲがねぇ。で、コレがクロサキ
って死神モドキとの戦闘映像、か。」
八番隊の宿舎で謹慎していた辰房や、彼の前に
それを持って来た伊勢や京楽の目の前では、
両者の戦いを観察していた二番隊の隊士が撮影
に成功していた戦闘の様子が映し出されていた。
その映像を見る限り、班目は旅禍と接触した後
早々に始解を行っており、一見すれば一切の
遊びも無く旅禍に挑んで敗北を喫したように見えなくもない。
事実、コレを見ている各隊の隊長格の面々は
班目一角の敗因は彼がふざけたせいではなく、
単純に旅禍が強かったからだと判断すること
になるだろう。
「はい。まさか実情はさて置いても、護廷
十三隊に於いて最強を名乗る十一番隊の
三席が真正面から戦って力負けするとは
・・・これは正直予想外でした」
「だねぇ。戦闘技術は未熟だけど、霊圧だけを
見れば上位席官はおろか、現時点で副隊長を凌ぐ・・・かな?」
実際、八番隊の副隊長である伊勢は映像を
見てそのように判断したし、京楽もまた
旅禍が予想以上に戦えることに内心で軽く
驚いていた。
と言っても、それに一切動じない者も居るわけで。
「ま、所詮は実力を隠したまま戦いに挑む
ような阿呆です。中途半端に隠すから結局
全体的に実力を出し切れず全部が中途半端。
これでは相手が誰であれ負けるのも道理」
そんな動じない者の筆頭である辰房は、班目の
戦闘映像を見て「声だけ勇者が」と吐き捨てる。
((声だけ勇者?))
言葉の意味は良く分からないが、とにかくすごい罵倒だった。
・・・・・・それはともかくとして。
「あの、実力を隠す、ですか? 見た感じ
班目三席が手加減しているようには見えま
せんけど?」
何処の世界に自身の斬魄刀を破壊するような
相手に手を抜く死神がいると言うのか。
そう思いながら、伊勢は辰房に確認を取れば
問いを受けた辰房はそんな伊勢の常識を
一言で切って捨てる。
「ん? だってこのハゲ。卍解を使っていないだろ」
「「は?」」
だからあの戦闘は手抜きだ。
映像を前にそう言い切る辰房に、伊勢と京楽は
同時に素っ頓狂な声を上げることになる。
「あの、辰房さん?」
「ん?」
「班目三席って卍解使えたんですか?」
「あぁ。一度タコ殴りにした時に挑発したら
激昂してな。実際に卍解はしなかったが、
あの霊圧の高まりは間違いなく卍解の前段階
だろう。それに以前班目から教えを受けていた
阿散井、あぁ今は副隊長だから阿散井副隊長か。
とりあえずあれにカマを掛けたら、あっさりと
暴露してくれたぞ」
「はぁ」
卍解の扱いが軽すぎる。
未だに自身の斬魄刀の始解が出来ていない
伊勢は、そのことに何とも言えない気持ちに
なりながら、そう相槌を打つしか出来なかった。
「まぁ班目君の卍解は後で確認すれば良いさ。
で、今の問題は上位席官の筆頭である三席が
一対一で旅禍に敗れたことと、旅禍の彼が
浦原喜助の弟子を名乗ったことだんだよねぇ」
「ですね」
戦闘自慢の十一番隊の三席が負けた。
それも一方的に、だ。
この事実により、今後旅禍には最低でも
副隊長以上を当てる必要が有ると言う
ことになる。
とは言っても、京楽は自身の姪っ子である
伊勢を危険な相手と戦わせる気は無いし、
辰房としても伊勢を旅禍と戦わせようとは
思っていない。
両者の想いを知る伊勢としては、二番隊を
率いる砕蜂と自分の立場を比べてしまい、
死神として何とも思歯がゆい気持ちを抱いて
しまう所なのだが、ことはソレに収まらない。
「・・・それに旅禍の彼も、ねぇ」
「はい。まさかあそこで堂々と浦原喜助の弟子を名乗るとは思いませんでした」
「よくぞその名を口にした。とその豪胆さを
褒めるべきか、それとも本人から自身の罪を
知らされて居ないのかは不明ですがね。
しかし少なくともコレで彼らを即殺するわけ
には行かなくなったと考えれば、一概に悪手
とは言いきれません」
このことを中央四十六室が知れば、間違いなく
彼らを捕えて尋問し、浦原喜助の情報を吐かせ
るよう命令が下ると言うのは想像に難くない。
それに何より辰房自身も彼らには個人的に
聞きたいことも有るので、やはり即殺する
わけにはいかなくなった。
つまり今後自分たちは三席を真正面から
打ち破るような相手に手加減をして捕える
必要がある。と言うことが確定したわけだ。
正直に言えば面倒この上ないことだが、
百年近く探し求めていた情報がここで手に
入ると言うなら辰房にも伊勢にも京楽にも否は無い。
更に言えば、彼らは情報を持っていると半ば
以上に確信している朽木ルキアに対して
朽木家からの横槍のせいで真っ当な尋問が
出来なかったと言う事情もある。
つまりこれまで目の前でお預けを喰らっていた
ところに、突如として尋問しても問題の無い
相手が現れたと言うことだ。
当然彼らにこれを逃す気は無い。
後の問題は、どうやって旅禍から情報を
搾り取るか? であった。
「旅禍の目的は罪人である朽木ルキアの奪還。
ならば狙うは彼らが朽木ルキアを確保する前か
それともその後か。隊長はどう思いますか?」
「うーん。難しいねぇ」
「えっと、普通なら前では? こちらが
懺罪宮の付近で見張っていれば、向こう
から来るでしょうから、そこを捕えれば
良いと思いますが」
伊勢からすれば、相手の狙いが分かった以上
その近くに罠を張れば勝手に自爆するのでは?
と思うのだが、残念ながらそれは旅禍を殺す
分には良いが、それ以外の全てを軽視している
策に他ならない。
「いいかい七緒ちゃん。山じいの方針にもよる
けどもしも僕たちの方針が『彼ら旅禍が
朽木ルキアを奪還する前に捕えること』とする
なら、旅禍を懺罪宮まで接近させるのは失態に他ならないよ」
大人の都合。と言えばそれまでだが、そもそも
どんな組織にも面子と言うものが有り、その
面子が『誇り』に繋がると言うのは常識だし
更に『罠を張らなければ旅禍を倒せない』
などと言った風評を許すほど、護廷の死神を
統べる総隊長の山本元柳斎重國と言う死神は
生易しい性格をしていない。
「あっ。確かに」
「ですね。それに、だ。連中が懺罪宮に接近する
までの間破壊された建物の補修や怪我人の
治療など、訓練では済まないだけの損害が出る。
それくらいなら今のうちに隊長たちを出して
さっさと旅禍を捕えるべきだと思わんか」
「あぁ。それもそうですね」
大罪人、浦原喜助の関係者に班目一角が敗れた。
この事実が有る以上もはや今回の旅禍の侵入は
訓練の域を超えていると見なしても良いだろう。
ならばさっさと最高戦力をぶつけて彼らを捕縛し
情報を抜き取った後で逆侵攻・・・では無いが、
彼らの裏で糸を引いている浦原喜助に対して
即座に反撃を行うべし。
これが朽木ルキアを奪還される前に旅禍を
捕える際の目的となる。
では後はどうか、と言うと・・・
「ルキアちゃんを解放した後、旅禍の彼らは
どうしても現世に逃げる必要があるだろう?
それを逆探知すれば、僕らは簡単に浦原喜助の
居場所を特定することが出来るよね?」
「あぁ。捕えて尋問しても黙秘や嘘を吐く
場合が有りますからね。下手に時間を稼がれて
逃がすよりは、敢えて泳がせた方が良い。
そう言うことですか?」
「だな。この場合は相手を引き込むことも
計算の内になるから、懺罪宮の付近に旅禍を
近付けても総隊長や護廷十三隊の面目を
穢さずに済む。損害や何やらは・・・まぁ
連中の進行方向の誘導や戦闘を行う際の配置を
多少弄れば最低限に抑えることも出来るだろう」
「なるほど・・・」
極論すれば懺罪宮の前に罠を張る場合でも
誘導などは出来るのだが、それくらいなら
隊長が出て旅禍を潰した方が早いので、
罠を仕掛ける意味が無い。と言う結論になる。
「どちらにしろ山じいに確認だね。
あと辰房君は八番隊の宿舎に旅禍が
接近した時だけ戦闘を許可するけど、
自分から向かっちゃ駄目だからね」
「・・・了解です」
これは京楽による伊勢を戦わせないための
限定的な謹慎の解除とも見れるが、実際の所は
辰房を八番隊の宿舎付近から動かさないように
するための方便である。
彼を自由にすれば、喜び勇んで旅禍と戦闘を
行うだろうと言うことは京楽も理解している。
本来なら、それは良いコトであって、掣肘するような事では無い。
しかしながら、今回の戦闘は捕虜を得るか
向こうを逃がす戦いになる。
そう言った手加減が必要なケースになると、
この辰房と言う死神は一気にポンコツと化す
こともまた京楽は理解しているのだ。
と言っても、まさか宿舎に乗り込んで来た
旅禍を相手に戦うな。などとは言えないので
こうして限定的な許可を出したに過ぎない。
京楽は少なくとも自身が総隊長に提案を行った
後に、死神としての方針が決まるまでは辰房と
言う鬼駒を使うつもりはなかった。
そして辰房も自分が手加減を苦手としている
ことは重々承知している上、今回はその相手が
浦原喜助の関係者である。
連中を目の前にした場合、何処まで自分を
抑えていられるか分からないと言うことも
自覚していることも有り、辰房には京楽から
の命令に逆らうつもりは一切無かった。
こうして
この場の誰もが予想しなかった、まさしく不測の事態が彼らに襲い掛かる。
「報告ッ! 六番隊の阿散井副隊長がクロサキを名乗る旅禍と戦闘に及び、敗北いたしました!」
「「「はぁ?」」」
予想もしなかった急報を受けた三人は、思わず揃って声を上げる。
自分たちが斑目一角と旅禍との戦闘の結末を
こうして報告と言う形で受け、色々と考察を
しているのだから、現場とは多少のタイムラグ
も有るのだろう。
故に、その時間で旅禍が阿散井と戦うことも
有るかもしれないし、斑目一角を一蹴した
相手との戦闘では阿散井とて確実に勝てると
は言えないのもわかる。
だからと言って、三席の後に立て続けに副隊長
との戦闘に及ぶとなれば、それは不測の遭遇戦
ではなく、どちらかが望んだ戦いでしかない。
しかし、だ。そもそも現在副隊長は隊長に
代わって隊員の指揮を執っているはず。
それが、何でいきなり旅禍と戦闘に及ぶのかがわからないのだ。
まさか旅禍が六番隊の隊舎に殴り込みでもかけたのか?
それとも、もしかして朽木隊長が出動命令を出したのか?
まさか現世で見逃した旅禍が暴れ回って
いることに責任を感じて思わず飛び出した?
それとも他に何か理由があるのか?
「・・・とりあえず、そのクロサキ君とやらは
どうなったのかな?」
京楽はどんな状況が重なって阿散井が戦闘に
及んだのかがわからない為、職務や職責と
言ったことは一先ず横に寄せ、阿散井を破った
旅禍がどうなったかの確認をすることにした。
と言っても、これはあくまで『負傷した旅禍を
確保したのはどこの隊だい?』と言う確認で
しかないのだが・・・そんな京楽の気楽な
問いは、報告に来た隊士に沈痛な表情を浮かば
せることになってしまう。
「・・・実は。クロサキと共に居た旅禍が
現場に現れ、阿散井副隊長との戦闘で負傷した
クロサキを抱え、四番隊の山田花太郎七席と
共に下水道に姿を消した、と」
「四番隊?! いや、それよりも、旅禍を
逃がしたと言うのですか?!」
裏切り者の存在や、負傷した旅禍をむざむざと
逃がしたと言う、あまりにあまりな報告に伊勢も
思わず「何をしているんだ!」と叫び声を上げる。
「は、はっ。現場に居た者が追跡しようと
したのですが、突如として姿も霊圧も確認
出来なくなったとのことでした。
現在十二番隊の機械でも追えないそうで・・・
私は隊長から『直ぐにこの情報を八番隊へ伝え
るように』と命じられた次第であります!」
そう言って、中途半端な情報を報告することに
申し訳なさそうな顔をする二番隊の隊士。
しかしその報告を受けた三人は、砕蜂が
自分たちに何を伝えたいかを瞬時に理解し
眉を潜ませる。
「・・・突如として見失った? まさか」
「認識阻害の術式だな」
「はぁ。厄介だねぇ。どうも」
副隊長が負け、その下手人に逃げられた。
この事実だけでも面倒なのに、敵の狙いが
読めないのが、面倒さに拍車をかけていた。
現在京楽や辰房が気にしているのは、クロサキ
の力などではなく、クロサキの後ろに居るのが
判明している浦原喜助の狙いであった。
それは『二番隊隊士の目や十二番隊の機器すら
欺ける術式の使い手がいるのに、わざわざ
クロサキに戦闘をさせる理由は何だ?』と言う
疑問であり、同時に『何故それだけの技術が
ありながら、直接朽木ルキアの下に行かない?』
と言う疑問でもある。
死神の戦力調査か?
それとも浦原による意趣返しか?
はたまた旅禍の動きは何かの陽動で本命は他に有るのか?
どのケースでも面倒なのは確定しているし、
今から今回の後始末に駆り出されることが
確定している京楽は思わず頭を抱えそうになる。
しかし『凶報は単独ではやってこない』と言う法則は、彼ら死神にも適用されるようで・・・
「緊急ッ! 京楽隊長!伊勢副隊長!円乗寺三席!旅禍です!旅禍がこちらに接近しておりますッ!」
「「「・・・なんでさ!」」」
自分達の方針が決まっていない以上、黙って
いれば黙認していたモノを、何故わざわざ
隊士からの報告を受けた三人は、旅禍を
どう扱うべきかを考える為、ほぼ同時に
頭を抱えてしまう。
ちなみにこの時、旅禍の反応を観測していた
十二番隊の隊士は「おいおい、死んだな」
と言いながら茶を飲み。
旅禍を追って情報を提供していた二番隊の
隊士も「終わったな。副隊長に報告しよう」
と、自分の任務が終わったことを確信して
撮影と報告書を書くための準備を行ったと言う。
原作でチャドさんが訪れたのが八番隊の宿舎なのかどうかは不明です。
ただまぁ三席が居て、隊長と副隊長が居たなら隊舎の近くなんじゃないかなぁと思ったりなんかして。
そもそもの話なんですが、原作主人公ってルキアを脱獄させた後ってどうやって逃げるつもりだったんでしょうかね?(ΦωΦ)?
不覚ッ! このとき既に阿散井が負けてたのを忘れてました!
次回、原作での因縁の戦いに終止符が?!ってお話