オリ展開
嫌いな人は読み飛ばし。
辰房が常識を説くことで、茶渡のSAN値を
ゴリゴリと削っている最中のこと。
阿散井との戦闘の後、山田花太郎と
志波岩鷲によって身柄を回収されて
再度下水道に身を潜めながら追手の死神の
目を欺きつつ怪我や体力を回復させていた
黒崎一護は、『副隊長にも勝てた』と言う
事実から自分の力を過信したのか、回復後は
「時間が惜しい」と言わんばかりに正面から
堂々と朽木ルキアが捕まっている懺罪宮に
向かって全力で疾走していた。
「あれ、か?」
しかし、そんなことをすれば彼らを探して
いる死神に見つかってしまうのは明白。
「がはっ?!」
「花太郎!」
「くそっ!」
「岩鷲っ?!」
突如として一向に浴びせられた桁外れの
霊圧に、山田花太郎は呼吸も出来ない程に
追い立てられ、志波岩鷲もまた思わず膝を付く。
「あ~。あんなに怯えてかわいそ~」
自分自身プレッシャーを感じながらも、
二人を心配する一護の耳に、場違いと言える
ような明るい少女の声が響いた。
「なっ?! 二人から離れろ!」
「ん?」
突然「ぴょこっ!」と言う効果音が付きそうな
感じで現れた少女に、一護は思わず声を荒げて
斬魄刀を振りかざすも、本気には程遠い攻撃は
当然のようにひらりと回避されてしまう。
一護の攻撃を回避した少女は、バツが悪そうな
表情をしながら、一護の後方。つまり彼らの
進行方向へと移動する。
「くそっ!」
少女の動きを追って振り返った先には
いつの間にか少女以外にも2人の死神が
佇んでいた。
「馬鹿が。今のはお前が悪い」
「え~」
一人は長身で髪を逆立てたような、刺々しい
感じの髪をした柄の悪そうな死神。
探知能力に乏しい一護ですら、先程から
感じている桁外れの霊圧を発しているのは
この死神だ! と一目で確信するほどの
荒々しさを感じさせる死神だ。
「本来負傷者にはもう少し配慮が必要なの
ですが、そこの裏切り者には良い薬でしょう」
「ですよねー。聞いた剣ちゃん?」
「ちっ」
そしてもう一人は、落ち着き払った大人の
余裕を感じさせながらも、花太郎に対して
容赦のない言葉を投げかけた女性だ。
「裏切り者、だと?!」
一護からすれば花太郎はルキアの救出に
手を貸してくれる同志だ。
それを一方的に裏切り呼ばわりされて
面白いはずがない。
しかしそれはあくまで一護の理屈。
「怒りましたか?しかし、そこな山田七席が
旅禍であり、侵入者であり、阿散井副隊長を
斬った護廷の敵である貴方を癒したのは
事実でしょう? その行為は一般に「裏切り」
と言われる行為ですよ」
「あ・・・あぁ・・・」
静かに、だがはっきりと花太郎の罪状を
口にする女性を見て、花太郎は絶望の
表情を見せる。
「全く以て情けない。まさか私の隊から
裏切り者が出るなんて、ねぇ。
砕蜂さんが言う「温い死神」と言うのは
私のことも含まれていたのでしょう。
いやはや、本当に舐められたものです」
「くっ!」
その言葉と同時に彼女から放たれた霊圧は、
隣の男が放つ痛みを感じるかのような
刺々しいモノではなく、もっと静かなもの
であったが、その静謐さと同時に感じる
圧力はまるで深海に沈められたかのような
息苦しさを感じさせるものであった。
(こいつら、明らかに副隊長の阿散井より強ぇ! まさか、隊長か!)
内心で驚愕しながらもなんとか斬魄刀を構える一護。
しかし、彼はその行動がどれだけ遅く、
そしてどれだけ致命的な行動なのかを
自覚出来ていなかった。
「護廷一三隊四番隊隊長卯ノ花烈。
旅禍の少年よ、志波の子よ、そして
護廷を裏切った罪人よ。
あなた方の旅はここで終わりです」
自分の顔に泥を塗るのは、まぁ良い。
だが護廷を裏切ったことは許さん。
ただでさえ護廷に賭ける思いは総隊長にも
劣らない卯ノ花は、それを裏切った花太郎
に対して明確な殺意を抱いていたし、
咄嗟のこととは言え、自身に武器を向けた
一護のことも明確に『敵』と認識した。
そして敵と認識した相手に情けをかけるほど
卯ノ花烈と言う死神は甘くはない。
「お~卯ノ花さん、本気だねぇ」
「あぁ。後で手合わせしてぇくれぇ本気だ。
・・・一角の尻拭いで雑魚の相手をするなんざ
面倒だと思ってたが、コレを引き出してくれた
ことは感謝してやるよ」
場の流れを完全に卯ノ花に持って行かれた
少女と長身の死神は、そのことに苦情を
言うどころか、卯ノ花が本気で憤りを覚えて
いることに喜びすら感じていた。
ちなみに普段の卯ノ花烈と言う女性は
滅多なことでは怒らないし、目の前の
雑魚のような連中を相手に明確な殺意を
出したりもしない。
一護たちの不運は、彼らと行動を共にする
山田花太郎と言う死神が彼女が隊長を務める
四番隊の席官でありながら護廷を裏切り
旅禍に手を貸したという事実と、ここ数年間
自分が見定めて育てようとしていた死神が
どこぞの三席によって鎧袖一触で蹴散らされ
ながらもしっかりと成長して行く様子を
間近で見せられてきたことによって、彼女の
中に言いようもない鬱憤が溜まっていたことだろう。
『全力で戦える相手が欲しい』
常日頃からそういった思いを抱え込んで
きた護廷最凶の死神が今、旅禍に対して
その牙を剥く。
「いや、本気なのは良いんだが、確かじじいは「殺すな」って言ってなかったか?」
「そーだけど。もう忘れたんじゃない?」
・・・彼女が発した殺意は、隣にいた
死神が思わずツッコミを入れるほど
苛烈なものだったと言う。
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そのころ某所。
「隊長。これ、黒崎死ぬんちゃいます?」
細目の死神がモニターを見ながらそう呟けば
「あぁ。どう考えても死ぬね。・・・さて、これはどうしたものかな」
伊達メガネをつけた死神もまた、細目の
死神の言葉に同意する。
本来の計画では、始解が出来ず鬼道が苦手な
為に正面からの斬り合いしかできない筈の
更木剣八を当てて、黒崎一護の成長を促す
予定だったのだが、その黒崎と一緒になって
朽木ルキアを助けようとした山田花太郎の
存在が、卯ノ花烈を動かしてしまったのが
今回の誤算に繋がっていた。
(回復役が必要だと思ったんだけどねぇ)
さらに今回の『現場は副隊長に任せて
隊長はその監督に当たる』と言う体制も
悪い方向に進んでしまった要因だろう。
結果として彼女は医療の現場を副隊長の
虎徹勇音に任せ、自身は部下の粛清に
乗り出してしまったのだ。
困ったな。と言いながらも『隊長』と
呼ばれた死神はどこか余裕を感じさせる
表情を浮かべながらモニターを見ている。
彼にすれば黒崎の成長にも興味は有るが
「卯ノ花烈の戦力調査を行いたい」と言う
思いもある。
(もう出たとこ勝負で良いんじゃないかな?)
そもそも彼にすれば、ここで黒崎が死のうが
捕まろうが、朽木ルキアを処刑した後に
目的のブツを手に入れることが出来れば
それで良いのだ。
懸念していた「浦原喜助が黒崎一行に対して
何かしらの情報を渡している」と言う様子
もないようだし、今のままでも十分目的が
達成できそうなので、特に手を出す必要性を
感じていないと言っても良いだろう。
「まぁ現状どう転んでも目的は達成できる。
ならば不必要に動かないのが正解だろう」
優先順位を弁えている伊達メガネの死神は、
今は何もしないことを選択する。
「ま、隊長がええ言うなら、僕としては特に言うことも無いですわ」
その選択を聞いた細目の死神も、特に反論
することなくモニターを見学することに
集中することにした。
そしてモニターの向こうで卯ノ花烈と
黒崎一護がぶつかろうとしたとき、
一つの影が現場に舞い降りる。
「おや?」
「ふむ。ここで動くか」
目まぐるしく動く現場の様子を、まるで演劇を
観覧しているかのような様子で眺める二人の死神。
実際彼らにとって今の黒崎一護が必死で
戦っても演劇以上のものにはなり得ない。
他者からの干渉を防ぎたいなら、他者から
干渉されてることを理解した上で、その
干渉を跳ね除ける力が必要なのだ。
現在の瀞霊廷内でそれが出来るのは、当の
伊達メガネの死神一派と、どこぞの三席や
彼の周囲の死神のみであり、それらも彼が
本気を出せばどこぞの三席以外の死神は
抵抗も出来ずに終わると言うことは実証済み。
「せいぜい楽しませてもらおうじゃないか」
故に、彼ら黒幕側の者たちにとって今回の件は
『現世から現れた死神の力を持つ少年の冒険が、
喜劇で終わるのか?はたまた悲劇で終わるのか』
程度のことでしかなかった。
受難と言うか、自分から向かってますけどね。
まさに漫画界の山中鹿之助や!
そしてまさかの卯ノ花=サンが参戦。
まぁ自分の隊から裏切り者が出たら
責任取らなきゃ駄目ですよねぇ。
更木=サンも彼女が出てきたら
おとなしく譲ります。
そして伊達メガネの『隊長』と、細目の死神とは一体・・・(迫真)ってお話。