オリ設定
オリ展開
嫌いな人は読み飛ばし
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
女性に刃を向けるのは本意では無い。しかし
相手は確実に自分より強いし、ここで手を抜け
ば自分に力を貸してくれた花太郎が殺される。
そう判断した一護は、相手が自分を格下だと
油断しているところに奇襲をしかけ、一太刀で
戦いを終わらせようと飛び出した。
しかし、相手は卯ノ花烈。今となっては知る
者も少ないが、かつて最強の剣士として名を
馳せた剣術家であり、剣士としての技量は
他の死神とは一線を画す存在だ。
「遅い」
「なっ?!」
故に、刀を握って一年にも満たない一護の
直情的な攻撃など、見る必要すら無い。
振り下ろしの斬撃を僅かな動きで回避した
卯ノ花は回避と同時に自身の斬魄刀を振るい
一護の腕を切り落とそうとする。
「クソっ!」
一護には卯ノ花の動きは見えなかったが、
天性の勘で腕を狙った攻撃を感じ取った
一護は右手を斬月から離しつつ、卯ノ花から
の攻撃を回避しようと身を翻す。
だが、それすら誘い。
「甘い」
「なっ? ぐあぁぁぁぁ?!」
一護の意識が上半身に偏っていたのを見抜いた
卯ノ花は、瞬時に鞘を使った下段攻撃を放ち、
隙だらけの足を砕くことに成功する。
「およ? 足?」
「逃がさねぇってことだろ」
「・・・えぇ。総隊長からは捕えろと
言われていますからね」
「あ、忘れて無かったんだね!」
「当たり前じゃないですか。私をそこの
更木隊長と一緒にしないでください」
「いや、アンタ絶対さっきまで・・・
「何か?」・・・なんでもねぇよ」
本来なら今の一撃で胴体を切り裂くつもり
だったのだが、先ほどの草鹿と更木の会話が
聞こえていた卯ノ花が山本からの命令を
思い出したことに加え「この二人に狂人
扱いされるのは流石に嫌だ」と考え、手加減
をした結果、足を奪うことにしたと言うのは
卯ノ花だけが知る秘密である。
まぁ鞘で足を粉砕するのが『手加減』として
適切なのかどうかは賛否が分かれるところ
だろうが、少なくとも一護の目の前に立つ
死神は『殺してないから手加減した』と言う
卯ノ花の主張に違和感を抱いていないようだ。
そんな彼女の内心はともかくとして、
一護は彼女が口にした、自分にとって
どうしても無視できない一言に対して
問いただす。
「俺を、捕えるだと?」
足の痛みを堪えながら、それでも精一杯の
虚勢を張って斬魄刀を構える一護。
しかしそれを向けられた死神たちはすでに
一護を『敵』として認識していない。
更に言えば、元々卯ノ花にとっての『敵』は
一護ではなく護廷を裏切った山田花太郎だ。
一護はその『敵』を庇おうとして刃を
向けたがために『敵』にカテゴライズ
されただけ。いわば貰い事故に近い。
その為、卯ノ花は『負傷者』となった一護
に対して追撃を加えることなく、むしろ
『大人しく降伏しろ』と言わんばかりに
柔らかな口調で話かける。
「えぇ。貴方は旅禍ではありますが、
別にコチラは誰も死んでませんからね。
今なら浦原喜助の情報や、朽木ルキアが
現世でどのような行動を取っていたかを
証言することで、貴方の罪を相殺する
ことも出来なくはないでしょう」
負傷者は多数出たが、それは実戦形式の
訓練なら当たり前の話。
卯ノ花も山本も、その程度のことで一護に
対して憎しみを向けることはない。
今の卯ノ花に有るのは、自分の部下が
護廷を裏切ったことに対する怒りと、
少数の旅禍に良いように翻弄された
護廷の死神たちに対する失望。そして
『今後は訓練をもっと厳しくしよう』
と言う決意である。
卯ノ花からの敵意を感じられなくなった
ことで、元々女性に刃を向けることに
抵抗を覚えていた一護の敵意が緩まった。
(・・・未熟な子供ではないか。浦原喜助は
何を考えてこのような子供を送り込んで来た?
我らの油断を誘う? その間に四楓院夜一が
動くか? それに、この少年には自分が囮だと
言う自覚が無いようだが、まさか正面から
乗り込んで我らを突破出来ると本気で考えて
いたのか?)
敵の前で明らかに警戒を緩めた一護を見て
卯ノ花はその未熟さに眉を顰め、次いで
未熟者を送り込んで来た浦原喜助の狙いを
考察する。
「・・・ルキアの行動を報告しろってのは、まだわかる」
「そうですか」
死刑になると言うことで必死で駆けて
来た一護だが、自分が証言することで
ルキアの罪が少しでも和らぐと言うなら
無理をして力づくで脱獄させるよりも
よっぽど常識的な選択だと言うことは
理解出来る。
少なくとも、こちらの言い分に一切聞く耳を
持たずに現世から連れ去て行った朽木白哉の
行動に比べたら全然マシであるので、彼は
ルキアについて話すことを否定しない。
しかしここで何故浦原の名が出てくる
のかが分からない。
「だけど喜助さんの情報って何だ?」
わからないから聞く。
今となっては一護にも浦原が尸魂界と何らかの
関係が有ったと言うことは理解しているが、
少し前の一角や目の前の隊長の様子を見れば
『個人の事情』と言って無視して良いものとは
思えなかったので、一護はその疑問を素直に
口に出した。
「お前ぇに「更木隊長」・・・あいよ」
何も知らない様子を見せる一護を見て、
更木は「お前ぇに話す必要はねぇ。
聞かれたことだけ答えろや」と告げよう
とするも、卯ノ花に止められてしまう。
卯ノ花としても似たような気持ちはあるが、
捕えて尋問して吐かせるのと、向こうから
自発的に自白するのでは話の内容の信憑性が
まるで違う。
また、長年隊長として君臨してきた自分が
『力で吐かせることしか出来なかった』
などと言う結果を出すのは頂けない。
そう考えた卯ノ花は、まずは穏便に接触して
成果を出すことで『自分は更木隊長とは違う』
と言うことを内外に示そうとしていた。
大人には譲れないモノが色々あるのだ。
閑話休題。
一護の態度を見て彼が何も知らされて
いないことを確信した卯ノ花は、捨て石
でしかない一護に憐れみの目を向け、
そして彼が知りたがっている事実を告げる。
「浦原喜助は、先代の十二番隊隊長で
あり初代技術開発局の局長を務めていた
死神です」
「・・・隊長?」
「えぇ。それが百数年前にとある事件を
起こしたこと。尸魂界で禁じられていた
研究を行っていたことなどで裁判を受けて
いたのですがね」
「裁判? それに研究って。あの人は
一体何を仕出かしたんだよ・・・」
事件については内容を知らないので何とも
言えないが、研究と言われてしまうと話は別。
彼が地下に造っていた明らかに違法な空間や
彼が持つ不思議アイテムを知っている一護には
それだけで「浦原さんはそんなことはしない!」
と言い切れなくなってしまう。
「えぇ。研究です。そして彼はその判決に
納得出来なかったのでしょうね。裁判中、
とある死神と共に逃げ出し、そのまま現世に
姿を眩ませたのです」
「何やってんだ・・・」
裁判中に逃げると言うことは、罪を認める
と言うことと同義。それくらいは一護にも
分かる。
その裁判が浦原の言い分を一切聞かず、
浦原が有罪であると言う結果ありきの
査問委員会に近いモノであることを
知らない一護からしたら、完全に浦原
喜助が悪いように思えてしまう。
そして一護はある事実に気付いてしまう。
「なぁ。もしかして、ルキアが死刑になる
理由の一つって・・・」
「えぇ。大罪人である浦原喜助との接触と
彼の情報を報告しなかったことも、彼女の
罪の一つですね」
「なにやってんだアイツは!」
浦原が何を仕出かしたかは知らないが、
少なくとも尸魂界の内部で正式に罪人と
して認知されているなら、現役の死神で
あるルキアが接触したら駄目だろう。
ルキアのポンコツ加減を痛感して頭を抱えて
しまいたくなる一護に、卯ノ花はさらに追撃
を加える。
「浦原喜助は優れた技術者であっても
優れた剣士ではありません。また優れた
指導者でもありません。加えて彼は我々の
実力も知っています。
そんな彼が、何故まだまだ未熟な貴方を
ここに送り込んで来たのですか?」
浦原喜助の狙いは何か。彼を知る者なら
誰もが疑問に抱くであろう問いである。
自分を未熟者と言われた一護は思わず反論
しようとするも、目の前の女性が自分よりも
遥かに強いのは分かっているし、それに
浦原の罪が本当なら悪者は自分たちだ。
元々力づくで罪人を脱獄させようとする
時点で悪者なのだが、それも一護なりの
理由が有ったからこそ、後ろめたい気持ち
はなかった。
しかし浦原が罪人で、ルキアの処罰に
ついてもしっかりとした理由が有ると
なると話は違う。
(少なくとも目の前の死神には勝てねぇ。
それに、ここで暴れて印象を悪くするよりも
大人しく情報を渡すことがルキアの減刑に
繋がるのなら・・・)
もしも一護が戦ったのが、技術の欠片も無い
更木剣八や、現世での因縁がある朽木白哉
なら、ここまで大人しく話は聞かずに反感を
抱いて抵抗していたかもしれない。
しかし目の前の相手はタダでさえ一護が
敵意を向けづらい女性であり、さらに
一瞬の攻防で「絶対に勝てない」と分かる
ほどに隔絶した技術を持つ死神だ。
技術は一日で身に付くモノでは無いし、
そもそも自分は死神になってから数か月の
素人でしかないことを再度自覚させられた
一護は、卯ノ花の持つ技術に対して素直に
敗北を認めていた。
「「・・・・・・」」
それらの事情から、一護は大人しく降伏し
ようとした。しかしそんな一護の目に
無言で自分を見る岩鷲と花太郎の姿が映る。
その目はまるで
『ここまで来て諦めるのか?』と
自分を責めているようで・・・
「なぁ、卯ノ花サンって言ったか?」
「えぇ。なんでしょう?」
「俺が大人しく話すって言ったら、
コイツらはどうなる?」
岩鷲に関しては半分自分から首を
突っ込んで来たようなものだが、
事の発端は自分の我儘。
花太郎に至っては、自分たちに誘拐された被害者である。
そんな二人を見捨てて、自分だけ
助かるような真似は出来ない。
一護の質問の意図を正確に理解した
卯ノ花は、偽ることなく真実を告げる。
「そこな暑苦しい男性は、旅禍である貴方に
協力した罪と、瀞霊廷への不法侵入の罪で
罰を受けることとなりますが、死罪とされる
ことは無いでしょう」
今回の事はあくまで訓練。当然障害に
ついての罪は問われない。
不法侵入に関しても、あの侵入方法を知った
ことは瀞霊廷にとってもマイナスではない。
それを考えれば、岩鷲には情状酌量の余地は
十分以上に有る。
そう告げる卯ノ花の言葉に嘘を感じなかった
一護は、自分たちの決死の潜入を『訓練』
扱いされていたことを知って何とも言えない
気分となったが『自分の気分よりも優先
するべきものが有る』と考え直し、不満を
押し殺して敢えて卯ノ花が言及しなかった
もう一人の協力者について尋ねる。
「・・・花太郎は?」
「無論、処刑です」
「ひぃ?!」
「如何なる理由があろうとも、護廷の死神が
旅禍に連れさられたり、旅禍に脅されたからと
言って負傷した旅禍を癒すなど有り得ません」
その死神に癒された旅禍のせいで、被害が
拡大したのは紛れもない事実。
そもそも処刑に不満が有るなら、彼は
最初に上司である卯ノ花に対して意見具申
するべきであり、旅禍に攫われたあとで
「実は僕も処刑に反対なんです!」と
言ったところで、命惜しさに旅禍に迎合
したようにしか見えない。
兕丹坊を殺したどこぞの三席の言い分の
ように『敵を利するくらいならば死ね』
とまでは言わないが、地獄蝶で助けを
求めるなりなんなり出来たはず。
ソレをしない時点で山田花太郎の裏切りは
明確であり、護廷の死神としてそれを看過
することは出来ない。
それが卯ノ花の言い分であった。
「・・・・・・」
花太郎の罪状を言い切る卯ノ花に、
「攫われた被害者だから許して欲しい」と
嘆願しようとしていた一護も、
『攫われた? ならば何故助けを呼ばない?』
と言われてしまえば返す言葉など無い。
「山田花太郎とて事が露見すれば処罰を
受けることは重々承知の上で貴方に助力
したはず。
その決断の結果がこれならば、彼自身が
受け入れなければなりません」
『今更助かろうと思うな』
ゴミを見るかのように花太郎を見る卯ノ花と
その視線と放たれる霊圧に怯える花太郎。
両者の様子を見た一護は、彼女の言い分が
正しいと感じながらも、花太郎を見捨てる
決断は出来なかった。
「・・・」
「い、一護さん!」
「?」
己と花太郎の間に立ち、無言で斬魄刀を
構える一護を見て、卯ノ花は本気で
意味が分からない。と言う表情を見せる。
「そこな花太郎は私の部下。故に私が
裁きます。貴方はそれを邪魔する、と?」
「・・・あぁ」
「貴方では私に勝てませんよ?」
「・・・あぁ」
「貴方が抵抗すれば、朽木ルキアさん
に関する証言に信憑性が無くなり、彼女に
とって不利な結果になるかもしれませんよ?」
実際は処刑が決まっているので、一護が
何を言ったところで不利も何もない。
だが『名誉』と言う点であれば一護の
証言によって少しは報われる可能性が
あるのは事実である。
朽木の家に迷惑をかけていることを
自覚しているルキアにしてみたら
それだけで十分な恩情となるだろう。
「・・・っ! それでも、だ」
言われなくとも、己の行動がルキアにとって
不利になることを理解している。
しかし一護は目の前で花太郎が犠牲になる
ことを認めることは出来なかった。
これを主人公体質とでも評するか、それとも
思春期の少年らしいと評するかは議論が
分かれるところかも知れないが、この場に
於ける選択として評価するなら『愚か』の
一言であろう。
「わかりませんねぇ。そもそも貴方は
朽木ルキアさんを助けに来たのでしょう?
その最中、お仲間が一人も死なないと
でも思っていたのですか?
それとも浦原喜助から『死神が人間で
ある貴方たちを殺すことは無い』とでも
吹き込まれましたか?」
「そんなことは言われてねぇ!」
自分の覚悟が穢された。そう受け取った
一護が声を荒げるも、声を荒げたいのは
卯ノ花の方である。
「では貴方は元々我々を相手にしても
誰も死なないと思っていた、と?
『危険なら自分が護る。敵は全部蹴散らす。
ルキアも助け出して、皆で仲良く現世に帰る』
そう思っていたと? その程度の実力で?
・・・護廷の死神を舐めるな」
「ぐっ!」
己の逆鱗に触れるどころか、唾を吐いて
足蹴にするような一護の主張に、卯ノ花は
「花太郎ごと斬り捨てる」と言わんばかり
の殺意を向ける。
まぁ卯ノ花が本気で相手を殺すと決意した
場合は殺意など見せずに斬るので、現状は
まだ冷静なのだが、卓抜した剣士が放つ
殺意に慣れていない一護にはそんなことは
わからない。
卯ノ花が放つ殺意に耐え切れなくなった
一護が、足の痛みを堪えながらもなんとか
前に出ようとしたとき、
「一護ッ! この馬鹿者が!」
突如として一護を罵倒する声が響く。
「は?」
いきなり聞こえて来た女性の声に、反応
してキョロキョロと周囲を見回す一護と、
そんな彼の素人丸出しの動きに溜息を
堪えながらも、声の主の気配を探る卯ノ花。
「は?ではないわ!儂は言ったじゃろうが!
『隊長や副隊長と戦うな』と!」
あと数歩詰めていたら斬り捨てられていた
であろう一護を救ったのは、突如として
現れた、褐色のどこか猫を連想させる女性であった。
「え? その言葉、まさか」
『隊長や副隊長と戦うな』それは瀞霊廷に
侵入する前日に聞かされた言葉である。
だが、それを言ったのは目の前の女性では
無く黒い猫だったはずで・・・
「ほぉ。予想外の大物じゃねぇか」
「・・・久しいですね四楓院夜一」
「おう。更木剣八はともかく、まさか
貴様までもが前線に出て来るとはの。
一体どういう風の吹き回しじゃ?」
今まで一護を『斬るまでもない雑魚』と
判断していたが故に、積極的に前に出る
ことなく卯ノ花のツッコミ役に回っていた
更木剣八が、斬りがいのある相手の出現に
テンションを上げれば、卯ノ花は「面倒な」
と言う顔をしながら乱入者に声を掛ける。
その両者に対して不敵な笑みを浮かべつつ
一切警戒を解かない女性を見て、彼女に
庇われている形となった一護はと言えば、
「しほういんよるいち? やっぱりアンタ
夜一さんか! つーかアンタ、この人らの
知り合いなのかよ! でもって浦原さんが
罪人ってホントか? いや、それ以前に
アンタって猫じゃなかったのかよ!」
緊迫した空気の中、的外れな驚きの声を上げていた。
「「「・・・・・・」」」
猫の姿しか知らなかったとはいえ、もう
少し空気を読んで欲しいところである。
実際、夜一と更木剣八、卯ノ花烈の三名は
なんとも言えない表情となったし、
この様子をモニターしていた伊達眼鏡の隊長
や細目の隊長も、空気を読まない少年と
その少年のせいでグダグダになりつつある
現場の様子に、思わず二人揃って
「「これはひどい」」
と声を上げ、現場に居る者達に同情するような視線を向けていたとか。
突如として死神の前に現れた四楓院夜一。
彼女の参戦により、尸魂界の混迷はさらに加速していくのであった。
一護=サンはなぁ。ボケも出来ますが、基本はツッコミなんですよね。
でもって基本的に彼は力任せの正面突破しか能が無いので、長い間研鑽を続け卓抜した技術を誇る卯ノ花=サンとの相性は最悪です。
卯ノ花=サンとしては、浦原喜助から
謎のアイテムを渡されている可能性を
考慮して戦闘よりも交渉で話を終わらせる
つもりでしたが、花太郎のせいで交渉決裂。
ホント、碌でもねぇ裏切り者ですってお話。