オリ展開
嫌いな人は読み飛ばし。
「・・・未熟なガキを斬る趣味はねぇ。だが
相手が元隊長の四楓院夜一なら問題ねーな」
「ちっ」
獰猛な笑みを浮かべながら卯ノ花の横に
並び立つ更木剣八の姿を見た夜一は、自分の
存在が彼のやる気を引き出してしまった
ことを理解し、思わず舌打ちをしてしまう。
流石の夜一も足手まといを抱えて二人の
隊長に勝てるとは思っていない。
更に、現状では一護たち全員を救うなど
不可能であることは明白。
だが、夜一や浦原の知り合いである空鶴の
弟である志波岩鷲は殺されないようだし、
花太郎に関しては、元々夜一の知り合いでも
ないので、夜一に助ける義理は無い。
卯ノ花烈が言ったように、裏切りが判明
したら殺されることくらい覚悟をした上で
一護の味方をしたのだろうから、夜一も
『今さら命を惜しむな』と言って終わりだ。
そもそもの話だが、夜一は朽木ルキアの
命を助ける為に尸魂界に来たわけではない。
彼女の目的は、浦原が作った『とある危険物』
の回収と、浦原と自分を嵌めてくれた連中の
罪を暴くことだ。
その結果を得る為なら、一護とて捨て石に
するし、朽木ルキアのためとは言え己の
感情で護廷隊を裏切ったくせに、死を
恐れて震えている花太郎には、一人の死神と
しても、元隊長としても嫌悪感がある。
よって、夜一には花太郎を救う気は毛頭ない。
不適に笑いながらも夜一は花太郎と
岩鷲を見捨て「どうやって足を痛めた
一護を逃がすか?」だけを考えていた。
逃がそうとする夜一と、斬ろうとする剣八。
互いの間の空間が歪むかのような、まさしく
一触即発の空気が場を充たす中、その空気を
吹き飛ばす声が響く。
「はぁ? 夜一さんも元隊長なのかよ?!
つーか、まさか、さっき卯ノ花さんが言ってた
裁判中の喜助さんを逃がした死神ってアンタの
ことか! 一体何してんだよ?!」
「「「・・・」」」
空気を読まない一護の言葉によって再度
緊張感を吹き飛ばされた三者は、揃って苦い
顔をするも、流石に一護のように目の前の
敵から注意を逸らすような真似はしない。
むしろ揃って苦い顔をしたことで、一護が
思わず後退りするような雰囲気が生まれる。
(今じゃ!)
そんな雰囲気の中、一護の性格を知って
いた夜一がいち早く緊張感を取り戻す。
「おっ?」
そして夜一は、どんな状態でも反射の域で
斬魄刀を抜ける技術を持つ卯ノ花ではなく、
顔を顰めながらも棒立ちをしている更木
剣八に向かって拳を繰り出した。
その速さはまさに瞬神。
さらに夜一は鬼道の力を拳に纏わせる
ことで、爆発的に攻撃力を高めている。
(まず一人ッ!)
本来は全身に鬼道を纏い、攻撃力だけ
でなく速度も増して必中の攻撃を繰り出す
技なのだが、そこまでやれば向こうも
警戒してしまうし、そもそも彼女が知る
更木剣八と言う死神は相手の攻撃を
回避するような死神ではない。
敵の攻撃を敢えて受けて、その威力で相手の
実力を量るような、規格外の死神なのだ。
なので、夜一は自分の攻撃が必ず当たると言う
前提で、細かい駆け引きや技術を使わず、ただ
最大最強の攻撃を繰り出していた。
これが更木剣八を知る死神が、彼を倒す
ことを考えた際に最初に考え付く対処法
である。
夜一もまたその考えに則って己の最大
最強の技である【瞬閧】を繰り出したのだ。
だが、ここで彼女は大きなミスを犯す。
「あぁ。
良いが、この後のこともあるんでな」
「なんじゃと?!」
意外! それは回避ッ!
必ず受ける。
そう思われていた更木剣八が取った行動は、まさかの回避であった。
ありえない! 目を見開く夜一だが、現実は
非情である。基本的に夜一が知る更木剣八は
過去のものでしかない。
しかし今の彼には、どこぞの三席だけでなく、
その弟子にまで腹を貫かれた経験があり、
今更その劣化版とも言える技を喰らうつもり
は無かった。
喰らった場合の損傷と、その後に来るであろう
横にいる隊長からの駄目出しを嫌って、受ける
ことよりも回避を選んだとも言う。
「おらよっ!」
何はともあれ、剣八は夜一の攻撃を受けずに
回避を選択。それと同時に、剣八の取った
予想外の行動に驚愕し、身体を硬直させている
夜一に容赦なく斬りかかる。
「くっ!」
空蝉を使おうにも、攻撃に意識を割いて
いたせいで反撃に対する備えを怠っていた
ことや、夜一が想定していたよりも剣八の
斬撃が格段に速く、鋭いこともあり、夜一は
無傷で回避することを諦め、咄嗟に左腕で
抜いた斬魄刀で剣八の攻撃を受ける。
「う、うぉぉぉぉぉ?!」
しかし体勢の不備もあり、剣八の放つ斬撃の
重さを殺しきれなかった夜一は、そのまま
周囲の建物に向かって弾き飛ばされてしまう。
「夜一さん!」
気が付いたら夜一が吹っ飛ばされていた。
正直一護には何が何だかさっぱりわかって
いなかったが、超スピードで行われた
隊長同士の戦いは夜一が敗北したと言う
ことだけは理解出来た。
(同じ隊長同士でこんなに差が有るのかよ!)
それを理解してしまった一護は、
「どうやってこの場を切り抜けるか」を
真剣に考えるも「どうしようもない」と
言う結論に至り、絶望の表情を浮かべる
ことしか出来なかった。
「この程度かよ。ま、卍解したらどう
なるかはわからねぇ、か」
そんな一護を横目に、剣八はつまらな
そうな顔をしたがすぐに考え直す。
相手は腐っても元隊長。
そして隊長は自分以外の全員が卍解を修得
しているのだ。
そのことを思い出し、斬魄刀を抜いた
夜一が本気を出すことを期待する剣八を
卯ノ花からの無慈悲な一撃が襲う。
「・・・四楓院夜一の卍解は戦闘向け
ではありません。
また彼女は斬より拳に特化した鍛え方を
していたので、戦闘に関しては斬魄刀を
使わないほうが強いと言われていました」
「はぁ?!」
「まぁ、あれから百と数年経ちましたから
この間に斬を徹底的に鍛えていれば話は
別かも知れません。が、先ほどの動きを見る
限り期待は出来そうにありませんね」
「おいおい、マジかよ」
「えぇ。本気です。大体、四大貴族の娘で、
隠密機動の長である彼女には個人的な武勇など
求められておりませんからね。
・・・求められていた組織運営についても
到底褒められたモノではありませんでしたが」
「はぁ。下らねぇ」
自分よりもよっぽど見る目が有る
卯ノ花の言葉を受け、更木剣八の
やる気が目に見えて落ちる。
「・・・言ってくれるのぉ」
「夜一さん! 無事・・・そ、その腕はッ!」
無事だったのか! そう思って顔を
輝かせた一護だが、夜一の姿を見た
瞬間、再度その表情を曇らせる。
「あぁこれか? さすがは剣八と言ったところじゃの」
倒壊した建物の残骸から夜一がその姿を
現し、不敵に笑うも、先ほど剣八の一撃を
防いだ夜一の左腕はあらぬ方向に曲がって
おり、素人目にも重傷と分かるような
状態であった。
「事実でしょう? 今の更木隊長の斬撃で
それだけの損傷を負うようでは、とてもでは
有りませんが我々の相手にはなりませんよ?
それに貴女に捨てられた二番隊がどうなったか、
元隊長なら想像が付くのでは?」
「・・・・・・」
剣八の一撃で重傷を負ったのも事実なら、
理由が有るとはいえ、自分が護廷の
裏切り者として手配されたのも事実。
己の行動のせいで残された者達に迷惑が
掛かったであろうことは想像に難くない。
それが隊長として軽薄な行動であったと
言われればその通りだし、夜一自身
隊長として真面目であったか? と問い
を受けたのなら『真面目ではなかった』と
返答するしかないような職務態度であった
ことも確かな事実である。
故に卯ノ花の言葉に夜一は返す言葉もなく
無言を貫くだけ。
そんな彼女を見た剣八は「拍子抜けだ」
と舌打ちをしながら斬魄刀を鞘に納める。
「・・・なんのつもりじゃ?」
「あ? 元々四楓院家や中央四六室から
手前は殺すなって命令が出てんだ。
だから、俺がやったら殺しちまうっての
がわかった時点で手加減が出来るヤツに
任せるのが妥当だろうが」
「ちっ!」
「否定はしませんが、そろそろ貴方も手加減
くらい・・・いえ、貴方には不要ですね」
せっかくどこぞの三席のおかげで剣八の箍が
外れかけているのだ。なのにここで手加減
などを覚えられて小さく纏まられては困る。
そう判断した卯ノ花は、夜一に向き直る。
「聞いての通りです。大人しく投降
するならその傷の手当をしましょう。
抵抗するなら手足の腱を斬ってから捕え、
牢で治療をすることになります。
・・・いかがなさいますか?」
圧倒的な技量で全ての小細工を斬り伏せる
卯ノ花に対し、小細工を弄することを前提
に戦う夜一。その相性は夜一が自覚する
ようにすこぶる悪い。
さらに問題なのが先ほど剣八に瞬閧を
回避され、反撃を受けたことだ。
勿論反撃の際に受けたダメージもある。
しかしそれ以上に問題なのは、剣八が瞬閧の
攻撃力を知っていたことや、迷わず回避を
選んだことであり、その両方に対して
卯ノ花が何の反応も取らなかったことだ。
このことから夜一は、自身の切り札が
切り札足り得ていないと言うことを
確信してしまう。
(くそっ! 勝てる目がまるで見えぬッ)
今、夜一を前にして降伏を勧告している
のは、切り札が通用しない上に、
中途半端な攻撃を全て潰す技量を持ち、
多少のダメージを与えても即座に治療を
行い戦闘を継続してくる剣の鬼。
どう考えても夜一が単独でどうにか
出来る相手ではない。
「くっ。・・・『潜め影狼』」
「あぁん?」
「・・・旅禍を見捨てて逃げますか」
勝てないなら、逃げる。
自身の目的を忘れていない夜一は
即座に始解を行い、その姿を眩ませる。
「よ、夜一さん?「貴方はもう眠りなさい」ぐはっ!」
夜一に置いて行かれた形になったことに
気付いた一護は、すぐに卯ノ花と剣八を
警戒するも、一護の拙い警戒など卯ノ花
からしたらただのお遊戯以下の児戯に
過ぎない。
「更木隊長。草鹿副隊長。これを任せます」
「・・・あいよ」
「はーい」
即座に一護を気絶させた卯ノ花は、一護を
剣八とやちるに任せ、自分は元々標的と
していた山田花太郎の前に歩みを進める。
「さて、お待たせいたしました。
ナニカ言い残すことは有りますか?」
「ひ、ひぃ?!」
「・・・それが最期の言葉ですか。あぁ、
ご家族にまで類は及ぼしませんので
安心して逝きなさい」
「う、うわぁぁぁぁ!」
「花太郎ぉぉぉぉ!」
花太郎は絶えず襲い来る卯ノ花の威圧に
耐えかねて、思わず走り出す。
そんな彼の背に岩鷲の悲痛な叫び声が上がる。
「が、岩鷲さ・・・「未熟」・・・え?」
岩鷲の存在を思い出した花太郎が
思わず振り向いた時、すでに
卯ノ花は斬魄刀を納刀していた。
「う、の・・・たい・・・」
ドシャッ。
「逃げるなら逃げる。戦うなら戦う。
上位席官がその判断すら出来ないとは。
これは私が甘やかしすぎたせいですね」
自身が真っ二つに分断した花太郎だった
モノを見て、卯ノ花は冷たい声で呟いた。
この後、卯ノ花は四楓院夜一を逃がした
ことと自隊から裏切り者を出した責を
負って、自身を降格するよう願い出る。
しかし総隊長はそれを受理せず、当座の
の処分として、今回の騒動が鎮まる
までの間の謹慎処分を下すこととなる。
~~~
「ふむ。これはこれで悪くないね」
黒崎一護が殺されずに捕えられたこと。
自身が警戒していた相手が勝手に謹慎処分に追い込まれたこと。
そして四楓院夜一の斬魄刀の能力を見たこと。
一連の流れに於いて、自身が何も手を
下さなくとも得だけを享受する結果と
なったことを確信した伊達眼鏡隊長は、
ただ薄い笑みを浮かべていた。
原作主人公、暑苦しい男と友にタイーホ。
山田花太郎七席の死亡確認。
よって、済まない=サンによる志波家の男に対する侮蔑もなければ、病弱=サンによる『ふう、やれやれ』も、夜一=サンによる挑発も無しです。
夜一=サンの斬魄刀は当然オリ斬魄刀。
公式?では使わない方が強いって話ですので、拙作では始解や卍解をしても特に霊圧に変化がないと判断し、常時解放型の鬼道系の斬魄刀ってことにしております。
そう言えば、原作では剣ちゃんがドヤ顔で『俺の斬魄刀は初めから封印なんかしてねぇ』とか言ってましたけど、後から普通に始解してましたよね?
そもそも封印とは一体……ってお話。