とある侍の漂白剤   作:カツヲ武士

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またまたキンクリ!

オリ設定・オリ展開。
嫌いな人は読み飛ばしで。


7話。常識は投げ捨てるもの。

「破道の三十三。蒼火墜!」

 

三十番台の詠唱破棄された鬼道が放たれ

その名の通り青い炎が俺に襲い来る。

だが・・・

 

「温い」

 

込められている霊圧が足りないのか

それとも詠唱破棄の影響なのかは

知らないが、威力が弱過ぎる。

 

そう判断した俺は始解もせずに純粋な剣術で、鬼道の核となる部分を切払う。

 

「くっ!破道の五十七・大地転踊!」

 

己の鬼道が切り裂かれたことに狼狽する

ことなく、五十番台の鬼道を詠唱破棄で

発動させる技術は見事。

 

周囲から岩が俺に向けて飛んでくる。

だがそれも・・・

 

「遅い」

 

襲い来る岩は音もなく振り払われた斬魄刀

によって粉塵と化す。

 

と言うか、プラズマである炎と個体である岩だと、

どう考えても岩の方が最大ダメージ少ないよな?

なんでこれが五十番台なんだ?

 

それにこれって後述詠唱しても威力とか

変わらないよな?岩だし。

 

「くっ!」

 

鬼道衆に問い合わせれば「触れるな」と

言われそうなことを考えながらも、相手が

打ってくるであろう次の手を予測する。

 

可能性があるとすれば詠唱した上での

六十番台か?

 

そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「えいっ!」

 

まさかの踏み込みからの白打である。

 

いや、確かに彼女は白打の能力もそこそこ高い。

 

しかし彼女の本領は鬼道と、状況把握能力にある

そんな彼女が突っ込んできたという事は・・・

 

「縛道の六十一、六杖光牢!」

 

間合いを詰めてからの縛道。

それも六十番台詠唱破棄とは。

 

いやはや若者の成長は素晴らしい。

本心からそう思うが、残念ながら彼女の

行動は大前提が間違っているので、

俺には通用しない。

 

「むんっ」

 

「えぇ?そんなの有り?!」

 

放たれた六本の光帯を切り裂けば、彼女が

驚愕の声を挙げた。

しかし何というか・・・

 

「当然、有りだな」

 

「あうっ!」

 

後述詠唱をしようとしていたのか、

もしくは二重詠唱をしようとして

いたのかは知らないが、隙だらけの

彼女の頭をポンと斬魄刀の峰で叩いて

模擬戦は終了する。

 

 

副隊長となって早20年。俺は五席となった伊勢七緒と日々の鍛錬を行っていた。

 

「・・・あーうー。鬼道も縛道も切っちゃうなんて、ホント円乗寺副隊長は反則ですよねぇ」

 

感想戦と言う名の反省会を行っていると、

伊勢はそんなことをいってくる。

 

逆の立場ならそう思っても不思議ではない。

しかしなぁ。

 

「隊長格ならこの程度当たり前にやるぞ」

 

総隊長とか普通に切るし。流刃若火を始解

させたらほとんどが消されるしな。

 

そういったことが出来る相手が居るのだから

俺が始解しようがなんだろうが鬼道が通用

しない相手を想定するのは大事なことだ。

 

そう言ってやると伊勢は

 

「いや、隊長って言われましても・・・」

 

と、何とも言えない表情をして俺を見てくる。

このままだと俺がアレな扱いになりそう

なので、一応補足することにした。

 

「いや、斬魄刀には鬼道系の斬魄刀もあるだろう?」

 

「・・・えぇ」

 

斬魄刀の話になると、ただでさえ疲労で

低下していた一気に伊勢のテンションが落ちる。

 

これは伊勢が浅打を己のモノに出来なかった

ことに劣等感を抱いているからなのだが、

俺に言わせればそんなのはどうでも良いことである。

 

なぜなら、現状護廷一三隊に所属する

死神の中には始解が出来ない死神が

ごまんと居るからだ。

 

始解が出来ないなら、彼らの持つ浅打は

ただの脇差に過ぎない。

 

それなら白打や鬼道に精通している伊勢

の方がよっぽど優秀な死神と言えるだろう。

 

だから自分に自信を持てと言いたいのだが、

俺が言っても嫌味にしかならんという事は

理解しているので、今は鍛錬を積み実績を

上げさせている最中だったりする。

 

その結果が五席なのだから、もう少し

誇っても良いようなものなのだが・・・

 

いや、現状で満足されてもらっては困るので

もう少し劣等感は持っていて貰おう。

 

「・・・・・・」

 

あぁ。伊勢がじっとこちらを見てくるが

説明の途中だったな。

伊勢の育成に関しては後にしておくか。

 

「つまり、その気になれば斬魄刀を通じて鬼道を放つことも可能なわけだ」

 

剣からビーム!ってな。

 

「いや、その理屈はおかしくないですか?」

 

真顔で聞いてくる伊勢だが、何がおかしいものか。

『金剛爆』や『牙気烈光』がまさにそれだろうが。

 

「そもそもの話だが、手のひらから鬼道を放つ意味もなかろう?」

 

「・・・そんな、いや、けど」

 

なにやら考え込み始めたが、実際の話

手のひらから鬼道が放てるなら、肘でも

膝でもつま先でも、なんなら目や口から

だって放てるだろう?

 

髪の毛とかまでは言わんが、もう少し

可能性を考慮すべきだと思うぞ?

 

「えっと、つまり副隊長は、ご自分の

斬魄刀に鬼道の力を載せて、私の鬼道を

斬っていると言うことでしょうか?」

 

「うむ。その通りだ」

 

いぐざくとりぃ。

 

「えぇぇぇ・・・」

 

信じられないものを見た!って感じの

目を向けて来るが、この程度で驚かれてもなぁ。

 

なんというか、危機感が足りないんじゃないか?

 

「伊勢よ。席官たるもの油断してはいかんぞ。

そもそもの話、これからお前が戦う事になる

敵が隊長クラスじゃないと誰が決めた?

まさか何の情報もない相手との戦闘で、

『鬼道を切るなんて想像してませんでした』

と言えば、向こうが手加減してくれると

でも思っているのか?」

 

「・・・申し訳ありません」

 

浦原喜助によってリサを含めた7人の

隊長格と副鬼道長が嵌められて、

一方的に敗れたのはそれほど昔の話では

ないと言うのに、席官がこの有様ではな。

 

そう思うも、席官でしかない伊勢と

副隊長の俺とでは得られる情報量に

差があるのも事実であるし、そもそも

あの件については京楽隊長も細かい

情報を持っているわけではない。

 

ただ分かっているのは、彼らは浦原喜助

が行った『虚化』の実験によって死神と

しての尊厳を貶められたということと、

その浦原喜助が裁判中に四楓院夜一や

鬼道長の握菱鉄裁らに助けられ、

尸魂界から現世に逃げ出したことくらいだ。

 

その後の足取りが全く掴めていない以上、

席官として現世に行く可能性がある伊勢は

俺たち以上に注意をしなくてはならないというのに・・・。

 

「す、すみません!もっと頑張ります!」

 

様々な情報を伝えることが出来ない

もどかしさに顔を顰めていると、

それをどう思ったのか、伊勢は

焦ったような顔をして頭を下げて来る。

 

ここで俺が知る理想の上司なら優しく

「頑張り過ぎは良くない」とか言うの

かもしれんが、残念ながら俺たちが

居るのは失敗=死の世界。

 

それも死ぬのは本人だけじゃないんだ。

 

油断するくらいなら追い込みすぎる

くらい追い込むべきなんだよ。

 

それに彼女の叔父である京楽隊長から

直々に鍛えて欲しいと言われた手前、

中途半端はいかん。

 

メガネを掛けているから、目から鬼道は

勘弁してやるが、少なくとも手や足に

鬼道の力を纏って攻撃出来る程度には

なってもらわんと。

 

斬魄刀を使えないハンデを覆す為にも、しっかりと鍛えてやろうじゃないか。

 

そう決意した、円乗寺はこの後、徹底的に

伊勢七緒を鍛えることになる。

 

鍛えられる立場となった伊勢七緒も、周囲に

どれだけ止められても円乗寺との鍛錬を

止めることはなく、ひたすらに鍛錬を積み

その実力を上げていったと言う。

 

それから数十年後、護廷十三隊でも珍しい斬魄刀を持たない副隊長が生まれることになるのだが、それは後のお話である。

 




伊勢=サン超強化フラグ。
瞬閧?ナニソレ?(ΦωΦ)?

油断慢心とオサレイズムは表裏一体ってお話。

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