この世界で出会った、この類のゲームは初めてだと自称している、ちょっとだけ、いやかなり強さと数字が一致しない友人。
心のどこかで、「先輩としての矜恃が許しません!」と思ったのも束の間、戦いを何度も後ろから見届けたこの一件以降は、友人の変な所、ではなく頼れる所だと思って気にしなくなりました。
「でも、料理まで上手だなんて、ちょっとズルいと思いませんか? これじゃあ万能じゃないですか」
「そうかしらぁ?」
カウンター裏の椅子で足を振り子にしている私の話し相手は、私をこの世界に誘ってくれた友人のリっちゃん。もといリーチェです。彼女は現実世界での友人であり、ケっちゃんとは違ってその世界の顔をお互い知っています。
「でも良い子じゃぁない。聞いた感じは冒険心に溢れた子供みたいに聞こえるわぁ」
「子供……。言われてみると、確かに子供っぽいですね。私より背丈が高い子供って考えると違和感がすごいですけど」
「レイナちゃんはちっちゃいものねぇ」
「ぷー。どうせチビですよー」
それに比べてケっちゃんは、女性平均に倣った様な体型です。
「はぁ。私がもう少し大人の体で動けると良いんですけど……」
「何度も試したじゃぁない」
その度に強烈なVR酔いに襲われたので、今はやらないと決めています。決めていますけど、だからって望んでないわけじゃないです。
「動けるといえば、ケっちゃんの身のこなし、凄かったですよ。剣道や剣術を習ってるとかじゃないです、あれはきっと剣士の生まれ変わりです」
「大袈裟ねぇ」
「信じてないですね?」
「まさかぁ、そんな事ないわぁ」
疑わしいですね……。
まあ話しておいてなんですけど、確かに直接見もしていないなら信じ難いのは当然です。
「意識していないかもしれませんが、私の射線を塞がずに戦ってくれるんですよ。そこまでしてくれる前衛がどれだけ貴重か……」
まあそんな事言うぐらい前衛さんと共闘した事は無いんですが。
「そんな事言う程パーティ組んだ事ないじゃぁない?」
「分かってますよそんな事」
どうせ私はまともにお話出来ませんよー……。
これでもだいぶマシなんです。家庭科部の友達でさえ吃る始末。唯一、単語を繋ぎ繋ぎでしか話せない私に、嫌な顔せず話し相手をしてくれるリっちゃんはには感謝しています。
突然、「VRのアバター越しなら話しやすくなるんじゃない?」と、理由と仮説が全く繋がっている気がしない理論──それが切っ掛けでこのゲームを始めました──を持ちかけるぐらいには、私の事情を解決しようとしてくれていますし。
「リっちゃんが私のそばで戦ってくれれば、パーティ組めない問題をいち早く解決できたんですけど」
「それじゃあ、
「ええ。分かってます。リっちゃんとばかり話してたって、人を怖がる癖は治りません」
「そうよ。……そうねぇ、この話を知ってるかしら?」
何の話をするつもりなんでしょう。巨漢の形をした友達の瞳が光ります。彼が、現実では女の子だという事実を以ってしても、その怯みかねないような眼光です。
それもそうです。現実のリっちゃんと結びつかないような雰囲気が、どうしてか彼から感じられるのですから。
「VRとは仮想現実。想像を仮に現実に映すという事なの」
「仮想現実は仮想の形で現実を再現するという意味だと思うんですけど」
「いいえ、この世界にとってはこれでいいの」
リっちゃんが突然バ……変なことを言い出しました。
「この世界には、“望んだ自分になる”権利を皆に与え、それを助ける力があるの」
「……」
「貴方が言葉を交わし、想いを共有する友を求め、そしてそれが叶ったのはそのお陰よ」
…………いつもなら、またリっちゃんが変なことを言い出したと流せるんですが、ケっちゃんという友達が出来たせいなのか、それを否定したり冗談だと笑ったりする事ができませんでした。
「本当に……この世界がそうしてくれたんですかね」
もしそうなら……ケっちゃんも“望んだ自分”が得られるんでしょうか。私は彼女の望みや願いを聞いたことはないですが、もしあるんだったら……。
「ケっちゃんの望みも、叶えられるんですかね」
「ええ、きっと叶うわ。友達の貴方が助けてあげれば、もっといい形で叶えられるとも」
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後々思い返すと、あのリっちゃんの理論だと私の体型が大人にならないという事実に矛盾している事に気づきました。
もうリっちゃんの訳わからない理論には一瞬も耳を貸さないと、心に決めました。
幕間くらいなら、
ちょっとだけの文量なら
2日で書くぐらい造作もない
本編じゃ色々気にしてマトモに書き進められないですし。