つまり普通に割と違うけど大まかな流れは大体一緒。4割ぐらいは。
ただ問題があって、昔の気力マシマシの私と比べて現在の私は気力サアゲサゲなので、コピペからの編集ぐらいまでなら躊躇が全くなくなってる。
いや、そも。変える必要もあんまりないと思うんだが。
開幕 俺の声
閉じられた視界、頭を包む窮屈な硬い感覚。
頭のあたりを触ると、ヘルメットのような感触が伝わってくる。
それを両手で挟むと、ゆっくりと持ち上げる。
「……」
光を遮るヘルメットを外すと、視界が解放されたように光が入って来た。
身体を見下ろせば、少女らしい胸の膨らみはどこにもない。後ろ髪を触っても、ポニーテールはどこにもない。
何も映さないTV画面を見れば、俺の姿が映っていた。今までの"ケイ"の姿はどこにもない。当然だ、彼女は実在する者ではないのだから。
戻ってきたこの身体、
さて、『ゲームは1日1時間』という言葉がこの世にある。
主に子どもたちに対して戒めるメッセージとして用いられるが、このゲーム、『ヴァーチャルファンタジー』では似て異なる言葉が存在する。
『ゲーム内は1日1時間』
理解が早い人間なら、もう説明は要らないだろう。これはゲームと現実間の時間の流れを示している。
俺がゲーム内で過ごして来た時間は、数日と少しぐらいだろうか。しかし現実では、数時間ちょっとしか経っていない。
そのせいで時間の感覚が狂う事もある。現実で少しの間を過ごしても、向こうではかなりの時間が経っている事だってある。
だが、VRゲームではそれが常識。ゲーム内時間イコールリアル時間、というゲームもあるにはあるが、基本的には時間は同期していないのが普通だ。
さて、部屋でぼーっとしているのもなんだ。夕飯時だからログアウトしたんだ、食事が出来ているか母にでも聞きに行こう。
居間にきてみれば、母がココアを飲みながらくつろいでいた。既に先に食事は済ませていたようで、俺の分は向かい側に用意されていた。
「あら、創也。お早う」
お早うと言われ、慌てて窓の方をみる。外は暗い。次いで携帯の時計を見るが、晩飯時だ。明らかにお早うという時間ではなかった
何かの間違いで、朝までゲームをしていたのかと勘違いしてしまった。俺は目の前の母を、恨む様な目で見つめる。
「変かしら? あの被り物を被っている間、本当に静かだったのよ。まるで寝てるみたいだったから、お早うが良いのかしら、って」
それにしたってお早うは……って待て、俺があの世界にいる間、母は俺の部屋に入って来たのだろうか。絶対に入るなとは言っていないが、勝手に侵入しないでほしい。
「あら、不満そうな表情だけれど、部屋に入ったのは掃除する為だったのよ? 少しぐらい良いじゃない」
絶対に嘘だ。俺個人、ごちゃごちゃしたものを嫌っている為、部屋は綺麗に保たれているのだ。掃除する余地など無いはずだ。
「うふふ」
……なるほど、今理解した。この母絶対わざとだ。
今思えば、俺の黒歴史ノートが発見されたのは、キャラクタークリエイトから戻って来たときである。そのことを考慮すると、その時点で母は俺の部屋に侵入していたと言うこととなる。
自らの失態に頭を抱え、今後ゲーム中の部屋のセキュリティについてどうしようかと考え込む。
「……ねえ」
何だろうか、急に改まって。今俺は母に対する侵入対策を考えているところだ。
「あの本って、大事な物なのよね?」
う……、その話は俺の急所、或いは弱点に当たる。出来ればこの話はよして欲しい。
さあ、どうやって俺のこの思いを伝えようか、なんて思っていると、母が発した言葉が俺の意識に割り込んで来た。
「それにあの字、創也が高校生ぐらいの頃の文字だったわよ」
ああ、そうだ。あの本は過去の俺が書いたのだ。少なくとも今の俺は、同じ様な失態などしない。
少なくとも、
「……ねえ、思い出したりしないかしら?」
何を、とは今更な事を問う必要など無かった。
俺は口を噤んだまま、首を横に振った。
・
・
・
現実での食事休息を終え、俺は再びゲームへと戻ることにした。
自室へ戻ろうと、その扉を開いたところで、後ろから声をかけられた。
「ねえ、創也」
なんだ、とでも言う様に後ろを振り返る。
また黒歴史ノートの話でもされたら、俺は黙って部屋に入るところだったのだが。
「私も、
「……」
「私、創也の声を久しぶりに聞きたいのよ」
その言葉を受け、俺は目を見開いて母を見つめた。
しかしその言葉を理解すると、俺は目を和ませて、しかし口は苦笑する様な形にして頷いた。
母がこちらに来るのは良いのだが、残念な事に、向こうに居るのは俺ではなく、"ケイ"なのだ。