ウチのキャラクターが自立したんだが。リファインド   作:馬汁

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ウチのキャラクター、催眠不可。

『才能』

 

『プレイヤーキャラクターは、ある程度活動していると「才能」を取得することがあります。これはプレイヤー自身の持つ技術や能力が適応され、人によって千差万別と言えます。逆にこの才能が無くなったり、後々に新しく取得されることは無いでしょう。

 才能に応じたスキルを生かせば、常人よりも良い結果が得られ、より上達も早くなります。これはステータス、スキルに関して適応され、特定の魔法や武器スキルには適応されません。

 上位互換として「天才」が存在しますが、これを取得する事は稀です』

 

 

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 この世界で活動を続けていると、現実での時間も大分遅くなってきた。それぐらいやっていれば、この世界にも大分慣れてくるというもの。

 スキルだって初期の頃と比べれば大分揃ってきているし、以前レイちゃんから聞いていた才能という項目も幾らか出てきた。

 

 『料理の才能』と『器用の才能』と『俊敏の才能』と『魔力の天才』と……。俺が得たのはこの四つだ。

 聞くところによれば、『○○の天才』というのは才能の上位互換であるとのことで、それは大変珍しいとされる。

 おかげでドラゴンとも渡り合えた。

 

 しかし、取得の経緯に関しては、一部不明な点がある。

 才能というのは、現実の技能や能力が反映された一種の形だ。現実世界に魔力等という物は存在するはずは無く、西暦が数えられてから今まで、科学により魔法と言った物が否定されてからは、完全に創作上、空想上の物となっている。

 それを俺が、現実で持ち合わせて居るだと? オカルト方面の知識が無い俺は、真っ先に特別な仕様か不具合を疑った。魔法習得の謎のこともある。

 

 色々悩んだのだが、結論は出ない。

 魔力の才能というものに代替する何かを参照した可能性だってあるのだ。

 

「おはようございます!」

 

「おはよう、レイナ」

 

 さて、この世界では朝。俺たちはベッドから起き上がったばかりであり、眠気混じりの瞳を擦りながら食堂の方へ降りてくる。途中でレイナとも挨拶を交わす。

 

「むー……」

 

「うん? ……あ、そっか。改めておはよう、レイちゃん」

 

「はいっ、ケっちゃん!」

 

 相変わらず可愛らしい魔法使いである。……と思っていたら、背後からの目線がやけに鋭く感じる。

 

「トーマもおはよう」

 

「あ、トーマさん、おはようございます!」

 

「え、お、おはよう」

 

 レイナが関わると、トーマくんはやけに感情豊かになるな。レイナと顔を合わせると頬を染めて目をそらし、声をかけられると嬉しそうに振り返る。こう述べると、トーマは猫っぽいかもしれない。

 

 

「それで、今日の朝食当番は……話題の『おふくろさん』だね。なんか皆、待ち遠しそうにしてるけど」

 

「すっごく料理が得意なんですよ。というか、この世界では滅多にお目にかかれない和食を、まるで当然の様に作り上げてしまうんですよ」

 

「へえ、すごいね」

 

 淡白な感嘆であるが、本当にすごいのだ。日本の料理、つまり和食というのは、山と海があってこその物だ。山はともかく、海に隣接していないこのミッド王国では、海産物を確保するには高く付く。

 

「……すごく量が少ないとかじゃないんだよね?」

 

「まさか、そんな事は無い! ちゃんとした量だし、何ならおかわり自由だ!」

 

 他の机の方から大声で言われた。トーマだ。

 

「うん。大音量での回答ありがとう」

 

「あ、ごめ……ごめん」

 

「あはは……、大丈夫ですよ」

 

「大丈夫だよ。なんかこの部屋、いつもより人少ないし」

 

 トーマくんは、おふくろさんがお気に入りなのだろうか。てっきりレイナレイナって、その思いを拗らせているのかと。

 まあそういう事なら良いんだ、量が少ない訳じゃなければ。そうすると、俺たちの出す食費の他に、あのおふくろさんが自腹で食材を確保しているか……、或いは独自の入手ルートがあるのだろうか。

 

「やっぱりすごいな、慕われてるみたいだし。……トーマくんに限らず」

 

 先程から聞こえてくる厨房の方から聞こえてくる声に、試しに耳を傾けてみる。

 

「おふくろさん! 何か手伝えることは無い?」

「今日は何を作るの? 魚なら私に任せてよ!」

「新しい包丁作ってみたの、おふくろさん!」

「おふくろ!」

「おふくろさん!」

「厨房が狭いわっ!」

 

「……トーマくんはまだマシな方か」

 

「?」

 

「なんでもないよ」

 

 

 その後、食卓に並べられた料理は確かに日本の伝統的な『和食』その物だった。味噌汁、漬物、米、魚、味付け。そのすべてが懐かしさを覚えさせる出来で……勿論、美味しく頂いた。

 これは確かに、皆のテンションが狂いに狂うのも不思議ではないな。

 

 

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 どうしてか『魔力の天才』という物がくっついて来て以降、確かにその数値の上昇は著しくなった。他の能力値より一回り二周りは抜きん出ている。

 

 一番最初に受けた依頼で、元々結構な報酬だったものにさらなるボーナスが付け加えられたお陰で、結構な蓄えと備えが得られた。お陰で魔法書や装備も沢山確保できた。

 

「そこのお嬢さん! ここの装備を見ていかないかい?」

 

「間に合っております」

 

 そそくさそそくさ。

 

 しかし今でも、ぼちぼちと依頼を受けては完了させている。依頼処の職員からも信用されている気がするぐらいだ。仕事柄多くの顔を見るだろうに、信頼できる顔をよく覚えていられるものだ。

 依頼を受け、こなしている中で唯一心配だったのが、スキルや能力値の数字とは無関係に鋭くなる身のこなしである。

 

「お姉さん! 一目見て分かった、相性がとても良さそうだ! どうだ、私とのティータイムは如何かな?」

 

「残念だけど私キノコ党なんだ」

 

「なんだとタケノコの方が良いだろう! どうやらお前とは相性が悪い様だ。……うん?」

 

 鋭い身のこなしで、立ちふさがる男をするりするりと避けていく。

 

 今や順調に剣聖の道を辿っているし、その経過で盾も邪魔になって滅多に使わなくなった。盾で受けるより剣で払ったほうが効率が良い。遠距離攻撃なんかは地形を利用すれば良いし、だいたい隠れずとも避けれる。

 

 思い出して見ると、我ながら中々人外であるなあ、としみじみ。遠い目で依頼処の中に入ってみると、中は人が多いようで、ザワザワしている。

 

「あー」

 

 ……金曜の夜に見られる居酒屋を、もうちょっと大規模にしたような有様だ。騒がしい。

 パーティと見られる集団の笑い合う声が聞こえる、給士に絡む酔っぱらいが見える、男共が怒号を上げながら腕相撲で競っている。

 

「……中世ファンタジーな酒場、って感じだ」

 

 そういえばレイちゃんが言及していたか。カフェ兼居酒屋兼交流所って感じだと、確かそう言っていた。

 思い出せば、昼は穏やかなカフェという風だった。冒険者達がわいのわいのと情報交換したり、依頼について話し合ったり、少なくともココにはない『品性』というものがあった。

 でも、そういった品性が失われ、酒場同然の様子に変わるのは大抵夜の筈だ。

 

 試しに、空いていた受付カウンターの人に声をかけてみる。

 

「おはよう、なにかあった?」

 

「真夜中に遠征から帰ってきた複合パーティの集団ですよ」

 

「へー」

 

 本場の酒場でやってほしいのだが、そういう事なら仕方ない……のかもしれない。そもそも、早朝にやってる酒場なんて見たことが無いし。

 

「それよりも、また依頼を受けに来たのですか? 一日ぐらい休まれても良いと思うんですが……」

 

「今日は簡単なのを見繕うよ。少なくともドラゴンを目にしなくても良いような奴」

 

「う……本当にすいません」

 

「良いよ。ギルドからもこってり絞られたらしいし、今更何か言う気も無いって」

 

「ありがとう御座います……。その件で、私から依頼を推薦する事が出来なくなっているので、他の方からお聞きするか、あの掲示板からお選びください」

 

 まあそうなるよな。クビになったりしないだけ温情か。

 言われたとおりに、依頼の紙で一杯の掲示板の方に行く。

 

 ……いつ見ても板が見えないな。何時の日か、紙で満たされたこの板の下地が光を浴びることは有るのだろうか。

 

 

 ・

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 ・

 

 

「……来たのデスね」

 

「……」

 

「そこの銀髪魔法剣士、そう、アンタなのデス。心配せずとも態々後ろを振り向いて確認しなくて良いデス」

 

「あ、私」

 

「そう、アンタデス」

 

 どうも今日はよく絡まれる。魔法剣士という言葉が無ければ完全に無視していただろう。

 

「どうしたの? 真っ黒なおチビちゃん」

 

 身長はレイちゃんよりも小さい。ちんまりした体格は、小学生低学年と言える程度の物だった。

 しかし姿格好は頭の天辺から足首までを隠したローブ姿で、目線の高さもあって目元はフードで全く見えない。

 

「アタシのことはキャットと呼ぶのデス。私にはアンタに頼みたいことがあるのデス」

 

「名指しでとは」

 

 俺に興味でもあるんだろうか。それなりに活躍しているつもりだが、注目を集めることはしてない筈。

 

「んー……あ、彼氏なら居ないよ」

 

「いえ、それを聞きに来たのではないのデス」

 

「だろうね。それで?」

 

「調子狂うのデス……。そこの高い場所にある紙を取って欲しいのデス」

 

 ああなんだ、そんな事。

 依頼の紙は、このキャットくんとやらが手を伸ばしても届かない所まで貼られている。そうなるのも仕方ない。

 

 指で指された『ダンジョン攻略の臨時パーティ募集』という物を手に取る。他の紙と比べて、少しばかり詳細や依頼人の情報が少ない様に見える

 

「そう、それデス。それをアタシに見せるのデス」

 

 見せる? 

 内容をよく読みたいという事なのだろうか。剥がした紙を手に振り返ると、何故かキャットはフードを外していた。そうすると、すぐに目が合った。

 

「アナタは、この依頼をどう思うのデスか?」

 ──「アナタはこの依頼を受けたくなる」

 

「うん? ……まあ、パーティを組む程度は良いよ。変な人はお断りだけど」

 

「受けるのデスか?」

 ──「アナタにはこの依頼を受ける理由がある」

 

「……?? えっと、さっきも言ったけど、メンバーによる。あとは報酬と難易度次第かな。誰かが危険な目に晒されているなら、それ度外視で検討しても良いけど」

 

 ケイさんは優しいですからね。と鼻を鳴らしてみるが、どうもキャットくんは納得行かない様子だ。

 

「むう……。あ、この部分が読めないので教えて欲しいのデス」

 ──「アナタはこの依頼を受けたくなる」

 

「これは……うわ、なにこれ。少なくとも常用漢字だとは思えないんだけど」

 

「そうデスか……」

 

 ふと見ると、キャットの目線は床に向かっている。その猫耳はしゅんと伏せられており、まるでそれが感情を示している様に見えた。

 妙な違和感を纏って聞こえてきたあのエコーの様な声は、彼女から発されたのだろうか。しかも彼女の目から妙な魔力を感じる。

 

 少しだけ考えて、試しに、あの声の言葉通りのことを言ってみる。

 

「……うん。この依頼、私が受けても良いかな。なんか受けたくなってきた。なんなら理由もあるし」

 

「そうデスか?! やった、効いたのです!」

 

 は? 

 

「は?」

 

「では! この地図の通りの位置にある小屋へ来るのデス! 今からダンジョン探索用の装備で出発するのデスよ!」

 

「あ、うん」

 

 なにを言ってるんだこの子は……本気でそういうつもりだったのか? そういうつもりって言うか……。

 

「ふふんふん! アタシにも催眠の才能はあったのです! 落ちこぼれじゃなかったのデスー!」

 

 そう、催眠。ついに口に出しちゃっているが、この子。

 喜びの感情を交えて、加えて妙なことを言い残して走り去っていった。その足取りさえ楽しそうに見えた。

 

「……行っちゃった」

 

 一体なんだったんだろう。

 あのキャットと名乗る彼女は猫耳キャラの様だが、この世界には種族としての獣人などは存在しない筈だ。

 ……本気の催眠とかじゃなくて、子供のごっこ遊びにでも巻き込まれたか? 猫耳を着用した女の子とは中々ファンシーなもんだ。

 

『「精神攻撃抵抗」を習得しました』

 

「……」

 

 いや、まあ。分かっていたさ。

 

 

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 ・

 

 

 色々と疑問の残る出来事だったが、独断で行動するには不安だから、レイナに判断を仰ぎに戻ってきた。

 

「またケっちゃんが変な依頼を受けてきました……。経緯からして信用ならないじゃないですか」

 

「いや今回は私悪くないよ」

 

 子供の遊びかと思えば、ホントのホントに精神攻撃。効かなかったとは言え、言われたとおりに従ってみるのはちょっと怖い。行かなかったとしても、それはそれで怖い。今度は精神ではなく肉体を攻撃しに来るかもしれない。

 こう、恐怖と暴力で従える的な。

 

「二人いれば何とかなるかなあ、なんて思ったんだけど……」

 

「うーん……現実世界じゃそろそろ眠る時間なので、これ以上はちょっとお母さんがいい顔をしてくれないかと……」

 

「仕方ないよねえ。……うん、腹を括るよ。何の根拠も無い勘だけど、多分向こうは大した悪者じゃなさそうだし」

 

「それ油断って言いませんか?」

 

 馬鹿な。百戦錬磨の私が油断するなどあり得ぬ。……というのは冗談で。まあ万が一があっても、俺の所有物の幾らかが殺人現場に残されるくらいだろう。

 お金があれば、祝福という物を利用してドロップを防げるらしいし。そう考えるとこの世界のデスペナルティは割と軽い。後は一定期間の能力値低下もある。死ぬ気は無いから、利用する気も無いが。

 

「ま、それなら幾らかポーションを買わせてよ」

 

「良いですよ。最近新しいレシピを発見したんですけど、どうですか。体力回復と異常状態の回復を同時に出来るんです」

 

「それなら幾らか。それと今日は場所が場所だから、魔力ポーションはそんなに要らないかも」

 

「はい。あ、お使いってわけじゃないですけど、片手間にでも良いので、薄く光るあの果実を取ってきて貰えませんか? あれを使ったジュースが最近流行ってるらしくて。今度の朝食当番にでも出そうかな、って」

 

 レイナとは少しばかりの別れとなるだろうが、この世界で一人でもやっていけるぐらいの力は身につけた。仲間抜きでの旅も、一種の冒険だと思えば面白そうだ。

 

 少々恐ろしいが、キャットに貰った地図の場所に向ってみよう。

 

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