ウチのキャラクターが自立したんだが。リファインド   作:馬汁

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ウチのキャラクター、再び突入。

『テイマー』

 

『貴方はあらゆる僕を従える者である。獣やモンスターと言葉を交わし、誓いを結ぶ事で新たな戦力として迎え入れる。多くの僕を得る事で、より強い脅威にも立ち向かうことができるだろう。

 

 貴方に必要なのは、より強く結ばれた絆か、大群を成す多くの僕か。しかし、そのどちらを得るかは、きっと重要ではない。最も恐ろしいのは、どちらも失った末の孤独なのだから』

 

 

 

 

 地図によると、指定された小屋の位置は常闇の森の内部である。

 あんな魔境の中によく小屋を建てられた物だと思ったのだが、もしかしたら建てられた後に森の拡大に呑まれたのかもしれない。

 

 そんな場所にまで足を運ばないといけないなんて、とは思うけれども、異常成長を経た俺にとっては何てことの無い道のりだ。

 

「新しい剣の調子も……十分って所か」

 

 一度へし折ってから買い替えた剣は、形状や重心が近いものを選んだ。細かい違いも気にならない。気になるほど技術は成熟してない、と思う。ただ、もう一度ドラゴンを斬ろうと思ったら、前回と同じような斬り方をしない方が良いだろう。今度は鱗を抉るように、或いは翼の膜を切り開いて飛行能力を奪うか。

 

「……また会わなければ良い話なんだけど」

 

 そんな事出来る気がしないし。

 

 

 で、常闇の森だが、やはり目印になるものが少ない。しかし、俺という来訪者の為に用意されたのか、人為的に配置されたとしか思えないランタンが随所に配置されており、行く先を指示するこの地図の印と重ねてみれば、その位置は確かに一致していた。

 

「次はここを北」

 

 地図によれば、この目印を最後に到着するはずだ。距離はそう遠くない。

 森の様子は相変わらずで、手元の照明に照らされた景色しか見えない。光の届かない先は正しく暗闇のみ。

 

「長い常闇の道を抜けると……、そこは不思議な家でした」

 

 薄らとランタンの光に当てられ、建物の輪郭が現れてくる。

 成長した木々に纏わりつかれ、最早一体化したと言っても良い有様だ。辛うじて一部の窓や扉は使えるようだが。

 

「魔法剣士の少女は驚きました。どうしてこんな所に家があるのだろう、と」

 

 まるで語り部の様に紡がれる言葉は、中世的な声で男か女かが判断が付かない。俺はランタンをかざして、聞こえた方向に光を向けた。

 そうして見えたのは、場違いともとれるフォーマルな恰好をした人間。その顔の仮面が異質に見えた。

 

「……何その仮面。まあいいか、とにかく初めまして」

 

「うむ。私の名はイツミ・カド。王国に名を轟かせている怪盗だ」

 

 初耳だな。本当に轟かせているのか?

 小屋から出迎えてくれたのは、如何にも怪盗という容貌の男。タキシードと言う奴だろうか。今にも暗闇に溶けてしまえそうな色合いで身を包んでいる。

 何よりあの仮面。表情一つ分からなくなる形で顔を包んでいて、仮面自体は満面の笑みを浮かべた不気味な柄だ。

 

「あの猫耳のちっちゃいのは」

 

「今は不在だ。一家総出で出迎えた方が良かったか? ククク……」

 

 という事は、普段一緒にいると思って良さそうだ。

 

「別に良いんだけど……とっても胡散臭い男だね。かなり胡散臭い。臭い」

 

「……どうやら、お嬢さんも愉快な言い回しをしてくれるじゃないか」

 

 森の匂いの中でもハッキリ分かるぐらい臭い。今からにでも帰りたくなってくる。

 

「匂いは兎も角、信用ならないな。出だしからしてもそうだけど」

 

「何か粗相でも?」

 

「キャットがお戯れレベルの催眠術を掛けようとしたから」

 

 本物なのか疑えるほど出来の悪い術だったが、警戒に値するものではあった。

 

「ほう……やはりキャットの術を見破ったのか。これはとても期待出来そうだ」

 

 やはり、と言ったか。つまり私の催眠効果には期待していないと。しかし一方で、私の活躍には期待を寄せられている。あの仮面から好印象を受けてもあんまりいい気分じゃないのだが。

 一体どういうつもりなのだろう。

 

「そんな態度だと、協力する気がどんどん削がれていくんだよね。帰っても良いかな?」

 

「ほう? ……最近、この辺りでドラゴンが目撃される様だが」

 

「それは面倒だ。でも手土産にドラゴンの爪を持ち帰るのも良いな、良い素材になりそう」

 

「自信満々という訳か。お前なら一人で仕留められるらしい」

 

 勿論出来ないですけど。

 これでは、何時もの軽口は通じそうにない。相手が少しはマトモだと、ツッコミとボケが成立するんだが……これではまるで、遠回しな皮肉で一通りの会話をこなす海外映画の様ではないか。

 

「はあ……出来るわけないじゃん。私がドラゴンスレイヤーか何かに見える? ただの魔法剣士だよ」

 

「この地に降りて二週間足らず。その剣をドラゴンに届かせられる少女が……ただの魔法剣士とね?」

 

 うんざりした気分になる。こんな怪しい奴が、一方的に私を知っている。あまり言いふらしていない様な事まで。

 

「……どこで聞いた。いや、見た?」

 

「いいや、”聞いた”のだよ。ケイ君」

 

 ……名乗った覚えはない。ドラゴンについて他言した覚えもない。あの依頼の報告をした時だって、一度ドラゴンに剣を叩きつけた等とは一言も言っていない。

 これはいよいよ、俺の事は筒抜けだと思った方が良いだろうか。

 

「気持ち悪い……」

 

「それはどうも。ただ、やはり一人で帰るには危険すぎるだろう。何せ……」

 

「どうけしかけるのかは知らないけど、襲われるんでしょ。なるほど強引だ。来るんじゃなかった」

 

「勿論、協力してくれれば愛しの我が家まで無事に戻れるだろう」

 

「……分かったよ。つまりは脅しか」

 

「分かっていないな、れっきとした依頼だ」

 

「そっちはそのつもりでも……ああもう、仕方ない」

 

 こんな胡散臭い依頼も、滅多にみられないだろうな。ここまでするなら、普通に脅せばいいだろう。

 

「入ると良い。こちらで用意した物が幾らかある」

 

「はいはい。……メンバーは私ら2人だけ? 探索するダンジョンっていうのは何処?」

 

「正確には2人ではないな。私はこれでも、テイマーでね。キャットは、所謂ペットと言うものだ」

 

「うわ」

 

 あんな小さい女の子をペットって。マジか。

 別の意味で身の危険を感じた。ドラゴンに立ち向かって丸焦げになった方が良い気がしてきた。

 

「……言っておくが、キャットの本来の姿は猫又だ。私とて女の子をペットと呼ぶのは憚られる」

 

「今更弁解されても」

 

「むう……。とにかく、キャットがダンジョンに同行する」

 

 あの小さい子が……。人外だと言うのなら、見た目相応の強さだとは思わない方が良いだろう。

 

「それと、行き先だが……お前なら分かるだろう」

 

「はいはいそのダンジョンね。さすが物知り」

 

「そうだ。お前ならば、道が分かるだろう?」

 

「……分からないと言ったら?」

 

「安心しろ。魔力を感知できるのはお前だけでは無い。キャットも同じ技術を有している」

 

「ダンジョンと魔力の関係まで知ってるのね……」

 

 事前に情報を大量に仕入れてくれたらしい。この怪しい男はギルド内部まで情報網を張っているんだろう。俺の活動や能力は知られていると思っても良さそうだ。

 

「とにかく、これを装備すると良い。お前の魔力ならば装備できるだろう」

 

「……腕輪?」

 

「魔法に対する防御力を高める。ダンジョン内部は魔種モンスターが殆どだ。だろう?」

 

「予習してたんだ」

 

 俺に関しては、意図しないことではあるが多少の経験だけはある。魔法を使わない奴は少ないのは知ってる。

 

「私のペット達は非常に優秀でね。ギルドの書類一枚ぐらいの情報ならば、すぐに分かる」

 

「はいはい分かった……、とりあえず入り口に行く。報酬はそこで見つけたアイテム。その中から選べると思っていいかな」

 

「良いだろう」

 

 それだけ知れれば、少なくとも損は無い。こっちも冒険心はあるからな。

 

 

 

 

「到着」

 

 魔力の流れを見つつ源流の方に向かえば、以前とは違うもののダンジョンの入り口がまた見つかった。先日俺とレイナが迷い込んだ入り口でも、脱出した出口でもない。3つ目の入り口だ。

 入り口自体は見つからないが、太い倒木がそこにあった。

 

「悪いけど、ダンジョン内の構造は分からない。ここは別の入り口だから」

 

 最寄りの入り口へと向かっていっただけなのだから、仕方ない。

 後ろを付いていくイツミ・カドの方を見るが、表情を読み取れない。

 

「ふむ、それらしい物は見当たらないが、怪しいものだけがあるな」

 

「前回の経験からすれば、木の下にある筈」

 

 時間が経ってもいいなら焼く選択肢があるが、敵をおびき寄せる事になるだろう。知能のある奴らは、人の気配があれば寄ってくる。

 

 そういえば前回は、大岩がゴーレムだった事に気付かず不意打ちを食らっていた。この倒木も、一応調べておこうかと魔力に集中するが……まあ、普通の倒木だった。

 

「どかすか。『アースウォール』」

 

 横たわる木の端を目掛けて魔法を発動。地面からせり上がる壁によって、木の端が持ち上げられていく。

 倒木の下が見えるようになると、やはり穴が一つ空いているのが露わになる。

 

「よし、入るよ」

 

「ああ待て、用意がまだだ」

 

「うん? ……もう一人がまだだったね」

 

「うむ」

 

 しかし、キャットはどうやってここに来るのだろう。合流した小屋の中にも居なかったし。

 

「何時来る?」

 

「今だ。……『召喚』」

 

 そうやって詠唱を言い放つと、目の前が突然光りだす。

 

「う……。眩しい、もう少し光を抑えられない?」

 

「悪いが、召喚魔法の特性上致し方ないのだ。……さて、準備は良いか? キャット」

 

「キャット、只今参上! 準備万端燃料満タン、何時でも行けるのデス、ご主人!」

 

 ……なるほどな、それがテイマーの技術か。

 必要な場所で、必要なタイミングで適正な戦力を呼び出せる。という感じだろうか。

 

「また会ったね、催眠ネコ」

 

「……ひゅえっ?!」

 

 この前のローブ姿ではなく、動きやすい格好になっている。小柄な体格がよく見える、戦闘よりと言うよりは、盗賊の様な

 

「まあ、よろしくね」

 

「は、はい……デス。……ご主人、催眠が何時の間にか解けてるのです」

 

「心配するな、想定内だ」

 

「そうなのですか?」

 

 ……何も言わないでおこう。

 

 

 

 

 このゲーム上で二度目となるダンジョン。その目的は前回とは変わって、脱出ではなく探索となる。

 

「確認だけど、あくまで攻略が目的じゃないんだね?」

 

「うむ。あらゆるダンジョンに共通することだが、その内部で得られるアイテムには特別な効果が付与されていることが多い」

 

「魔種、っていうヤツだね」

 

「私達の目的はそれだ」

 

 つまりはお宝探しと言う事なのだろう。

 怪盗……いや、盗賊らしい目的だ。遺跡に眠る財宝を我が物にしようと、踏み込んだのだ。

 

 

「そういえばキャットはどういう役割なの? 斥候? 催眠術や魔力感知が出来るし、魔法使いかな?」

 

「大まかには、斥候と魔法使いのハイブリットなのデス」

 

「魔法剣士ならぬ、魔法斥候と」

 

「それでテイマーなキミは?」

 

「と言うと?」

 

「召喚してそれだけじゃないでしょ。少なくとも共闘する手段はあるんじゃない?」

 

 ペットを召喚して、戦わせて、そして自分は高みの見物。なんてのは考え難い。

 

「そんな物は無い。習得しているのは生活系の技能ばかりだ。隠密に関わる技能は一通り習得しているがな」

 

「ああ、つまり一般人か」

 

「フッ」

 

 なぜか仮面裏の澄ました顔が容易に想像できる。仕方ないから、精々後ろで隠れていて貰おう。キャットも戦えない訳じゃないが、あの子は火力に欠ける。索敵役としては期待するが。

 

「で、キャットは敵の居場所がわかるの?」

 

「……いいえ、そもそもの魔力の密度が多くて、遠くまで見えないのデス」

 

 ふうん、この前の私に近いか。

 

「色は見えないの?」

 

「色デスか?」

 

「そう。人やモンスターが持つ魔力からは色が見える筈だけど。しかも魔力の色は流れてくるから、通路の奥に居る敵は割と遠くからでも分かるよ」

 

 魔力が流れてくる環境下だからこその索敵方法だ。

 

「…………」

 

「どした?」

 

 前を歩いていたキャットが、突然座り込む。

 

「ご主人。私は役立たずなのデス……」

 

「キャット、大丈夫だ。気にするな」

 

 彼らには失礼だがため息を一つ……。俺はこの二人の引率をしないと行けないのか?

 

「ふむ、『魔力感知』ではなく、『魔力特定』か……一体どんな風にすれば、これほどの力を得られるのだろうか」

 

「コツなんて教えたくとも教えられないよ。青空が青いと分かるのと同じ様に、魔力の色が当然の様に見えるんだから」

 

「それは残念だ」

 

「まあ努力すれば何時かは見えるようになるよ」

 

「うむ。……お菓子、食べるか?」

 

「貰うのデス……」

 

 前々から思ってるけど、この仮面、キャットの事甘やかしてはいないだろうか。……向こうの勝手だが。

 

 

 

 

 ダンジョン探索は順調だ。

 感じ取れる魔力を頼って、どの敵も例外なく先制攻撃を見舞える。キャットの戦いも少し見させてもらったが、スピードで翻弄して、行動の隙を見て強烈な連続攻撃を加えるスタイルの様だ。

 一撃の攻撃力が低いから、装甲のある敵には対応が難しいらしい。

 

「次は人狼か」

 

 生憎と通路は一直線だ。敵の目線も俺の方に向かっているから、奇襲を捨てて真正面から突撃する。

 魔力の豊富なダンジョンに居るからか、外に居る奴よりも落ち着いた目をしている。

 

 正面に向き直って、じっと構えて私の攻撃を待ち受けている。カウンターでも狙うつもりだろうか。

 だけど、まあ。見当違いの方を防御しても、カウンターなんて難しいだろう。

 

「本命はどっち? こっち? あっち? 残念、正解は『エアージャベリン』」

 

 左手で真っすぐ突き、敵の腹を貫く。剣の間合いを見越していた敵の反撃が空振る。恐ろしい爪が振り抜ききったのを見て、剣で片足を切り裂く。余裕があったから序にもう片足も。

 あとは後ろに引いて、魔法で集中攻撃だ。

 

「『ファイヤボルト』『ファイヤボルト』」

 

 せめて三か四体ぐらいは頭数を揃えないと、”私”は止められない。爪ぐらいしか武器の無い人狼には、それぐらいは必要だ。

 

 

「……何度見ても見事な手際だな、ケイ君。お前ならば最深部に辿り着けそうだ」

 

「ダンジョンの奥で待ち構えてる強敵に敵うかは知らないよ」

 

「どうせ皆死ぬのデス……」

 

 多分そのセリフは敵に使ってあげる物じゃないと思う。

 

「にゃあ……あ、お宝デスよ、ご主人!」

 

「なんだと?! ケイ君、周囲の警戒を頼む! あの箱の調査に集中しなければ!」

 

「……勝手にどうぞ」

 

 もうかえって愉快に見えてきた。

 せめて豪華な報酬を期待して、ダンジョンの宝を根こそぎ回収出来ることを祈ろう。




次回 タイトル詐欺を克服。するはず。
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