『itemID = F249AC』
『NAMEen = "Glowing fruit"
NAMEenAP = "Faraway star"
NAMEjp = "光る果実"
NAMEjpAP = "悠闇の煌実"
DESCRIPTIONen = "At the far far away sky, a wish was send to a star. However, the star was so far away that even light could not reach it until several decades had passed. The only thing that could be done in response to the wish was to return the faint light to the land beyond the distant past."
DESCRIPTIONjp = "とある遠い遠い星に、一つの願いが届いた。しかしその星は、光でさえも数十年と経たねば辿り着けない程、遠い空にあった。届いた願いに対して出来た事は、悠遠の向こうにある地に、か細い光を返す事だけだった。"』
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『キャラクターサーバーの同調に失敗しました』
『キャラクターモデルの同調に失敗しました』
『キャラクターボイスの同調に失敗しました』
『キャラクターインベントリの同調に失敗しました』
『キャラクタースキルの同調に失敗しました』
『The avatar "ケイ" is already exists in the world』
『Awaiting command.』
『Accept command』
『ヴァーチャル・ファンタジーへようこそ』
『コードを確認しました。アバター:DEBUGDOLL@Alphaを使用します』
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「……っ!」
硬い地面から身体を起き上がらせ、先程現れたメッセージに混乱する。
表示されてから消えるまでの時間が極端に短くて、ついには”失敗”という単語しか認識できなかった。
だが、明らかにエラーメッセージの類だと言うはなんとなく察せた。
しかも、英語のメッセージまで出て来た。英和辞典や時間があればともかく、一瞬出現してから消えたから全く読めなかった。
……どうやら俺は不具合に愛されている様だ。現実に追い返されないのなら良い。
とりあえず、地べたに座っているわけにも行かないだろう。立ち上がって、自分の姿を見下ろしてみる。
「これは……っ!」
驚いて、また尻餅をついた。
俺の姿は何時ぞやのマネキン姿だった。
そう言えば視点も若干高い。現実基準で言えば何時もと同じなのだが、ケイの時と比べれば、今のほうが高かった。
「なんでマネキンなんだ?」
誰かに伝えるまでもなく質問を口に出すが、それを答えるものは誰もいない。
「……」
そして声も、俺の物。先ほど追い出される直前に
ああそうだ。俺は自分の声を知らない。記憶を喪失し、その影響で声を失ったのだから。
一応、自分の顔を触ってみる。目も、鼻も、口も、耳も。そして髪も無かった。
自分の姿ではないとは言え、マネキンの姿だとは言え、髪がないと気づいて思わずショックを受けた。
これではハゲである。いや、ハゲてないマネキンもどうかと思う。……うむ、カツラを被ったマネキンなぞ見たこともない。ならばこのような頭なのは仕方ないか。
「うん、仕方ないな」
むしろ髪の生えたマネキンになってない事に感謝だ。動くマネキンという珍生物に、髪の毛とか言う面白アクセサリーを与えられては笑い物にしかならない。
さて、自分の姿に驚いているのはこれぐらいにしよう。
この場所は、確か俺が爆発に巻き込まれた場所の様だ。その証拠に、傍には裂けて散った福笑いの服がある。
そして向こうには、綺麗に切り出された様な表面を輝かせる石壁が、通路を隙間なく塞いでいた。オマケに、福笑いの残骸がその側に重なっていた。予想するに、あの壁は何度も爆発を受けて、それでも傷一つ残さず立っている。
それにあの壁は、俺の記憶が正しければ、戻り道の方向にある。
仮面……じゃなくて、イツミだったか。イツミとキャットの姿は見当たらない。ケイの姿も何処にもない。
ポジティブに考えれば、逃げていったのだろう。恐らく壁の向こうへ。すると壁を作り出したのはイツミ達の隠し札だろうか? 逃げる為の手段は持っていたらしい。
「さて、壁は……殴っても砕けるのは拳だけか」
爆発を受けて耐えるのなら、殴っても結果が同じなのは明らか。ならば行くべき方向は……。
「ダンジョンの奥、だな」
ダンジョンは危険で満ちている。元々持っていたはずの装備やアイテムは、何処にもない。
この姿で死ねばどうなるのかは、分からない。プレイヤーと同じ様に、町で復活できれば良いのだが。
どちらにせよ、奥に進むしか無い。
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歩く。歩く。
時々分かれ道で立ち止まり、そしてまた歩き始める。見つける扉から通路を見つければ、その方へ向かった。
どれ位歩いたのかも解らない。
帰りのことをよく考えずに潜り込んでしまった。今から元の場所へ戻ろうとしたって、きっと道もわからずに迷ってしまうだろう。
しかも、このマネキンには魔力を感じ取る力を持たない様だ。
帰りの事は後で考えるとして、ダンジョンの何処を目指して歩けば良いのだろうか。
最善は、イツミやキャットへ合流することだ。しかし既に彼らは逃げ切ったか、あるいは爆発四散している。このダンジョン内で再会する事は難しいだろう。
「……はあ」
扉を開く。続く通路には、質素な石レンガのみ。照明はないくせに、ダンジョン内は薄く照らされていた。
影は俺の真下にあるが、それさえ薄かった。影の広がり方を見るに、光源は天井の一面全体と考えるべきだろう。
……そういえば、報酬はダンジョン探索の収穫を分けるというものだったな。
それと……ああ、危うく忘れる所だった。レイちゃんの為に輝く果実を採って来ないと……って。
「……っは」
バカか、俺は。
この姿でレイちゃんに会ったら、確実に驚かせてしまう。それに、これは”俺”だ。
私として、ケっちゃんとして、レイちゃんと再会しなければいけない。
……この道はどこまで続いているのだろう。扉にも、分かれ道にも出ていない。真っ直ぐなだけの道だ。
20分は歩いた筈だ。この通路は何のためにあるのだ。
そう疑問を抱いた頃に、細やかな異変を、視覚という感覚で見つける。
「……光?」
何もない通路を、何もないと表現できなくなった瞬間だった。思わず、俺は小さく呟いた。
ここは明るい。だと言うのに、そこに”色付いた光”が在るのを見つけた。恐らく魔力だ。魔力の色が、薄く見える。しかし、ケイだった頃の感覚とは違う。
……どう言う事だろう。少し考えたが、分からなかった。
もしかしたら、この光または魔力の持ち主があの先にいるかもしれない。
そう思い、どこぞの街灯に群がる虫のように、光へ向かって歩いていった。
こういうのを何て言うんだったか。確か、集光性?
……などと自分の中でよく分からないやり取りをしていると、俺はある声が僅かに聞こえた気がして、耳を澄ませた。
「────……」
この声は……誰だ?
声の正体は何だと、首を傾げていると、通路の最奥に扉を見つけた。
鍵は開いている。ドアノブを回せば、薄暗い部屋だった。
中に誰か居るのだろうか。この姿を見られたら、どんな反応をされるのか。
しかし、部屋には誰の姿もない。
代わりにあったのが、中央に鎮座する一本の剣。それだけが、この部屋の中で鈍く輝き続けていた。
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「出られた……のかな」
「とりあえず”施設”からは出た様だな。追手は来なさそうだ」
流石に長距離の全力疾走は体に堪える。疲れを癒やすために、慎重に魔法を練り上げていく。本当の疲労は誤魔化せないが、疲労を無視した動きは出来るようになる。
「で、これからどうするの?」
「撤収だ。お前も向こうで話せる土産話が増えただろう」
「……まあ、多分」
どこで話せばいいのやら。私は、この身体の記憶を知らない。帰るべき家も。
「とにかく、帰るなら一緒に……ん、何だろう、これ」
「どうした、ケイ君」
「うわ……本当に何なのこの魔力、気持ち悪い」
「どうしたのデスか? ワタシには何にも感じないのデスが……」
他の人には分からない様だが、私にはこの魔力が分かる。本能的な嫌悪感と言う類の感情が湧き上がってくる。まるで死人の腐臭の様な……。
そしてこのタイミングだ。私達の状況とは無関係だとは思えない。恐らく、私自身のこれとも関連している。
「……後始末をしない訳には行かない」
「どうしたのだ?」
「仮面、私は魔力の源流を調べる。ここからは勝手に帰って」
「話と違うぞ。依頼は地上に戻るまで続く」
一体どんな話だったのやら。私が知りたい。
依頼という事は、これを反故にするのも不味い。
「依頼か……」
……あの魔力量ならある程度距離があっても、その場に向かえるだろう。それなら、後で直接行けば良いか。
「仕方ない、送っていくよ。地上までね」
「ああ、地上までだ」
……自爆を狙う奴らから逃れ、施設か遺跡と呼べる所から脱出し、魔力の流れは弱まり、比較的落ち着ける状態になって。
私は思う。この姿は私その物。しかし持っている装備や、身体に宿る力は覚えのない物。そして世界の法則。
魔法は今まで通り使えるが、リソースとなる魔力が……いや、魔素と言うべき要素が豊富で、身体を循環する方法は以前とは違う。
元より出来もしない話だが、身体ごと送り込まなくて良かった。そうすれば、この世界の魔素に順応出来なかった。
ああ、この世界は、前回とはまるで違う。
何もかもが。
「どうしたのだ?」
「どうもしてない。まあ、このダンジョンも随分大きいなと思ってはいるけど」
多分だが、出口に近付いている。別れ道から、魔素の下る方向へ進み続けていると、空気中の魔素の感覚が僅かに薄れて来ているのだ。気持ちの悪い感覚はそのままだが。
すると、地面の石をそのまま持ち上げた様な壁が現れる。壁は雑に生成されたのか、隙間が見える。ここが行き止まりでない事は明確だ。
「『崩せ』」
「……」
揺さぶってみれば、すぐに崩れた。本当に壁を持ち上げただけで、形状を維持する為の魔力は残っていなかったみたいだ。
数歩先に同じ様な壁があったから、また崩して。……そして、出口らしきものを見つけた。
「ここだね。この真上」
「ふむ、天井に縦穴が伸びているな」
魔力はこの上方向に多く流れている。対して、そのまま歩いて行ける道の方には魔力はあまり流れていない。
「よく見ると、一塊の大岩が塞いでいるようだな」
「んー……少しだけ離れてて」
「む、分かった。やることは想像つくが、洞窟ごと破壊しないでくれよ」
「そんなドジはしないよ。……『大爆発』」
威力の一方集中を意識しつつ、現象を唱える。揺れる地面に若干の高揚を覚えて、咳払いで誤魔化す。
最近はあまり魔法を使う事自体が無かったから、属性の影響を受けやすくなっている様だ。まだ破壊狂になるつもりは無い、気を確かに持とう。
「さあ、日の光だ。後は行けるでしょ」
「うむ、地上も地上で危険だが、森の中を通らなければ十分安全だ。ここで依頼完了としよう」
「どうも。報酬はもう良いから、私はまた奥の方に行く」
「それは構わないが……。ケイ君は何をそんなに急いているのだ?」
「……無関係な人に教える気にはならない。私はもう行く」
「おい、待て」
「待たない」
強引に話を切り上げて、来た方向をまた戻っていく。
追ってくる気配はない。敵の気配も、今は無い。これなら、集中できる。
「すぅ……」
軽く息を吸い、目を閉じる。魔素の分布を立体的に把握する。魔素の源流と思わしき座標を特定する。座標を元に移動先を設定する。式を編集し安全に到着するよう調整。仮構成完了、テストラン。地面の一部を転送。空間上に障害物無し。転送物の構造に異変無し。転移可能。
「……良かった、使い勝手はあんまり変わらなさそうだ」
一瞬の間だけ安堵の息を吐いて……、目を開く。
後は一言、唱えるだけ。……行こう。
「『転移』」