ウチのキャラクターが自立したんだが。リファインド   作:馬汁

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ウチのキャラクター、戦う。

『センタル王都北伐採場』

 

『未だに発展を続ける王都。その発展に必要な物は、決して少ないとは言えない。その中でも代表するのが木材だ。

 この伐採場は王都、又は近隣の町村への木材供給の役割を担っているが、しかし本来の目的はそれではない。

 ここから北西のやや遠くに位置する、常闇の森。これの拡大に対処する為の拠点となる砦を建設する、その前準備である開拓、そして資材確保が、この伐採場の本来の使命である』

 

 

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 森。こういった地形は、獣道を辿るにも人間の足では歩きづらい。

 木の根につま先がつっかえ、僅かな凹凸が足を掬い、気を抜けば枝の先が自身の身体に切り傷を作る。

 酷いと、そもそも進路が倒木や枝葉で塞がれていることもある。この辺りはそこまでじゃないが……。

 

「……」

 

『スキル「悪路踏破」を習得しました』

 

「あ、スキル習得」

 

 都会っ子には辛い環境だが、それは現実の話。そろそろうんざりしてきた所で、スキル習得を伝えるメッセージが視界の傍に現れた。

 

「スキル……あ、そういえば最初はスキル補正がないから大変でしたよね! ごめんなさい、私気付かなくて……」

 

「え? いやいや、レイナはよくやってくれてるよ。それに、どっちにしろ習得する為に歩かないとだろうし」

 

 心なしか歩くのが楽になったかもしれない。

 それにしても、こういった動作の補助をする様なスキルと言うのは、機能する時は不思議な感覚に見舞われる。

 不安定な地面を踏んでも、体のバランスは崩れない。今までの様に転ばない様に踏ん張らずとも、身体はちゃんと立ってくれる。

 

 違和感というか、なんというか。……そう、乗り慣れない自転車を、誰かが転ばない様に支えている感じ。補助輪と言ってもいいのだが、とにかくそんな感覚だ。

 

「これ、スキル抜きでも元々森を歩き慣れてたら、どうなるんだろう」

 

「スキルとは別で、『なんとかの才能』とか、そういう項目が出てきますよ。しばらくこの世界で活動していったら、現実の特技に対応したのが揃ってきます」

 

「なるほど」

 

 俺なら何が特技となるのだろうか。母の教えによって料理には多少心得があるから、その辺りかもしれない。

 未だに母からは免許皆伝を貰っていないのだが。皆伝されると何があるのかは、知らない。

 

 ……まて、VRと言えど、ここはゲーム。

 もしかしたら料理の勝手が違うかも知れない。

 

「料理はやった事ある?」

 

「はい、ありま……ああ!」

 

「へ?」

 

「もしかしてケイさんもお料理をしてるんですか?! でしたら後で一緒にお料理しましょう!」

 

「え、あ、うん」

 

 テンションの上がり様に驚いてしまった……。

 いや、レイナは料理を嗜んでいる様だし、この世界での料理スキルについて知らないと言うことはなさそうだ。

 

「えっと、現実でやるのと似た感覚なのかな? 料理って」

 

「そうですよ! 実際の技術がない場合は、スキル習得時にガイドが発生しますけど、技術があればそれをすっ飛ばして完成させられますし、加えてスキルのレベルが高かったら手順の簡略化や手法の発展、更なる品質の向上も図れます。あ、そのスキルの『才能』が発生すると成長ボーナスも入りますよ」

 

「現実の技術とこっちのスキル、両方あって損は無いんだね」

 

「はい! 運動神経に依るスキルに関してはちょっと違いますけどね」

 

「ふんふん。やっぱりレイナは物知りだね」

 

「えへへ、しっかり勉強してるので!」

 

 可愛いなこの魔法使い。

 

 

 さて、ここまで森を歩いたんだ。敵にエンカウントしないと言う事は無いはずだが……。

 レイナに聞いた話では、この森に生息するモンスターの種類はやや多目。狼と蛇にカラス、その他多数と言ったところだが、危険なのが熊と猪である。

 

「……一応、痕跡とか探して追ってみる?」

 

「やってみます?」

 

 追跡やストーキングの心得は無いが、まあやらないよりはマシだろう。

 

「んー、と言っても……私、狼がマーキングで縄張りを作るっていう知識しかないけど。あと……匂い付け? あ、これは猫だっけ」

 

「あとは足跡ですね。私もそういう経験はあんまり無いんですが……あ、居ました」

 

 痕跡を探そうとしたところで、狼を発見。これを早いと思うか遅いと思うか。

 どちらにせよ、これから俺はソイツに戦いに挑むのだが。

 

「よっし! レイナ、後は頼むよ」

 

「はいっ」

 

 相手もこっちを認識している様だが、動いている様子はない。

 ならば先制攻撃はこっちのもの。魔法の詠唱を開始する。

 

「『詠唱』」

 

 この世界における魔法は、殆どが詠唱を必要とする。

 各魔法にはそれぞれ必要な詠唱時間が定められており、それを超えた詠唱を続けると『追加詠唱』となって威力上昇等の強化が発生する。

 

 狼がこちらを様子見している間にできる限り詠唱を続けて……。

 

「『ファイヤーボール』!」

 

 初期で既に習得していた魔法、ファイヤーボールを放つ。

 全ての属性のボール系を習得しているが、攻撃といえば炎属性だろうという事でこれを選んだ。

 

 戦闘態勢にも入ってなかった狼はそのまま焼かれて、ダメージ。

 初期の魔法というだけあってか、一発とまでは行かない。……が、無視できないダメージはあるはずである。

 

 牙と爪ぐらいしか攻撃手段のない狼は、やや細い筋肉を浮かばせた体を動かして俺の方に接近する。

 

「『詠唱』」

 

 詠唱中、移動したり大きな動きをとると、詠唱の効果は失われる。

 勿論攻撃されても失われるが……。

 

「『エアーボール』!」

 

 風属性の魔法は、極端に射程が短いが、詠唱時間も短い。

 この小さな距離を牽制で間合いギリギリに抑えるには、ちょうど良い魔法だ。

 

 当てる事は叶わなかったが、攻撃を察知して俺を攻撃せず警戒だけを続けた。

 警戒と言っても、隙を見せればすぐ攻撃してくるだろうが。

 

「的当ては終わりかな」

 

 遠距離攻撃出来ないこともない距離だが、この状態だと風属性でも詠唱を狙われるかも知れない。

 魔法“剣士”には心細い気がする短剣をしっかりと握りしめて、敵に向ける。

 

 武器がある分、間合いは俺の方が広い。しかし、牙や爪程度の間合いでも十分に届かせる程度の機動力が相手にはある。

 

 なら、カウンター狙いだ。

 

「そら、来い! 私がこの短剣で迎え撃つぞ!」

 

 戦闘によって昂ったテンションで、相手を挑発。でも俺としては片手剣ぐらいが良かった。

 

 テンション任せの挑発に、しかし敵は反応しない。それどころか、敵の顔は真上に向かれている。

 そして響く、狼の遠吠え。

 

 ……今遠吠え? って事は……いや、それはとにかく、この隙を見逃すわけには行かない! 

 

「『詠唱』────」

「あ、仲間を呼んだみたいです!」

「────『エアーボール』」

 

 仲間を呼んでいる隙に攻撃。怯んだ。距離を詰める。切り裂く。

 危うく反撃を受けそうになるが、牙を向ける顔を目掛けて攻撃すると、その牙の前に俺の刃が突き刺さる。

 すると敵は光の煙だか粒子だかを傷口から漏らしながら、倒れた。

 

「……ねえレイナ、狼の増援って何匹来ると思う?」

 

「ええっと……少なくとも2匹は。平均5匹来るって聞きますけど」

 

 ……ここは初心者向けの狩場じゃなかったんですかぁ?! 

 

「撤退、てったーい!」

 

「は、はい! あ、ドロップ素材……」

 

「そんなの無視無視!」

 

 初めての戦利品を置いて行くのは勿体無いが、それ以上に初戦闘でやられるのはお断りだ! 

 

 

 ・

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 スタミナ値の低下を示す、視界が若干暗くなり動きが鈍くなる挙動を経験しつつ、西側へと走り続けた。とっくのとうに森から脱出しているが、俺たちが目指しているのは、安全地帯の目印である、草のない地面が伸びる王都への道であった。

 

 森の中と比べるまでもなく歩きやすい平原を超え、俺とレイナはようやく道に合流することができた。

 

「はあ、はあ……いやあ、ここまで走ったのって何時ぶりだろう」

 

 ぐで、と地面に腰を下ろして息を整える。

 

 朝のランニングでもここまで全力で走る事はなかった。この()()に関しても、現実でも、体力の不足を思い知らされる……。 いや、別に辛いって程ではないのだが。

 

 それよりも、魔法職なのにここまで走らせてしまったレイナの事だ。

 

 女子力を欠かした様な仕草で地面に座っている俺に反して、彼女はお淑やかに息を整えている。

 

「大丈夫?」

 

「いえ……ちょっと疲れちゃいましたね。でも、なんか楽しかったです」

 

 汗掻いても女子力高いな……ゴホン。

 

 まあ、全力で走る機会なんて中々ない。だからか、途中からはどうしてか走る行為を楽しんでいた。

 それも、俺たち2人。両方ともが。……いや辛いは辛いんだが、妙に清々しい。

 

「やっぱり、お友達と一緒の方が楽しいですね」

 

「そうだね。1人で走っても疲れるだけだし」

 

「はい。また走ってみたいですね、なんて」

 

「あはは。……このまま、ちょっと一休みしよっか」

 

 出逢って数時間もしない2人。

 お互いの気性が噛み合っているのか、それとも一緒のゲームをしているという仲間意識が手伝ってか、

 

「いえい」

 

「いえーい!」

 

 ()が挙げた手の平に、レイナがハイタッチで返してくれる流れは、かなり自然だった気がした。




日本人にあるまじき社交性。
……なのか?

戦闘描写について。

  • ブラボー(最適又は好みの描写、テンポ)
  • 肯く(特別良い所は無いが、悪くはない)
  • ブー(文面には不出来が目立ち、酷いもの)
  • どれにも当てはまらない。その他。
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