ウチのキャラクターが自立したんだが。リファインド   作:馬汁

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ウチのキャラクター、依頼を請ける。

『依頼処』

 

『冒険で得た財宝ぐらいならば、路銀を賄う分には足りる。が、財宝を得られる保証はどこにもない。

 装備の購入、その修繕、道具の補充、治療費。これらは、場合次第ではその額が天にまで届いてしまうとまで言われている。この金額を稼ぐ為に、いつしか冒険者達は、あらゆる町や村で依頼を請ける様になった。

 そして今日も、冒険者は資金と冒険の為にまた集う』

 

 

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 冒険者の朝は早い。

 装備とは言える、という程度の心許ない防具を着込み、未だに買い替えていない短剣を腰に提げる。

 

 天候、見るからに快晴。

 気温、比較的涼しげだが夏らしく湿った空気。

 体調、仮想の空間で仮想の身体だと言うのに、寝起きの時点では快調である。

 

「行くか」

 

 依頼処……ではなく、朝食に。

 

 

 チュートリアルノートによれば、依頼処という施設は、

 

『討伐、採集、製作、雑用等の依頼を請け、報酬を得ることができる。また、逆に依頼を出す事も可能』

 

 らしい。

 フレーバーテキストめいた文章もあったが、あれは説明の義務を二の次にしているから分かりづらい。

 

 そこらのファンタジージャンルのライトノベルやゲームでは、依頼処の様な機能を持つ施設を「冒険者ギルド」と呼ぶことが多いだろうが、ここでは前述の様に呼んでいる様だ。

 

「なんで冒険者ギルドじゃないんだろうね?」

 

「あー。確かに、そうですよね。あそこの運営は冒険者ギルドですし……」

 

 何故だろうか。

 その答えがなんであろうと弊害は無い、些細な疑問ではあるが。

 

 

 ……因みに、目の前ではレイナという女の子が朝食のベーコンエッグ、そして主食に類する食パンを食べている。

 対面して席に座っている俺も同様に。

 

 どうやら、彼女は今日も俺と一緒に行動したがっている様子だったから、依頼処に行ってみて、一緒に依頼を遂行するという予定を共有した。

 具体的な依頼内容は決めていないが、魔法剣士としては、戦闘が伴う様な依頼が良い。それと拘束時間が少な目のものが良い。だから護衛依頼は考えていない。

 

「どんな魔法使えるのかな、そういえば」

 

「魔法ですか? 例えば……爆弾みたいなのを実体化して投げれる魔法を最近習得しましたよ」

 

「実体化」

 

 そういう魔法もあるのか。

 今俺が持っているのは各属性のボール系魔法だ。それぞれ火、水、土、風、雷属性の5つがある。

 使い勝手は……ただ射出するという、シンプルな物だ。掌から放てるが、人差し指を立てても出来るかもしれない、らしい。……もし出来るのなら、それの方が指向性を認識しやすいかもしれないな。

 

「ケイさんはまだボール系しか持ってなんですよね。習得できる2つ上の上位互換に、ジャベリン系がありますけど、確か手に持って攻撃も出来たと思います」

 

「おお!」

 

「ただ、魔法使い的には接近戦はご法度ですから……でも、魔法剣士なら上手く使えるかもしれませんね」

 

「良いねえ。早く習得したい」

 

「魔法書が欲しい、本屋や魔道具店から買えますよ。もっと難しい魔法は、それ専門のお店に行かないと無いですが」

 

「なるほど。と言っても、今はステータスもお金もないから、後の話になるかな」

 

 基本は、素材が秘めるエレメントを使用した魔法開発での習得になるが、魔法書があればこの過程をすっ飛ばして直接習得できる。

 自分で開発すれば魔法をアレンジできるとの事だが……。

 

 まあ、研究するにしても『知識』とか『思考』とかいうステータスが要るのだが。

 確か魔法書の時は『思考』の代わりに……思い出した、『意思』が必要だった筈だ。

 

 身体系のステータスは兎も角、『知識』『思考』『意思』と言った、精神系のステータスは分かりづらい。4つ目の『魔力』は単純に分かるけども。

 因みに身体系には『筋力』『器用』『俊敏』『感覚』がある。

 

 

 自分の分は既に食べきり、レイナの食事もそろそろかな、とぼんやり待っていた頃、そばに寄ってくる誰かの気配を感じて、横を見る。

 

「あ、トーマじゃん。おはよう」

 

「おはよう」

 

「おはようございます。トーマさん」

 

 彼は食事を終えたのだろうか。手に持っているのは食器ではなく、何故か革の胸当てがあった。鱗の模様が見える表面からして、爬虫類の皮だろうか。

 

「それは?」

 

「蛇革の胸当て。今、色んな種類の革で練習していて、これはその1つだ」

 

「へえ……素人目だけど、綺麗に出来てるじゃん」

 

「お前にやる」

 

「え」

 

 渡される胸当てを受け取り、確かに爬虫類っぽい肌触りだなあと思いつつ、半ば放心した状態になる。

 

「おおー。なんか見た目が物々しいです。なんか冒険者っぽいですね!」

 

「う、うん……。えっと、ありがとうね。でもどうして?」

 

「それは出来がわる……いや、友好の印というか、そんなもんだ」

 

 ああ、うん。なるほど。粗悪品の押し付けという事ですか。

 チラと見てみるが、なんとなく縫い目や革の状態がやや悪い様に見えるか。大した問題には見えないが。

 

「まあ、ありがとう。上等な物が手に入っても大事に取っとくよ」

 

「いや、別に売るなりしてくれてもいいんだが」

 

「ふうん? ……じゃあ、勝手に扱わせてもらうよ」

 

 後輩冒険者の知り合いでも出来たら、もしかしたら譲るかもしれないし。

 その時までは手入れも欠かさず……。

 

「昨日、当たりが強くなってしまったから……」

 

「え?」

 

「そう言うことだ。じゃあ、俺は部屋に戻る。もし点検や修復が必要なら訪ねてくれ。部屋は5番だ」

 

 ……ツンデレ? 

 

 俺への囁き声だったが故に言葉を聞き取れず、レイナが首を傾げる。それをよそに、俺の頭の中では、彼に対する印象が塗り替えられていた。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 棚からぼた餅を得た私は、早速と独特な触り心地の胸当てを装備した。

 ベルトである程度締め付け、道の上で軽く体を動かしつつ調整する。

 

 付け心地は大分良い。女性の胸部に合わせた設計だから、胸はキツくない。

 

「どうですか?」

 

「うん、良いね。無料で貰えたのが不思議なくらいだよ」

 

 これで少しは安心して戦えるだろう。

 

 丁度良い具合に調整し終えたぐらいで、俺とレイナは依頼処に到着する。

 中からすでに喧騒が聞こえてくるあたり、人気はかなりある様だ。

 

 レイナが扉を開ければ、やはりその喧騒がドッと外に溢れ出てくる。

 

「おー」

 

 見れば見るほど冒険者ばかりだ。鎧、剣、斧、弓、杖、そして肉体があらゆる所に見える。

 カウンターで受付と向き合っているのは殆どが一般人だ。

 

 左を向けば、あれは面会場みたいなものだろうか。机を挟んで冒険者と一般人が話し合っている。

 

「冒険者登録みたいなのは」

 

「ないですねー。やろうと思えば普通のパン屋さんだって依頼を受けれますよ」

 

「へえ」

 

「あんまり実力がないと、依頼主が却下しますけど」

 

 なるほど。依頼主と冒険者が直接顔を向き合わせて、その判断をするのか。

 

「一応、依頼の受領から完了までを受付で手続きする物もあります。これは依頼主が手紙などで依頼を送り出している場合と、ギルドからの依頼の場合ですね」

 

「ふむん」

 

「……興味なさそうです?」

 

 いやそんな事は。

 

「んー、まあ、習うより慣れろって言いますからね。早速依頼を見てみましょうか」

 

「そら来た」

 

「やっぱり。ケイさんはせっかちさんですね」

 

 と言いつつも嫌そうには見えない。俺の新しい一面が見れたとでも思っているのか。

 いや確かに、この通り目の前の冒険に我慢する苦手だ。むしろあんまり宜しくない、我慢は体に毒なのだ。

 

「冒険を我慢するほど落ち着いた性格はしてないんだよ」

 

「思ったよりやんちゃさんなんですね……。選ぶのが面倒だったら、受付に頼むと技量に見合った依頼を持ってきてくれますよ」

 

 なんとまあ親切な。

 しかし成る程、うむ、うむ。

 

「自分で選ぼう」

 

「……それは良いですけど、決定する前に相談してくださいね?」

 

「分かったよセンパイ」

 

 難しい顔で微笑む。先輩頼りも程々にしなければな。

 

 

 さて、何が良いだろうか。

 やはり戦闘系か、となればここらへん。そこで1枚見れば、それは採集護衛依頼。すぐ横を見れば、短期防衛依頼。少し目線を左下に運べば、討伐遠征依頼。

 依頼の難易度、危険度を表しているであろう数字が、青、黄、赤色の丸で印づけされて書かれている。青から赤まで危険度が少ない順として色がつけられている様だ。

 

「1番最初はどれぐらいの難易度がいいと思う?」

 

「うーん、ケイの場合は、どうでしょう。最初の私は臆病だったので、危険度の少ない採集依頼ばかりでしたし……」

 

「……お、決めた、これだ」

 

「私相談してくださいって言いましたっけ?」

 

「うん……いやごめんって。ちょっとこれが目を引いたからさ。ほら、『常闇の森』って」

 

「あー」

 

 納得した様な反応を見て安心する。如何にもファンタジーでロマンのある名称なのだから、思わずこれに手が伸びても仕方がない。

 

「でもお勧めしづらいですよ。常闇の森は、文字通り昼間でも暗いです。何も見えません。これは魔素による木々の異常成長が原因らしく、この影響で、森の中にいる間は魔力の回復が早かったりしますが……」

 

「へえ。行ったことは?」

 

「はい。あんまり深く探索してませんでしたが、面白い素材が生えてたので……何時か行きたいと思ってたんですよね」

 

「なら、今行こう!」

 

「え〜。……でも、モンスターとか強いですよ? 狼男とか、蠢く蔦とかが捕食しようとしますし」

 

 ……正に魔境だ。

 

 いや、いや。それこそが冒険である! 多少の危険、それこそ良いじゃないか! 

 

「行こう! 大丈夫! 依頼達成したらすぐに帰っても良いし、良い素材が見つかったら手伝うからさ!」

 

 それに俺たちは冒険者でプレイヤー。しかもレベルが低いからデスペナルティも無い! ……のは俺だけだろうが、とにかく危機へ飛び込んで損は無いのだ! 

 それに付き合わせるレイナには悪いが……。

 

「うーん……まあ、魔法剣士と魔法使いの組み合わせですし、前衛後衛である程度いい感じに戦えるでしょうし……」

 

「なら!」

 

「あ、でも装備を新調しないとですね。防具は兎も角、初期の武器はちょっと心許ないです」

 

「あ、装備……」

 

 そういえば、胸当てを貰ったから、装備の予算に少し余裕ができたんだったか。

 だったらちょっと奮発して……あ、いや、常闇の森なんだから松明とかランタンとか要るし、

 そういえば回復用のポーションとかも……。あれ、全部揃えられる気がしない。

 

「仕方ないですね。……今回だけですよ? 私のポーションを幾らか、それとお金をちょっとだけ分けてあげます。あと旅に必要な小道具も」

 

「ありがとう先輩! 私がマトモな冒険者になったら利子を付けて返す!」

 

 やはり持つべきは先輩だなあ! 

 借りを作るのは少し怖いけれど、それは倍にして返せば良い話だ。倍になったら利子どころの額じゃ無いが。

 

「これほど嬉しく無い先輩呼びは初めてです……」

 

 ……やっぱり罪悪感が強いかもしれない。

 

 

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 ・

 

 

『常闇の森 討伐採集依頼』

『依頼主:ユカリオット』

 

『常闇の森の調査の為、特定エリアの狼男を討伐し、各個体が保有する魔石を回収、納品を依頼する。また、魔花(マカ)も調査の上で有効な参考物となり得る為、可能であれば、発見した一つの群集地につき一本又は二本採集し、またそれぞれ採集地を記録した上で納品する事。特定エリアの位置等詳細は依頼主と面会時に伝える。』

 

《24》

 

 




冒険。そう、冒険だ。
冒険心が無ければ男になんて生まれてない。(但し個人差があります)
ケイも設定上元男な上にナカミも男なのでセーフ。
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