ウチのキャラクターが自立したんだが。リファインド   作:馬汁

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ウチのキャラクター、出発する。

『魔法』

 

『この世界において、魔法は人々の生活に浸透した普遍的な技術です。基本的な魔法を習得すれば、生活に役立つことでしょう。

 勿論、貴方を脅威から身を守るために、又は脅威を殲滅するための魔法も多岐に渡って存在します。

 魔素に干渉する力が強い者は、より強力で複雑な魔法を行使する事が可能です。

 

 魔法を習得する手段は、2つ。特定の魔法の構造、制御方法を記した魔法書を読み理解する方法と、自ら魔法を研究し理解するという方法があります。

 

 魔法書を理解するには、習得したい魔法に見合った「集中」と「知識」が必要です。

 その必要能力値を満たし、習得すれば、貴方はその魔法を扱うことが出来ます。

 

 対して、自力で魔法を作りだす方法を取る場合は、「思考」と「知識」、そして属性マテリアルが必要です。

 属性マテリアルとは、5種の属性をそれぞれ物質化した物です。この世では主に石や木、そして生物などの中に属性が存在しますが、研究の為にはマテリアライザで抽出する必要があります。

 抽出後、このマテリアルを消費して研究を行うことが出来ます』

 

 

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 一振り、また一振り。

 剣先の遠心力によって腕が振り回されることはなく、しっかりと操れている。

 

 現代人に触れる機会は無いはずの、暴力の象徴たる剣は、しかし俺の手に収まっていた。

 

「何と言うべきかわからないけど、強いて言えばこの重みが安心感だよね」

 

「ちょっとよくわからない感覚ですね」

 

「そうかもね」

 

 

 暴力の象徴とは言ったが、エクスカリバー(木の枝)を拾う男の子の気持ちを考えれば、どちらかと言えばロマンという面が強いだろう。

 一応、今の俺は女なのであるが。

 

 それに、この左手の盾。これなら、盾で攻撃を受けることもできる。回避以外の防御手段があるのは何とも心強い。

 

「手持ちの道具の方は、十分そろってるんだよね」

 

「はい。魔石ランタン、ロープ、ポーション。あとけむり玉もですね。移動中の食料は、最低限の非常食だけにしましょう。採集した素材で帰りの荷物が嵩張りますから」

 

 逃走手段も確保するのは、普通の冒険者としては当然の心構えらしい。

 普通じゃない、つまりプレイヤーの冒険者はこういう所を見逃しがちだが。

 

「食料は現地調達だね」

 

「そのセリフを言いたいだけですよね? 糧食の類は持っていきますよ。それが足りなければ、途中には森や川もあるので、。……あ、お肉ばかりじゃなくて、野菜も食べるんですよ」

 

「好き嫌いはしないよ。でも狩った動物を捌くのには自信がないな」

 

「それは大丈夫ですよ。お肉はある程度加工された状態でドロップするので。あ、それと移動手段の方は、ある方がユカリオットさんの紹介で馬車を用意してくれるらしいです、北門で待ってるそうですよ」

 

 用意周到なのかもしれないが、それが当然かの如くテキパキと済ませてくれる。これでは冒険とは程遠いかもしれないが、まあ初心者向けではある。

 レイナに頼り切りになるのはちょっと考えるところがあるが、最初のうちは仕方ないだろう。

 

「じゃあ、行く?」

 

「行きましょう。常闇の森へは馬車で4時間です」

 

「……長くない?」

 

 この数字を聞いた俺は、ただ一言だけの不満を誰にも向けずに放った。

 レイナは困ったような笑いとともに、頷いて同意を示す。

 

「この世界、移動時間はやたらと長いんですよね。馬車に本やら生産道具を詰め込むプレイヤーが殆どです」

 

「確かに体の感覚とか風景とかは現実準拠かもしれないけど」

 

 なにも移動時間はそうしなくて良いのではないか。せめて転移とかはないのか。転移とか。

 例え1時間の価値が現実換算で2、3分程だったとしてもだ。

 

「仕方ないです」

 

 仕方ないか。

 

「となれば、暇の潰し方だよね……。最重要課題で」

 

「最重要ですか、それ? ……それなら、本とかは読みますか?」

 

 本か。良い手段かもしれないが、微妙だ。

 俺は読む方だ。ケイの方は知らないが……魔法使いだし、読む方だろう。

 

「うん、読むよ。物は問わないけど」

 

「じゃあ私の本も、興味があったら読んでみてください。幾らか既読の物もあるので」

 

 それは嬉しい。

 いや、時間を潰すという目的での読書は、それでも俺に限って言うと不適当な手段なのだが。だが無いよりマシだ。

 

「魔法書もあるの?」

 

「ありますよ。あ、トランプなんかも持っていきましょうか」

 

「いいね。トランプがあれば3時間ぐらいは軽く潰せそうだ。カードゲームには致命的に疎いけど」

 

 これならあっと言う間に終わる、なんてことはない筈だ。……とは言え、実はトランプを使ったゲームのルールはあまり知らないのだ。

 知っているものは神経衰弱とババ抜きぐらい。他は名前を時々聞く程度で、ルールの愕然とした概要すら知らない。

 

「最近の時代はトランプカードよりも上等な遊びで満ち溢れてますからね。この世界だと遊びの時代も退行してるんですけど」

 

 確かに、そうだ。

 スポーツは細やかなルールが改定されるのみで、他のゲームなんかは大幅に変化しているか消失している。

 まあ、若者の俺たちには「変わった」「消えた」という事実しか知らないのだが。具体的に何が変わったのかは知らない。

 

「なんなら新しい遊びでも考えましょうか」

 

「それは最終手段かなあ」

 

 という訳で、旅の上で大きな問題となる暇つぶしは取り合えずこれで解決、ということにした。

 

 

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「積荷は、簡易的な錬金術の道具と書物にトランプカード。他は装備品その他道具、と。言わずもがな余裕で馬車に乗せられますね」

 

「うん、今日はよろしくね」

 

「よろしくおねがいします」

 

 俺たちが持ってきた見て積載量の確認を取ってくれた彼は、今日この馬車の運転手を努めてくれる者だ。……いや、運転手というよりは御者か。

 

「目的地は常闇の森でしたね? 僕たち自身とその荷物の他に、伐採所への物資も一緒に積むので、途中でそれらを下ろします。よろしいですか?」

 

「良いよ。見たところ腰を下ろす空間はありそうだし」

 

「傷つけなければ木箱を机にしてトランプしていっても大丈夫ですよ。ただ揺れに関してはご了承を」

 

 それぐらいは気にしない。木製の馬車にサスペンション等は期待していない。

 

「良いよ。早速出発しよう」

 

 

 と、出発前はそう意気込んでいたのだが……。

 

「これは……想像以上だ」

 

 途中まで整備されていた道の頃は良かった。小さな揺れは多かったが、耐えられた。

 しかしこれはなんだ。地震慣れしてしまった日本人でも、これほどの物は耐えられない。

 

「これでも昔よりは良いんですよ。有志達が石を退けたり道を均してくれたり」

 

「雨風やモンスターですぐボコボコになりますけどね」

 

 御者とレイナがそんな説明をしてくれるが、どのような経緯ああったとしても、辛いものはやはり辛いのだ。

 

「下手したら酔うかも」

 

「これはトランプはお預けですかね」

 

 ぜひそうしてほしい。

 

 

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 揺れの比較的少ないと思われる馬車のど真ん中で、無心で風景を眺める事しばらく。

 馬車はふと減速を始め、揺れもゆっくりというものに変わっていることに気づく。

 

「あー、もう目的地に……じゃなくて、伐採所?」

 

「はい。荷降ろしのついでに休憩もしておきましょうか?」

 

「あ、うん。頼む」

 

 まだ続きもあるのか。とうんざりするが、今は休憩時間だ。

 馬車から降りて大きく背伸びして、深呼吸する。

 

「んくぅーっ……」

 

「乙女がそんな声しちゃいけませんよ……」

 

「ええ。私は乙女なんてガラじゃないと思うけど」

 

 そんな事よりもこの開放感に身を大に広げる事が大事である。

 ついでに、踏みしめる大地が存在する事に感謝する。

 

 さて、体を伸ばした所でだ。

 

「荷降ろし手伝うよ。馬の相手して疲れたんじゃないの?」

 

「こっちのセリフですよ。でも体が大丈夫なら、有り難く手を借りさせて頂きます。場所は全部同じ場所ですが、ちゃんと種類別に分けといて下さいね」

 

「了解、と」

 

 矢、とだけ書かれた木箱を持ち上げる。それほど重くはなかった。数キログラムか。

 持ち運びやすいように手の位置やら持つ位置やらを調整していると、一人の男がやってくる。革鎧を着た逞しい男だ。

 

「こんにちは、木こりさん。いつもの場所でいいですか?」

 

防具を着ているが木こりらしい。

まあ多少の防護は不可欠なのだろう。自衛手段を用意するに越したことはない。

 

「おう、助かるぜ。そっちの2人はここのモンスターを狩ってくれるのか?」

 

「いえ、残念ながら。今回はこの馬車と一緒に常闇の森に行って、調査するんですよ」

 

「そりゃ残念だが……応援せざるを得ないな。こっちの都合を押し付ける気はねえし、常闇の森の問題については一端の木こりでさえ悩ませるもんだ。っと、置き場所は俺が案内しよう。お前さんは馬の様子を見てやれ」

 

「……その方が良さそうですね。どうも落ち着きが無いようです。野生の勘という事もありますし、皆さんもお気をつけて」

 

 それにしてもこの木こり、上半身の筋肉の付きがなんとも……ゴツイ。

 じゃなくて、どうも馬の様子が変らしい。荷物運びをすると言うだけなのだが、まあ気をつけよう。

 

「ところで木こりさん。一度にそんなに持って大丈夫なの?」

 

「おう、これでも鍛えてるからな」

 

「地面がぬかるんでるのかな。木こりさんの足跡が数ミリは沈んでるように見えるんだけど」

 

「ここら辺は割と行き来してるから踏み固められてる筈だが?」

 

 なら本当はもっと重いってことだ。一体どんだけの体重と荷物を持っているんだよ。

 

「……コホン。じゃあ案内してくれる?」

 

「おう、任せろ」

 

「レイナはどうする?」

 

「あ、へぁ? いやあの、えっと」

 

 ……どうやら休みが必要みたいだ。はて、俺程疲労している様子はなかったのだが、あまり体力が無いのだろうか。

 

「ここで待ってても大丈夫だよ。私行ってくるね」

 

「あ、あの!」

 

 どうしたんだろう、案内してくれる木こりを待たせているのだが。

 

「うん?」

 

「け、ケイさんの事手伝いますね!」

 

 それは……なんだか心配だ。しかし手が増えるのは有り難い。

 無理して重い物を持たないようにとだけ伝えると、2人と木こりで荷降ろしを始めた。

 

 

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 運んだ木箱は累計36個か。

 そろそろ荷台に乗っている木箱も片手で数えられる程度になってきた頃、

 

「あともう少しだね。馬の様子はどう?」

 

 馬の様子が気になった俺は、御者に話しかけた。

 

「落ち着きましたが、警戒の色は消えません。もしかしたら道中で馬が怯えて止まってしまうかも」

 

 それは困る。

 持っていこうとした木箱を一旦置いて、側頭部のあたりに手を当てる。

 

「うーん……、どうしましょう?」

 

「脅威が自然となくなるまで待つ?」

 

「あるいは迂回する手もありますが……大きな遠回りになってしまいますね。半日以上はかかるでしょう。道を外れて突っ切るなら話は別ですが」

 

 道を外れて突っ切るのは、手段としては論外だ。

 ドラゴンにでも追われてなきゃ、この手は取りたくない。

 

「御者さんはこの後に予定してる用事ある?」

 

「ありません。時間を掛ける手段を取っても構いませんよ」

 

 ならば、遠慮なく時間を掛けられるだろう。

 

「私はこのまま待機が良いけど、とりあえず荷物が終わった後でね。その時改めて」

 

「はい」

 

「そうしましょうか」

 

 さて、後少……し? 

 あれ、妙だな。さっきここに置いたはずの木箱が……。

 

「おお、最後のヤツ全部持ってくぜ」

 

「……お、おう」

 

 あの木こりがあとの全部を一気に持ってしまい、俺は手持ち無沙汰になってしまった。

 荷降ろしの仕事がなくなったのだから、それはそれで良いのだが。

 

 

「あとは思い思いに休憩しましょうか。ケイさんも移動と荷物運びで疲れてる様ですし」

 

「ありゃ、分かっちゃった?」

 

 これは参った。レイナは人に対する観察眼が鋭いのだろうか。

 

「はい。頭を痛そうにしてたので」

 

 しかも症状まで当てる始末。

 そこまで言われたら、休まないととやかく言われてしまうだろう。

 

「あはは。バレたら仕方ない。丁度荷台も空いたし、そこで横になるね」

 

「辛かったら言って下さいね。濡らしたタオルなり持ってきますから」

 

 そうはいっても、苦痛を伴う頭痛ではないのだ。

 

 苦痛ではない頭痛、というのもまあ奇妙な物なのだが、しかし事実そうなのであるから、本当に奇妙だ。

 脳を突く様な、いや頭の辺りの肌を突くような感覚が、痛覚ではなく只の感触として伝わってくる。しかもその感触が得られるのは、決まって一定の方位。ここから北東の方位からだ。 頭の向きを変えても、この感覚はその方位から感じてた。

 この感覚は、今も馬達も抱いている「野生の勘」に類するものだろうか。

 

 だとすれば……。

 

「……いや、馬車じゃなくてあの櫓に登って良いかな? 風通しが良さそうだ」

 

「別に特別立ち入りを断ってる所はありませんよ。ああ、大丈夫です。物資補給で常連の僕が言うのですから」

 

「なら、そこで休んでるね。高いからついでに周りの様子でも見てるよ。……あ、そうだ。本も持ってくね」

 

「構いませんよ」

 

 もし俺の心配が杞憂であれば、この本を読むとしよう。

 少しだけ迷ったが、ファイヤボルトの魔法書を手に取った。少しページをめくれば、ちゃんとした文章と図式が書かれている。教科書ほど分厚いわけではないが、内容はそれに近いかもしれない。

 

 これなら、直ぐに読み終えることはなさそうだ。

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