ここは食酒亭、スタンク達が帝国へ遊びに行ってしまった。
普通の食酒亭。
そこで…
モブAこと、一角を持つ青年アカツキが
「スタンク達、どのくらい帝国で遊んでくるんだっちゃねぇ……」
モブBこと、ドワーフのブルンガが
「そうだべなぁ…。いないと寂しいだべ」
モブCこと、狐型獣人のキャリンダが
「そうっすね。なんか、食酒亭が静かっす」
そこへモブDTこと、ハーフドラゴンのドラテルが
「みなさん!」
と、仲間のテーブルに来てとある情報紙を見せる。
それに三人が「おおおおお!」と驚嘆の声を放つ。
キャリンダが
「まさか…そんな事になっているっすとは…」
ドラテルが
「非常に興味深い!」
ブルンガが顎髭を摩り
「もう会う事がない種族とエッチとは…すげえだべなぁ…」
アカツキが
「オレ達も付いていけば良かっただっちゃね」
四人はスタンクの帝国で体験したレビュー記事を見ていた。
それを横目でメイドリーが見詰めて
「本当に、何やってんのよ…」
と、呆れていた。
その頃、スタンク達は…ドラグ・アース帝国ではなく、別の国にいた。
ドラグ・アース帝国の海運財閥エンテイスの巨大船に乗ってスタンク達が
「いやーーー ついに東の果てまで来たか!」
と、これから向かう陸地を見詰める。
隣にいるゼルが
「いや…オレもここまでは…流石に来た事はなかったわ。すげーなぁ…帝国の船は…」
その隣にネオが来て
「遊びで行くんじゃないんだぞ」
スタンクが指を立てて笑み
「分かっているって。ちゃんと仕事はするからよ!」
そこにクリムが来て
「あと、どのくらいで港に着きます?」
ネオが懐中時計を取り出して
「後、一時間くらいだ」
クリムがネオの隣に浮かんで来て
「探している方…見つかるといいですね」
ネオが渋い顔をして
「ああ…そうだな」
数日前、皇帝ロンバルディアが御前で
「ネオ、人捜しをして貰えないか?」
ネオが眉間を寄せて
「人捜し…とは?」
皇帝ロンバルディアが近づき
「このドラグ・アース帝国から数個の国を挟んで東にヤマト皇国という、我が帝国と同等の国土を持つ皇国がある。
我ら竜族は、その皇国の帝と親しくしているのだよ」
ネオは、この世界の地球儀を投影させる。
ドラグ・アース帝国を中心に、西へスタンク達がいる国々ある大陸、東に行くと繋がる大陸に国々とその東にそのヤマト皇国があり、ヤマト皇国から東に行くと氷の大地があり、それを挟んで東にスタンク達の国々大陸がある。
地図は平面では理解できない。球体で判断する必要がある。
スタンク達の方から行くには、その氷の大地を抜けないといけないので、ムリがある。
なので、そのヤマト皇国へ行くには、帝国から東へ、海洋を抜ければ安全だ。
この世界の常識ではね。
ネオの宇宙級超技術文明では、宇宙船で向かえばいいが、要らぬ警戒をされるだろう。
ここは、この世界の移動方法に頼るとする。
皇帝ロンバルディアが、その立体映像の地球儀を指差し「ここだ」とヤマト皇国を示す。
二千キロ近い全長は、この帝国と同等で、帝国の境にある山脈と、そのヤマト皇国の境にある山脈に挟まれているそこに大小の国々ある。
皇帝ロンバルディアが懐から一枚の魔導写真を取り出して
「この娘を探し出して欲しい」
ネオは魔導写真を受け取ると
「この娘は…妖狐ですか?」
魔導写真には、金髪で獣人の耳を持ち、狐の尻尾が5つも生えている桜色の着物を着ている娘だ。
皇帝ロンバルディアは
「名は、麗狐と申す。この娘の家は…長年の名家だったが…。とある事が切っ掛けで潰された」
ネオが
「潰された理由は?」
皇帝ロンバルディアが渋い顔をして
「ヤマト皇国の帝を暗殺しようとした者としてな。ヤマト皇国の帝は長寿な方だ。ヤマト皇国が誕生した二千年前から生きる。いわば、ヤマト皇国の象徴のような方だ」
ネオが渋い顔で
「どうして暗殺なんて…。象徴だったのでしょう?」
皇帝ロンバルディアは頷き
「そうだ。長年…生きて。政治は、その時代に選別された者がやっていた。
まあ、個人的にも特別な力は持っているが…国の事は民達に任せていた。
だが、隣国の愚かな連中に、麗狐の兄がそそのかされたのだ。
国を真に民のモノとするには、帝が邪魔だとなぁ…」
ネオが呆れ顔で
「そんな事を意味があるんですか? 象徴でしょう…もし、民を纏めるシンボルが消えたら…」
皇帝ロンバルディアは頷き
「お前の読み通りだ。国は瓦解する。それを狙っていたのだよ。隣国達はなぁ。
その兄も仲間達も、愚かな理想にかどわかされて、帝を暗殺しようとした。
だが、それは防がれた。
その責任追及として、麗狐達が負わされた。
妖狐の者達を守る為に、麗狐達が生け贄にされ、麗狐の父親は極刑、兄は流刑、そして…麗狐は、どこぞへも知らぬ身売りにされた」
ネオは暫し考え
「その依頼ってヤマト皇国の帝からですか?」
皇帝ロンバルディアは微笑み
「お前は頭が良い。その通りだ。娘の麗狐に罪はないと…。まあ、かどわかした隣国の連中には、それ相応の鉄槌を帝は下したがね」
ネオが渋い顔で
「いや、探すとなっては…」
皇帝ロンバルディアは
「場所は、分かっている。だが、そこの何処にいるのかは…分からない」
ネオが眉間が寄って
「あの…嫌な…予感がしますが。もしかして、女性の身売り先って…まさか…リリスガール街のような…」
皇帝ロンバルディアは頷き
「その通りだ。ヤマト皇国では一夜姫と言うらしい。ネオよ。その一夜姫がいる街、桃源郷へ赴き、麗狐を買って来て欲しい。そして、帝国で保護する」
ネオは頷き
「了解しました。この麗狐という妖狐の娘を保護して来ます」
皇帝ロンバルディアは
「連れて行く人材の選別は、任せる」
ネオは怪しげに笑み
「大丈夫です。連れて行く連中は決まっていますから」
そして、今、船の上でスタンクが
「分かってるって、探している女の子を見つければいいんだろう」
と、指を立てる。
ゼルが後頭部に両手を置いて
「しかし、身売りされた名家の娘を探せって、定番な依頼だよなぁ…」
ネオがゼルに
「そこは、二百年の経験があるアンタに頼りたい」
ゼルは肩をすくめて
「オレなんかより、アイツ等の方が…」
更にカンチャルやブルーズも来て
「もう、着きそう」とカンチャルが
「夜が楽しみだ。他人のお金でやれるんだからなぁ」とブルーズが
ゼルが
「店をローラーしないといけなくなるから…。アッチが強い奴らが沢山いた方がいいだろう」
ネオが呆れ気味に
「オレはやらん」
ゼルが
「じゃあ、金を渡して情報を買うか? それこそ、ガセを掴まされるぜ。店を回って色んな女の子達と、ピロトークでもしながら聞いた方が早いさ」
更にそこへ、ドリンとレリス、ムラマサにルディリが来た。
ドリンが
「なぁ…ムラマサは、ヤマト皇国の出だよなぁ…」
ムラマサが反応しない。
レリスが
「ムラマサ、どうしたんですか?」
ムラマサがハッとして
「ああ…小さな田舎の出だ。あんまり…大きな街に関しては…」
「ああ…そう」とドリンは告げる。
ネオとドリンにレリスにルディリは、ムラマサの反応が悪いのが気になった。
ネオ達10人に及ぶ大所帯で、ヤマト皇国の港に到着すると、皇都へ向かう。
皇都行きの大型馬車ならぬ竜車に乗って、整備された大道を進み。
夜に皇都へ到着すると、皇都の近隣にある一夜姫の街、桃源郷へ向かう。
一夜姫の街、桃源郷とされるそこは、高い格子の壁に包まれ、まるで牢獄のようだったが…その向こうには、あのサキュ嬢やリリスガールの街のように桃色の光に満ちていた。
それにスタンク達、スタンク、ゼル、カンチャル、ブルーズ、クリムが
「おおおおおおお」
と、感嘆の声を漏らす。
朱色の門を潜ると、そこは、淡い幻想の世界だった。
朱色の光が朧気に揺らめく店達、そこには…色鮮やかな着物を着た一夜姫達がいた。
一夜姫の桃源郷には、色んな国の人達が来るらしく、ヤマト皇国のような和装からスタンク達のような洋装と、様々な種族が来ていた。
まず、この桃源郷に来ると一枚の文を渡される。
まずは、この朱色の光に包まれる一夜姫の桃源郷内を散策する事。
そして、店の向こう、瑠璃色の窓内にいる一夜姫と、顔を合わせて微笑む事。
こっちが微笑んで一夜姫が微笑んだら、それは良いですよという印。
その一夜姫を頼んで、夜を楽しみましょう。
別途、料理や飲み物を頼むのも良し、月夜を共に見上げて語り合った後、一晩を楽しむのもよし。
暴力や脅迫、危険行為は、絶対にしてはいけない。
した場合は、ここから一切の出禁で、他の桃源郷からも一生出禁とされる触れ書きの人相が出回る。
ここは、一夜の桃源郷、夢のごとく穏やかに過ごして夜を過ぎる場所であると…。
実は、この美しい街並が相当な人気で、一夜姫ではなく、この幻想的な風景を求めて来る客もいるのだ。
ネオは朱色の夢のような、夜の屋敷達の美しい日本風景に目を奪われた。
「来て良かった」
この景色だけを見られただけでも、十分だった。
街の全てが幻想的で美しい。小川の両岸には、色取り取りの花を咲かせる木々達、渡り橋さえも相当に凝った彫刻が施され、朱色から桜色と染まっている。
和装の一夜姫達、その全員が夢に咲く花のように美しい。
スタンク達のサキュ嬢のように、脂ぎったピンクネオンではない。
全てが上品で美的な美しさだ。
ネオは、この街の美しさに心を奪われた。
だが、スタンクが
「オレには上品すぎるぜ。早く、良い子を見繕うか…」
と、ここのルール通りに探す。
それにゼルが付いて
「そうだな」
カンチャルとルディリは、所々に施された装飾を観察している。
ハーフリングの血が匠な技術に引き寄せられる。
ブルーズは、ドリンとレリス、ムラマサに
「オレ達は、もっと別の場所に行こうぜ」
と、誘う。
ブルーズがクリムに
「どうする?」
クリムは、ネオの隣に来て
「ネオさんといます」
「そうか…」とブルーズは、ドリンとレリスにムラマサと共に朱色の町へ消える。
ネオの隣に来たクリムが
「綺麗ですね」
ネオが頷き
「ああ…こんな所があるなんて…」
そこへ
「おい、あんちゃん!」
と、呼ぶ男がいる。
ネオとクリムがそこへ振り向くと、獣人系の男がニヤリと笑み
「アンタ達も、ここの美しさにやられたか…」
ネオとクリムは互いに微笑み
「ああ…やられた」とネオが。
クリムも頷き「はい」と。
獣人系の現地の和装男がお団子を食っていた茶店から立ち上がりお代を朱色の長椅子に置いて
「じゃあ、とって置きの場所がある。付いて来な」
と、男に付いていくと、そこは桃源郷の中心を通る小川の奥まで見える場所だった。
「おおおおおおおお」とネオとクリムは興奮した。
小川の両脇にある朱色のお店から光が漏れて、小川の岸辺にある色取り取りの木々の花が咲き乱れ、まるで奥まで続く万華鏡のような美しさがあった。
男が
「どうでえい」
ネオとクリムは言葉に出来なかった。
それを見て男は微笑みながら鼻をさすり
「ここには、ヤリに来るヤツも多いが、オレ等のように…この町の美しさにやられるヤツもいる。夢みていな場所だろう」
ネオが
「現実とは思えない」
男は同じく風景を見ながら
「そうさ。ここは一夜の夢。ここにいる女達は、売られてきた連中ばかり。こんな美しい場所でもなぁ…裏では苦しみが永遠と続く場所、苦界って言われるんだぜ」
と、告げた男の顔が悲しげに笑む。
「一夜限りとはいえ、惚れてもねぇ男の欲望を満たすだけに抱かれる場所。
男のゲスな欲望が渦巻く場所だからこそ、自らの美しさを忘れねぇ為に、汚れねぇ為に、綺麗なこの町を作ったんだよ。
この美しさは、ここで抱かれる一夜姫の、どんな事になっても汚れねぇって矜恃なのさ」
更に深い事を聞いて、ネオとクリムは頷いた。
男が
「アンタ達は…まあ、格好から見るに…この国の連中じゃあねぇなぁ…」
ネオが真剣な顔をして
「探し人をしている」
男が厳しい顔で頷き
「ここじゃあ、探し人は当たり前さね。誰を探しているんだい?」
ネオは懐から麗狐の魔導写真を取り出して
「彼女を…探している」
男はその魔導写真を見て厳しい顔で頷き
「妖狐の娘か…この桃源郷でも妖怪達がいる百鬼の区域にいけば…だが…」
ネオが渋い顔をして
「何か問題でも?」
男は渋い顔で
「金毛、五尾の尾が多い妖狐の娘は、貴重中の貴重。一夜姫じゃあなくて、誰か有力者だけが手込めにしている抱え姫になっているかもだぜ」
ネオが鋭い顔で
「金なら心配するな。幾らでも出して叩いて来いと言われている」
隣でクリムが頷く。
男は厳しい顔をして
「分かった。妖怪達のいる百鬼の地区に知り合いがいる。そこへ行くとしようぜ」
ネオは手を差し向けて
「感謝する」
男と握手して
「アンタの名は」
男は微笑み
「羅漢、そう呼びね」
クリムがお辞儀して
「羅漢さん。よろしくお願いします」
こうして、ネオとクリムは、羅漢という協力者と共に捜索を続ける。
その頃、スタンク達は、スタンクがタバコをくわえて、一夜姫のお店の中、一夜姫がいる場を見て、スケベな顔をして笑むも、一夜姫達はソッポを向く。
「何でだよ! 今、オレを見たろう! 笑顔なんだから笑顔で返せよ!」
と、怒っているスタンクに店の守護をしている屈強な獣人族の男が近づき
「アンタ、見初められないなら、去ってくれ! ここにはここのやり方があるんだよ!」
スタンクが
「何でだよ! 何件も店に行っているのに! 誰も笑顔を返さないんだよ!」
守護の男が指を鳴らして
「アンタもうるさいねぇ」
と、言うと他の仲間達が集まる。
スタンクが「クソ!」とその場を去るとゼルがいない
「アレ? ゼル?」
ゼルは、「じゃあなぁ…」と一夜姫に連れられて店の奥に行った。
「あぇえええええ! 何でだよーーーー」
と、スタンクは叫び町をウロウロとして、疲れて茶屋で団子を食っていると、ブルーズが前から現れる。
ブルーズが落ち込んでいる。
「おい、ブルーズ…どうしたんだよ?」
と、スタンクが尋ねる。
ブルーズが落ち込み気味に
「誰も微笑みかけてくれない。他の連中は、店の女の子が微笑んでくれて…オレは…」
スタンクは苦虫を噛み潰したような顔で
「何が桃源郷だよ。やれねぇじゃあねぇかああ!」
そこへ
「あら、アンタ達…見初め損なったのかい?」
と、角を持った小麦肌の女の子達が来る。
その中で長身の女が
「どうだい。アタシ等と…」
角を持ち、腹部と肩部といった露出が多い着物を着た女達。
多分、鬼人族か、オーガ族系統だと、スタンクとブルーズは思った。
スタンクとブルーズは、アイコンタクトをする。
やれないよりは、やりたい。
スタンクが
「いいぜ。楽しもうじゃあねぇか」
ブルーズも
「おうよ」
角を持つ小麦肌の女達はスタンクとブルーズを囲み
「お客様、ご案内!」
と、スタンクやブルーズを連れて行った。
それを別の男達が見て
「うわぁ…鬼神達の生け贄は、アイツ等か…」
と、小声で呟いた。
スタンクとブルーズを連れて行く女達、彼女達はオーガ族でも鬼人族でもない。
上位種とされる鬼神族というヤバい連中だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いします。
探し人 その二へ続くよ