異世界現地調査   作:赤地鎌

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アースガルドの出現によって、傲慢で欲深き事が…


調査 その四

 大量の飛空艇の艦隊がアースガルドの周囲に浮かぶ。

 それはアースガルドを包囲していた。

 

 一隻の飛空艇が、アースガルドの顔の前にいるネオ達の元に降り立った。

 その飛空艇に掲げられている国旗を見て、スタンクが

「やろう…面倒くせえ連中が…」

 

 ゼルも厳しい顔をして

「ロマーヌス帝国の連中か」

 

 飛空艇の下部輸送口が開くと、そこから白銀に輝く騎士鎧を纏った一団が下りて来る。

 

 それを見たルディリとカンチャルが

 

「うわぁ…魔導鎧の部隊かよ」

と、カンチャルが

 

「しかも…魔導鎧のあっちこっちに魔法効果が刻まれた紋様が大多数ある」

と、ルディリが

 

 レリスが

「なるほど、完全武装で脅しですか…」

 

 強力な魔法のエンチャントをされた魔導鎧の一団がネオ達の前に来ると、Dデミアが

「この件に関しては、私達に裁量が任されているでしょう」

 

 魔導鎧の一団の隊長である男性が目の前に来る。

 二メートルを超える長身、獣人と魔獣人のハーフである彼は巨大で堂々とした胸を張り

「事態が変わったのですよデミア殿…」

 

 スタンクは、隊長である男を見て舌打ちして視線を逸らした。

 

 ネオがスタンクに

「知り合いか?」

 

 ネオの答えにゼルが

「コイツの実家の剣の館で、一・二を争う程に強かったヤツさ」

 

 スタンクが

「おれは、負けたとは思ってねぇ…」

 

 ゼルが

「お前とは引き分けばかりだったからなぁ…」

 

 スタンクがソッポを向いていると、ゼルが

「久しいなぁ…ガルガンドス」

 

 隊長のガルガンドスは微笑み

「久しいですなぁ…剣の館一族付きのエルフ殿…」

 

 ゼルが

「偉い、帝国で出世したなぁ…」

 

 ガルガンドスが肩をすくめて

「全くです。ちょっと力を見せれば、あっという間に一個部隊を任される隊長にされてしまった。お陰で、才ある若者を育てる立場で、今や…帝国で随一の剣の教育者なんてもてはやされて…飽き飽きしてますよ。ですが…鍛錬は欠かした事は無い」

 

 ゼルが営業スマイルで

「確かに、アンタは…剣が好きだからなぁ…」

 

 ガルガンドスが

「剣こそ我が道。ですが…」

と、スタンクを見て

「同じく凄まじい才覚を持つ者が冒険者程度に身をやつしておるとは…剣の館の主様も嘆いているでしょうなぁ…」

 

 スタンクが顔を向け

「なんだテメェ…」

と、苛立った顔を向ける。

 

 ガルガンドスがスタンクを凝視して

「私は、君に期待していた。その能力、才覚…剣の館随一となる筈だったのに…本当に」

 

 スタンクが

「なんなら、今まで引き分けで終わっていた勝負の全部を、ここで片付けるか?」

 

 ガルガンドスが

「外に出て、世の中の荒波に揉まれて成長しているだろうと期待したのに…その気質、相変わらずで残念だよ」

 

「ああああ!」とスタンクが声を荒げると、ネオがパンと手を叩き

「で…どうして、ここに来たのか…教えて貰いたい」

 

 それによって鋭くなった空気が消えて話し合いに移る。

 

 ガルガンドスが

「我が皇帝陛下のお言葉を伝える。この生物を我らのロマーヌスへ輸送する。それだけだ」

 

 ネオが厳しい顔をして

「アースガルド殿の意志は?」

 

 ガルガンドスが呆れ顔で

「このような巨大な生命に明確な意志があるとは思えない。これは…珍しい動物の運搬を行えとの陛下のご命令なのだよ」

 

 ネオが厳しい顔ながらも冷静な口調で

「アースガルド殿には、明確な意志と知性がある。それを卑下するような発言は、聞き捨てならない! 彼は! アースガルド殿には人権があると確証している!」

 

 ガルガンドスがネオに

「そちらの、ドラグアース帝国の常識は知らんが、我らロマーヌスの常識では、このような驚愕の存在には、同じ人としての道理がまかり通るとは判断していない」

 

 ネオが一歩前に出て

「どこまでも傲慢なんだ! お前達の勝手な思い込みで何もかも決めるな! その傲慢さ、何時か必ず…ロマーヌス帝国を追い詰めるぞ」

 

 ガルガンドスが鋭い顔をして

「その台詞、ここでは聞いていなかった事にしよう。我ら栄光あるロマーヌスが滅びる事などあり得ない! 我らロマーヌスは、最もこの地上で崇高な国なのだ。それが追い詰められるなぞ、あり得ない。そういう事だ…エルデトの英雄殿…」

 

 ガルガンドスはネオの事を知っていた。

 

 ネオとガルガンドスが鋭い顔をして睨み合っていると、アースガルドが

『もういい。争わないでくれ…』

と、巨大な頭部から呼びかける。

 

 ネオが「しかし!」と食い下がる。

 

 アースガルドが微笑むように四つの巨大な目を細め

『良いのだ。ワシが地上に出た時は、何時もこうなる。覚悟の上だ。だから…』

 

「待ってくれ」とネオの通信を通じてロンバルディア皇帝が出る。

 立体映像のロンバルディア皇帝が

「アースガルド殿、本当にそれは本心か?」

 

 アースガルドは四つの目を厳しいように曲げて

『本心ではない。だが…ここで争いになって多くの命に多大な犠牲を払うより、ワシがこのままロマーヌスという国に行く方が、遙かに多くの命が助かる。ワシは何時も何時も争いなぞ、望んでいない。だが…何時も争いに巻き込まれてしまう。だが、それも一時よ。それ程度の我慢をすれば良いのだ。慣れているから心配しないでくれ』

 

 ロンバルディア皇帝が

「私は、貴方の過ごして来た人生よりかは、短い寿命で終わる竜族だ。だが…それでも悠久という長い時間を生きる者の気持ちは理解できる。だから、我がドラグアース帝国へ来るというなら、アースガルド殿に運搬業という形で仕事に従事して貰って、様々な場所へ歩める事を許す事をしたい」

 

 アースガルドが

『しかし、それでは汝達に…』

 

 ロンバルディア皇帝は微笑み

「舐めるなよ。我ら竜族は、この世界で四分の一を占める大地を領土とする者、ロマーヌスに遅れは取らせない。それに…汝には気高き知性がある。我ら竜族は、姿形で知性の有無を決める程、愚かではない。そこのロマーヌスの連中とは違ってな」

 

 ガルガンドスが

「ロンバルディア皇帝、それ以上は越権ですな…」

 

 ロンバルディア皇帝が

「これはアースガルド殿が決める事だ。アースガルド殿」

 

 アースガルドは目を閉じて考えると、ガルガンドスが隣にいる部下へ

「お前達、周囲にいる飛空艇艦隊に通達、周囲を焼き払う準備をせよ…と」

 

 部下が戸惑いを見せるもガルガンドスが

「伝えろ!」

 

 ガルガンドスの威圧に押され部下が「了解です」と伝えに行った。

 

 アースガルドがそれを聞いて『止めてくれ…』と告げる。

 

 ロンバルディア皇帝が

「やれやれ、お前達、ロマーヌスは、相変わらず傲慢だな。二百年前から変わっていない」

 

 ガルガンドスが

「我らの運搬を邪魔すれば…周囲は火の海と」

と、告げている間に、アースガルドの上に巨大な転送魔法陣が展開された。

 それを発動させたのはDデミアとヘパティアにデモンティアだった。

 

 Dデミアが

「まさか…こんな事をする事態になるなんて…」

 

 空に展開された巨大魔法陣から竜の軍勢が下りて来た。

 ドラグアース帝国の竜族達だ。

 

 竜達は、飛空艇達の周囲に取り付き警戒する。

 

 ロマーヌスの飛空艇艦隊と、ドラグアース帝国の竜族達の大混戦寸前が完成した。

 

 Dデミアが

「もしもの場合って、ドラグアース帝国の皇帝から預かっていたのよねぇ…コレ」

 

 ガルガンドスが

「これは、まさに侵略行為だぞ!」

 

 デモンティアが

「そっちこそ、勝手に動いて契約違反ではないかね?」

と、悪魔族独特の契約を守る性質が出てくる。

 

 全体が動けない状態をアースガルドは一望して

『ワシは…平和に暮らしたい。だから…ドラグアース帝国に厄介になろうと思う』

 

 ガルガンドスが背中にある巨大な剣、斬馬刀と握る。

「させん! キサマは我々と来て貰う」

と、構える。

 

 スタンクが剣を抜こうと手に掛け

「往生際が悪い」

 

 ガルガンドスが

「我が皇帝陛下の命令は絶対。それを叶える為なら…」

 ネオに剣の切っ先を向ける。

 

 ネオは呆れつつも「分かった」と手を上げた後

「正当防衛以外は手を下さない」

と、ネオはガルガンドスに歩み寄る。

 

 ガルガンドスに近づくネオにスタンクが

「おい、お前!」

と止めようとするも、ルディリが

「黙って見ていなよ」

 

 スタンクが

「アイツは…強いぞ」

 

 ルディリがフッと笑み

「ネオはネオデウスだけが力じゃあないさ」

 

 ネオがガルガンドスに歩み寄る。

 

 ガルガンドスはネオに狙いを定める。

 平然と歩いてくるネオに

「忠告する。私は強いぞ」

 

 ネオが

「自分で強いと言うヤツに、強いヤツはいなかった」

 

 ガルガンドスの怒りの沸点が上がり、ネオへ斬りかかる。

 二メートル越えの斬馬刀を大ぶりで攻撃するのではない、空中で素早く蛇がくねるように不規則な突きで、ネオを襲いかかる。

 二メートル越えの斬馬刀の蛇のような突き、蛇腹が大蛇の如くネオに迫る。

 

 不規則に動く切っ先がネオに届いたとガルガンドスが確信した瞬間、ネオが陽炎の如く消えた。

 いや、くねるような切っ先を瞬時に紙一重で避けたネオが瞬歩というあっという間に間合いを詰める歩みで、ガルガンドスの懐に来た。

 ガルガンドスが反応できなかった。

 剣士として最上級のガルガンドスの反応速度を超えた速さで、ネオはガルガンドスの斬馬刀の握る両手部分に来て、その両手を持って捻る力を込める。

 ガルガンドスは、それに反応した。

 無論、両手を持って捻って斬馬刀を放させるつもりだろうと読み、体を締めて剣を離さないようにした。

 鋼の如く硬くなったガルガンドスの両手。それを解き放つのはムリだと、誰しもが思う。

 だが、ネオは違った。

 足から膝、腰、背骨と動きを連動させ、肩甲骨を瞬時に震わせてウェーブという全身の骨を使って波紋打撃を生み出す力を作り出し、ガルガンドスの剣を握る両手を下から突き上げる。

 ネオの身長は180、ガルガンドスは二メートル越え、しかもネオの体格の倍もある。

 そんなネオより強固な体の筈のガルガンドスの両腕が後ろへ吹き飛び、斬馬刀が空中を舞った。

 

 ガルガンドスは驚愕するも、使える足で攻撃をする。

 それも空を切った。

 

 ネオはガルガンドスの懐の真下にいた。

 そして、ガルガンドスの顎に触れた次に、先程と同じように全身の筋肉の瞬発力と骨による伝達を合わせたウェーブによって、ガルガンドスの顎に威力を伝達すると、ガルガンドスの脳が伝達される威力に揺さぶられ、意識が飛ぶ。

 

 そして、ネオはガルガンドスの纏う強固な魔導鎧の腹部に触れて、骨伝導威力のウェーブを叩き込む。

「ゴフ」とガルガンドスは、強固な魔導鎧を貫いて伝わった伝導威力によってダメージを受けて腹部を押さえて、その場に蹲った。

 

 それは、端から見ると、ネオが触れただけで、突きや打撃をしていないのに、ガルガンドスが倒れたようになっている摩訶不思議があった。

 

 ネオは、蹲るガルガンドスに

「今日、一日は立てないぞ」

 

 ガルガンドスは蹲り苦しみながら

「どんな魔法を…使った」

 

 ネオは

「魔法を使ったように見えるか?」

 

 ガルガンドスは歯軋りした。

 一番、自分が分かっている。ネオは魔法を使わずに倒したのだ。

 

 隊長のガルガンドスが倒れた事に部下達が「おのれーーーー」と剣を抜いてネオに襲いかかる。

 

 スタンク達が加勢しようとするも、ルディリが手を出して止めて

「ネオに任せた方がいい」

 

 スタンク達は止める目の前に、百人近いガルガンドスの部下達がネオの不思議な伝導威力の攻撃や、ネオが会得している合気道ベースの技を受けて投げ飛ばされて、一時間程度でガルガンドスが鍛えた部下達が沈んだ。

 誰も殺していない。最小限で倒している。

 

 スタンクが百人の戦士達が苦しみ倒れている場景を見て

「ウソだろう…アイツ…」

と、驚愕で襟を整えているネオの背中を見る。

 

 ルディリが

「言ったでしょう。ネオはネオデウスの力だけじゃないって」

 

 醜態をさらしたガルガンドスとその部下達は、乗って来た飛空艇の水兵達に回収され、ロマーヌス帝国の飛空艇艦隊は、その場から去って行った。

 

 こうして、アースガルドは、ドラグアース帝国へ来る事になった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いします。
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