その時、彼女達は!
ネオは…ああ…またかよ、と呆れてしまう。
ネオはサーフェと共にスキュテイアー運送に行き、丁度、ケンタウロスの彼女、ティサリアと遭遇した。
サーフェがティサリアを話しながら
「こういう薬品の素材なんだけど…」
ケンタウロスのティサリアが考え込み
「んん…もしかしたら、スライムの町へ行けばあるかもしれませんわね」
ネオが
「スライムの町とは?」
サーフェが
「特別な薬品関係は、スライムの方達が生成しているので、スライム達の町、ウーブレックに行けば作ってくれるかもしれません」
ネオが頷き
「それなら、そこへ行きましょう。代金はこちらで持ちますので」
ティサリアが頷き
「ウーブレックは、往復で一週間ほどの長期の旅になりますわ」
ネオはサーフェを見て
「私は大丈夫ですが…」
サーフェは困り顔で
「先生と相談してきましょう。そんなに長期に診療所を休むのは…」
ネオは首を傾げつつ、まあいい最悪、自分が変形して飛んで行けば良いか…と。
サーフェはネオと共に診療所に戻る。
その頃には日が落ちていた。
「ただいま戻りました」とサーフェが診療所へ帰ってくると、診療所の妖精さんが
「先生、お出かけ」
と、残したメモを渡した。
サーフェがメモを読み
「ええ…リンド・ヴルムの観光に付き合うって…」
ネオが訝しい顔して
「アイツ等か…どこに行くかは、分かっているが」
サーフェが
「あの失礼なお連れの方達ですね。全く」
ネオが眉間を撫で
「全く、幼気な若い者を花街へ誘うなんて…」
サーフェが震え
「え? 花街?」
ネオは淡々と
「ああ…あの三人、男女の色町をレビューする風俗ライターみたいな連中なんだよ。どうせ、連中にほだされて店に入れられて…」
サーフェが飛び出す。
「ええ…」とネオは呆然とそれを見詰める。
サーフェが殺気立つ目で
「ふざけないで! 浮気は許しません!」
と、リンド・ヴルム街の色町、ラドン花街へ走って行く。
その途中、ティサリアとその従者の彼女達、ケイとローナの三人に遭遇して、ティサリアが
「サーフェ、他に薬品でしたら、スキュラ族の」
サーフェが
「ティサリア! 大変なの!」
ティサリアがサーフェから事情を聞いて、血相を変えて
「お医者さまーーーー 私達という婚約者がありながらーーーー」
こうして、ラミアとケンタウロス三騎の進軍が、ラドン花街へ向かう。
その頃、グレンはスタンク達と共に、ラドン花街へ来ていた。いや、無理矢理に案内させられた。
淡い艶やか色のランタンが色めく世界に、スタンクが
「くーー イイね。良いよ! 色んな種族の女の子達がいて、良いじゃない!」
ゼルが楽しげに
「やっぱり、こういう所に来ると落ち着く」
クリムがグレンに
「あの、今のうちに…」
グレンが頷き去ろうとしたが、それをスタンクが肩を抱き
「まて、若人よ」
グレンは
「僕は、案内だけなんで…」
スタンクが怪しくグレンを見上げ
「お前、まだ…女を知らないんだろう?」
グレンが引き攣らせた笑みで
「医学書や医療で知っていますから…十分です」
スタンクが力強く押さえて
「違う! 男と女がいれば、やる事は決まっているだろう」
と、グレンの股間を握った。
「う…」とグレンは青ざめて固くなる。
スタンクが
「学問なんかじゃあ、男女は分からねぇんだよ。何事も経験だ、経験」
グレンは
「僕には、婚約者が…サーフェが…ティサリアが…アラーニャが…」
スタンクがグレンを引いて店に行きながら
「そんなに女がいるんなら、経験値を稼いで、ベッドで喜ばせないとよ!」
店の窓の奥にいるスキュラの異種族の女の子が
「あら、診療所のグレン先生じゃあないですか!」
スタンクがそっちへグレンを向ける。
グレンはスキュラの女の子に
「やあ、最近はどうだい?」
スキュラの女の子はウィンクして
「調子が良くなりましたよ。もしかして、先生…遊びに来たの?」
グレンは「いや、案内に」とその口をスタンクが塞ぎ
「そーーーなんだよ! 楽しみに来たんだぜ! オレ達と!」
スキュラの女の子は艶やかな笑みで
「そう…じゃあ、サービスするから、アタシとどう? 先生」
グレンが口を押さえる手を退けようと必死になるも、スタンクの方が強く
「それじゃあ! 行こうかーーーー」
と、スタンクは強引にグレンを引っ張って行く。
クリムはそれを見て、かつての自分を思い出して恥ずかしくなった。
だが、そのスタンクの背中を弾き飛ばした者がいた。
離されたグレンは、大蛇の尻尾に絡まれてその場から引かれる。
「いてぇ…」と背中を擦るスタンクの背後
「キサマ…」と殺気に目を輝かすナーガにケンタウロス達。
ゼルとクリムは、やべーとして静かにその場からフェードアウトする。
スタンクが、殺気立つ異種族の娘達、大型の部類になる異種族のラミアのサーフェにケンタウロスのティサリアとケイにローナに囲まれて
「は、話せば、わか!」
無情、ラミアとケンタウロス達にボコボコにされるスタンク。
そこへスタンク達の反応を追って来たネオが到着して、ボロボロになったスタンクと、サーフェにティサリア達に抱き囲まれているグレンというカオスな状況が出来上がっていた。
それを見てネオは全てを察した。
スタンクが強引にグレンを誘い込もうとして、ボコボコにされたのだ。
ネオは、何時かはそうなるだろうと思っていたが、まさにそれが目の前になって額を抱えた。
翌日の朝…スタンクは宿屋で
「クソーーーー」
と、怒りを放っている。
サーフェやティサリア達にボコボコにされ気絶、一夜を終えてしまい。
ゼルやクリムは、ちゃっかりと楽しんで来た。
ゼルが
「まさか、料金は店のお嬢と話し合いで決めるなんてなぁ…」
クリムが
「斬新でしたね」
ゼルが
「面倒なトラブルを避ける為にも、最低料金表示ってのは必要だ。まだまだ、出来たばかりの街だから、その辺りが甘いな」
クリムも頷き
「ええ…避妊や病気も魔法を使わないなんて…」
ゼルが首を傾げ
「オレ達の大陸じゃあ、その魔法を発展させている悪魔族がいるからなぁ…。この辺りはそういう魔法技術開発系の異種族がいないんだろうぜ」
クリムが頷き
「早く、こちら側にもそういう技術が普及すると良いですね」
ゼルが
「商売をしている嬢の負担を減らすにも、必要だわなぁ…」
クリムが
「その辺りをレビューで書きません?」
ゼルが頷き
「良い着眼点かもしれん。オレ達がサキュ嬢と遊べるのは、そういう魔法のお陰だって気付かされる切っ掛けになるかもしれないなぁ…」
スタンクが恨めしそうに二人を見て
「お前等…楽しんで来たからって余裕だな!」
クリムが
「スタンクさんが悪いんですよ。無理矢理にグレン医師を誘うから…」
スタンクが
「拒否してなかったろうが!」
三人がいる部屋のドアがノックされ、そこにネオがいた。
「おい、朝から元気だなぁ…」
と、告げた次にスタンクへ近づき
「昨日、グレン医師にやった事、またやってみろ! 契約を切るからな」
スタンクが渋い顔で
「拒絶なんてして」
「ああ!」とネオが怒りの顔で
「お前のやり方は、パワハラと一緒だ。それを許さんからな。なんでパワハラか、分かるか? オレは良い思いをさせてあげるから良いんだよって、独りよがりな考えがあるんだよ」
と、ネオはスタンクの額を指先で押して
「お前には、そういう独りよがりのバカな所がある。そんな考えは迷惑だ。私がお前の上司だったら、即刻、会社都合にして退職金を出しても解雇するレベルだ」
ネオの凄みにスタンクは
「す、すいません…」
ネオが舌打ちして
「今後、そういう事をするなら、お前等だけでやって、お前等の責任で抱えろ。人を巻き込むな! いいな!」
ネオの圧に押されてスタンクが「はい」と約束した。
ネオは背中を向け
「じゃあ、仕事に取りかかろう」
ケンタウロスの馬車に揺られて、ネオ達は待ち合わせの場所に行く。
リンド・ヴルム街で色んな薬品を引き受けているアメー商社に来る。
無論、その待ち合わせには、グレン達もいた。
スタンクが馬車から降りると、鋭い顔のサーフェがいた。
気まずい感じの所にネオが頭を下げて
「昨夜は、本当に申し訳ありませんでした。今後、このような事がないように、絶対に防ぎますので」
サーフェがフーと息を荒げ、グレンが
「まあ、結果的には問題なかったですから…」
何とか場を収めて、アメー商社のいるスライム族の人に欲しい薬品を探して貰うと
「んん…この手の薬品ですか…」
と、スライムの人は困っている。
商社内の応接室にいるネオ達、目の前で応対するスライムの困っている様子にネオが
「やはり、ムリでしょうか…」
スライムの人が
「無い訳ではありませんが…全て揃うには、数週間はかかります」
ネオが鋭い顔で
「薬品はあるんですね?」
スライムの人が
「ええ…ありますが。ここから遠方の街とかにですよ」
ネオが
「そのリストを頂けないでしょうか? こちらで出向いて手に入れますので」
スライムの人が
「ええ…そんな事をしても同じですよ!」
ネオが頷き
「特別な早い足がありますので…」
スライムの人は、困惑するも、ネオの説得で紹介状と手配状を書いて貰い、その薬品達を調達する準備をする。
アメー商社から出たネオ達、グレンが
「もしかして、ネオさんが出向いて全てを手に入れて作るんですか?」
ネオが笑み
「ちょっとした裏技がありますので…」
グレンとサーフェは、お互いに見合って首を傾げる。
そんな二人にネオが
「二人は、この製法に必要な器具の手配をお願いしても」
サーフェが
「ええ…器具でしたら、問題なくリンド・ヴルムで手配できると…」
ネオは頷き
「では、お願いします」
と、スタンク達に
「という事で、我々は薬品の収集に回る」
ゼルがニヤニヤと笑み
「移動手段は? 通常なら数週間は掛かる道中って」
ネオが鋭い顔で
「問題ない。戦闘輸送機形態で移動する」
と、告げた瞬間、ネオの両腕と背中からナノマシンの装備端末があふれ出して、ネオを中心に全長十メートル前後の鋭角な戦闘輸送機になった。
それを見て、グレンとサーフェに、その周囲にいた人達も驚きに包まれる。
それにスタンクやゼル、クリムが乗り、戦闘輸送機のネオは
「では、これから調達してきますので」
と、戦闘輸送機のネオは垂直離着陸して、一瞬で音速を突破する加速をした。
サーフェが驚き
「あの人、人族じゃあなかったんですね。っていうか…ええ…あんな魔族がいますか?」
グレンは驚愕するも
「あんなに早く空を行けるんなら…今日中には集まるかも…」
その驚きに包まれる集団の中に、ネオが飛んで行った姿を鋭く見ている者達がいた。
そして、次に関係者であるグレンを凝視した。
ネオ達は、手配したリストを辿り、音速で街々を回って必要な薬品を調達した。
診療所で、サーフェが薬のリストと中身を確認しながら
「驚きです。こんなにも早く揃えるなんて」
と、隣にいるネオ達を見る。
ネオは肩をすくめて
「紹介状があるので、駆け付ければ直ぐに手配してくれましたから…」
サーフェは微妙な顔をして
「いや…そういう事では…」
ネオとサーフェが薬品の確認をしているそこへ、往診から帰って来たグレンが姿を見せ
「ネオさん。どうですか?」
ネオは微笑み
「後は、薬の生成に必要な器具を揃えれば…」
グレンは頷き
「そうですか。それと…ネオさんは人族では無かったのですね」
ネオは微妙な顔で
「まあ、その…マキナ族という種族になりますね…」
グレンがネオを見詰めて
「どんな魔族…いえ、種族なんですか?」
ネオは何処まで言って良いやら困るも
「その…特別な…そう特別な力で様々な装備を体内に収納できる種族ですね。基本的には人族と変わりませんが。その様々な装備を収納する器官が体のあちらこちらにあるので、そこが違いですかね」
グレンは好奇心に押されてネオに近づき
「その良ければ…お体を見させて」
サーフェが「グレン先生…」と釘を刺す。
グレンが申し訳ない顔で
「ああ…すいません。つい、好奇心に押されて…」
ネオも苦笑で
「その…まあ、見させても良いですが。事情がありまして、おいそれと見せる訳にはいかないのをご理解ください。グレン医師」
グレンは頷き
「はい」
そこへスタンク達が
「うーす。器具の手配してきたぜ」
ネオがスタンク達に
「ありがとう。で?」
スタンクといるゼルとクリムが
ゼルが
「手配する機材によって得意分野が違うみたいでよ」
クリムが
「ピンキリですね。作るのに一週間くらいの時間が欲しいそうです」
ネオは考え
「そうか…その間、待ちぼうけか…仕方ない」
スタンクが肩を解して
「今日は疲れたぜ。一日の間に色んな町を回ったり、器具の手配とか」
と呟きつつネオに近づき小声で
「おい、オレ達…見張られているぜ」
ネオが鋭い顔をしてゼルを見ると、ゼルがニヤリと笑う。
ゼルのエルフ耳は小さな声も拾う。
ネオが小声で
「この診療所もか?」
スタンクが小さく頷く。
ネオは暫し考えた後
「グレン医師」
グレンが「はい?」と答えて。
ネオが
「今日は、この診療所を宿にさせてくれませんかね?」
グレンが
「はぁ…構いませんが…。どうして」
ネオは微笑み
「宿の都合で、取れなかったので…」
グレンが頷き
「分かりました。どうぞ」
と、了承した隣にいるサーフェが怪しい顔をネオ達に向けていた。
その夜、グレン達と夕食と共にして深夜の診療所で、出入り口の側の階段でスタンクが剣を抱えて座っていると、サーフェが来て
「寝ないんですか?」
スタンクが悪戯な笑みで
「夜の男なんで、血が騒ぐのよ」
サーフェは溜息を漏らし
「ウソでしょう」
スタンクはフッと笑み
「嬢ちゃん。戦闘訓練を受けていたろう」
サーフェが呆れ顔で
「実家の都合で…」
スタンクが
「昨日、オレをのしたケンタウロスの嬢ちゃんは見かけから戦士だって分かったが…ラミアのアンタも…」
サーフェが
「見張りですか?」
スタンクを静かに玄関を見詰めて
「今日の頭、町に出た時からどうも…妙な連中がこっちを見ていた。あれは間違いなく密偵だ。相当な人数がいる。心配するな、オレ達に掛かれば一網打尽よ」
そこへネオが来て
「おや、サーフェンティット殿。こんな夜更けに、どうしたんですか?」
サーフェが腕組みして
「何か怪しい事をしているってバレバレなんですよ」
ネオはそれで察し
「ちょっとの間の」
と、次を告げる前に黙り玄関を睨む。
それと同時にスタンクが剣を抜いた。
「ネオ、人数は?」
ネオは探査レーダーで
「玄関に8名の人影だ」
スタンクが魔法通信で診療所の屋上で待機しているゼルに
「奴さん来たぜ」
屋上で狙撃するゼルが
「おお、こっちでも通りに隠れている連中を見たぜ。中々の人数だぞ」
スタンクは階段を降りて
「ここはオレに任せろ。ネオは、そのラミアの嬢ちゃんと…」
ネオは頷き
「グレン医師達の保護は任せろ」
そう告げている間に玄関の鍵が道具によって解錠されて、ドンと賊が侵入する。
その賊達にスタンクが斬りかかる。
ネオがサーフェに「行きましょう」と告げる。
サーフェが
「彼は大丈夫なんですか?」
ネオが笑み
「下半身はだらしないですが…それ以外は超一流ですから」
と、口にする。
スタンクが襲いかかる者達を剣に属性魔力を付加させて切りつける。
ネオが「殺すなよ!」
スタンクがあっと言う間に三人を切り飛ばし
「大丈夫だ。全員、峰打ちで気絶させて、後でお前に渡してやるよ!」
と、軽口を叩く間に、賊が剣を抜いてスタンクに斬りかかるも、それをスタンクは軽やかに避けつつ、剣に付加した風の魔力で切りつけて叩き飛ばす。
侵入してきた賊達は怯む。
ネオが「さあ!」とサーフェに呼びかけて、サーフェは納得してネオと共にグレンの安全を守る事にする。
屋上では、ゼルがクリムと共に、入り込もうとする賊達を狙撃する。
ゼルは魔法弓で、クリムはネオから受け取った雷撃ライフルで、賊達を狙撃して気絶させて倒して行く。
ゼルが
「クリム! 取り逃がした連中が中に入った! オレはここで追撃を防ぐから、お前は中に入ってネオ達と合流しろ!」
クリムは頷き
「分かりました」
ネオとサーフェはグレンのいる寝室へ向かう。
グレンの寝室の前に来ると、寝室から大きな音がしてサーフェが
「先生!」
グレンが賊に捕まり
「サーフェ、逃げて…」
賊がグレンを盾に
「動くな!」
サーフェは「先生ーーー」とグレンを案じ、ネオは冷静に次の対応としようとすると、賊の背後にある窓の向こうに雷撃ライフルを構えて飛んでいるクリムがいて、グレンを盾にした賊の背中に雷撃を放ち「がは!」と賊は気絶してグレンを離す。
サーフェはグレンに駆け付け
「大丈夫ですか! 先生ーー」
グレンは微笑み
「ああ…大丈夫だよ」
窓からクリムが入り
「良かった…」
ネオが頷くとその通路の両脇から賊達が現れる。
どうやら、玄関以外の場所から侵入したらしい。
賊が
「外者が! オレ達に不幸を運ぼうとして暗躍しやがって!」
それを聞いてネオはフッと笑み
「そうかい」
と告げた次に両腕をガトリング式雷撃砲に変えて、両脇の賊達を雷撃で打ち抜き気絶させた。
ネオは首を解しながら
「さて…侵入者の対処をしようか…」
ネオ達の攻めが始まる。
次話もよろしくお願いします。