ネオは両手に備わるガトリング式雷撃砲で次々と目の前の賊を倒して行く。
前方はネオ、その後ろにグレンとサーフェ、そして最後尾に雷撃ライフルを持つクリム。
前をネオが蹴散らし、後ろの守りをクリムが行い、グレンとサーフェを守る。
ほとんど、前から賊が来るのでネオが対処して、クリムはちょっと出てくる賊を撃つだけだ。
サーフェが
「医薬品保管庫へ向かいましょう」
ネオが
「どうしてだ?」
サーフェが声を荒げて
「貴方達が集めた貴重な薬品に何かあった場合、後々、大変でしょう!」
グレンが前にいるネオに
「ネオさん。願いします」
ネオは溜息を吐き
「分かりました」
四人は医薬品保管庫へ来ると
「来るな!」
賊達が侵入していた。
三人の賊は、一人がネオ達が集めた医薬品の入った箱を抱え
「良いのか? これは貴重な薬品なんだろう…これが壊れたら…」
サーフェが
「待ってください!」
賊が
「黙れ! 蛇女が! そして、魔族に組みする裏切り者グレン」
ネオは鋭い目をして、医薬品が入った箱を抱える男を見る。
なるほど…何らかの妨害か…
ネオが思考を回している。
医薬品の箱を抱える賊が
「お前達が来なければ…」
と、告げた瞬間、ネオが賊の両脇にいる賊の仲間をガトリング式雷撃ライフルで撃ち抜く。
倒れる二人の賊、残された賊が
「な、医薬品が壊れても良いのか!」
ネオは冷静に照準を残された賊に向け
「それが? 人命の方が大事だ。それに…その医薬品がなくなっても後で、同じ物を取り寄せればいいだけだ」
と、ネオは冷静に残された賊を打ち抜いた。
「お!っと」
と、サーフェが長い蛇の胴体を伸ばして医薬品が入った箱をキャッチして安堵する。
サーフェが医薬品の入った箱を両手に抱えて
「相手を怯ませる脅しとはいえ…薬が壊れたらどうするんですか」
ネオは淡々と
「壊れても問題ない。この地域でそういう薬が手に入るという事実さえあればいい。壊れたら、後で本国に戻って同じ物を持ってくればいいだけだ。脅しの材料にもならない」
サーフェとグレンは、ネオを驚きで見ていた。
ネオの口調は本気だ。
物なんてどうでもいい。大切なのは人命のみ。
それがネオの最大価値基準だ。
それは、ネオの生まれた超宇宙技術文明の価値観なのだ。
物なんて物質やエネルギーなんて、幾らでも作り出せる。
そんな世界で最も大事なのは、個人、人命なのだ。
その後、診療所に侵入した賊は、ネオ達の活躍によって制圧され、診療所の前にある広場に拘束して集められた。
賊が縛られた後、早朝にスタンクとゼルが捕まえた総勢百人の賊の全員に猿ぐつわをさせて縛っている。
それをネオと駆け付けたリンド・ヴルム街の守護であるクナイが見守っている。
猿ぐつわを終えたスタンクが
「なんで、口を縛るんだ?」
同じく終えたゼルが来て
「拷問するんだろう。ある程度、痛みを味合わせている時に死なれちゃあ困るからなぁ…」
ネオの隣に浮かぶクリムがネオに
「拷問して聞き出すんですか?」
同じく隣にいるクナイが
「こんな人が見える場所で行うのは…問題であろう」
ネオが右手を上げるとナノマシン端子からピストル型の注射器を伸ばし
「拷問なんて非合理的な事はしない。ナノマシンを注入して脳内のデータを自動的に抜くだけだ。痛みも何もない。体に損害も与えない。人道的な方法だ」
グレンがネオの元へ来て
「貴方は…何者なんですか?」
グレン達、全員が思った。
ネオが
「後で説明します」
と、賊達にナノマシンの注射をしていく。
注射しながら
「メイドラン」
と、DIメイドランを呼び出すと、ネオの隣にDIメイドランの立体映像が出現し
「はい、ネオ様」
ネオはナノマシン注射を続けながら
「ブレイン・ナノマシンをコントロールして脳内のデータを抜き出せ」
DIメイドランの立体映像は頷き
「了解しました」
打たれた百人の賊は、暫し脳内の調べるナノマシンの作用で困惑するも、無事に脳内にあったデータは取られて無傷である。
クナイが賊の全員を見て
「しかし、全員が人族とは…」
グレンが
「リンド・ヴルムを良く思わない人達の…」
クナイが渋い顔で
「グレン医師が、画期的なウィルス疾患の薬を開発すると聞いて、横やりを入れたい連中の差し金だろう」
ネオが賊の一人の女に近づき
「コイツが連中の頭だ。名前は、サーラディン・アパリス。東の方の人族を纏めている名家ソームンド・アルバイトの当主の隠し子らしい」
グレンがそれを聞いて顔を顰め
「ソームンド・アルバイトですか…」
ネオとクナイがグレンを見詰め、クナイが
「人間領を収める元老の一人か…」
ネオは面倒くさそうに額を撫で
「厄介事か?」
クナイが
「東には人間達が主に暮らす領地がある。何分、色々ともめてはいる」
ネオは色々を考えて察してしまう。
「なるほど、ここ最近、このリンド・ヴルムで異種族達の共存が上手く行っているから…」
グレンが
「人間領からこっちへ移住する人達も増加しています。そして」
ネオが渋い顔で
「画期的などんな異種族、人族も交えて病気を治療できる薬が誕生するなら、なおのこと…」
ネオが目の前にする賊の女首領サーラディンが暴れる。
ネオが猿ぐつわを外して
「何だ?」
サーラディンはネオを睨み
「この裏切り者!」
ネオは呆れた顔をする。
「異種族に組するから裏切り者か?」
そこへサーフェも来て
「グレン先生、医薬品の方の損害は」
サーラディンがサーフェに
「こんな、バケモノの蛇女と一緒にいて、気持ち悪くないのか!」
ネオは首を傾げる。何を言っているんだ?
理解の前に、まるで誰かに吹き込まれた事をそのまま再現している低レベルな知性を感じて、憐れむ。
そこへスタンクが来て
「おいおい、お嬢ちゃん、バケモノっては、どういう了見だ? お嬢ちゃんは間違っている」
と、スタンクが自信を込めて言い放ちサーフェを示し
「バケモノじゃあない! 最高にいい女だ! つやつやとして滑らかな肌! その伸びる大蛇の尾に巻かれれば! どんな男も快楽天! そして、上半身は、その美しい白い大蛇の胴体に相応し程のナイスバディ! ナーガの女は、皆…ナイスバディが多い美人の女達なんだぜ!」
「そうだ! そうだ!」
と、ゼルも加勢する。
サーラディンは何を言っているんだ?という顔だ。
ネオは、プッと吹き出した。
スタンクの言い方はセクハラだが、確かにその通りだ。
白蛇のラミアのサーフェは、いい女だ。
「この男が言っている事は、真実だ。お前が間違っている」
と、ネオは鋭く告げ
「君は、愚かだ。誰かに言われた価値観をそのまま受け継いで、それが正しいと思い込んで生きていた」
サーラディンは、ネオを睨み
「お前に、何が分かる!」
と、声を荒げる。
ネオは淡々と冷静に
「君がどんな人生を歩んだのか?は分からないが、そこで…どんな風に生きて来たのかは分かる。君は、その考えを受け継いだ誰かに必要とされたいから、そういう風に、それが正しいと思って生きて来た。だが、その結末はコレだ。利用されただけ」
サーラディンは、グッと噛みしめる。
ネオが
「君達の事は、もう分かった。だが、それを依頼したヤツを問い詰めても、君達は見捨てられる。そんな見捨てる連中が正しいと思うのかね?」
サーラディンが悔しそうに歯軋りしている。
ネオが賊の全員に
「全員、聞け! 君達は見捨てられるだろう。君達にこんな汚れ仕事を任せた連中は、君達を切り捨てる。今までそれを考える余裕はなかったろう。だから、こそ…今ここで考えて欲しい。君達を忠義や忠誠という甘い言葉で利用していた連中の事を」
そこへ、スカディが来て
「どんな状態?」
と、クナイに尋ねる。
クナイが
「竜闘女様、彼らの雇い主が分かり、それに裏切られるという未来を示してネオ殿が説得している所です」
「分かった」とスカディがネオの隣に来て
「君達の処遇だけど。今回の事件は、大事にはならなかった。だから、街の掃除という処罰で済ます。それで良いねグレン医師」
グレンは頷き
「はい。彼らは…利用されていただけですから」
スカディが全員に
「今回は、それで良しとするが…もし、これ以上の非道を行うならそれなりに処罰をする。君達がどんな考えでいるか…分からないが。この街を見て欲しい。それから…色々と考えてくれ」
賊の全員が静かに俯いた。
ネオは、診療所の後片付けを手伝う。
割れた窓ガラスの掃除や、倒れた物を直したり、その手伝いにあの賊であった彼らがいた。
ネオは顔を顰める。
彼ら彼女らは、まだ十代後半の少年少女達だった。
全員脳内をナノマシンで覗いているので、どんな感じで生きて来たのか…分かっている。
全員が孤児であり、生きるのに必死で…そして、暗部の刺客となった。
若い彼ら彼女らが、このまま世界を知る事なく大人になったら…。
きっと、それ以外の生き方が出来ないだろう。
少年少女だったから利用し易い。
どうしようもない、この世界の悪い部分を見てしまった。
自分が生まれた世界、あの超宇宙技術文明では絶対にあり得ない、下等な動物のような現実を見てしまった。
そうして、掃除をしていると、あのサーラディンがネオに近づき
「ねぇ…」
「んん?」とネオはサーラディンを見る。
サーラディンはネオを見詰めて
「アンタ…何者なの? あんな武器、見た事もない」
ネオは、近くにある階段に座って
「聞きたいか?」
サーラディンは頷いた。
そこへグレンも来る。
「ぼくも聞きたいです」
ネオは階段の上にいるグレン医師に微笑み
「じゃあ、休憩ついでに」
ネオは自分の身の上を話した。
この世界とは違う世界、宇宙まで広がった超宇宙技術文明の出身で、そこで戦闘員として生きて来た。
そして、その世界で最高峰の兵器となり、戦争が終わって居場所がなくなって…建前はこの世界の探索者として派遣されたが…追放された…と。
それを聞いてサーラディンは驚きを向け
「恨まなかったの? それを…」
ネオは自信の笑みで
「君とは違う。私は、それを納得して今、ここにいる。何も知らなかったではない、知っていた。全てを知った上で、今…ここにいる。生きている」
ネオは四十以上、グレンとサーラディンは、ネオの半分以下の十代後半の少年少女、グレンは二十歳前。
年齢で人を判断してはいけない。
だが、ネオはその年齢以上に濃密な人生を歩んでいた。
ネオが困惑するサーラディンに
「サーラディンくん。君には色々と知って欲しい。それからでも、どういう風に生きるか?を考えても遅くはない筈だ」
サーラディンは、強くて暖かな感じのネオに、今までにない感覚を感じる。
身勝手な実父を、それでも父と崇めていたが…ネオと出会った事で変わりつつある。
ネオが父親だったら…とサーラディンは思ってしまった。
そこへ、スタンクが来て
「おいおい、また…女を口説くなよ。六人目か」
「はぁ?」とネオは何を言っていんだ?という訝しい顔をスタンクに向けた。
スタンクが悪戯気味にサーラディンに近づき
「コイツには、もう…五人も嫁さんがいるんだ。惚れんじゃねぇぞ」
と、サーラディンを茶化した。
ネオは呆れ気味に頭を振って
「お前のそういう所、頭が痛くなるよ」
スタンクがニヤニヤと笑みながらネオに
「だってよ、お前…しっかりしているし、甲斐性もあるし、メタクソに強いし、オレが女だったら惚れてるよ」
ネオは呆れ笑みで
「お前に惚れられても何も嬉しくない」
そんな感じで、診療所の掃除が終わって…何時もの診療所が…いや、グレンの事を心配して、ケンタウロスのティサリアや、アラクネのアラーニャが押しかけてウルサくはなった。
ネオはそれを見て
「順調に任務をこなせるかなぁ…」
と、グレン医師に渡す抗ウィルス薬の仕事を案じる。
その頃、人間領では、暗躍していたソームンドがとある一通の文を読んで握りつぶした。
スカディからの書状で、リンド・ヴルムを騒がした賊が、ソームンドが依頼したと虚言を申しているので、こちらで処置しましたので、ご安心ください。悪い噂は出ませんので。
ソームンドが怒りの顔で
「あの竜の小娘が…」
隣にいる秘書が
「如何、致しましょう…」
ソームンドは額を抱えて
「あの罪喰いの小娘を使う」
秘書が
「よろしいのですか? そうなれば…リンド・ヴルムが…」
ソームンドが
「構わん、汚らわしい魔族共と裏切り者共が消えるだけだ」
次話もよろしくお願いします。