異世界現地調査   作:赤地鎌

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 この街の病原撃退の為に来たネオ達、しかし…この街は…、


この街の男達

 ネオ達が目的のラミアの街の上空に来る。

 そこは、高い城壁に囲まれた街だった。

 城壁の高さは、優に二十メートルもあり、半径二キロ程度の円形の城塞が次の城壁に隣接するように別の街を繋がって形成している。

 

 輸送戦闘機に変形していたネオは、その正門であろう前に降り立ち、スタンク達を下ろしてネオは人型に戻り

「珍しい街だな」

 

 スタンクが顎を摩り

「こんなデカい城壁、見た事もないぜ」

 

 ゼルが

「巨人族とでも戦争していたのか?」

 

 クリムが不意に

「なんか、綺麗な城壁ですよね。継ぎ目もないし、スベスベして滑らかですよね」

 

 ネオは頷き

「確かに…」

 

 そう、城壁は繋ぎ目がないツルツルとしたモノだ。

 

 ネオは、その城壁を触りつつも

「我々の役目を忘れてはいけない。それが終わった後で、幾らでも疑問に答えられる。行くぞ」

と、この街の入口である大門に来る。

 

 大門の上の見張り台には、ラミア族の女性がいて

「貴方達は、何者ですか?」

 

 ネオがスカディから貰った証明書のメダルを掲げて

「リンド・ヴルムより派遣された医師の一団の先発です。早急に駆け付けて、病気になっている患者から病原菌を採取して、治療薬を早く作る為に来ました。後で治療薬とワクチンを作る後発隊が来ます」

 

 大きな門が開き、ネオがスタンク達三人に

「対ウィルス用のマスクを」

 

 スタンクとゼル、クリムが受け取り、ゼルが

「さて、どんな地獄になっているのやら…」

 

 四人の前にある大門が開くと、そこに槍を持ったラミアの女性達が待ち構えていた。

 

 その中の隊長が

「お待ちしていました」

と、ネオ達を入れる。

 

 スタンクが、そのラミア達を見て困惑する。

「ゼル、ここのラミア達…」

 

 ゼルが

「あのリンド・ヴルムで見たラミア達と違って、体が…倍もあるなぁ…」

 

 そう、この街にいるラミア達は、サーフェといったリンド・ヴルムにいたラミア達より体格が大きい。

 ラミア事態も体格が大きい種族ではあるが…その今まで見たラミア達より、ここのラミア達の体格が大きい。

 人で例えるなら平均身長の170センチより30センチも大きい二メートルといった感じだ。

 

 

 グレン医師達、製造の後発隊はスキュテイアー運送の馬車に乗りながら目的の街を目指していると、グレンと共に乗るサーフェが

「グレン先生。今回、向かうラミアの街、ラモス街ですが…」

 

 同じ乗っているアラクネのアラーニャが

「妾も聞いていますえ。ラミアの中でも強大な腕力を誇るラモスの者達だと…」

 

 サーフェが心配げに

「ラモスのラミアはメスしか生まれません。なので、異種族…特に人間の男性を奪って子孫を残す為の伴侶にします。その形態は、十数頭から二十頭のラモスのラミアのハーレムに人間の男性一人という割合です」

 

 グレンが

「それは、戦争があった過去の事だろう。今は…」

 

 サーフェが厳しい顔で

「それでも…未だに変わっていません。ですから、先生の身は必ず私達が守ります」

 

 

 ネオ達は、ラミアのラモスの街に通される。

 外にいるのはラミア族の女性ばかりだ。

 

 スタンクが

「なぁ…この大陸の異種族って…デカいよなぁ…」

 

 クリムが頷き

「確かに、僕たちがいる異種族に比べて一回りも大きいですね」

 

 ゼルが

「この大陸は、オレ達の大陸の北側、ドラグアース帝国を挟んで北にあるからなぁ…。寒い地方の生き物は大きくなりやすって聞いた事があるぞ」

 

 ネオが

「ベルクマン・アレン法則というヤツだ」

 

 スタンクが

「なんだそれ?」

 

 ネオが淡々と

「寒い地方の生き物ほど、体温を維持するために、熱を逃がさないように体が大きくなるという法則だ。この理論でいうなら、スタンク達は温暖な大陸ゆえに、体温は維持され易いので、逆に体温上昇の異常を防ぐ為に体が小さくなる。とは言うモノの。スタンク達の大陸は、南から北まで細長い大陸だ。それによって異種族が綺麗に分布している。なので、体格差に関して種族同士の違いでしか分からない」

 

 スタンクが

「能書きが長い」

 

 ネオが渋い顔をしていると、ゼルがヒヒヒと笑い

「要するに、オレ等の大陸は上手い事、色んな種族が仲良く別れているから、全体的にデカいとか無い。そういう事だ」

 

 クリムが「へぇ…」と関心する。

 

 スタンクが

「なるほどね」

 

 ネオが前にいるラモスのラミアに

「患者はどこに?」

 

 ラモスのラミア、グレン医師のサーフェより一回り大きなラミアが

「こっちです」

と、とある家に案内する。

 

 大きなラミアであるラモスに合わせて家も大きく邸のようだ。

 

 立ち上がり三メートルの頭頂を持つラモスのラミアがドアを押して入ると、そこには多くのラモスのラミア達がいて、その全員が大型ラミアだ。

 

 ラモスのラミアがネオ達に近づき

「あの…話は聞いています。どうか…家の旦那を」

 

 ネオが

「我々は、感染者から感染した病原体の採取に来ました。我々が採取した後、治療薬を完成させる事ができます。それまで…」

と、伝えて病人がいる部屋へ向かう。

 

 スタンクがネオに

「ここのラミア達は…無事なようだな…」

 

 ネオが

「旦那と言っていた。おそらく、ここのラミア以外の種族かもしれない」

 

 患者の部屋の前で、スタンク、クリム、ゼルが滅菌のマスクを被り、ネオもナノマシンの滅菌の頭部マスクをして入ると、咳き込む人族の男性がいた。

 

 男性はベッドにいて、ラモスのラミア達の看病を受けていた。

 

 ネオが患者に近寄りレーダー波を飛ばす。

 そして、患者の男性の脈と血中酸素濃度、免疫反応、その他の反応を探る為に首に触れる。

 

 スタンクが

「どうだ?」

 

 ネオが厳しい顔で

「成る程、ラミア族には感染しない訳だ。これは人類、人族系が掛かるコビットナインティーン系統のウィルスだ」

 

 スタンクが

「なんだよ。また専門用語かよ」

 

 ゼルが滅菌マスクを外して

「つまり、スタンクみたいな人族だけが感染する病気って事か…」

 

 ネオが頷き自分の滅菌マスクを解除して

「おれは、このウィルスのデータを持っているからナノマシンのお陰で感染しないし発病もしないが…」

と、スタンクを見て

「お前は外すなよ。感染するから」

 

 スタンクがしっかりとマスクを押さえる。

 

 クリムも外して

「つまり、これは…人族の方しか」

 

 ネオは頷き

「そうだ、そして…反則だが…」

と、ナノマシン収納庫から、このウィルスを抑えて殺す対ウィルス薬を取り出して

「この病気の治療薬、対ウィルス薬を持っている」

と、看病しているラミア達に

「これが薬です。人族である彼以外には使わないでください。使用量は説明書を、きっちり一週間、飲ませてください。必ず水で」

 

 ラミア達はお辞儀して

「ありがとうございます」

と、お礼を告げる。

 

 そして、ネオは厳しい顔をする。

 

 それにスタンクは

「どうしたんだよ」

 

 ネオがスタンクに耳打ちする

「ベッドに隠れる足下を見ろ…」

 

 スタンクが視線をそちらへ向けるとベッドの端の柱に繋がる鎖が見えた。

「ええ…」

 

 ネオは耳打ちで

「さっき、首元に触れて検査した時、長期に渡って首を何かで拘束された跡があった」

 

 スタンクが厳しい顔で

「どういう事だ?」

と呟いていると、ラモスのラミアの女性が

「皆様のお仲間が来ました!」

 

 ネオ達は、到着したグレン達の元へ向かう。

 

 直ぐにネオはグレンにウィルスのサンプルとそのデータを渡して、素早く馬車達に乗せた装置や薬品達を町内の空いている家を借りて広げて、抗ウィルス薬と免疫学習ワクチンの作成に取りかかる。

 半日で薬は完成するだろうし、翌朝にはワクチンも出来上がっている。

 

 一時的な診療所にしているそこで、スタンクがワクチンを受けて、ネオが

「この街に関して…何か、思い当たる節はありませんか?」

 

 グレン医師と一緒にいるサーフェが

「実は…」

と、このラモスのラミアについて話した。

 

 ネオ達は、成る程…と頷いた。

 

 クリムが

「す、すごい所ですね…」

 

 ネオが

「繁殖の為に戦争で…人族の男達を…」

 

 サーフェが

「大丈夫です。先生の身はわたくしが必ず守りますから」

 

 スタンクが

「オレ達は無視かよ」

 

 ネオが

「とにかく、治療に専念」

 

「邪魔するよ」とラモスのラミアと共に中年の男性が入って来た。

「この街について説明をしに来た」

 

 このラモスのラミアのラモス街の人族のまとめ役であるグラファンは、正直にラモス街について語る。

「ここは、ラミアの中でも強い力を持つラモスのラミアの街で、ここのラミアはラミアの女しか生まれない。だから、戦争や、孤児に、身売りするしかない者達を買って、繁殖の為に男達を調達している」

 

 グラファンの首には、その証である鉄の首輪と、その首輪と繋がる腕輪を手にする妻達の一人のラモスのラミアがいる。

 グラファンは微笑み

「アンタ達は、取って食われやしないから大丈夫だよ」

 

 グレン医師を前に話すグラファン、その後ろにネオ達が立っている。

 ネオが

「ここは、どうやって収入を得ている? その首輪の具合から考えるに逃げないように監視が…」

 

 グラファンは懐から財布を取り出し

「これが一番の収益じゃな」

 それは綺麗な蛇皮で作られた財布でグラファンが

「ラモスのラミアは厚く綺麗な脱皮をする。それを集めて加工品にしている。それとこの辺り一帯は、有数の希少鉱物、ダイヤやサファイヤといった宝石が取れる。それを露天掘りして採掘しておる。無論、農地もある」

 

 グラファンの妻一人のラミアが

「私達は、強い膂力を持っているが故に、利用価値が高い土地を奪ってきた歴史があります。ですが…頭数は少ない」 

 

 グレンが

「大蛇の軍勢、ヨルムンガンド…」

 

 スタンクが

「知っているのか?」

 

 グレンが戸惑い気味に

「昔、読んだおとぎ話の本に…」

 

 グラファンの妻のラミアが頷き

「多分、それは私達の祖先でしょう」

 

 ネオがグラファンに

「アンタ達は、何が望みだ。そんな話をして…」

 

 グラファンは微笑み

「病人達の治療を終えたら…普通に帰って欲しい。要らぬ同情は必要ない」

 

 スタンクが

「アンタは、それで良いのかよ?」

 

 その疑問にグラファンは頷き

「この街にいるワシ等、全員の総意だ。言ったアンタみたいに何とかしようとする人はいるも…ワシ等は、それを必要としていない」

 

 スタンクが

「諦めたってのか?」

 

 グラファンが首を横に振り

「受け入れたのさ…。それに…悪い事ばかりじゃあないさ」

 

 スタンクが苛立った顔をするとネオが手を叩き

「分かった。アンタ達の望み通りにする」

 

 スタンクがネオに

「おい、良いのかよ!」

 

 ネオがスタンクに

「望んでもいない事を無理矢理に押し付けるのは暴力と一緒だ」

 

 正論を言われてスタンクはグッと堪えた。

 

 その後、グレン医師達、治療隊はラモスの街の流行病の治療を着実に熟していく。

 

 病気になっているのは、この街にいる人族だけだが、病気の媒介を防ぐ為に、ラモスのラミア達にもワクチンを受けて貰う。

 

 スタンクは、この街の男達を見て「け、ふぬけが…」と、唸る。

 病気が静まり、外に出歩く人族の男性の全員には、鉄の首輪があり、隣にその首輪と繋がった腕輪をする妻のラミアがいる。

 スタンクは、家畜のような光景に嫌気がさす。

 

 そこにネオが

「なんだ? 気に入らないのか?」

 

 スタンクが

「オレ達、男は家畜じゃあねぇ」

 

 ネオが隣に来て

「お前のそういう平等に見る所は見習っているが…自分の価値観が正しいというのは頂けない」

 

 スタンクが

「じゃあ何か? 悪い事でも認めろってか!」

 

 ネオが冷静に

「正しい悪いの問題じゃあない。ここの事は…生き残る為に、そういう矛盾を抱えようとも必死にやっているんだ。その理解もないのに…善悪で判断するのは危険だ」

 

 スタンクは苛立って外に出て

「オレはご高説を聞いて頷く程、ボケちゃあねぇ!」

 

 ネオはフッと笑み

「そうだな。スタンクは、まだ二十代後半の青年だったな」

 二十代の若さを感じた。

 

 スタンクがふて腐れて街を歩いていると

「お、すまねぇ…」

 

 男性とぶつかった。

 男性は持っていた荷物を零してしまい、道にばら撒いてしまった。

 スタンクが落ちた荷物を見て

「絵の具?」

 

 男性はスタンクに

「大丈夫ですか? どこか…汚れて…」

と、告げるとスタンクの脇に絵の具が付いていた。

 

 男性の隣にいたラモスのラミアの伴侶が

「ああ…すいません」

 

 スタンクが

「いや、洗えばいいさ。それより…アンタ…絵の具って事は」

 

 男性は申し訳ない顔で

「ええ…まあ、画家の真似事を…」

 

 スタンクは年齢が違い男性に

「オレはスタンク」

 

 男性は頷き

「存じています。ここで流行っていた病気を何とかするために来た方ですよね」

 

 スタンクは穏やかな感じの男性に

「なぁ…ちょっと話をしないか?」

 

 男性は首を傾げ

「はぁ…構いませんが…」

 

 スタンクが

「アンタの名は?」

 

 男性は微笑み

「アネロです」 




次話もよろしくお願いします。
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