異世界現地調査   作:赤地鎌

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 ふて腐れるスタンク
 だが、とある出会いが…


ここでの真実

 スタンクはアネロの家で一杯ごちそうになる。

 

 スタンクはアネロの家を見回す。

 多くのラモスのラミアと生活する為に屋敷のように広い。

 

 暮らしぶりは困っているような感じはしない。

 スタンクは、貰ったカップに口を付けながら

「アンタは…」

 

 アネロはスタンクの視線の先を読む。

 自分の首輪だ。

「昔、戦争で…孤児でしたから…」

 

 二階からラモスのラミアの娘達が

「父さん! お客さん?」

と、アネロの娘達が階段から下りてくる。

 

 アネロは頷き

「ああ…そうだよ。挨拶をして」

 

『こんにちは』とラミアの子供達が挨拶をしてくれる。

 

 スタンクは微笑み

「おう、よろしくな」

 

 アネロが

「私のアトリへに行きますか?」

と、スタンクをアネロのアトリへ導く。

 

 そこは、絵画や石像が置かれた部屋で、その部屋の真ん中に大きな書きかけの絵があった。

 

 スタンクは、その書きかけの絵を見詰めて

「へぇ…綺麗だな」

と、見詰めるとその絵画に使われている絵の具が独特の色の光を反射している。

「この絵に使われている絵の具…」

 

 アネロが隣に来て

「ええ…この地域特産の鉱物が原料です」

 

 スタンクがその絵の具を凝視して驚きの顔をして

「もしかして…これ、原料は宝石か?」

 

 アネロは頷き

「はい。ここで加工される宝石の破片を材料にしています。この街は…自分のような画家には天国みたいな世界です。この絵も…完成前ですが…高値が付いています」

 

 スタンクは書きかけの絵を凝視する。

 光の具合によって絵が様々な色の光を放つ。絵の具に含まれている宝石の粉が不思議な光の魅力を演出している。

 

 アネロが

「けっこう芸術を目指す人が、この街に来て…暮らすんですよ。外の世界じゃあ、芸術より商売といった生活の為の能力が必要とされますから…」

 

 スタンクが

「まあ、確かに絵画に大金を払うなんて金持ちの道楽だわなぁ…」

 

 アネロは落ち着いた笑みで

「色々とありましたけど…私はここで暮らせて良かったと思います」

 

 スタンクはカップの飲み物を飲み干して

「ドアの向こうで聞いているんだろう?」

 

 入口のドアが開いて、そこからアネロの妻のラミアがお盆を持って

「飲み物のおかわりを…」

 

 スタンクがカップを差し出し

「頼む。それと…オレは、アンタ達の旦那を誘拐するつもりなんてないぜ」

 

 アネロのラミア妻から、おかわりを貰うスタンクにアネロが

「話は聞いています。仲間を助けていただいてありがとうございます。ですが…私達は…病気の治療以外を望んでいません」

 

 スタンクが貰った飲み物を飲み干して

「オレにはそんな達観した生き方はムリだ。だが、アンタ達が不幸でないのはわかった。治療だけして帰るわ。ごちそうさん」

 

 アネロが「待って下さい」と引き出しからお守りを取り出す。

 それは十字架のお守りだった。

「これを…」

 

 スタンクは、呆れ気味に

「神に祈る程、信心深くねぇぜ」

 

 アネロが微笑み

「私達の事を理解してくれたお礼です」

 

 スタンクは掴み

「そうかい。じゃあ…」

 

 アネロの家を後にしたスタンクは、ネオ達の下へ戻り、治療の手伝いを続けた。

 ネオやグレン医師達は、順調にラモスのラミアの街の治療を続ける。

 

 用意された家で、グレン医師が

「患者が激減してきた。これなら三日程度、様子を見て…」

 

 隣にいるサーフェが

「ええ…そうですね」

 

 グレンは

「そういえば、一緒に手伝いに来たアラーニャは?」

 

 サーフェが呆れ気味に

「珍しい宝石があったりするので、創作意欲が刺激された…とかで勝手に街へ」

 

 グレンが

「アラーニャには薬の合成を手伝って貰ったからね。お礼をしたいけど…必要ないか…」

 

 サーフェが頷き

「ええ…」

 

 ネオ達は薬の余剰を作り

「よし、これだけあれば…」

 

 ゼルが

「患者も減ってきた。明日には誰も来ないかもなぁ…」

 

 ネオが在庫の数が書かれた紙をチェックしつつ

「これで、実績が出来た訳だ」

 

 ゼルが

「後は、あの医師が繋がる病院へ提供して終わりか…」

 

 ネオが書類をチェックしながら

「邪魔が入らなかったのは幸いだ」

 

 ゼルが後頭部に腕組みして

「あの襲ってきた連中だろう」

 

 ネオが書類のチェックを終えてしまいながら

「襲ってくると…想定していた」

 

 ゼルが肩をすくめて

「ここは、ラミアでも武闘派な連中の巣窟なんだろう。下手を打てないじゃあないのか?」

 

 ネオが鋭い顔で

「オレは、知っている。ああ…いう愚かな事をするヤツは…必ずバカな行動をする。どんな犠牲を払ってもな…」

 

 ゼルが鋭くなるネオに

「何か思い当たる節でもあるのか?」

 

 ネオは、昔の宇宙超技術文明時代を思い出し

「ああ…ありすぎる」

 

 そこへドアがノックされ「あの…これが…届きましたよ」とクリムが手紙を持ってくる。

 スキュテイアー運送が持って来た速達だ。

 ネオは受け取り、手紙にあった蝋印を見て

「これは…スカディ氏からだ」

と、手紙を開ける。

 そこには…「どういう事だ?」とネオが唸った。

 

 

 その夜、グレン医師達も交えた夕食で

「え? 診療所の襲撃を指示した上の人達が…消えた?」

と、グレンが驚きを見せる。

 

 ネオ達がいるテーブル、ネオが頷き

「我々に刺客を送ったソームンドの一派が、首領であるソームンドを含めて、突如…消えたらしい」

 

 スタンクが

「闇に消されたか?」

 

 ゼルが

「そんなに、あのリンド・ブルム街は強い力を持っているのか?」

 

 同じく食事するアラーニャが

「そんなことないない。むしろ、相手の方が強いわえ」

 

 クリムが

「じゃあ、どうしていなくなったんですか?」

 

 ネオが

「我々のやる事に裏で賛同する者達が…」

 

 グレンが

「そんな事があれば、人間領は大混乱に…」

 

 全員が黙ってしまう。

 

 ネオが

「私が戦場で戦っていた時に、情報が不足していた事があった…」

 

 クリムが

「その場合は…どうしたんですか?」

 

 ネオは慎重に

「任務を全うした。任務は施設の無効化だった。必要な無効化をして、終えた。その後は、その後で…だ」

 

 グレンが

「そうですね。私達のやるべき事は、この街の病人を治す事。それに集中しましょう」

 

 ゼルが

「その通りだぜ。下手に想像すればするほど、間違った結果になる。オレ達は、街に来て病人を治すって決まっているんだ。それ以外は、それ以外をやってくれるヤツ等に任せればいい」

 

 ネオが

「流石、長寿のエルフ。含蓄ある言葉だ」

 

 

 

 その夜、ネオは一人で外に出て夜空を見上げていた。

 そこへグレンが来て

「眠れないんですか?」

 

 ネオは星空を見上げながら

「この世界の夜空は…綺麗だ。私達の世界の夜空は、どこかに人工衛星や飛行車が飛んでいて騒がしい。一部の環境…って言っても」

と、グレンを見ると、グレンは困り顔だ。

 

「すいません。想像できません」

 

 ネオは笑み

「構いませんよ」

 

 グレンが

「ネオさんの世界では、異種族とかいるんですか?」

 

 ネオは渋い顔で

「厳密に言えば、異種族は存在しませんが…形状進化した異星の民はいます。我々の宇宙では知的種が誕生する条件は、ほぼ同一で、それがどういう文明経路を進むかで、各々に適応した宇宙の民になっています。遺伝子的には、我々の宇宙では、全知的種が90%ちかい同一です」

 

 グレンが考えながら

「形は違うけど、中身は一緒って事ですか…」

 

 ネオは頷き

「その通りです。ですから、この世界は、我々の常識を越えて存在している。遺伝的にも形状も違う種族同士が交わって子孫を残せる。驚異の世界です」

 

 グレンが

「そんな遠い世界から来て…その…ありきたりですけど、寂しくないですか?」

 

 ネオが懐から写真を撮り出す。そこにはネオの家族達が映っている。

「こっちで家族を持ち、子供達もいます。寂しいって事はないです…いや、妻達や子供達と離れて寂しいので、早くグレン医師には、技術の譲渡を終えて欲しいですね」

 

 グレンが苦笑して

「善処します」

 

 ネオは笑み

「この街の事例で、抗ウィルス薬や、ワクチンの製造方法の事例と、データが…」

と、不意に目の前から歩いてくる少女に視線が集中する。

 

 コツコツと静かにこっちへ向かってくる少女。

 

 グレンがネオの視線を追って、同じ少女を見詰め

「あれ、こんな夜中に…こっちへ」

 

 ネオが少女の背中から何かが昇ったが見えた瞬間、グレンを抱えてその場から横飛びして逃げた。

「え?」とグレンが困惑した次に、離れたそこ、玄関が粉砕された。

 

 頭からフードを被って近づく少女は

「へぇ…見えているんだ…」

 

 ネオは、少女を凝視する。

 な…アレは…。

 

 ネオの視界、いや知覚には、少女の背中から鉤爪のような巨手が伸び、その巨手の手の平にある三つの獣眼と、牙が揃う口が開いてうめき声を放っている。

 

 玄関が破壊された音に

「おい、すげー音したぞ!」

と、スタンクにゼル、クリム、サーシャにアラーニャの五人が来た。

 

 ネオが

「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

と、叫ぶ。

 

 スタンクが「何があった?」と破壊された玄関から外に出ると、あの少女がスタンクを見た。

 スタンクの全身が泡立ち自然と剣を抜いて構えていた。

 同じく隣にいたゼルも持っているナイフを構えて、ゼルの後ろにいたクリムが青ざめ

「あれ…なんですか?」

と、少女の背中を指差す。 

 

 サーシャがアラーニャと共に

「一体、何が?」

 

 ゼルが「来るな!」と二人を止めた。

 スタンクがゼルに

「おい、アレ見えないが…」

 ゼルが頷き

「ああ…見えないが感じる。あの…不気味な気配は…一体」

 

 ネオがグレンを遠くへ離して

「グレン先生、逃げてくれ」

 

 グレンが

「何が起こったんですか? 突然、玄関が…」

 

 ネオがグレンを背にして

「逃げろ」

 

 怪物の手、罪喰いの喰手触手を伸ばす少女ミレアが静かな瞳で

「へぇ…罪がない人間なんて、存在するんだ…」

と、グレンを見た。

 

 その隙をスタンクやゼルは見逃さない。

 スタンクが瞬時に間を詰めて、ゼルが一気に十本の矢を放つ。

 ゼルの矢が先にミレアに到達、スタンクが切り上げの一閃を放つが…。

 ミレアの肌に矢が触れた瞬間、まるでホコリでも当たったかのように弾かれ、スタンクの一閃が撫でるだけのように滑った。

 斬れない!と分かったスタンクの目の前にミレアの正手が放たれ、それをスタンクは別の剣でガードするが、その剣をへし折ってミレアの正手がスタンクに届く。

 スタンクの肋骨にダメージが入り、ゼル達の下へ吹き飛んだ。

 それをゼルとクリムが受け止め、三人は一緒に建物の奥へ飛んだ。

 

 ミレアの強度、人智を遙かに超えていた。

 

 それでネオは直ぐに分かった。これは…

「なぜ、サタンヴァルデットの力を持っている?」

 

 ミレア、罪喰いの聖女が首を傾げネオに

「あら…アナタ…知っているの?」

 

 ネオが警戒に構える。

 

 ミレアがネオに狙いを定める。

 

 そこへ騒ぎを聞きつけた街の人達が来る。

「すごい音がしましたが!」

と、アネロが妻達ラモスのラミア達と、同じくラモスのラミア達の夫達とラモスのラミア達を連れて駆け付ける。

 

 アネロがミレアを見て

「ああ…ミレア…」

 

 ミレアはアネロを見ると、首を傾げて

「ああ…久しぶりね、アネロ…」

 

 二人は引き剥がされた者達だった。




次話もありますのでよろしくです。
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