宇宙戦艦ヤマト2199 孤独な戦争   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「孤独な戦争」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」の続編になります。


孤独な戦争11 謀略の結末

 ガリア少佐は、撃たれた足を引きずって、冥王星基地指令部の部屋に戻っていた。

 既に、ザルツ人たちは去った後のようで、誰も指令部には居ない。床に、ヤーソン少尉を撃った時に出来た血溜まりがあり、自分がやったことの証拠が残っていた。

 ガリア少佐は、痛みを堪えながら、端末を操作して、周囲の状況を確認した。レーダーの表示によれば、基地上空に二十機もの航宙機の反応があり、地球艦隊とガミラス艦隊の機体が入り乱れて飛んでいた。基地の入り口の監視カメラの映像では、地球人とガミラス人の兵士が、何やら揉めている様子が映っていた。

 ガリア少佐は青ざめて、まずは基地の入り口が開かないようにロックすることにした。そうしてから、通信機をオンにして呼び掛けた。

「こちら冥王星基地のガリア少佐だ。基地の入り口の兵、及び上空を飛行する航宙機を退かせろ。こちらは、既にテロン人の人質だけでなく、ガミラス人の大使も捕らえている。速やかに、基地の周囲から離れなければ、彼らの命の保証は無い」

 

 ガリア少佐の通信を受信した空母ダレイラでは、バルデス艦長が、ランハルトの通信機に呼び掛けて状況を確認していた。

「その通信は本当だ。俺と地球人の山本二尉、そして基地の兵士のモーガン大尉と共に、反射衛星砲の砲台設備の室内に閉じ込められている。銃撃戦によって、有毒ガスが発生し、入口が閉鎖されて閉じ込められている」

 バルデス艦長は、慌ててガゼル司令を呼び寄せた。ガゼル司令は、青ざめて通信に返答した。

「……大使。怪我はないのか? 有毒ガスというのは、大丈夫なのか?」

「俺は無傷だ。有毒ガスが室内に充満するまで、もう少し時間がかかるだろう。俺とモーガン大尉は今のところ大丈夫だが、山本二尉はガスを大量に吸い込んだ為、体調が悪化して意識を失っている。非常に危険な状態だ」

「わかった。テロン艦隊が我々の作戦の邪魔をした為、部隊の突入が遅れている。奴らを排除するのでもう少しだけ待っていろ」

「排除? 何を言っている。地球人と揉め事を起こしてはならん。この事件を出来るだけ穏便に解決するんだ」

「我々は、あなたの生命の安全を確保するのが任務だ。それを妨害する要素は当然排除する。それが同盟国であったとしてもだ」

 ランハルトは、何をばかなと思ったが、横で倒れている山本の体調が取り返しがつかなくなる前に、急いで脱出する必要があるのは間違いがなかった。

「仕方がない。それは了解した。だが、あと十分待て。それでも解決しなければ、部隊を突入させてくれ」

 ガゼル司令は、首をひねった。

「その十分とは、いったい何の時間だね?」

 

 先程ランハルトの指示を受けたケールは、シャトルを飛ばして既にヤマトに到着していた。デスラー大使の緊急の指示だと彼は伝えて、急ぎ第一艦橋に上がっていた。

「雪さん! お久しぶりです! お元気でしたか?」

「ケールくん!? どうしたの一体」

 ヤマトのスクリーンには、ガミラス艦隊が映っており、双方が砲門を向ける事態となっていた。

「何だか、ちょっと危ない状況みたいですね」

 古代は、ケールと雪に話しかけた。

「その通りだ。今、我々とガミラス艦隊は救出作戦の方針を巡って対立している。君は確か、大使の秘書のケールさんと言ったね? 一体何の用があるのか、手短に説明してくれ」

 ケールは、にっこりと笑うと、これからいたずらする子供のような顔で、古代と雪に説明した。

「はい。この事態を穏便に、かつ一瞬で解決する大使の秘策があります」

 ケールは、手に持っていた布を広げて見せた。それは、イスカンダル人の衣装だった。

 それを見た古代と雪は、目を丸くしていた。そして、雪は苦笑いしながら、恐る恐る聞いた。

「それって……まさか……またやるの?」

「はい。今すぐにこれを着て、冥王星基地だけでなく、ここにいる全員に呼び掛けて下さい。時間がありません。すぐにお願いします!」

 古代は、嫌がる雪を懸命に説得して、大急ぎで準備を進めた。

「準備が出来ました!」

 相原が、ここにいる全員に映像通信が受領出来るよう、全チャンネルをオープンにした。

「わかった。森船務長、準備は整ったな。通信を開始しても大丈夫か?」

 彼女はいたたまれない様子で、ケールに渡された衣装を着て、艦橋の中央に立っていた。雪は、古代を振り返って、恨みがましい表情で彼を睨んだ。古代は苦笑して、両手を動かして、早く始めるように促した。その横にいるケールもにこにこと笑って同じジェスチャーをしていた。

 半ばやけぎみになった雪は、役になりきって言った。

「始めなさい!」

 

 ガリア少佐は、映像通信が入って来ているのに気がついた。怪訝な表情をした彼は、通信機を操作して、指令部のスクリーンにそれを映し出した。

 そこに映っていたのは、一人の女性だった。

「ま……まさか、この人は……」

 スクリーンに映る女性は瞳を閉じて黙って立っていた。そして、ゆっくりと目を開けると、おもむろに口を開いた。

「私は、イスカンダルのユリーシャ。今すぐに、争いをお止めなさい」

 

 その通信は、全チャンネルで呼び掛けられた為、ガリア少佐だけでなく、冥王星基地の救出部隊の者たち、上空を飛ぶ戦闘機のパイロット、そして、地球艦隊やガミラス艦隊にも届いていた。

 空母ダレイラのガゼル司令とバルデス艦長も、それを見て驚愕していた。

「ユリーシャ様だと!? 彼女は、前に我々の艦隊がイスカンダルに送り届けたはずだ。それがどうしてここに……?」

「……司令、あの映像は、ヤマトから発信されています」

「ヤマトから? 一体、どういうことなんだ?」

 アンドロメダの山南にだけは、古代からの緊急連絡で事前に通告があり、これから起こることを知らされていたが、それでもこの威厳ある女性の姿に息を飲んでいた。

 映像に映る女性が、そこにいた全艦隊に呼び掛けた。

「皆さん、今すぐに、矛をお納めるのです。地球とガミラス、そして私たちイスカンダルも、皆、友人です。今こそ、信じ合い、愛し合う気持ちを思い出して下さい」

 ガゼル司令は、疑問を抱きながらも、イスカンダル人の意向に逆らうべきでないと判断した。

「全艦、地球艦隊への戦闘体制を解除しろ。砲門の照準も外すのだ」

 ガミラス艦隊の駆逐艦の砲門が、一斉に前を向いて地球艦隊を照準から外した。

 それを受けて、山南も全艦隊に同様の指示を出した。

 映像の女性は、その様子を確認して頷いた。

「皆さん、ありがとう。冥王星基地のガリアさん。わたくしの話を聞いてください」

 ガリア少佐は、自分の名前が呼ばれたことに驚き、自分の耳を疑った。

「あなたや、あなたと共にいた人々が、戦争が終わったことを知らずにここに留まっていたことを聞きました。とても辛かったでことでしょう。しかし、もう大丈夫です。あなたが恐れるデスラー総統はもうガミラスを去りました。新たなガミラスのリーダーが国を治め、民主化されて生まれ変わったのです。わたくしたちと一緒に故郷へ帰りましょう。あなたの苦難に満ちたここでの体験を皆に話し、語り継ぐのです。二度と、あなたのような苦しみを繰り返さぬよう」

 それを聞いたガリア少佐は、その目から涙が溢れていた。苦難に満ちたここでの体験、と言われ、この数年の間の出来事を思い出していた。ここに留まっている間中、地球人を恐れ、デスラー総統からの処罰を恐れ、必死に存在を隠してきた。ヤーソン少尉のような部下に反感を買っていたことも、彼にとっては長い間の重圧だったのだ。

 ガリア少佐は、恐る恐る通信機のマイクをオンにした。

「ユリーシャ様……。温かいお言葉、感謝致します。私は、ガミラスへ帰ってもいいのでしょうか?」

 映像の女性は、優しげな微笑をして頷いた。

「何も心配はいりません。私を信じて頂けますか?」

ガリア少佐は、高貴なイスカンダル人を疑っていると思われたと思い、慌てて返事をした。

「とんでもない、もちろんです! 私は、皆さんにご迷惑をお掛けしました。すぐに武器を捨てて投降します!」

 

 

 それから少し後――。

 

 ガリア少佐は、ガミラス兵に連れられて、シャトルに乗せられていった。

 基地の内部に入った篠原たちは、反射衛星砲室の入口の扉を開放し、山本とランハルト、そしてモーガン大尉を助け出していた。

 山本を抱き抱えていたランハルトの姿を見て、篠原は叫んだ。

「玲!」

 山本は、意識を失ってぐったりとしており、篠原は、慌ててランハルトから山本を受け取った。

「不味いな、早く佐渡先生に見せないと!」

 篠原は、簡単にランハルトに礼を言うと、いそいそとコスモシーガルへと連れ帰って行った。

 ランハルトは、モーガン大尉に話しかけた。

「足は大丈夫か?」

「なあに、大したことはない。一人で歩けるよ。それにしても、イスカンダルのお方が来ているなら、早く呼んで頂ければ、もっと早く解決したと思うんだが」

 ランハルトは、微笑んだ。

「言うほど簡単なことじゃないさ」

 ランハルトは、このまま彼女は本物のユリーシャだと思わせておいた方がいいと、黙っていることにした。

 

 ヤマトでは、通信を終えた雪が、緊張から解放されて大きく息を吐き出していた。

 周りを見回すと、北野や南部を始めとした第一艦橋の士官が、皆にこにことしながら雪を見つめていた。急に恥ずかしくなった彼女は顔を赤くして言った。

「も、もう、着替えていいですよね?」

 その時、相原が報告してきた。

「艦長、山南司令から連絡です。スクリーンに出します」

 スクリーンに、山南の姿が映っていた。

「古代、それから特に森くん。お疲れ様」

 古代は、アンドロメダのスクリーンに映るように、雪を近くに呼び寄せた。しぶしぶ古代の横にやって来た雪は、ヤマトのスクリーンに映る山南の方を見た。

「うん。とっても似合ってるぞ。噂では聞いていたが、本当にユリーシャ様にそっくりだったんだな。その衣装を着たら、見分けがつかないくらいだ」

 雪は、不機嫌な表情でそれに答えた。

「それはどうも……」

 古代もそれに同調して言った。

「うん、僕もそう思う」

 雪は、目を細めて古代を少し睨んだ。古代は、これは、後でいろいろ怒られたりする奴だ、とその発言を少し後悔した。

「一つ、森くんに頼みがあるんだが……」

 山南の言葉に反応した雪は、間髪入れずに言った。

「嫌です」

 山南の笑顔が固まった。苦笑しながら彼は続けた。

「まだ、何も言ってないんだが……」

 ケールが雪の横にやって来て、笑顔で言った。

「そのまま、皆さんのお見舞いに行きましょうか。皆、喜ぶと思いますよ?」

 雪は、目を細めてケールを恨めしげに睨んだ。

「うん、俺もそれを言おうとしていた。ガミラスとの関係を修復する為にも、ガリア少佐以外の者たちの慰問をしたらどうかと思っているんだが」

「山南司令。こんな格好で行く必要性を感じません。ガミラスとの関係を修復する目的でのお見舞いや慰問でしたら、尚更地球連邦防衛軍の士官として訪問すべきではありませんか?」

 雪が山南の話をばっさりと切り捨てたので、その場の空気が凍りついた。

「ま、まぁ。そ、そうだな。君の言うことももっともだ」

「や、山南司令。それでは後程、着替えて訪問の準備をさせます」

「あー、古代。お前も地球艦隊の代表として一緒に行ってくれ」

「承知しました」

 古代は、敬礼で応えた。

 

 ヤマトでは、山本が艦内に収容されたとの情報が駆け巡った。佐渡の治療で、有毒ガスによる中毒症状を中和する薬品を注射することで症状が落ち着き、命の危険はないとのことだった。第一艦橋にもその知らせが届き、古代も安堵していた。

 そして、冥王星基地から救出されたデスラー大使は、ヤマトへの乗艦を希望しているとの連絡が入っていた。

古代は、イスカンダル人の衣装から着替え終わった雪とケールと共に、舷側の艦載機格納庫に出迎えに行った。

シャトルを降りてきたランハルトは、古代と雪に対面して言った。

「古代艦長、ご協力に感謝する」

 古代とランハルトは、地球式に握手を交わした。

「お役に立てて何よりです」

 ランハルトは、雪の方にも手を差し伸べた。

「雪、久しぶりだな。先程は頼みを聞いてくれて本当に助かった」

 雪は、ランハルトと握手をした。

「山本さんのことがあったから、仕方なく、です。もう二度とやりたくないから」

 雪は、不機嫌な表情でランハルトに言った。

「そうか? 先程の演説は俺も聞いていたが、なかなかどうして、本物のユリーシャ様かと思うほどだったぞ」

 ランハルトは微笑していた。

「ランハルト。そんなこと言っておだてているつもりかもしれないけど、もう絶対に嫌ですからね」

 古代は、雪とランハルトの妙に親しい様子に戸惑っていた。それを察知したケールは、古代に言った。

「古代さん、以前の誘拐事件の時に私たちは雪さんに大変お世話になりました」

 古代は、雪からそのような話を聞かされていたことを思い出した。それにしても、やけに親しげだな、と古代は思っていた。

 ケールは、ランハルトにも補足した。

「大使、この古代さんが、雪さんの婚約者です」

 ランハルトは、驚いて古代の方を見た。

「……そうか。貴様がそうだったのか」

 貴様と急に言われて古代の疑問は更に深まった。

「今は仕事中ですので、そういった話題はどうかと思いますが……。その通りです」

 古代は、必要以上に真面目な顔をして言った。

 雪は、古代が明らかにランハルトを警戒し始めるのを感じて、彼を前にしてランハルトと親しげにし過ぎた、と少し反省した。

「雪は、いい女だ。大切にすることだな」

「もちろんです。大切にしています」

 ランハルトと古代は、互いに睨み合った。雪は、その空気に耐えられずに話しに割り込んだ。

「あー、大使はヤマトにケールくんを迎えに来たんでしょうか?」

 ランハルトは、当初の目的を思い出した。

「出来れば、救出された山本二尉が無事か確かめたいのだが」

 

 医務室では、山本はベッドに寝かされていた。彼女の腕には点滴の注射が繋がっていた。ベッドの傍には、篠原が心配そうに彼女を見守っている。

 その山本は、ちょうど意識を取り戻したところだった。彼女に付き添っていた篠原は、彼女の手を握って安堵して声をかけた。

「お帰り。玲ちゃん」

 山本は、ぼやけた視界が徐々に焦点を結び、篠原の顔が見えてきていた。先程まで、兄の夢を見ていた彼女は、少し寂しい気持ちもあったが、心配する篠原の顔を見ると少し口元を緩めた。

「ただいま」

 篠原は、少し涙ぐんでいた。

「……泣かないでよ」

 彼は、その涙も拭わずに言った。

「だってさ、二度と会えなかったら寂しいじゃない。嬉し涙ってとこさ」

 山本は、彼の気持ちが嬉しかった。

「篠原ってそんな奴だった?」

「俺は、そんな奴だった」

 山本は、自分はどうなんだろうと考えた。確かにあのまま仲間から離れて一人ぼっちで死んでいたら、寂し過ぎたかも知れない。そして、あれから何年も古代への想いを引きずった自分を、変わらず想い続けてくれた彼との関わりは、とても大切なものだったのではないか、と感じていた。

「ありがと」

 山本は、少し赤面して小さな声で言った。

「どういたしまして」

 そんなやり取りをしている最中に、古代と雪が、ランハルトとケールを連れてやって来た。

「山本! 気がついたのか! 良かった。心配してたんだぞ」

 その横で、雪も微笑して見守っていた。山本は、いつもなら、古代と雪が仲睦まじくしているのを見ると、心にさざ波が立つのを感じていたのに、今は何も感じなかった。篠原に握られた手もそのままに、彼女は微笑んで返事をした。

「ご心配をお掛けしました」

 そこに、ランハルトが古代を押し退けて前に出てきた。

「思ったより元気なようだ。安心したぞ」

 山本は、そういえば、自分を助けに来たのは彼だったことを思い出していた。

「デスラー大使。お陰様で助かりました」

 ランハルトは頷いた。

「こうして無事だったからよかったものの、出来れば、もう少し大人しくしていてくれれば、銃撃戦などせずに穏便に解決出来たんだがな」

「は?」

 山本は、その言いぐさに呆気に取られていた。

「膠着状態で、解決の見込みなどあの時はなかった。私は、脱出する為に僅かな可能性にかけたんです。そんな言い方をされる筋合いはないと思いますが?」

 彼女は、ランハルトを睨み付けた。

 雪は、彼の様子を見て、そういえば、自分も初めて話した時はこんな態度だったと思い出した。もしかしたら、人見知りをするタイプなのかも知れない。

 ランハルトは、山本に言われたことを少し考えていた。

「そうだな。俺が保険をかけたことなど、あんたは知るよしもない。すまない。少々失礼だったようだ」

 山本は、急に殊勝な態度をとった彼に、拍子抜けしていた。

「そうだ、あの撃たれたヤーソン少尉は助かったのだろうか?」

 ランハルトは頷いた。

「大丈夫だ。何とか助かると聞いている。何にせよ、本当に無事でよかった。誰も死なずに済んだのが俺としては嬉しい」

 ランハルトは、篠原が握る手に気が付いて言った。

「……お邪魔なようだから、これで失礼するとしよう」

 篠原と山本は、互いに握られた手を見つめた。

「そうだ、デスラー大使、落ち着いたら、お礼に伺います」

 ランハルトは、山本に手を振った。

「必要ない」

 去ろうとしたランハルトは、振り向いて言った。

「それにしても、雪といい、あんたといい、地球人の女は皆、気が強いのか?」

 雪と山本は、その言葉に再び呆気に取られていた。

「まぁ、それが逆に俺にとっては新鮮だったんだがな」

 そう言いながら、彼は病室を出ていった。

 雪は、古代がランハルトを凝視するのを見て、余計なことを言うと思っていた。

 山本はというと、朦朧としていた時、兄だと思って抱きついたのが彼だったことに今頃になって気が付いていた。別に、兄に似ている訳ではないのに、と彼女は不思議に思っていた。

 

 その後、古代と雪は、ランハルトとケールと共に、シャトルで空母ダレイラを訪れた。

 艦内の医務室に向かうと、ベッドに寝かされたヤーソン少尉を囲むように、ゾラン中尉とイリア少尉が座っていた。

「地球連邦防衛軍の古代と森です。皆さん、ご無事で何よりです」

 彼らは、古代と雪の姿を見て、複雑な心境だった。

「地球連邦の皆さん……」

「我々は、以前はあなた方の星を攻撃した。この事実は消すことは出来ない。謝罪を受け入れてくれるとは思わないが……」

 古代は、毅然とした態度で言った。

「皆さん、地球では、あなた方が懸念するような様々な思いがあることは確かです。しかし、我々は、互いに傷つけ合い、双方が多大な犠牲を払ったのもまた事実です。それを超えて、私たちはガミラスの皆さんと共に生きる道を見つけました。二度と同じ過ちを繰り返さないと誓ったのです」

 雪は、古代の後を引き取った。

「あなた方は、ガミラスに強制的に従軍させられたザルツ人と聞きました。さぞや辛い思いをしたと思います。二等ガミラス人の制度は既に廃止され、マゼラン銀河の各星系では、ガミラスとの対等な立場での再建に挑んでいる国々が多いと聞いています。ザルツ星と私たちの地球も、いつか友人になれる時が来るでしょう。その日まで、今日の出会いを大切にしたいと思います」

「そう言っていただければ、少しは気が楽になります」

ゾラン中尉は感謝の言葉を口にした。すると、寝ていたヤーソン少尉が呻き出した。

「ヤーソン、大丈夫?」

 イリア少尉は、彼の様子を心配していた。

「うう……撃たれたところが痛い。でも、これでやっと帰れるんだな」

「そうよ」

「お前も、ノランに会いたいよな」

「急に何でそんなこと言うの? それは幼馴染だから当然でしょ」

「俺には、会いたい人なんていない」

 イリア少尉は、彼の頭を撫でた。

「私がいるじゃない」

「か、勘違いさせるようなことを言うなよ」

「勘違い? うーん」

 古代と雪は、そのやり取りを温かく見守った。しかし、ノランの名を聞いた雪は、胸の内にそっとしまっておいたものを思い出した。

 そういえば、彼もザルツ人だと言っていた気がする……。

 同名の人物なのか、同一人物なのか、雪は気になった。しかし、彼のことを聞くということは、彼の最期を知らせなければならない。彼女は、どうしても、彼の死の知らせを伝える勇気が湧かなかった。今はせめて、故郷に帰れる幸せに浸らせてあげるべきだと雪は思い、何も言えなくなっていた。

 

 古代と雪は、艦橋にも訪れ、ガゼル司令やバルデス艦長に挨拶をした。

「先程は、大変失礼をしました」

 雪は、ガゼル司令に謝罪した。

「貴方とは初対面だと思うが、何を謝るのかね……むむ?」

 ガゼル司令は、まじまじと雪の顔を眺めて、先程のユリーシャの正体に気がついた。

「俺が頼んで変装してもらった」

 ランハルトは、あっさりと補足をした。

「見れば見るほど、ユリーシャ様の生き写しではないか」

「どうも、ガミラス人は信用が無いということが分かったんでな。彼女にあれを頼んだんだ。かなりいい思い付きだったと思う」

「なるほど、これは私も騙された。これはやられたな」

 ガゼル司令は、大きな声で笑いだした。

「なるほど。これが、あなたがテロン……いや、地球で作り始めた縁ということか。その縁に、ガミラスも地球も救われたということか」

 ガゼル司令は、ランハルトに笑って見せた。

「大使。ひよっこだと思って侮ってすまなかった。これからは、少しは、あなたの言うことにも耳を傾けるとしよう」

 ランハルトは不満そうな顔をしていた。

「なるほど。そんな風に思っていたのだな。俺たちも、信頼し合うように努力が必要らしい」

 ガゼル司令は、ランハルトの肩を叩いて笑っていた。

「これから我々は、地球に向けて帰還します。あなた方はどうされますか?」

 古代は、ガゼル司令に確認をした。

「うむ。あの基地を放って置くわけには行かないだろうな。少し調査してから、破壊するつもりだ。先に帰ってもらってかまわんよ」

 ランハルトは、古代に言った。

「俺が監視しておく。心配はいらない」

「監視とは人聞きの悪い」

 古代は、打ち解けたランハルトとガゼルの関係を見て、安心してもよさそうだと思っていた。

「そうそう、救助した彼らだが、地球で暫く静養させたい。受け入れ先を準備してくれないかね?」

 ガゼル司令は、古代に話しかけた。ランハルトは、それに対して言った。

「それは、俺の仕事だ。お前たちは気にしなくていい」

「わかりました。それでは、我々はこれで」

 古代と雪は、揃って敬礼をした。

 ケールは、彼らの案内をして、艦載機格納庫へ向かおうと歩き始めた。そこで、ランハルトは呼び止めた。

「二人とも、幸せにな。また地球で会おう」

 古代と雪は、振り返って、もう一度敬礼をした。

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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