その後――。
アンドロメダ艦隊とヤマトは、冥王星基地の事件が解決した後、地球に帰還した。
出発時に集まったブリーフィングルームに、四隻の艦長が集まり、土方がやって来るのを待っていた。
その土方が部屋に入ってくると、全員立ち上がって敬礼をした。土方も敬礼で応えて、皆を着席させた。
「皆、ご苦労だった。集まってもらったのは、今回の件の振り返りをするためだ」
土方は、山南の方を向いて言った。
「山南、艦隊司令の役目、見事に果たしてくれたことに礼を言う」
山南は、腕を組んで目を閉じていた。
「何だ。今日はやけに静かじゃないか」
山南は目を開けた。
「喋ってもいいんですか?」
土方は、少し山南の様子がいつもと違うのに気が付いて、暫し思案した。
「うむ。まずは、今回の件について、各人が自由に率直な意見を述べてくれ」
山南は口を開いた。
「なら、言わせて頂きますがね。土方総司令、人質の命よりもガミラスとの交戦を控える方を優先しろという命令ですが、正直納得できませんでした」
土方は頷いた。
「他には?」
「そ、それだけ?」
「後で話すから、少し待っていろ。他のものの意見を先に聞かせてくれ」
ナガト艦長の大村が口を開いた。
「遊星爆弾が飛来したのに対応するため、ムツと二隻で迎撃しました。ショックカノンで撃ち落とすのに成功したので、特に問題はなかったのですが、以前の艦なら不可能な対応でした」
ムツ艦長の井上もそれに同調して頷いた。
「早く波動エンジン搭載艦を増やさなければ、有事の際に、対処出来ないと痛感しました」
古代も口を開いた。
「私もアンドロメダと共に惑星間弾道弾の対応をしましたが、あれがミサイルでなく、艦船だったとしたら、対応が困難だったと思います」
土方は頷いた。
「古代、以前のイスカンダルへの旅の時にも多数の艦船とやり合ったと思うが、それとの決定的な違いは何だ?」
急な質問で、古代は少しの時間考えた。
「多数の艦船と交戦する場合の沖田艦長の戦術は、波動防壁を活用して耐え、正面突破して逃げるのが基本でした。あの時の目的は、イスカンダルに行くことで、戦闘は二の次でしたので、このような戦術をとったのだと思います。今回の件では、地球防衛の為に、一基も撃ちもらすことが出来ないという点が、あの時と目的も戦術も全く異なります」
土方は頷いた。
「その通りだ。地球防衛の難しいところは、逃げることが出来ない、ということが大きい。大村や井上が感じたことも、根本はそこにある。要するに、たったの四隻の艦隊では、有事に対応出来ないということを、今回証明してしまった」
ブリーフィングルームが、しんと静かになってしまった。
「そう悲観したものではない。その為にも、極東管区だけでなく、各国で艦船の建造を進めている。二、三年後には十分な数が揃うだろう。それまでの間、我々は、この四隻の運用や有事の際の戦術を真剣に検討する。必要なら、艦船以外の防衛設備の提案も歓迎するぞ」
土方は、山南の方を改めて向いた。
「山南、辛い思いをさせたようだが、それが全軍を指揮するということだ。大局的にものを考え、苦渋の選択をしなければならん時もある」
「なら、俺は、艦隊司令なんて向いていませんね。首にしてもらって結構です」
「それでも、お前がぎりぎりまで耐えて行動したことが記録に残っている。向いてないとは思わんがな」
「いいえ。あの大使の作戦がなければ、ガミラスと交戦していた可能性があります。そんなに褒められたもんじゃないと思いますよ」
「それでいいんだよ」
「は?」
「お前が最後まで慎重に行動したことが重要なのだ。それで俺の命令を破って交戦に至ったとしても、状況をすべて把握しているのはやはり現場の指揮官だ。いちいち上にお伺いを立てなければ動けない奴など、それこそ指揮官には向いていない。お前は、交戦に至った場合、ガミラス艦隊を撃沈する気があったのか?」
「いくらなんでも、そこまでする気はありませんでしたよ。それに、我々から攻撃するのは、防衛艦隊の理念から言ってもあり得ません」
土方は頷いた。
「防衛艦隊の理念に従えば、例え交戦に至っても、専守防衛に徹する限定的な戦いを想定して行動すべきだ。防衛艦隊が望むのはそこだ。そうやって、ぎりぎりまで最後の一線を越えない努力をすること。そして、一線を超えたとしても、可能な限り戦いを限定的に抑えること。それこそが、俺が望む艦隊司令の役目だ」
山南は、土方を訝しげに見つめた。
「上の許可なく、先制攻撃の許可を出すことは、政府の意向を無視して、軍が独断で暴走することに他ならない。現場の判断で時間を稼ぎ、ぎりぎりの努力をしてくれたこと自体が、お前が指揮官に向いていることを証明している。お前には感謝している」
山南は、しぶしぶ土方の話を受け入れた。
「何だか、うまく丸め込まれているような気がしますよ」
「愚痴なら、別の場で聞く」
「じゃ、この後飲みに行きましょ」
土方は、山南に何か言おうとしたが、愚痴を聞かされるのはこの場に相応しくないと考えて開きかけた口を閉じた。そして、土方は話題を変えた。
「古代、四隻の艦隊運用を真剣に検討する意味でも、出発前の課題だったヤマト乗員の分配について意見を聞いておきたいのだが?」
古代は、遂にその話題がきたか、と思っていた。
「率直に申し上げて、今の人員の働きぶりは、艦の運用効率を非常に高めてくれています。既に、山崎副長が別の艦の艦長となることを始めとして、何名か抜けることも決まっており、これ以上の欠員が出る場合、ヤマトにも他の艦と同様の運用上の問題が出てくるでしょう」
土方は頷いた。
「お前の言いたいことは理解している。概ねそれには同意する。しかしな、教育して育てていくしかないのも現状だ。それはわかっているな?」
「はい」
山南は、他の皆んなが発言しないのを確認して、口を開いた。
「今回、ヤマトの乗員の働きぶりをいろいろ見させてもらいました。私の方で何名か候補を検討しましたよ」
土方は、それに興味を持った。
「俺も、ヤマトの乗員については、大体把握している。誰を候補にしているか言ってみろ」
古代は、困った表情でそのやり取りを見守った。
「まずは、戦術科の北野と南部、航空隊の山本、それから以前航海科に所属していた島と太田、技術科に以前所属していた真田と新見、船務科から、森、西条、相原……」
古代は、慌てて言った。
「ちょ、ちょっと待って下さい。それでは、誰もいなくなってしまいます」
山南は、古代に向かって言った。
「ま、そうだよな。俺も言われたら同じように思うだろうな」
古代は、困り果てた表情になっていた。土方は、その様子を見て思案した。
「大体わかった。後はこちらで検討して、結果を伝える」
古代は、不安そうな顔で土方を見つめた。
「そんな顔をするな。俺が今考えている案では、一時的なレンタルのような形態がよいかと思っている。完全に異動させてしまった場合のヤマトの運用効率の低下を防ぐ為にもな」
各艦長は、その話しに反応した。
「なるほど、それはいいですね」
「こちらも、気兼ねなく、一線級の乗員を希望できる」
「何なら、古代、お前自身もだな」
山南が、にやにやと笑いながら古代に言った。
「わ、私ですか?」
「そうだよ。お前なら、戦術科の役目なら何でも出来るじゃないか」
土方も少し笑っていた。
「古代、お前は山崎に変わる副長候補を考えておけ。そうしたら、その案も考えてもいい」
「はあ……それでしたら、もし、真田さんや島が戻ってくれるなら、そのどちらかが希望です」
「なるほど。だが、その二人は艦長候補だな……まぁ、考えておく。それでは、他になければ、解散とする!」
ブリーフィングルームにいた各艦長は立ち上がって部屋から出ていこうとしていた。
山南は、最後に古代に声をかけた。
「あー、古代。お前の奥さんだが……」
「あの……まだ結婚はしてないんですが……」
古代は、苦笑いしつつ答えた。
「まだだっけ? もし、異動するような話しになった場合は、森くんは古代の元に置いておくのがいいかな」
古代は、不思議に思って聞いた。
「何故です?」
「俺、彼女にこの間言い負かされたから、うまくやれるかあんまり自信ない」
土方は、振り返って山南を睨んだ。
「彼女は俺の娘も同然なのだが……少々聞き捨てならんな。気が強くて扱いに困ったという意味か?」
山南は慌てて言った。
「とんでもない! 違いますよ。夫婦一緒の方がいいと思ってですね……」
山南は、土方の機嫌が直りそうもないので、思い付きで言った。
「土方さん、古代も。あと、大村も井上も。皆で飲みに行きましょう!」
土方は、少し表情を緩めて言った。
「わかった。今の話をよく聞かせてもらおう。あと、古代!」
「は、はい?」
「いつになったら雪と結婚するのか、説明してもらうからな」
五人は、ブリーフィングルームを後にして、どこに飲みに行くか話ながら廊下を歩いて行った。
宇宙戦艦ヤマト2199 孤独な戦争
完――。
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。