翌日、地球に戻った古代や山南らは、アンドロメダと主力戦艦の主要な兵装の射撃テストを行う計画について確認していた。波動砲も発射するため、誰もいない第十一番惑星軌道まで向かう予定だった。また、アンドロメダには、ヤマトと同様の艦載機格納庫が存在している為、搭載する艦載機の発艦や着艦訓練も合わせて実施される。ヤマトは、不測の事態があった場合の対処をするために同行するのだ。
「大体、段取りは理解してもらえたと思う。何か質問は?」
土方は、ブリーフィングルームの壇上で、テスト全般の順序や実施方法、注意点について説明をしていた。
艦隊の各艦の艦長は、土方の前に並んだデスクの椅子にそれぞれ腰掛けていた。それぞれ、古代と山南、そして、ナガトの大村とムツの井上が参加していた。
最初に山南が手を上げた。
「土方さん」
「総司令、もしくは宙将と呼べ」
土方は、山南を睨み付けた。山南は、苦笑いしていた。昨夜、結局本当に土方と飲みに行っており、その流れでつい砕けた口調になっていた。
「これは失礼しました。……えーと、総司令。テストの件じゃ無いんですが、少々ご相談が」
「関係がある話ならな」
「関係ありますって……。昨日のテスト航海ですが、うちの乗員の練度がもうひとつ、という状況でした。ガミラス戦争で多くの人員が失われ、昨今、不足した乗員は防衛大学校から補充しています。しかし、やはり経験不足が否めません。そこは、訓練すれば良い、という話になると思いますが、ある程度経験を積んだ者もそれなりに配置しないと、教育もままなりません」
その場の全員が山南を見ており、井上は頷いていた。
「そこは、うちの艦も同じです。贅沢は言ってられないのはわかっていますが、ガミラス戦争以前からの数少ない士官は、既に皆、艦隊の要職についていて、その下の世代の士官が不足しています」
大村もうちも同じ、と言って頷いている。そして、いつしか、皆の視線が古代に集まっていた。
「はっ、はい? 私が、何か?」
古代は、自分の顔に指を向けて、困った笑顔で見回した。
「お前さぁ。俺たちと同じ悩み、無いだろう? 要するに、そういうことだよ」
山南は、古代に指を向けて笑っていた。
「土方さん、ヤマトの乗員を各艦に分配するよう人員配置の見直しをお願いします」
「総、司、令」
「あ、はい、総司令」
土方は、腕を組んでため息をついた。
「言いたいことはわかる。確かに、波動エンジン搭載艦が四隻に増えた訳だからな。波動エンジン搭載型艦船に熟知した乗員を増やすのは急務だ。すぐには決められんが、検討する。古代、テストが終わってから、まずはお前の意見を聞かせろ。いいな?」
「は、はい。わかりました」
古代は、気心が知れた仲間を思うと、複雑な気持ちだった。
「他には?」
土方が見回していると、また山南が手を上げた。
「まだ何かあるのか?」
「いや、土方さ……。こほん。総司令とは、昨夜も飲みながら話しましたが、この艦隊が一年近く前のガミラス・ガトランティス戦争の時にあったらなぁ、って感慨深いですよ」
土方は、咳払いをした。
「飲みながらは余計だ」
古代は、それを聞いて、あの戦いを思い出していた。確かに、波動砲を搭載したこれらの艦隊があれば、ガトランティスの撃退は、もう少し楽に対処出来ただろう。しかし、最終的に、あのような平和的な解決策も思いつかないまま、戦いが更に激化していた可能性もある。
「山南司令。自分は、そうは思いません。ガトランティスの戦力は無尽蔵、とでも言えばいいのでしょうか。そういう印象でした。倒しても、倒しても、何度でも復活を遂げて来て、皆が絶望的な思いを何度も噛みしめました。この艦隊が居たとしても、やはり倒すのは不可能だったと思います」
大村も興味を示した。
「そういえば、古代さんの奥さんが奇跡をおこしたそうですね。詳しく聞かせてもらいたいと思っていたんですよ」
古代は、照れて苦笑いしていた。
「お、奥さん? いやぁ、まだなんですけど……っていうか、大村さん、あなたの方が先輩じゃないですか。さん付けとか勘弁して下さい」
「地球を救ったヤマトの戦士じゃないですか。皆の英雄ですよ。謙遜する必要ありません」
土方が再び大きな咳払いをした。
「そういう話は、休憩時間にでもしろ。では解散!」
アンドロメダらのテストに同行する為、発進準備を進めるヤマトの艦橋で、古代は周囲を見回して見た。
真田や新見は地球に戻って科学技術省に移籍した為、既に不在だった。
島は、太陽系の各惑星や衛星から資源を採掘して地球に輸送する輸送艦隊の指揮官として宇宙を飛び回っている。
山崎は、増産予定の主力戦艦の艦長に内定しており、ヤマト機関長としてここで働くのは、艦が完成するまでのあと数ヶ月の間だけだった。
まだ子供が小さな加藤は、地上勤務を希望し、本土防衛隊の空軍への転属を申請していた。
現在のヤマトの運航は、一年前まで若手だった者や、交代要員だった士官が中心となって担っていた。元のリーダー格の士官は、それぞれ、ヤマトを降りて別の仕事についている状態だった。古代自身も、一度はヤマトを降りて、輸送艦隊の護衛任務についていた時期もある。
彼らを可能な限り防衛軍の宇宙艦隊に再召集し、艦隊の各艦の乗組員として人員を割り振るのは、妥当な判断だと言える。
しかし、現在のヤマトに残る士官も、二度のマゼラン銀河の旅と実戦を経験しており、新米や徳川の息子のように、防衛大を出たばかりだった乗員も、経験を積んで既にそれなりの練度になっていた。彼らまで、ヤマトから奪われてしまうと、艦の運用効率は、著しく低下するであろうことは容易に想像がついた。
古代は、気付かぬうちに、深いため息をついていた。各部署の状況を確認していた雪が、古代の様子に気がついて艦長席にやって来た。
「どうされましたか、艦長?」
雪は、大きめの携帯端末を抱えて古代の横に立っていた。
「雪か……」
雪は、苦笑いして小声で言った。
「もり、せんむちょう、でしょ」
古代は、我に返って目を見開いた。
「す、すまん。な、何でもない」
古代は、必要以上に大きな声を出していた為、第一艦橋の乗組員が、二人の方をちらちらと見ていた。
「あー、すまん。実は……」
古代は、ヤマトの人員の再配置の件を小さな声で伝えた。
「それって……もしかして、私も?」
雪は、ヤマトを降りることになる可能性を考えて不安な顔をしていた。
「この件は、今回の任務から戻ったら、土方司令と話すよ。今は、聞かなかったことにしてくれないか?」
「うーん。うん」
そう言いながら、雪は、第一艦橋を出ていった。古代は、その後ろ姿を眺めて、言わない方が良かっただろうか、と後悔していた。
「艦長、機関室、準備完了しました」
副長を兼任している山崎が報告してきた。古代は、普段通りにしよう、と気持ちを切り替えた。
「ありがとうございます、山崎機関長」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。