__音が、響く。
カツ、カツ、カツ、カツ。
こんな時間帯に、しかも上弦の零が幽閉された牢獄に来ることのできる人間は、嵬羅が思っているよりはるかに少ない。
『あれれ、もう来てくれたのかなあ?』
『しのぶちゃん、なんだかんだ言って毎日来てくれるもんねえ。やっぱり私のこと好いてくれてるのかなあ?』
『嬉しいねえ。綺麗な女の子は美味しいからねえ。あの子は目玉が大きいから、顔に栄養がたくさん集まってるのかなあ?美味しいんだろうねえ。』
カツ、カツ、カツ、カツ、コッ。
足音が、止まった。
『わ!しのぶちゃん来てくれたの?』
「残念だかな、今夜は俺だぜェ」
『わあ...えっと、白髪で強そうな......風柱の不死川さんだね!』
「おう。なんで俺の名前を知ってるんだァ?鬼。」
『これでも私は上弦の零だからね!鬼殺隊の強い人達の名前くらい、覚えるのは訳ないよ!』
「なるほどねェ。そんな頭の良い鬼なら、俺がなんで此処に来たのかぐらい、簡単だよなァ?」
『もちろん。ただ言っておくけど、私から無惨の情報をとれるなんて、思わない方がよろしくてよ?』
「そういうことは、箱を開いてからのお楽しみってなァ?」
『叩ける減らず口はあったみたいね?ならやれるだけやってみたらどう?』
「おうおう。聞いてた通り、口調のコロコロ変わるやつだなァ?聞きにくいったらありゃしねェ。」
「それじゃ、遠慮なく。」
そう言った途端、嵬羅の四肢が、身体から離れた。
『った......』
その言葉を言い終わるか終わらないかの一瞬で、嵬羅の四肢がギュルン、と再生する。
「おうおう。さすがは上弦の零だなァ?」
『お褒めにあずかり光栄でございます。風柱様?』
『ただ、いきなり切り刻むのは如何なものかと?』
「ンなこと言う前に、俺を殺さなくてもいいのかィ?下手したら自分が殺られるぞォ?」
『ご冗談。ハナからどさくさに紛れて殺す気の癖に。』
「...ま、違うと言ったら嘘になるな。ンで、質問には答えてくれないのかィ?」
『ああ、確か...なんでアンタを殺さないのか、だっけ?』
「あァ。まあだいたい予想はつくがな?血鬼術が一つしか使えない上弦の零さんよォ?」
『うわあ!お館様、そこまで見抜いてたんだあ!でも残念。まだ理由はあるんだよねえ。』
「あ?」
『わああ!怖い怖い!あのねえ、ってこれ言っていいのかなあ?上弦の参のねえ、あかざくん?だっけ?に言われたんだよ、強い男の柱は殺すなーって!もう!メンドくさいことばっか言うんだから!一応私が上なのに!』
「あ?じゃァお前が言いたいのは、お前にとっては俺は簡単に殺しちまえるような人間って訳かィ?」
『え、だってお兄さんあんまし強くないんじゃない?お兄さんよりほら、前私に会いに来てくれたずっと泣いてるお兄さん?なのかなあ?___あ、でも私の方が年上だし、強いか!___の方がよっぽど強いと思うんだけど、違うの?』
「...間違ってはねェなァ。ま、上弦の零相手にマトモな会話を求めるってのも無理な話か。」
『えええ!それってまるで私がマトモじゃないみたいじゃない!ひどーい!』
「るっせ。ってか、俺の本来の目的を忘れるところだったじゃねぇかァ。」
『キャ!理不尽!まあ、どうせ無駄だと思うけどやりたいなら、どうぞ。』
返事は無く、嵬羅の腹がかっ捌かれる。
刹那、ピンク色をした内蔵が、まるで腹を斬った刃を追い掛ける様に吹き出たかと思えば、次の瞬間には傷が塞がった。
『ほらほらあ、どんなにやってもすーぐに再生しちゃうよー?ねえねえ、今どんな気持ち?見下してるやつに嘲われるなんて、さぞ悔しいんだろうねえ?』
「ほンっと、いい性格してんなァ?」
『よく言われるー!』
次に刀が刺したのは、嵬羅の脳幹だった。
脳幹を刺し、脳髄にまで刃を届かせ、グチャグチャにかきまわす。
『痛い痛い痛い痛い!結構エゲつないことするんだねえ、お兄さん』
ただ、ダメージを受けた瞬間から回復する為、全く効いた様子はない。
どうやら諦めたようで、不死川が嵬羅の頭から刃を抜いた。
「汚ったねェ血だなァ」
そう言って、嵬羅の血を一瞥した後、嵬羅の左目を抉り出した。
________すると、
嵬羅の態度が一変した。