異世界怖い… 作:パイン
『私はそこに行きました!』『待つ!』『お見逃しなく!囲む!』『逃げられるとは思わない!』
狭い路地に男女の怒号が響き渡る。
見逃しなく、囲む…ってことは、この数十は軽くいるであろう団体が誰かを追いかけているってことでいいのかな?
相変わらず会話が再翻訳をしたみたいにわかりづらいから、推測に近いけど…。
取り敢えずこの推測が正解だとしたら追いかけられている方がいるはず…。
囲むっていう言葉が出てきてたから、かなり追い込まれているだろうし、出来れば助けてあげたい。
ただの喧嘩なら空からの見学で済ませる……でも、なんでか知らないけど仮面ライダーの力を借りている以上は人助けをするべきだと思う。
仮に逃げている人が悪い人ならその時点で捕まえてしまえばいい。
「…いた!」
何人かに囲まれたけど、それを加速することで突破した、少女を抱える白髪の少年の姿を見つけた。
あの2人かな、逃亡者。
(よし、この場から離脱して話を聞こう)
『消しゴム!』
『〜Are You Ready?』
『〜♪』
スマホフルボトルを消しゴムフルボトルに交換して、自分の体が消えて気づかれなくなるように効果を発揮させる。
白髪の少年に気づかれたら避けられてしまいそうだし、僕の姿を追っかける側に見られるのも後々厄介になるだろうしね。
タカの低空飛行で近づいて2人まとめて掻っ攫おう。ビルドの筋力ならいけるはず。
でも問題は羽を広げていると路地に入れないってことなんだよね……うん、致命的だ。
(さて…どうしたものか…あっ!
行き止まりに追い詰められっ……えぇ…?)
なんか目測で5メートル…いや、8メートルくらいある壁を…助走をつけたとはいえ、ただのジャンプで飛び越えた…!?
普通人間ってそんなに高く飛べるものだっけ!?違うよね!できないよね普通!
こ、これが異世界人の身体能力…!
仮面ライダーになっている状態なら8メートル位は余裕でひとっ飛びできるらしい(公式スペックを見るに)けど、それを生身でやるとかドンだけ…?
…あれ?つまり、このしらがの人レベルの身体能力者がウジャウジャいるってことだよね。
(…いやいや、流石に全員って訳じゃないでしょ…多分…おそらく…きっと)
みんながみんな
(状況は…!)
ビュン、と風を切りながら空を飛ぶ。
タカの目で彼の様子を伺うと、着地した屋根の上にも敵が待ち構えていたらしく、再び逃げ出す場面だった。
(でもまだ屋根の上!)
この機会は逃せない!
『ホークガトリンガー!』
「家主の人ごめんなさいっ…!」
タカフルボトルからホークガトリンガーを取り出し、追っている側の人たちの足元から少し離れた位置に発砲する。
消しゴムフルボトルの効果でこっちや弾は見えてない筈…!
混乱している隙を突いて彼らを…
「例外として、「おとっつぁん」など日本語での用法もある。 かなで日本最短となる駅の名は「津(つ、Tsu)」である。 日本式の天気記号では「ツヨシ(強し)」の略として、雨強し、雪強し、雷強しの3つに用いられる。 ㋡(ツを○で囲んだもの、マルツ)は、郵便において不在のために局に持ち帰って留置される郵便物の意味で用いられる。(Wikipediaより)」
「彼の味方はどこかから攻撃しています! ?」
「そしてどこから...」
待って!後の2人はともかく
最初の人、一言だけしか口動いてないのに脳味噌にすっごい長文が流れ込んできたんだけど!
混乱させるつもりがこっちが混乱しちゃってるよ!
…あぁもう!
チャンスなんだから掴まないと!
『ボルテックアタック!』
本来なら必殺技を撃つエネルギーを全てスピードに回し、彼らに急接近する。
(急、げぇ!)
一度降りられたら土地勘の無い僕は追いかける事もままならない。ここで決めないと!
『魔法使い!』
『〜Are You Ready?』
『〜♪』
スピードは十分!白髪の少年に真っ直ぐ…いや若干落下しつつも近づき荒く着地。あぁ、屋根がボロボロに…家主さん本当ごめんなさい…!
「今回はなんですか!」
「大砲か何か! ?」「いいえ、兆候があります!」
…よし、牽制にもなった!
白髪の少年たちもなにがなんだか分からず困惑して、立ち止まっている様子。
ここを逃す手はない!
魔法使いフルボトルの力で彼らの頭上に魔法陣を出現させ、振り下ろす!
「ええ、彼らはなくなっています!」
「魔法のアイテムに使用しましたか??」
……うん、スマホフルボトルを普段からずっと使っているせいか、直接使用しなくても少しの間なら身体が翻訳してくれるみたい。
多分、僕のことは見えてはないけど、気配で何かがいるってのはわかるようだ。
異世界の人のスペック本当高いね…。
っと、それはともかく。
(これで、あの2人の姿を消すことができた…!)
魔法陣に消しゴムフルボトルの能力を付与させたおかげであの2人も透明になれたはず。
…本当はギルドまで連れて行こうかなって思ってたけど…止めよう。
よく考えてみたら双方にそれなりの理由があってこんなことになっているんだし、本来、部外者の僕が手を出しちゃいけない。
だから、これは僕のエゴ。
白髪の少年は…見てると何故か恐怖が湧いてくるけど、真っ直ぐな目をしていたし、抱えられている少女は彼に信頼を寄せていた。
そんな彼ら2人を、
手助けしてあげたいって言う僕の我儘。
(がんばってね)
僕は屋根からバッ、と飛び降りる。
『タカ!』
『〜Are You Ready?』
『〜♪』
魔法使いフルボトルからタカフルボトルに切り替えて滑空。一時の戦場から離脱した。
☆☆☆
あの日から数日が経過した。
「それにしても…」
あの時の僕は、我ながら考えてることに一貫性のなかった気がする…情緒不安定っていうのかな?
でも、その時その時の最善を尽くそうと考えているだけだし…それに誰かが僕の思考をのぞいている訳じゃないしね。
(誰かに酷い迷惑をかけない限りは正す必要はないかな〜)
そんなことを考えつつも僕は配達を続ける。
危ないことはできればしたくない。
でも、助けたいって思ったら邪魔しすぎない程度に手助けする。
……僕にも、明確な目標ができた。
それだけで人は強くいられる。
それは僕にも当てはまるようで、今まで感じていた恐怖みたいなのが少し和らいだ気がする。
気がするだけかもしれないけどね。
「サインありがとうごさいます。では失礼しまーす!」
届け先の家から出て、ふと、空を見上げる。
そこには燦々と輝く太陽が僕を照らしていた。
「—————眩しいなぁ」
……僕の世界と変わらない光がとてもありがたい。
なんだかとっても嬉しい気分だ。
暖かくてポカポカする。
「……うん。もう、大丈夫かな」
世界は明るくて、似たようなものもあるし、気の良い人は沢山いる。
そう考えると、今までなんで怖がってたんだろう。
…結局のところは、僕の心一つだったんだ。
「っと、そろそろいかないとね!」
本当はUFOに乗っかって移動するんだけど、今日は走って行きたい。
スマホフルボトルを振りながら走っていると…いろんな人が楽しそうに生活しているのが見えた。
(……うん、やっぱり…ここはいい所だ)
ぐっ、と足に力を入れてジャンプをする。
地面をとぼとぼ歩いていた、初めてこの世界に来た時とは逆に空高くジャンプしながら、僕は叫んだ。
「—————異世界怖くない!」
完結です。
原作との関わりはほとんど無く、また、ビルド要素もあまりなかった今作ですが、いかがでしたか?
作者は小説を書いた経験があまり無く、上手くまとめられた自信はないですけど、それでも楽しんで頂けたなら幸いです。
今後は、何かアイデアを思いついたら、細々と投稿して行こうかなって思っています。
さて、たった3話の短いお付き合いでしたが、ご愛読ありがとうございました。また会える日が来るといいですね。
【そっち行ったぞー!
待て!
逃すな!囲め!
逃げられると思うなよ!
「っ!?なんだ!」
「あいつの味方がどっかから攻撃でもしてるのか!?」
「それにしたってどこから…」
「今度はなんだ!」
「大砲か何かか!?」
「いや人の気配がする!」
「なっ、奴ら消えやがった!」
「マジックアイテムでも使ったのか!?」】