終止符は流星が如く   作:A.H

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第1話の謎の展開はそのうち分かります。
物語が進む毎に読み直しなどをして、情報を掴み続けることが良いと思います。
それでは2話、どうぞ!


第2話 「貧民街の一文無しと子供達」

 長い夢を見ていた気がする。

 

()()()()と言ったのには理由がある。

 夢を見ていた記憶が全くないのだ。だが、冷や汗を掻いたような感覚が何故か残っている。

 

「…………」

 

 ……気分が悪い

 

 暗闇の中で何度も振り回されたような奇妙な脱力感を感じる。

 鍛錬の積み過ぎだろうか? そこまで無理をした覚えはないのだが…

 

 陽の光が真上から注がれる。陽の位置からして丁度正午だろうか?

 

「また天井壊れたのか…」

 

 我が家は住めるには住めるが、薄い木の板で出来たボロ屋である。

 気づけば見知らぬ天井…いや、見知らぬ穴が空いているのは日常茶飯事のことである。

 

「金……なんてもんはないしなぁ、また自給自足だな…」

 と、俺はいつものガラクタ山に赴く。

 

 この貧民街では、店に買い物をしに行くより、こういったガラクタの山から何かを見つけた方がお得なのだ。

 そのガラクタ山の上から数人の子供の声が聞こえる。

 

「おっと、先客……あっ、アイツらは」

 

 ガラクタ山で遊んでいた連中は顔馴染みの奴らであった。

 

「あっ、星絆(せな)の兄貴じゃないすか!」

 

 白シャツに短パンの坊主頭。逞しく焼けた肌はこの貧民街を元気に生きてる証だ。

 

「おう、てかその兄貴って呼び方やめろって康太(こうた)

 

 そう、コイツは康太。俺を兄貴呼ばわりにするちびっ子である。

 

「えー! いいじゃないすか! かっこいいっすよ!?」

 

「馬鹿野郎っ! 俺にはそういうのは似合わないって」

 

 そう、俺には似合わない。そんな大した兄貴分でもないしコイツらに何かを教えた訳でもない。

 

「私もかっこいいと思いますよ?」

 

 茶髪で可愛い花飾りを付けているこの子は彩花(あやか)ちゃん。

 

「そうですよ! 星絆の兄貴は兄貴ですって!」

 

 そしてこっちのメガネ坊主が俊彦(としひこ)だ。

 

「やめろって、恥ずかしいんだよ」

 

 この呼ばれ方が嫌いという訳では無いのだが…

こそばゆい何かを感じるので少々拒みたくなる。

 

「あっ、兄貴照れてるんすか〜? 鼻なんて擦って」

 

 ケラケラと康太は笑い始める。

 

「だぁ〜もう! 別のところで遊べ! しっしっ!」

 

 ちびっ子達を追い払う様に手で払う

 

「えーっ でもここくらいしか僕達の遊び場ないですよ!」

 

 俊彦がそう言うとそれに便乗して康太が『そうだっ!そうだっ!』と言ってくる。

 

「むっ…」

 

 それは確かに言えてる。

 この辺は遊具も無いし、その辺に突っ立ってれば大人達に「仕事の邪魔だ」と叱られてしまう。

 つまり、大人も来ないし誰にも邪魔されないこのガラクタ山こそがこの子達にとって楽園(エデン)という訳だ。

 

「…星絆さん」

 

 彩花ちゃんが少し落ち込み気味な声で俺を呼んできた。

 

「ん? どうしたんだ、彩花ちゃん」

 

 彩花ちゃんは目をこちらに合わせず少し右の方を見ている。

 何か言いにくいことでも言いたいのだろうか……? 

 

「あっ、あのね…」

 

 少し間を空けてから口を開いた。

 

「星絆さんは…私達のこと…嫌い? 」

 

 えっ?

 

 唐突に何を言い出すんだ。

 

「…どうしてそんなことを聞くんだい?」

 

 彩花ちゃんはやっとこっちに目を合わせてくれた。

 

「うーん…だって…いっつも邪魔者扱いしてる様な気がして…」

 

「それは…」

 

 康太と俊彦もそう思ってるのか少し困り気な表情を見せる。

 

 ああ…そういえばいつもそんな反応だった気がする。

 

 俺はこの子達に対して少々怖くなってしまっていたのではなかろうか…?

 

「………ごめんな、彩花ちゃん、そんな事はないし嫌いでもないよ?」

 

「えっ、ホント?」

 

 そうだ、嫌いな訳ではない。同い年か歳上なら軽く流せる多少な口の悪さは、こういった幼い子供達に対しては少しキツかったのだろう。

 

 この子達の親は数年前に亡くなっている。

 周りの大人達はこの子達を邪魔者扱いで構ってはいられず忙しい者ばかりでこの子達に愛情表現やお互いバカやって笑ったりすることをちゃんと教えてやれなかったんだ。

 

 全く…俺みたいに商売も何もやってない奴が遊んでやらなくてどうする。

 

「ふふっ、あったりまえだろ! もちろん康太! 俊彦!」

 

 いきなり呼ばれた2人は一瞬ビクッとなった。

 

「お前らも嫌いじゃないぜ。」

 

 この一言でちびっ子達に明るい笑顔が戻っていく。

 

「ほ、ホントッすか!? 信じて良いんすよね!?」

 

 康太は目を輝かせている。

 

「ああ、むしろいつも声かけてくれて嬉しいと思ってるぞ」

 

 うおー! っと喜びだすちびっ子達。

 全く可愛いガキンチョ共だ。

 

「あっ! それじゃあ!」

 

「兄貴はだめだぞ」

 

 康太は『え!? なんでわかったんすか!?』と言わんばかりにショックな顔をしている。

 

「大体なんで、俺を兄貴なんて呼ぶんだ?」

 

 ここが一番の疑問なのである。

 すると康太は顔を上げて

 

「あに……いや、星絆さんの生き方に憧れたんすよ俺達」

 

 俺の……生き方……? 

 

「周りの大人達は、金だとか仕事だとかでつまんない生き方してるじゃないすか。でも、兄貴の生き方は、なんというか、何にも縛られないで自由で…」

 

「…その自由な生き方に憧れたって訳か?」

 

「そうです!」

 

 なるほど…だが

 

「康太、言っておくが俺の生き方は正しくないぞ? 」

 

「え?」

 

「俺より周りの大人達の生き方の方がよっぽど正しいんだ。お前達はまだ子供だからよくわかんないかもしれないけど、働いて金を稼いで明日に繋げるっていう生き方の方が正しいんだよ」

 

「で、でも俺はあんな生活嫌だよ!」

 

 ……だよな

 

 ガキの頃なら誰でもそう思うし、大人達だって今でも思ってる。

 

「な、なら兄貴! 周りの大人達の生き方が正しいって言うんだったらなんで仕事しないんですか!?」

 

 –––グサッ

 

「言ったな、正論だが言ってはならんぞ康太」

 

 的確な正論に顔を抑える俺。

 

「えぇ…?」

 

 ちびっ子達は困惑した様子で顔を合わせあう。

 

「とにかく、俺の生き方はアテにならんぞ!! お前達に俺みたいな奴と同じ道は歩ませたくない!!」

 

 俺は返答を誤魔化そうとその場から立ち去ろうとする。

 

「あっ! 待ってくださいよ! 兄貴!!」

 

「だ〜か〜ら〜兄貴じゃないって!!」

 

 ちびっ子達は離れることなく俺の跡を付き纏い続けた。

 

 ←to be continued

 




バトルまだ?と思うそこの貴方。
積み重ねが大事なんですよ(言い訳)
次回にご期待!!

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