終止符は流星が如く   作:A.H

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引き続きありがとうございます!
今回は少し長めですかね。
本編どうぞ。


第4話 「崩壊」

 明るく賑やかな食事。

 

 もっとも、俺はこの一杯の水だけだが。

 こうして一緒に飯を食える奴がいるのはいつぶりだろうか。

 

「うめぇ! うめぇ!」

 

 康太ががっつくように食っている。

 まぁ、一番夕飯楽しみにしてたのは康太だったろうしな、それ相応の食いっぷりだ。

 

「もぉ〜康太〜パンの粕落っこちてるよ〜」

 

 彩花ちゃんが隣で康太を叱っている。

 

「すみませんね、兄貴。康太のやつ食い意地汚くて…」

 

 俊彦が申し訳なさそうに頭を下げてきた。

 

「いや、良いんだ、今日は気分良いからな」

 

 そう、とても気分が良い。

 こうして人を呼んで夕飯を共に過ごすのは初めてなのだ。

 ついついニヤニヤが止まらなくなる。

 

「兄貴、どうしたんすか? そんなにニヤついて」

 

 康太が頬張ったパンを飲み込むと俺の顔を見ながらそう言ってきた。

 

「え? ああ、いやなんでもねぇよ」

 

「えー、なんすか? 気になるじゃないすか〜」

 

「だから、なんでもねぇって〜」

 

「あ、わかった!兄貴こうやってみんなで飯食うの久々だからでしょ!」

 

「げっ!!」

 

 なんでこう、ホイホイ当ててくるかねこの坊主!

 

「あ! こりゃ図星だぜ! はっはっはっはっ!!」

 

 康太に釣られて周りの二人もクスクスと笑っている。

 

「くぅ…そんなに俺分かりやすいかよぉ…」

 

 本当に慕ってんのかぁ? こいつぅ…

 

「兄貴〜、本当にパン食わないんすかぁ? 今日の格別に旨いっすよ!なんか木の実入ってて味が引き立つっつうか」

 

 康太が食レポ染みた事を抜かしている。

 

「確かに、この木の実パン美味しいね!」

 

「おばちゃんがスペシャルだよって言ってた理由はこれかぁ〜」

 

 康太も彩花ちゃんもその木の実パンとやらに夢中のようだ。

 

 なんだなんだ、今日のパン特別なのかぁ…?

 

 じゅるりと口から唾液が漏れそうになり、急いで口元を拭った。

 

「お、俺も一口…じゃねぇ、そうかぁ!良かったなぁ〜お前ら〜!」

 

 うぅ…我慢だ…耐えろ俺…

 

「兄貴一口食べたいんすよね? いいっすよ、ほらほら」

 

 むぅ…一口ならまだ甘く見られないかな…?

 

 康太がパンを一口サイズに千切ってこちらに向けてくる。

 

「あ! だめ! 私があげるの!」

 

 康太には渡せまいと、彩花ちゃんがとびだしてきた。

 

「おい、彩花お前〜!いくら星絆兄貴のこと大好きだからって、その権利の横取りとは聞き捨てならねぇな!!」

 

「ちょ、バカ!!言わないでよ!!」

 

 彩花ちゃんの顔が急に赤くなった。

 

「この前なんて、彩花、星絆兄貴と結婚式挙げる夢なんて見てたんですよ」

 

 つけ入るように俊彦が口を挟む。

 

「あわわわっ!!やめて!!」

 

 彩花ちゃんはあたふたと両手を振っている。

 

 よく、俺についての質問とか、積極的にくっ付いて来ることが多かったから薄々気付いていたが…そうか…

 

 俺はそっと、彼女の頭を撫でてやった。

 

「ひゃ! 星絆…さんっ? 」

 

 彩花ちゃんは自分の黒歴史をバラされて赤面ついでに涙目になっている。

 

「ありがとうね、彩花ちゃん、嬉しいよ」

 

「ヒューヒュー! お熱いねぇ!! チューしてもらえよ! 彩花!」

 

 康太と俊彦はゲラゲラと笑いながらおちょくってくる。

 

「だめだめだめ!! 死んじゃうよ! 私!」

 

「はっはっはっ!! これで今日寝る時もっと恥ずかしい夢見て死んじまってるかもな!!」

 

「康太ぁ〜!!」

 

 ドタバタと二人は追いかけっこを始めた。

 

 やれやれ、こんな狭い家で鬼ごっこをするとは…

 

 俊彦は「放っておきましょ」という顔で水を飲んでいる。

 

「あ、そうだ。お前ら、今日俺の家泊まってくか? 」

 

 そう言った瞬間彩花ちゃんと康太は鬼ごっこをやめてコチラに目を丸くして顔を向けた。

 

「ホント!? 泊まって良いの!? 」

 

「う、嘘とか、言わねぇよなぁ!? 」

 

「おいおい、なんだなんだ、大袈裟な…俺が良いって言ったんじゃないか」

 

「やったぁぁ!!」

 

「うわっ!」

 

 康太と彩花ちゃんは一斉にコチラに飛びついてきた。

 

「ありがとう! 星絆さん〜!」

 

「泊まってみたかったんだよなぁ〜嬉しいぜ、兄貴〜!」

 

 二人は良い笑顔で喜んでいる。

 

 …ふふ、まったく…

 

 俺は、二人の頭を撫でてやった。

 

 

 

「僕まで良いんですか? 星絆の兄貴」

 

「ああ、勿論だ」

 

 ちびっ子達は三人で一つみたいなものだしな、仲間外れにはさせない。

 

「あー、でもあんまし暴れるなよ? 床抜けるかもしれないからな。」

 

「は〜い」

 

 四人…寝れるかな…

 

 ギュッと荷物を押し詰めて食事の時よりもペースを広くしたが、これでも結構ギリギリかもしれない。

 元々、人を招くような家でもないし一人暮らしの為、部屋は一つしかないのだ。

 

 念の為にちびっ子達にこの狭さでも良いか聞いておくか

 

「おい、お前ら〜結構狭くなっちまったけど良い…ん?」

 

 ちびっ子達は、何故かジャンケンをしている。

 

「うわぁ!彩花が勝った!!」

 

「畜生!!」

 

「えへへ〜悪いね〜2人とも〜」

 

 どうやら、彩花ちゃんが勝ったみたいだ。

 

「何ジャンケンしてるんだ? お前ら」

 

「兄貴の隣で寝れる権利を懸けてジャンケンしてたんすよ〜、あ〜もぉ!負けちゃったぁ!!」

 

「あ、あぁ…そうか…ってことは…彩花ちゃんが俺の隣で寝るって事…?」

 

「はいっ!お願いしますね!」

 

「………」

 

 子供とは言え、女の子だ…少し恥ずかしい…。

 

「兄貴、彩花の寝込み襲ってあげてください、喜びまっ…!!?」

 

「あっ…」

 

 康太の余計な一言に対して彩花ちゃんの蹴りが康太の股間に炸裂した。

 

「て、てめぇ………がふ…」

 

 康太はその激痛に耐えきれずその場に倒れてしまった。

 

「………え、えへへ〜」

 

 その出来事を何でもないですよっと可愛らしい笑顔で誤魔化す彩花ちゃんであった。

 

 

 

 夜が更け、完全に寝る準備が整った。

 三人には、この狭さでも何も問題はないと言っていたので安心した。

 だが…

 

「…ごめんな、彩花ちゃん…毛布別々じゃなくて…」

 

「いえ…仕方ないですよ…」

 

 そう、自宅にある毛布は二つ。

 人数分用意が出来なかったのだ。

 

「………」

 

 なんかドキドキするな…って、何考えてるんだ俺は…

 

「あの…星絆さん…? 」

 

「ん?」

 

 小さな声で囁くように彩花ちゃんは声を掛けてきた。

 

「星絆さんって…何歳でしたっけ…? 」

 

 歳…? 

 

「18…だけど? 」

 

「じゃあ私達と5歳差ですね、ふふ。」

 

 13歳か…出逢ったのは3年前…時の流れは早いもんだ。

 

「ねぇねぇ…星絆さん…」

 

「なんだい?」

 

「男の人と女の人で結婚できる歳って…いくつだっけ? 」

 

「えっ!?」

 

 な、なんだ? 急にそんな事…いや、少女の素朴な疑問…だよな?

 

「た、確か…男の人が18歳…女の人が…16歳だったかな…?」

 

 何動揺してるんだ俺…

 

「ふーん…あと…3年…」

 

「………」

 

「…ってて…くれるかなぁ…」

 

 俺の耳にも聞こえない声で何かボソッと言った。

 

「何か言った…? 」

 

 その一言に彼女はハッとなって

 

「えへへ…何でもないですよ」

 

 俺はこの会話が康太と俊彦に聞かれてないか心配になり、彼らの方に目をやる。

 

「…ぐっすり寝てるな…」

 

 俊彦はともかく、康太は騒ぎ散らしてそうなイメージあったのだが、すぐ寝てしまったようだ。

 

「星絆さん…」

 

「えっ?うわ…」

 

 声を掛けられたかと思うと、俺の首後ろに彩花ちゃんは手を回している。

 

「康太と俊彦の方見ちゃだーめ…今日は私のモノだもん…」

 

「そ…それは…」

 

「うふふ、冗談だよ〜。」

 

「だ、だよね…はははは…はっ?」

 

 –––油断した。

 

 ガッツリ口付けを喰らってしまった。

 

「星絆さんの唇…頂いちゃいました…えへへ。」

 

「う…うむぅ…彩花ちゃん…ダメだぞ…。」

 

「星絆さん可愛い…」

 

 まったくもう…

 

 彩花ちゃんの頭をポンポンと撫でてやった。

 

「あのね、星絆さん…」

 

「ん? 」

 

 彩花ちゃんの顔が赤く染まっている。

 先程大胆な行動をしたと言うのに、それより恥ずかしい事を言おうとしているのだろうか?

 

「もし…もしね…良かったらなんだけど…」

 

「うん…」

 

 これはまさか…

 

「星絆さん…私と–––」

 

 

うぎゃぁぁああああ!!!!

 

 

 

 –––!?

 

 

 

 なんだ…?

 

 唐突に発せられた悲鳴。

 声の正体は外からだった。

 

「…せ………星絆さん…」

 

 彩花ちゃんはビクビクと震えている。

 それもそうだろう…今の悲鳴は悪ふざけどころの発せられ方ではない…

 

 –––断末魔

 

 それにふさわしい一声であった。

 

「な、なんだ…? 」

 

「星絆の兄貴…何事ですか…? 」

 

 康太と俊彦はその悲鳴によって目を覚ましたらしい。

 俺は一呼吸着き…

 

「…見てくる…」

 

 覚悟を決めて立ち上がろうとした瞬間

 

いぎゃぁぁぁあああああ!!!!

 

 …っ!!?

 

「嘘だろ…? 」

 

 二人目の悲鳴!?

 

 俺は急いで家の扉を開けて外に飛び出した。

 

 そして…

 

「…なんだよ…これ…」

 

 それはまさに異様な光景であった。

 

 無数の断末魔の中次々と奇妙な()()が蠢いていた。

()()は民家から生え、屋根や壁を突き破っている。

 奇妙な()()は木の枝と呼ぶに相応しいのだろうか。

 とすると奇妙な点がある。

 

「赤い…」

 

 真っ赤なのだ。

 貧民街中に次々生えてくる()()はどれも生え方がバラバラ。

 しかし、どれも赤い。

 ペンキで塗ったような赤さよりもより生々しい色をしている。

 

 その異様な光景に俺は脳裏に最悪の思想が描かれた。

 この赤色の正体。

 その真相に辿り着くのはそう難しい事じゃなかった。

 それを確信付けるのはその鉄の錆びついたような臭い。

 

 気持ちが悪い…

 

 俺は考える事を放棄したくなった。

 最悪の状況がまだ終わらない。

 終わりのない断末魔のような悲鳴。

 貧民街に次々と根づく真っ赤な樹木。

 

「なんなんだよ…おい…」

 

 頭が痛くなってきた。

 酸欠だろうか、呼吸が荒く…苦しい。

 

「せ…星絆さん…」

 

 背後から彩花ちゃんが声を掛けてきた。

 

「だ、だめだ!彩花ちゃん!家から出ちゃ!」

 

「ご、ごめんなさい…で…でも…苦しいの…」

 

「え…」

 

 彩花ちゃんは苦しそうに腹部に手を当てている。

 顔色も悪い。

 

「お腹が…苦しいの…ねぇ…星絆さん…星絆さん……星絆さん…!」

 

 嫌な予感がする。

 

 どう…したんだ…

 

「あっあぁ…あぁ…ああぅ……うぅ…」

 

 お、おい…?

 

「…せ…な……さ…ん…」

 

 彩花ちゃんの声はもう掠れて聞こえなくなってきた。

 

「たす……け――

 

 

ぱんっ

 

 

 

「––––––––」

 

 彩花ちゃんの苦しそうな声は謎の破裂音によって途切れてしまった。

 

「………」

 

 彩花ちゃんがいた筈のところに貧民街中に生えていた()()と同じモノが生えていた。

 辺りには()()()()()()()()()が散らかっている。

 

 –––今何が起きた。

 

「あ…兄貴…はら…腹がいでぇ…」

 

「うぅ…うっ…僕も…」

 

 康太と俊彦も彩花ちゃんと同じように家から出てきた。

 

「康太…俊彦…お前ら家から…」

 

ぱんっ ぱんっ

 

「………」

 

 また同じように破裂音が響いた。

 そして二人がいた筈のところに()()は絡まるように生えていた。

 そしてまた色々()()()が散らかっている。

 

「あ………」

 

 俺はその現状から目を背けている。

 

「あっ…あ…あぁ…」

 

 早く覚めてほしい。

 

「あ……あぁぁ……あ"っ…」

 

 お願いだから。

 

「あ"あ"あ"ぁあ"あ"……」

 

 頼むから覚めてくれ。

 

「彩花ちゃん…康太…俊彦…」

 

 いい加減にしてくれ。

 こんな悪夢もう見たくない。

 

「うっううう………あ"…あ"ぁ"…」

 

 早く覚めてくれないと認めてしまう、やめてくれ。

 

「…………………っ…っ!!!!!」

 

 –––今、彩花ちゃんと

 

 嘘だ………嘘だ……嘘だ…嘘だ…嘘だ!嘘だ!!

 

 俊彦と……

 

 嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!

 

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"–––」

 

 康太が

 

「嘘だと言ってくれえ"え"え"え"ぇ"ぇ"–––ッ!!!!」

 

 –––死んだ。

 

 ←to be continued




次回も引き続きよろしくお願いします。
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