前回からの急展開…一体どうなるのか…
是非ご覧ください!
悲鳴はもう聞こえない。
だが、漂う悪臭に頭がおかしくなりそうだ。
正直、何も考えたくない。
俺は今この場所で起きた状況を理解したくなかった。
目の前に生えている太く育った大きなソレ。
いや…もうソレというのはやめ、木と認識した。
何が起きたかは分かっていないが、
苦しみながら家を出てきた彩花ちゃん。
その後、その苦しみによってなのか声が通らなくなり、次の瞬間…
「………」
一瞬だった。
様々な騒音を立てながら行われたに違いないと思うが俺には『ぱんっ!』という破裂音しか聞こえなかった。
その音が最も大きく、その他全ての音を掻き消してしまったのだろう。
続くようにして康太と俊彦も家を出て来て同じような出来事が起きた。
その結果として俺の目の前には三本の奇妙な木が生えている。
「………どうして…」
状況が分かったからってこの絶望は変わらない。
「………」
奇妙な木からはギシギシと軋む音が聞こえる。
内側で
「………」
木が巻きつき粉砕した彩花ちゃん達のか…
「–––う"っ!!」
想像しただけで腹の内側から込み上げていく。
俺はそれを必死に堪えた。
「っ…はぁ…はぁ…」
深呼吸だ…
「…スゥー…はぁ…スゥー…はぁ…」
落ち着くんだ…
「…ふぅ…」
…よし…
胸に手を当て、呼吸を整える
そして、静かに目を瞑り、自分の心情を自分に言い聞かせる。
苦しい…
「–––アイツらの方が………苦しかったはずだ…」
アイツらは…
「………もう…いない…」
街のみんなも…
「…いない…」
じゃあ…
そうだ…残った俺が…
「俺が原因を…突き止める…!」
なんとか、乱れた精神を正常に抑える事が出来たようだ。
ゆっくりと目を開け、俺は状況を冷静に観ようとした。
彩花ちゃん…康太…俊彦…そして、貧民街の住民達
みんなあの木に殺され、飲みこまれてしまった。
「どうしてこんなことが…」
感染病か何かか?
人から木が突然生える病気なんて聞いたこともないが…
俺には…何も起きてない…のか?
自分の手のひらや首元を触って確かめた。
身体には何も異常が起きていない。
他のみんなに起きて、俺だけに起きてない理由…
「…パン…? 」
第一に浮かんだのはそれだった。
支給されたパンを俺だけが食べていなかった。
………それが原因だとしたら…
康太が今日のパンは木の実入りで旨かったと言っていたのを思い出した。
もしその木の実が突如生えてきた木の種だとしたら…
「そういう…ことなのか…? 」
だとすれば、あのパンに細工をした人物がいるという訳じゃないのか?
支給係のおばさん…な訳ないよな、あの人は俺がガキの頃からの付き合いだ…あっ!…クソ…おばさんも死んじまってるんだよな…
再び気を取り乱しそうになり、冷静さを取り戻そうと再び深呼吸する。
「…魔物。それしかないか…」
これが魔物の計画的殺戮行為だとすれば多少は納得できる。
戦争が終わっても尚、娯楽目的で街の人間一掃なんて珍しい話ではない。
とすれば、人間の全滅を確認する為に魔物が様子を見にくるはずだ…
パンを食べることなく睡眠についた者達の後始末をする為に魔物達はやってくる。
戻ってくるとしたら…
「…仇…討ってやんねぇと…気が済まねぇ…」
冷静さは保っているが、気持ちの底では殺意が沸き立っていた。
まずは、物陰に隠れて様子を
「–––へぇー、仇ねぇ」
–––!?
背後に気配…その方面に振り向くと
「じゃあその仇とやらを討ってもらおうかねぇ…」
「!!…こ、こいつは…」
そこにいたのは
「おっと…魔物を見るのは初めてかい…?
人間とはかけ離れた異質な姿。
テカついた緑色の肌、鋭く尖った鷲鼻、ヤギのような細い瞳
童話に登場する
–––これが…魔物
初めてこの目で見た人間の天敵である存在。
この星の争奪戦の勝利種。人間の敵。異形の怪物。
次々と自分が知識として持っている魔物のイメージが浮かんでいく。だが、その小鬼は童話通りの姿からは想像もつかない武器を持っていた。
その手には…
–––銃…!
小鬼は知識が低く、扱っている武器は石を加工したものや、獣の骨を削ったものなどととある童話で読んだことがあった。
しかし、現実は違ったようだ。
金属を加工し、火薬を使うれっきとした現代兵器。
それを扱うことができ、言語をしっかりと理解し、話していた。
俺は今まで、知識だけなら人間の方が優っていると思っていた。
だが、その差はほぼ無いという事実を思い知らされた。
「ゲフフ…いいねぇ…悪くない反応だぜ…あとは…」
小鬼は、不敵な笑みを浮かべながら銃口を俺に向けた。
「–––ッ!! やろう!!」
「すぐ死なずに逃げ回ってくれりゃぁ…おもしれぇかもなぁ…」
危険を感じ俺は咄嗟に木の陰に隠れた。
その直後、ドンッ!と銃声が響き渡り、隠れた木に被弾し、砕け散った木屑が宙に散う。
「ゲヘヘヘヘッ!!いいね!!いいね!!その調子だぜ。」
煽るように小鬼の汚らしい笑い声が聞こえる。
野郎…ふざけやがって…
目の前にこの木が無かったら、危うかったかも知れない
…彩花ちゃん…
自分を守ってくれた木の弾痕からは血が滲み出ている。
…すまない…
「いやぁ、よかったぜ、魔工樹にやられてねぇ人間がいるなんてラッキーだ。来た甲斐があるってもんよ…ゲヒヒヒヒヒ!」
マコウジュ…?この木のことか…
深く考える間もなく再び銃声が響き渡り木屑が散る。
「–––くっ…!」
普段聞き慣れない銃声に耳を痛める。
確実に追い詰めてきてるな…
銃に関しては全くの素人だが、あの小鬼はコッチが顔を出せば直ぐにでも弾丸を命中させる腕であると踏んだ。
「はぁ…はぁ…」
気持ちが焦る。
このマコウジュとやらの脅威から逃れたとしても、あの小鬼に殺される可能性は十二分にある。
「おいおい、出てこいよぉ〜お前さんが動かなきゃつまんねぇだろう?」
冗談じゃねぇ…自分からホイホイと的になってやるかよ…
あの小鬼の誘導に乗れば瞬殺だ。
だが…
「––––––俺がやんなきゃ」
この街の人間はみんな殺された。
「俺がやんなきゃ…誰が…」
俺しか…いねぇじゃねぇか…!!
「くそっ!!」
こいつは–––
こいつは俺が殺す。
力一杯握り拳を作り気持ちを奮い立たせる。
覚悟を決め、俺は自宅へと駆け出す。
–––まずは…武器を!!
「おほっ!! やっと出てきてくれたなぁ!!」
目当ての獲物が目の前に飛び出してきて狩らない狩人などいない。
こちらからは見えてはいないが、銃の照準は既に俺を捉えているだろう。
–––康太…俊彦…!ごめん!!
俺は、そのまま前方に生えた木を盾にする様に逃げ隠れた。
それとほぼ同時に銃声が鳴り響く。
弾は木の皮を削り取る様に抜けていき、俺には当たらなかった。
「クソが!! 邪魔だ!!」
苛立ちからの再び大きな銃声。
「ちっ…外したか…」
すぐに、第2射撃が放たれたようだが俺には当たらず、自宅の壁に命中して弾けた。俺はそのまま転がるように自宅に飛び込んだ。
「はぁ…はぁ…なんとか…抜けたな…」
小鬼の視界から外れる位置まで、家内の端に身を潜めた。
荒くなった呼吸を整え、気持ちを落ち着かせる。
「そんなところ隠れてないでよ〜俺と遊んでくれないかぁ〜?」
文字に置き換えるだけなら気の良さそうな男のようなセリフだが、あっちの言う遊びは『
ただ、楽しみの為に命を奪う気満々なのだ。
「野郎…ふざけやがって…」
–––本当にどうにかしてる
こちらは生への執着と復讐心だけが今この状況に立ち向かう為の原動力だと言うのに、あいつにとっては軽い気持ちでしかないのだ。
「………」
俺は、壁に立て掛けていたソレをじっと見つめた。
「俺にとって今一番頼れる武器はこれしかない…」
ソレを手に取り深く目を閉じる。
–––よし
俺は決意を抱き、家を飛び出した。
そのまま、小鬼と俺の視線は重なった。
「………は?」
小鬼は構えていた銃を下ろし、呆れた顔でこちらを見ている。
「おまえ…正気か…?」
「………」
小鬼の表情は硬直したまま動かなかったが、次第に口角が上がっていき
「ゲハッハッハッハッハッハッハッ!!」
馬鹿にするような大笑いが響き渡った。
「お、おまえ…ふひひ!!木じゃねぇか…ぷぷ!…しかも….手作り…ひひひひ…」
小鬼は含み笑いしながら俺の武器に指を指しながらそう言った。
そう、俺の武器はこの物干し竿にでも使えそうな木の棒の先端を削って尖らせたお手製の槍
「ひひ…あ〜あ〜とうとう頭も壊れちまったんだなぁ、カワイソーに…わかるか〜? こっちは、銃。火薬使ってんだ。てめーの握ってるゴミじゃ話になんねーの!! げっひゃひゃひゃひゃ!!」
ふっ…だよな、確かにゴミみたいなもんだよな…
初めからわかってたさ、こんなので太刀打ちするなんて馬鹿らしいって。
「けどな…」
「ひゃひゃひゃ…あ?」
「こっちは一歩も引く気はねぇーぜ、化け物。それに、こんなゴミでも本気で突けば痛いだけじゃ済まないと思うぜ?」
どうせ殺されるんなら…派手に大口でも叩いておこう。
「あー、言い方が悪かったか? 近づく隙も与えねぇって言ってんだよ、脳味噌腐ってんか?」
「わりぃわりぃ、アンタのクソ汚ぇ声耳障りなんでな、一言も聞いてなかったわ〜あっはっはっはっは!!」
「………」
小鬼のニヤつきは消え、殺意に満ちた表情になっている。
…はぁ…短い人生だったな…
キッチリと銃口は俺に向けられている。
やれるところまでやってやる………とりあえずは、距離を詰めながら…って––––––あれ…?
「あ? 動けよ、何突っ立ってんだよ!動かなきゃつまんねぇって言ってるだろうが!!」
………身体が………動かない
あ、だめだ…俺、ビビってんだ…身体が動かねぇ…
恐怖によるものだろうか、動きたくても動けない。
身体の震えが小刻みに伝わってくる。
蛇に睨まれた蛙っていうのはこういう気分なのだろうか…
「…そうか…まぁ、仕事だからな…つまんなくても殺すがな」
完全にやる気を無くした様子の小鬼。
だが、しっかり任務はこなすつもりのようだ。
「ちく………しょお…」
–––何もかもを諦め、目を瞑ると、色々な映像が映り込んできた。
走馬灯というものだろうか。次々と見た事がある光景が目に浮かぶ。
過去の光景のようだ。懐かしい…
俺は両親という存在を知らなかった。
自分が誰に産んでもらったのか、名前を付けてもらったのか…
俺には全然分からなかった。
支給係のおばちゃんからは
「アンタの家があるところ…あそこにアンタは捨てられたんだよ。アンタの名前の書いてある置き紙と一緒にね」
と聞かされていた。
おばちゃんは俺を自分の子供のように一生懸命育ててくれていた。
感謝の気持ちをロクに返せずにこんな歳になっちまって…
ああ…おばちゃん…いつも忙しそうにしてて…最期まで一緒に飯食えなかったな…
15歳になった頃、俺はちびっ子三人組に出会った。
俺はいつものようにガラクタ山で遊んでいた。
おばちゃんの手伝いが無い暇な時は必ずここに来る。
自分が気に入ったガラクタを拾い集めようとしゃがみ込んでいると、唐突に服の裾をグイグイと引っ張られる感覚がしたので振り返ると。
「ねーねー、何してんの? 」
坊主頭の少年がそこにいた。
少年は興味津々の目で俺の顔を見つめている。
「…えっと…君は?」
少年は鼻を擦りながらニコニコと笑っている。
その少年の後ろからもう一人の少年がやって来ていた。
「そっちは、こうたって言います。僕はとしひこです。」
俺の問いかけに答えてくれたらしい。
俺は少々困惑していたが、問いかけに答えてくれた以上こちらも何か答え返さないといけないと思った。
「康太くんと俊彦くんか、ここに遊びに来たのか?」
「そんなところですね」
二人は10歳ぐらいの年頃だった。
周りに保護者が来てないか気になり、周りを見渡す。
「親は来てないのか? この辺少し足場悪いから保護者と一緒の方が安全なんだが…」
「とーちゃんもかーちゃんもいないよ」
「………」
この子が言う『いない』というのは亡くなっていることを示しているのだろうと俺は察した。
この地域は空気汚染が酷く、病にかかる者も多い。
一年前、とある流行病で多くの人達が亡くなった。
病院が無いこの地域では、決して治らない病気でもロクな治療は行えず死に至るケースばかりである。
その感染者の中に両親が含まれていたのだろう。
「ちょっと!こうた〜!としひこ〜!待ってよ〜!」
ガラクタ山の下から女の子が走りながら登ってくる。
髪には可愛らしい花飾りを付けていた。
「あれ、お友達?」
「はぁ…はぁ…ごめんなさい、2人がどうしても声かけたいって…はぁ…」
女の子は全力疾走に体力を使い果たしてしまった様だ。
「無理しないで、ゆっくりでいいぜ」
「あやか〜、おまえもこのにーちゃんとお話ししたいって言ってたじゃんかよ〜」
「そ、そうだけど…」
この子は彩花ちゃんと言うらしい。
見る限りこの子にも、親は同伴してないということは…
「君達のお父さんとお母さんはもしかして数年前の流行病で…」
自分の考えが間違えてなかったか、とうとう口に出してしまった。
その問いに3人はコクリと頷いた。
「………そっか…。」
幼くして両親を…
「あわわ、落ち込まないで下さい! 親がいなくても私達は生きていけますから…」
彩花ちゃんは俺の表情を見て察したのか、気を遣ってくれたらしい。
「実は…俺にも両親がいないんだ…」
「え?」
「亡くなった。とかじゃなくて、親の顔を知らないんだ。今でも生きているのか亡くなっているのか…それすらもわからない」
顔を上げて見ると三人の表情は固まっていた。
「あ…ごめん。お互い暗い話になっちゃったな…」
「………あっ、そうだ! にーちゃん!名前なんていうの? 」
空気の重さを変えるように康太くんは明るい声で訊いてきた。
「名前…俺は…星絆って言うんだ」
「星絆にーちゃん、俺、毎日会いに来て良い? 」
「え? 」
康太くんのいきなり過ぎる発言に俺は戸惑った。
「ちょ、ちょっと!? こうた、勝手に! 星絆さんに迷惑だよ!」
「僕も来て良いですか?」
「と、としひこ!? 」
流れに俊彦くんも乗っていた。
「…そ、それじゃあ…私も…良いですか? 」
反対意見を出していたはずの彩花ちゃんまで来るらしい。
うーん、いきなり過ぎてよくわからんが…
「ま、まぁ、いいぜ? 」
俺の承諾に3人は大喜びだった。
それから、毎日、このちびっ子3人組は俺の元に来た。
康太はいつもはしゃぎ散らしてて、喧しい奴だった。何でも興味を持って突っ込むその真っ直ぐさは子供の理想像とも言えた。俺のことをよくからかってきたので、よく叱ったもんだ。
俊彦は口調は大人しいもの、たまに毒舌。いつも本を読んでいてとても勉強熱心な少年。アイツ独自の様々な理論はよく聞かされたっけな。
彩花ちゃんは、この3人で華のような存在。康太や俊彦の身勝手な行動を止めに入ったりと面倒見の良いお姉ちゃんみたいな女の子、可愛いモノが好きで、ガラクタ山の中に埋もれてたぬいぐるみを持って帰ったりしていた。
俺の生活は以前に比べて騒がしくなり、大変な時が多かった気がする。
康太の世話を焼き、俊彦の雑談をよく聞いてやり、彩花ちゃんからは俺個人の質問をよくされたり…
毎日、毎日…俺に会いに来てくれた…
あの頃はなんで会いに来てたのか、よくわからなかったが…
…俺を寂しくさせないように…来てくれていたんだ…
アイツらも…親…いねぇのに…俺が寂しくないように
気を遣っていつも…いつも…来てくれた…
もっと…アイツらと…遊んでやれば…
俺はこの死に際に沢山の後悔をした。
あの子達と…今日みたいに食事とか…家に泊めてやったりとか…
もっと色々出来た筈なのに…遅かったな…
みんな…ごめん…な…
今から…行くから………
––––––あ…れ?
あまりにも長過ぎる死に際に俺は違和感を感じた。
………
人間は死の間際、目に映っている光景がスローモーションに見えると聞くが。
………
これは…あまりにも…
あまりにも………長過ぎる…
これ、既に死んでたり…
俺は、恐る恐る目を開いた。
…ん…
–––えっ
–––視線の先で起きている現象に俺は目を疑った。
俺に向けて放たれたはずの弾丸
それが未だに俺の元に届く事なく宙に浮いている。
止まって…いや、少しずつ…向かってはきている…?
弾の進行状況が明らかに遅刻している。
これは、死に際のスローモーションとは違う。
まさか…
俺は自分の指がちゃんと動くか、確認した。
…!
指はちゃんと正常に動く。
「………」
弾丸はなんらかの影響で元の速度を失っている。
だがしかし、俺の身体はその空間に縛られていない。
その異常現象に対し
『何が起きている。』–––そう考えるよりも早く俺は直感的にこの場面で可能な事を思い付いた。
眠気を呼ぶような鈍い弾丸…
殺傷能力は失われ、武器としての機能を完全に失っているこの弾丸。
–––やれる!
そう考え出す頃にはもう行動に移していた。
現実的に考えれば不可能に近いのかもしれない…だが…
今ならば、この場面なら
–––俺の…この手で……!!
激しい金属音と共に
–––弾き…落とせる–––ッ!!
凹んだ鉄屑が地で跳ねた。
←to be continued
だんだん文章長くなってきました…
話によって文章量が異なると思いますが、これからもよろしくお願いします!!