終止符は流星が如く   作:A.H

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大変長らくお待たせしました。
私生活が落ち着いてきたので投稿します。
皆様はお身体に大事至らなかったでしょうか?
この様な事態によって苦しい戦い続きですが、頑張りましょう!

では、本編どうぞ!


第6話 「月夜の激闘」

 俺は昔から臆病だった。

 痛いのは嫌だし、面倒くさい事には突っ込みたくない。

 いつもそうだ。

 だが……

 逃げたくはなかった。

 目の前に何かが立ちはだかった時、臆病なりに足掻いてやろうと……

 びっくりさせてやろうと、色々考えたもんだ。

 そこで臆病な俺は……自分の身を守れる武器を作ろうと考えた。

 

 何を作ろうか

 

 剣みたいな近付いて斬りかかるのは危険だからあまり好まない。

 

 違うな

 

 かと言って弓みたいな離れてやるやつも詰めて来られるとやられるから嫌だ。

 

 これでもない

 

 ふと悩みながら目に入ったのは物干し竿だった。

 

 –––! 

 

 長ぇ……武器……

 

 そこで思いついたのが「槍」だ。

 手ごろの良い長くてしっかりした木の枝を丁寧に丁寧に削って。

 この木の槍を手に入れた。

 俺は日々、鍛錬は怠らなかった。

 面倒くさいのは嫌だけどちゃんと鍛錬しとけば身を守れると思ったからだ。

 ちびっ子達には見つからないように、ガラクタ山ではなく離れた森林地帯で毎日、毎日、手に豆が出来るくらいに励んだ。

 

 なんか、人に見られるの恥ずかしいからな……

 

 師匠なんていない為、全部自己流だったが、俺の心理と一致したその武器を振るう事に関しては結構気分が良かった。

 

 そして

 

 そんな槍を実戦的に使う時が来るとはなぁ、と先程まで考えていたのだが

 

「…………」

 

 そんなこと吹っ飛ぶくらいの怪奇が起きた。

 その所業が自分によるモノだと理解するのに然程時間は要らなかった。

 

「ど、どうなってやがる!? おいっ! 何しやがったんだてめぇ!」

 

 小鬼は、一瞬のこの出来事に一驚している。

 

 何をした……か。

 

 説明するとなると「飛んできた弾が急にゆっくりになったから弾いた」とでも言えばいいのだろうか。かと言って、自分でさえもこの出鱈目な出来事を丁寧に説明する事は出来ない。

 

「さぁな、俺が聞きたいくらいだ」

 

「なっ……」

 

 今まで余裕の表情を見せていた小鬼に焦りの顔が浮かぶ。

 当然だろう、追い込んでいたはずの相手から思いもよらぬ反撃が行われたのだから。

 

「まぁ……わからねぇけど……」

 

 理解は出来ていないがこの好機(チャンス)……

 

「俺にも勝ち筋はありそうってのはわかるぜ」

 

 俺はニヤリと笑って見せた。だが、正直自信がない。

 何らかの不思議な力が働いてるのは分かるのだが、次の攻撃に対してこの力を使って上手く対処出来るのかが不安で仕方がない。

 

「舐めるなっ! 敗北種族風情が!!」

 

 小鬼は怯む事なく銃口をコチラに向けて構えた。

 またあの力が働いてくれれば対処出来る筈だ。

 俺は、その思いを希望に木の槍を強く握り小鬼へと駆け出した。

 

「うおおおおおおおおっ!!」

 

 失敗への恐怖を打ち消そうと渾身の雄叫びを上げる。

 

「死ねぇッ!」

 

 二発の銃声が鳴り響く。

 

「–––ッ!!」

 

 やはり恐怖心は打ち消せなかったようだ。

 小さな悲鳴が漏れてしまう。

 –––だが

 

「ッ!!」

 

 俺に迫ってくる弾丸は二つ。

 しかし火薬と気圧よる自慢の速度は失われ、その殺傷能力は皆無に等しかった。

 

 マジで成功しやがった! 

 

 求めていた現象が起こった事に俺は歓喜した。

 すかさずこの好機を利用し、両手持ちで構えている木の槍を右手に持ち替えて、流れるように真下からなぎ払い一発目を。勢いそのままに続けて逆手に短く持ち変え左斜めに振り抜き、二発目を叩き落とす。

 

「なんなんだテメェは!! さっきから軽々と!! くそっ!!」

 

 小鬼はすぐに撃ってはこず二歩下がり、手を後ろに回し何かをゴソゴソと探っている。

 

 –––弾を込める気か! 

 

「させるかぁぁぁぁッ!!!」

 

 槍を両手持ちに、足腰には力を入れ、推進力を向上させる。

 力が溢れ出さんばかりに、突進する。

 

 –––小鬼への距離まで3歩半圏内! いける!! 

 

「油断したな小僧!」

 

 –––!? 

 

 追い詰めていた筈だった。

 その台詞を聞き、奴の取り出した()()を見るまでは

 

 –––アレは

 

 銃を地面に捨てた後に右手で持ったソレがチラリと光る。

 

「もう避けられると思うなよ!! お前は負けたんだぜ!!」

 

 –––ナイフ!!? 

 

 槍が小鬼の胴に届くより早く身体を捻らせ、槍による攻撃を避し。そのまま、小鬼が逆手で構えたナイフが俺の喉笛を掻っ切らんばかりに迫り来る。

 

「この距離、この速度なら避せまい!!!」

 

「ッ!!!」

 

 どうする!? どうする!? どうする!? どうする!? 

 どうする!? どうする!? どうする!? どうする!? 

 やられちまう!! やられちまうぞ!!? 

 やられ–––ッ!? 

 

 高速で思考回路が脳を焼き尽くす最中で即死へのカウントダウンが切れる瞬間俺はそれを目撃した。

 

 –––ナイフの振りが遅く! 

 

 俺は悟った。

 これは『あの力』なのだと。

 ナイフが未だに俺の首に届いてないのは『あの力』のお陰なのだと。

 

「うおおおおおおおおおお–––!!!」

 

 背後に倒れる様に大きく身体を反らせてナイフを回避。

 そのまま左側に身体を捻らせて右脚でナイフを蹴り飛ばした。

 

「はぁ!?」

 

 ナイフは回転しながら宙を舞う。

 俺は咄嗟に繰り出したアンバランスな姿勢に耐え切れずに背中から倒れる。一方、小鬼はナイフを蹴り飛ばされた衝撃で尻餅をつく。

 

「何なんだお前!! さっきから馬鹿みたいに速ぇ反射速度しやがって!!」

 

 小鬼は、すぐ側に落としていた銃を拾おうと手を伸ばす。

 このままでは、体勢の崩しが大きい俺が先にやられる。

 

 –––イチかバチか!! 

 

 身体を起き上がらせた勢いのまま右手に持っている槍を

 

「当たれぇぇぇぇ!!!」

 

 小鬼目掛けて投擲した。

 

ドスッ!! 

 

「–––ッ!!!?」

 

 や、やった!! 

 

 投擲した槍は見事小鬼の首の後ろ刺さっていた。

 血泡を吐きながら小鬼は口を動かす。

 

「デ……デメェ……ブッ……ゴロ……ヂデ……ヤルゥ……ゴフッ!!」

 

 小鬼の膝はガクガクと震え、緑色のテカついた肌は脂汗により一層テカりが増している。しかし、小鬼はコチラをしっかりと睨みつけている。

 

 –––ヤバイ! 刺さりが甘い!! 

 

 このままでは反撃を食らってしまう。

 身体を完全に起こし、息の根を止めに掛かる。

 

「チッ!!」

 

 小鬼は既に銃を手にしている。

 

「ヂ……ネッ!!」

 

 大丈夫だ。きっと『あの力』が発動して俺を–––

 

 俺を……守ってくれると思ってた。

 

 –––え

 

 不思議な事は起きずに、物事は変化する事なく実行された。

 

 銃口から煙が立っている。俺目掛けてもう発砲されている。

 

「…………なんで……」

 

 何も変わらなかった。

()()()何も

 

「ま……マジか……」

 

 なす術もなく俺の身体は撃ち抜かれたのだ。

 腹部を確認すると服に血が広く滲んでいるのがわかった。

 

「ッ!!!!!」

 

 あまりの激痛に声が出ない。

 腹を抑えたまま、地面に転がるように倒れる。

 

「グッ……くそぉ……やられちまった……」

 

 身体に力が入らない。

 

 –––殺される

 

 次の発砲で完全に殺される。

 気力を振り絞り、小鬼の方を見ようと顔を起こす。

 

「…………」

 

 小鬼は……

 

 –––絶命していた

 

 グッタリと前のめりに倒れているのだ。

 恐らく、さっきの発砲が致命への引き金となったのだろう。

 首の後ろに刺さっていた槍が先程よりも深々と刺さっているのがわかる。

 発砲の反動により、より深く刺さってしまったのだと考えた。

 

「……すぅ……ふぅ……すぅ……ふぅ……」

 

 呼吸が苦しい。

 

 う……ごけ……

 

 気力を振り絞りながら腕の力を使い、倒れながらも前に進もうとした。

 ゆっくりと、ゆっくりと、前に……前に……

 

 敵がこいつだけとは限らない……早く身を……

 

「あれ、あいつやられてんじゃん」

 

 –––!! 

 

 え、嘘……

 

「生き残った人間の方も重症だな。やれやれ、片付けておくかぁ」

 

 ドタドタと足音が聞こえる。

 顔を起こし周囲を見渡すと。

 

 ああ……最悪だ。

 

 周りには既に小鬼の仲間達が集まって来ていた。

 

 もう笑うしかないな……

 

 先程絶命した小鬼と似たような武装をした小鬼達の内の数体が俺の側に近寄って来た。

 手の届かない範囲で立ち止まり、囲むように分散した。

 

「あんな木の棒で、あいつ殺ったんだぁ〜やるねぇ、人間さん」

 

「惜しかったねぇ。やはり所詮敗戦種族だな〜ゲフフフフフ」

 

 ああ、もう……笑え、笑え……

 

 必死に戦ったが、待つのは絶望。

 どうやら人間様には幸福が訪れないらしい。

 

「頑張った代償に20秒間時間あげちゃいまーす」

 

「お〜いいねぇ〜ほらほら、逃げなよ人間さん。時間やるからさ」

 

 くそぉ……舐めやがってぇ……

 

 起き上がって何か反撃をしようと試みたが、身体はぷるぷると震えるだけで立ち上がる事ができない。

 

「18……17……」

 

 カウントダウンに合わせて小鬼達は足踏みをしている。

 ゲラゲラと笑っているやつもいる。

 

 ほぼ丸腰の人間様が武装した魔物一体殺したんだ……上出来だよな……

 

 今度こそ覚悟を決め静かに瞳を閉じる。

 

「14……13……12……」

 

 彩花ちゃん……康太……俊彦……おばちゃん……みんな……

 

「10……9……」

 

 ごめんなぁ……全員は無理だわ俺……

 

 涙が頬を伝い、地面を濡らしていく。

 悔しい。非力な自分が惨めすぎて悔しい。

 

「6……5……」

 

『あの力』はなんだったんだろうなぁ……神様がくれた最後のチャンスなのかな……

 

 

「3……」

 

 

 今考えてもしゃあねぇかぁ……

 

 

「2……」

 

 

 本当に短い人生だったな……

 

 

「1……」

 

 

 …………じゃあな

 

 

「ぜー……あ……? 」

 

 –––まだ……か? 

 

「なんだアレ!? 」

 

 小鬼の一体が何かに声を上げる。

 –––何か起きてるのか……? 

 

 再び顔を起こして周囲の確認すると、小鬼達は一点の場所を見ていた。

 

 –––なんなんだよ……殺すならとっとと……

 

 …………

 

 小鬼達が見ていたソレは、自宅の上に立っていた。

 月明かりが逆光し、影になってしまっているが

 それが人形であることは確認できた。

 

 次の瞬間

 

 その人影は一瞬にして屋根の上から姿を消した。

 

「……!? どこだ!! 何処へ消えた!!」

 

 –––きえ……た? 

 

「う、上だ!!」

 

 小鬼の一体が人影の行方を捉えたようだ。

 

 …………なんで、あんなところに……

 

 自宅よりもより高く、そこにその存在はいた。

 高い跳躍により、あの位置にいたとするならば……人間では無いのかもしれない……優に15mくらいは移動している。この世にあんな跳躍力ある人間が……いるのか……? 

 

 そして一瞬にして

 

 –––ッ!!? 

 

 ソレは大きな砂煙を立てて俺の目の前に着地したのだ。

 

「ゲホッゲホッ! な、なんだお前!!」

 

「……こ、こいつ……」

 

 小鬼達はその人影の正体に目を丸くした。

 

「な……な……え?」

 

「君、大丈夫? 」

 

 俺に声をかけるその人物は

 

 女の人……? 

 

 突如として目の前に現れたのは一人の女性なのであった。

 月明かりに照らされて、より綺麗に見える肩くらいまで下ろした青髪。それに被さるように乗せてあるハロウィンにでも使いそうなカボチャのような帽子。そしてその服装は、太ももを大きく露出したデニムショートパンツ。ヘソ周りも大きく露出した黒のスポーツウェア。その上を羽織るように青いライダージャケット。右手には赤い指出しグローブを付けている。

 

「後は私に任せて。無理しちゃダメだよ」

 

 そして、とても綺麗な顔立ちをしていた。

 緋色の目もとても綺麗だった。

 

「え、あっ……はい……」

 

「うん、大事にしてね」

 

 彼女は可愛らしい笑顔で頷いた。

 

「ゲフフフフフ女だ! 女だ!」

 

「若い女だぁ! ゲジュルフフフフ」

 

「ぶち犯してから血肉残らず食ってやろうか……それともそのまま性奴隷に……ゲヒヒヒヒヒヒ!!」

 

 小鬼達の汚らしい笑い声と下劣な発言が騒つかせる。

 

「お前達に好き勝手させる訳にはいかない……私が相手だ」

 

 女性は帽子を深く被り、拳を突き出し、構えに移った。

 

 –––え、まって、素手!? 

 

「あ、えっと! お姉さん!!」

 

「ん? なにかな?」

 

「素手なんですか……!?」

 

「あー、ふふ、まぁ見ててよ」

 

 彼女は大丈夫という手でサインを見せて再び構えに移る。

 

「女は丸腰だ! てめぇら! 傷付けずに捕らえろ!!!!」

 

「げっひゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 小鬼達が鼻息荒く襲いかかってくる。

 

「数は18体ってところか……」

 

 彼女は冷静に小鬼の数を数えていたようだ。

 

 素手……まさか、魔法か!? 話には聞くけど本当に魔法ってあるのか!? 

 

「シュー…………」

 

 なんの音だ……

 

 風船の空気が漏れているような……とにかく、放出されているような音。

 その音が聴こえた辺りから小鬼達の悍ましい声が鳴り止んだ。

 しかし、小鬼達は叫ぶように口を大きく開いている。

 

 これは……

 

 そう、鳴り止んだ訳ではない。

 確かに叫んで入るのだろうが……静寂しか感じ取れない。

 そして、俺は再びスローモーションの世界感覚に溶け込んだ。

 

 今度は……なんだ……

 

 これこそ本当の死の間際というやつなのだろうか。

 だとすれば、目の前に立っているこの女性は一瞬にして小鬼達がほざいていた通りの結末に。そして次は俺を……

 

 それとも、またあの力がこの場面に助力をしてくれているのだとしたらすぐに俺が何かをしなければ–––

 

 と、俺が様々な考えを脳裏に浮かんでいる中、それを見抜かれたが如く女性の背中は俺に強く語り掛けた。

 

 

–––心配はないよ

 

 女性とは思えぬ勇ましき自信に満ち溢れた背中は……

 俺を安心させるには充分過ぎた。

 

 ゥー……

 

 –––音が止んだ

 

「ウギャギャギャギャアァァァー!!!」

 

 –––! 

 

 それを合図に小鬼達の夥しい叫び声が再び耳に届くようになった。

 

「…………」

 

 大勢の敵が押し寄せてくるのに女性は微動だにしない。

 

「お、お姉さん!?」

 

 あまりの変化のなさに焦り声を出してしまった。そして次の瞬間

 

 激しい破裂音と共に何かが砕け散る音が聞こえた。

 

「ゴギャアァァアア!!?」

 

 –––!? 

 

 一瞬何が起きたか分からなかった。

 

 女性の肉体を求め覆い被さろうとする小鬼達。

 しかし、その大群に恐怖せずに女性は足を動かさず。

 先頭を切った小鬼が女性の肩に手を触れた瞬間それは起きた。

 

「……あ……あぁ……」

 

 威勢の良かった小鬼達も進むことを躊躇え、起こった事態を直視している。

 

「し……死んだ……死んだ……?」

 

 先頭を切って飛び出した小鬼は女性の目の前2m先で仰向けに地面に倒れているのだ。

 その周辺にはその小鬼から飛び散ったであろう牙と血飛沫。顔は深く……深く抉られていた。

 そして、女性の手には飛び散った血液と同じものがべったりと付着している。

 

「な……なにしやがった!! なにしやがったんだよぉ!!?」

 

 小鬼達は汗だくになりながらガクガクと震えている。

 

「何って……セクハラされたら誰でも怒るでしょ! 私だって女の子なんだから」

 

 女性は手に付いた血を落とそうと手首を振りながらそう言った。

 

「は……? そ、そんなこと聞いたんじゃねぇよ! 爆弾か!? 爆弾使ったのかこいつ!?」

 

「い、いや、魔法かもしれねぇ! 魔法専門の魔物以外にも人間側で魔法の研究してる奴がいるって聞いたことがあるぜ……!」

 

「ま、魔法……魔法か……なんて野郎だ……」

 

 小鬼達は「魔法」やら「爆弾」を使っていると女性を疑い始めた。

 しかし、女性の発言にそれらの考えが一気に吹っ飛ぶ。

 

「え、違う違う! 私魔法なんて使えないよ。パンチだよ! パーンーチ!」

 

 女性はそう言いながら「シュッシュッ」と右手で二回その場で空を突く。

 

「パンチ……? パンチだぁ……!? 嘘つくんじゃねぇ! パンチで顔面抉れるか!!」

 

「もぉ……じゃあ、実際に受けてみれば良いじゃん……私説明下手だし……」

 

 女性は「教えてあげるから来なさい」という感じに手招きをする。

 

「おいてめぇら!! 何かしらの武器を持ってんのは確かだ! 警戒ちゃんとしとけよ!!」

 

「嘘じゃないって言ってるのにぃ〜……」

 

 彼女は小鬼の言動に不満そうにしながらも最初に構えた姿勢に構え直す。

 

 不思議な構え方だった。

 右手平を外向きに顔のすぐ横に、左手は肘を折りながら前方に、指先は鋭く構え、獣の爪の如く。脚は大きく開き、低い姿勢を取る。

 格闘術の知識はまるっかしだが、人間というよりは、獣の様な荒々しい構えであった。

 

「ゲッヒャアア!! その身体ひん剥いてやんよ姉ちゃん!!」

 

 迫り来る小鬼の一体。

 彼女は一歩引き、構えをより鋭く。

 

「…………」

 

 彼女は大きく右に身体を反らせて背中を相手に見せるように。

 そして、

 

「破ッ!!」

 

 左足で大きく踏み込み小鬼との距離を一気に詰め、右腕はしならせ後方へ

 

「–––!?」

 

 そのまま右から左にかけて一気に横振り。彼女の右手の甲が小鬼の頬に直撃する。

 

「ゴチャブァ!?」

 

 小鬼の首はダルマ落としのように振り繰り出された腕によって弾き飛ばされた。

 

「ふぎゃあぁ!!? やっぱ、あいつ人間じゃねぇ!!? 」

 

 小鬼達は改めて彼女の驚異的な一撃に足を竦ませる。

 

「つべこべ言わずに掛かってきな!! 仕掛けたのはそっちだよ!!」

 

 彼女はさらに前に足を運び威圧を掛ける。

 その勇ましい姿は縄張りに踏み入った不届き者を殲滅しようとする獣の様だった。

 

「総員! 武器の使用を許可する!! 慰み者にする余裕はない!! 早急に始末するぞ!!」

 

 小鬼の部隊は彼女を早急に排除すべき対象と認識し、全員が武器を構える。

 

「我々の考えが甘かった様だ……こいつは逃すな。接近戦を持ち込むのは三体以上だ! 三体以上で掛かれ!! 背後からは射撃支援を行う。野郎ども確実に仕留めるぞ!!」

 

 小鬼の部隊の真ん中で指揮を立てる者がいた。

 眼帯をした毛皮コートの小鬼。恐らく奴がリーダーであろう。

 

「頭はアイツか……」

 

 彼女も敵の司令塔をしっかりと捉えたそうだ。

 

「いいな! 余計な事は考えずに第一に仕留める事を–––」

 

「隊長! き、来ましたァァ!? 」

 

 小鬼のリーダーが部下に指示を出している間に彼女は部隊へと瞬時に距離を詰めていた。

 

「チッ!」

 

「遠い場所からチクチクされるのは嫌だからね! 全員まとめて肉弾戦で叩き潰す!!」

 

 援護射撃を嫌った彼女は一気に己の拳の届く範囲に距離を詰める。

 

「さ、三体以上だ! 三体以上でいくぞぉ!! ウギャアァア!!」

 

 彼女に襲い掛かる小鬼は3……5体。それぞれがナイフを手に持っている。

 

 –––大丈夫か!? 

 

 彼女はその場で極限にまで背を低くし、襲い掛かる小鬼達のナイフを避けながら奥に突き進む。

 

「クッギヤァァア!!? いっ!! 足がぁ!!? 」

 

 あ、あれは! 

 

 攻撃を空かし抜かされた小鬼達の脚は歪な形に曲がっていた。

 

 通り様に脚を砕いたんだ……! 

 

 流れる様なスピードだった為、はっきりとは見えなかったが、そうに違いない。 

 

「貰ったぁぁぁ!!」

 

 –––!! 

 

 彼女の右斜め後ろからナイフを振りかざす小鬼。

 

「お姉さん!! 来てます!!」

 

「–––うん、分かっていたよ。でもありがとう!」

 

「–––ッ!!?」

 

 小鬼の突き立てたナイフの刃先は粉々に……

 

 それを砕いたのは繰り出された彼女の手の甲だった。

 

「セイヤァァ!!」

 

「プギュゥ!!」

 

 手の甲はそのまま小鬼の顔面を砕いて吹っ飛ばした。

 

「クソォ! 撃つ隙がねぇ!!」

 

 彼女は全ての小鬼が接近戦をするしかない状況に追い込んだ。

 

「てめぇら!! どいてろ!!」

 

 リーダーの呼びかけに陣形を崩して広がる小鬼達。

 その奥には小鬼達に指示をしているリーダー。その腕には

 

「弾き飛べ!! 小娘が!!」

 

 黒金に光る砲口が彼女に向けれる。

 

 –––義手大砲だった。

 

「え、やばっ!!」

 

 壮大な発射音と共に漆黒の球体が彼女に迫る。

 

 ←to be continued

 




謎の女キャラが登場!
彼女は一体何者なんでしょう!
そして、星絆の『謎の力』は一体…?
次回もよろしくお願いします!!
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