モブ厳な恋愛ゲームの世界らしい   作:飯食ってソシャゲして寝る人

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次回次次回あたりで終わりたい


高く付くぞ、オレの愛は

 

 

「これが原因の機械?」

 

エロ本爆破(打ち上げ花火)から数刻後……響たちは原因と思われる機械を見つけた。

 

「手鏡のような物かと思ったのだが、これを持った時、雑音が聞こえたからもしやと思ってな」

 

「って事ぁこいつをぶっ壊せばいい訳だな」

 

代償に部屋は来た時より散らかってしまった(翼が主にやった)が……。

 

「待て雪音。下手に触れて、爆破でもされたらまずい。一度距離を置いて司令に連絡しよう」

 

という事で一度その機械を置き、響たちは外へ出た。

 

『良かった! ようやく繋がりました!』

 

三人が部屋を出て数メートルほど移動した瞬間、エルフナインから通信が入った。

 

『……なるほど、翼。一先ずその機械の回収は此方に任せろ。だが、先に回収される恐れがある』

 

「分かりました。私は此処で見張りをします」

 

残りの者は機械の解析が終わるまで周辺で彼の捜索に当たることを弦十郎が命令する。

 

「私は未来とこの辺りを回ってみますッ!」

 

響は未来と現在地周辺を。

 

「なら私はクリスと人気の無い場所を中心に当たるわ」

 

マリアとクリスは人気のない場所を。

 

「あたしたちはあっちを探すデス!」

 

切歌と調は逆に人混みへ(主に切歌の勘)

 

 

 

 

 

 

そうして切歌の勘が当たり、水族館で鉢合わせした後……。

 

 

 

「切ちゃん! あの人が居たって本当?」

 

切歌の連絡を受け、額に汗を滲ませ息を切らせながら調が走ってやってきた。

 

「ほんとデス! しかも、デートしてたんデス!!」

 

「……デート? 誰と?」

 

調の声のトーンが僅かに下がる。

 

「キャロルデス! 腕を組んで、水族館から出てきたんデスよッ」

 

「じゃあ、あの人に連絡が付かなかったのは、キャロルと一緒に居たからってこと?」

 

「……そう言うことになるんデスかね?」

 

もやもや。

 

自分たちは必死に探していたのに、当の本人は異性とデートをしていた。そう考えると胸の中にもやもやが募った。

 

連絡が途絶えたのは当人が悪いのでキャロルは悪くないのだが、そんな事情を知らない二人は早速他の皆にも連絡を回す。

 

『は?』

 

切歌の話を聞いた皆はそう思っただ、う。

 

「な、なんデスか……この重圧感は……ねぇ調……調?」

 

皆が急に無言になった為、自分は何かやってしまったのかと切歌は冷や汗を流した。

 

「……」

 

隣にいる調に声をかけた切歌だが、調は俯いたまま一言も喋らない。

 

「どうしたのデスか! 何処か痛いのデスか!?」

 

「ううん、大丈夫だよ切ちゃん。ちょっと、変な気分になっただけ」

 

「そ、そうデスか……?」

 

調は胸に手を当て、深呼吸をする。

 

(うん、大丈夫。少し落ち着いた。でも何だろう……胸が少しチクチクする?)

 

 

 

 

 

 

 

『うぅ……ごめんなさい、まさかキャロルのデートの相手が彼だったとは思いもしませんでした……』

 

切歌の連絡を受け、集まった装者たち御一行はエルフナインからの通信を受けていた。

 

「いいのよ。貴方が悪いわけじゃないわ」

 

エルフナイン曰く、デートスポットなどを選んだのは自分であるとの事。

 

「エルフナインちゃんはキャロルちゃんの為に色々してたんでしょ? なら全然悪い事じゃないし、むしろ褒められるものだよッ!」

 

『ありがとうございます響さん、マリアさん。ですが、僕がキャロルに少しでも相手の事を聞いていれば皆さんの時間を無駄にすることも無かった訳ですし……』

 

「まぁここでとやかく言ってもしょうがねーだろ。とりあえず文句を言うならアイツだ」

 

『すみません……』

 

「じゃあ早速行くデスよ!」

 

『分かりました。キャロルが行きそうなスポットを……アレ?』

 

「どうかしたの? エルフナイン」

 

『いつの間にか見覚えの無いてがみが……キャロルから? えーっと……結婚式の招待状……け、結婚式!?』

 

ガタガタ! ドタン! バサバサ!

 

通信機越しに物の数秒で大きな物音を立てたエルフナイン。内容を聞いて驚いたのは彼女だけでは無かった。

 

「えぇッ!? け、結婚式!? キャロルちゃんが!?」

 

「お、落ち着いて響ッ 深呼吸しなきゃ、ひーひーふーだよ!」

 

「バカッ、そりゃラマーズ法だろ!」

 

「……(驚きすぎて開いた口が塞がらない)」

 

「結婚相手はまさかあの人デスか!?」

 

「……あまりの展開に驚きを禁じ得ない」

 

「え、エルフナイン。宛先も差出人も間違っていないの?」

 

エルフナインに届いた招待状にはこう書かれていた━━

 

『拝啓 花の便りが相次ぐ今日この頃。装者含む皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。さて、このたび私たちは結婚式を挙げることになりました。つきましてはぜひ皆様に立会人となって、私たち二人の門出を見届けていただきたく結婚式を行いたいと存じます。おいそがしいなか誠に恐縮ではございますが、ぜひご出席くださいますよう、ご案内申し上げます。○年○月○日 キャロル・マールス・ディーンハイム 』

 

下の方には式場の場所や日時も書かれており、その日付はなんと明日だった。

 

「ど、どどどどどうしよう!?」

 

「どうするったって、どうすんだよ!」

 

クリスは抱きついてきた響を引き剥がしながらいう。

 

「行方不明になって心配かけて、その上結婚式? ハァ……あ、頭が痛くなるわ」

 

マリアもこの状況について行けず、頭を抱えていた。

 

(キャロルちゃんの結婚式……おめでとう! って言いたいんだけど、何だろう、この胸の気持ち……痛いんじゃない、辛い……?) 

 

(やっぱり、ダメ。あの人が結婚するって考えちゃうと……胸が締め付けられる様。ううん。違う、今まではそう思い込んで居たんだ……これって、やっぱり━━)

 

彼女たちの脳裏に彼との思い出が蘇る。今までは仲の良い友人、または兄の様だと慕っていた彼女たち。

 

(あぁ〜〜ッ! クソッ! なんでこうムシャクシャしやがるんだ。アイツが結婚しようが、別にあたしには関係ねぇじゃねぇかッ なんでこんなに、こんなに━━)

 

(めでたい事だと頭は理解しているが、どうも胸の騒めきが治らない。彼の顔を暫く見ていないからか? それとも……いや、まさか━━)

 

しかし、今回の一件で彼女たちの心に変化が訪れた。

 

(……手の掛かる弟だと、そう思っていたのに、この気持ちは……何なの? 家族が結婚するなんて、とてもおめでたい事じゃない! それなのに何で胸にポッカリと穴が開いてしまった様な気持ちになるの?)

 

(あの人が幸せなら、あたしも幸せだと思ってたのに……どうして心の中にひっかかる様なものがあるんデスか? 笑顔でお祝いしようと、思ったのにこれじゃあ笑顔になれそうにないデス……)

 

(あの人の笑った顔が好きだった。お兄ちゃんみたいで、頭を撫でられるのも、子供扱いされるのも擽ったくて……でも何処か嬉しかった。そんな人が結婚するのはとても幸せな事だと思ってたのに……どうしても胸のもやもやが晴れないの?)

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

水晶越しに今までの経緯を一通り見ていたサンジェルマンは眉間に皺を寄せ、大きなため息を吐いた。

 

「良い友人だろう、彼は」

 

アダム(人でなし)は笑みを浮かべている。友人と称する割には彼で遊んでいる様にしか見えないが、彼なりの愛情表現らしい。迷惑極まりないが。

 

「どうなさるおつもりですか。殆ど貴方が元凶でしょう」

 

「どうもしないさ、今はね。それよりもいいのかい? このままで」

 

意味深な言葉を言うアダムにサンジェルマンの顔は強張るばかりである。

 

「このままで、とは?」

 

「君と彼の事さ。このままだとキャロルや彼女らに取られてしまうよ」

 

「……わたしには関係ありませんので」

 

アダムの見透かした様な言葉にサンジェルマンは興味なさげに返事をした。

 

「素直じゃないね、君も。だけど急いだ方がいいよ? 君の部下たちはもう行ってしまったみたいだからね」

 

「は……?」

 

サンジェルマンは目を丸くする。

 

「カリオストロとプレラーティさ。彼がキャロルとデートをしていると連絡したら飛び出していったよ。ついさっきね」

 

「なッ……!」

 

「夢中で見ていたからね、水晶(それ)を。普段の君なら僕が連絡している事にも勘付いたろうけど」

 

「貴方と言う人は……!」

 

持っていた水晶がピシリとヒビが入る。殴りたくなる様な笑みを浮かべて自身を見ているアダムに小さく舌打ちをし、サンジェルマンはテレポートジェムを使い部下たちの元へと急いだ。

 

「やはり面白いね、愛と言うのは」

 

人でなしはうんうんと頷く。彼は悪意を持って行動しているわけではないので余計にタチが悪いというワケダ。

 

「アダム〜〜! 一緒に映画見よッ!」

 

サンジェルマンと入れ違いに、DVDを持ったティキが部屋に入って来た。

 

「やぁティキ。なんの映画だい、それは」

 

「ゴジラ!」

 

「見ようか、式までの暇つぶしにね。楽しみだよ、どう転ぶか」

 

尚アダムに招待状は届いていない。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

キャロルが愛を見せつけると高々に宣言して連れてこられたのは彼女の拠点の一つであるチフォージュシャトー……に似た城の様な家、今現在彼女が暮らす場所である。リアルに見るとデカすぎる。

 

入って早々になにやら彼女は何かの準備をするらしく、僕はキャロルに『此処に居ろ、いいな? 勝手に移動するな』と言われ個室に入れられて鍵も閉められたので自力で出ることは不可能である。窓から出ようにも結構な高さであり降りたら確実に死ぬ。OTONAじゃなきゃ無理だ。

 

「次はこのゲームがやりたいんだゾ〜!」

 

キャロルは監視役にミカを置いて行ったのだが……彼女の場合その準備とやらの役に立たなさそうだからここに置いたのではないかと僕は思っている。手が大きいし、細かな作業には向いていないだろうし。

 

ミカは暇つぶしにとたくさんのゲームを両手に抱えていた。他のオートスコアラーとやるのも楽しいけれど、他の人ともやりたいらしい。

 

「うん、やろうか」

 

今僕には何にもする事が無いので、ミカとゲームをしていた。テレビゲームは僕が操作し、ミカが何をするか決めるという方針だ。

 

「次はあいつを倒すんだゾ!」

 

……しかし何故僕の膝の上に座っているのか。

 

「おー! やったゾ〜!」

 

ブンブンと目の前で揺れる大きな手がとても怖いけれど僕は元気です。

 

「━━お前はマスターの事、どう思ってるんだゾ?」

 

道中のレベル上げをしている時、ミカが後ろを振り向かずにそう質問してきた。

 

「どう……って?」

 

元気なキャラであると思っていたミカが突然静かになり、そんな質問をされた。……何やら不穏な空気を感じ、質問を質問で返す。

 

「勿論、好きか嫌いかだゾ?」

 

いや、そりゃあ好きか嫌いかで言ったら好き以外に無いんだけれども。此処で嫌いとか言ったらその大きな手でトマトみたいにプチっとされそうだよ。

 

「まぁ……好きかな、その二択なら」

 

「……そっか! 良かったゾ〜! 結婚式(・・・)は好きな人同士がやるって聞いたから、ミカは心配だったんだゾ〜!」

 

花咲く様な笑みでミカは振り向いた。

 

…………いやいや待て待て、今とんでもないことを言わなかったかこの人形ちゃんは!?

 

「け、結婚式って、誰と誰の?」

 

「ん? マスターとオマエに決まってるゾ」

 

「!?」

 

結婚するのか……? 僕は。

何を言っているんだコイツと言わんばかりの顔でミカは僕を見ている。

 

準備する事、愛を見せつけるってそう言う意味だったの!? しかも見せつけるって事は、装者たちは勿論司令にも見せる可能性もあるって事だよね? ……止めないとヤバくない? キャロル√に入っているならば、まぁもう文句はない。けれど修羅場に持ち込もうとするのは非常に(命が)まずい。

 

「コラ! ダメだゾ! ミカはオマエをここから出しちゃいけないって命令されてるんだゾ!」

 

「いや、止めないとマズイんだって! お願いだから行かせて!」

 

大きな手でがっしりと身体を固定され、身動きが取れない。

 

「ム〜あんまり暴れられるとめんどくさいゾ〜……あ!」

 

ミカは持っていた彼を手放し、懐から注射器のようなものを取り出した。

 

「え、何それ……」

 

「ガリィから貰った大人しくさせるお薬だゾ! ちょっとこれで寝てて欲しいんだゾ」

 

「落ち着こうかミカ。素人が注射とかするのは危ないから! 危険だからやめッ……やめろォ!?」

 

チクッと僅かな痛みと共に僕の意識は無くなった。

 

 

 

 

「……地味に静かになった様だ」

 

「ミカが薬でも打ち込んだんでしょうね」

 

式場のセッティングを行なっていたオートスコアラーの二人はそう呟いた。

辺りを見てみると、装飾品や花、来場者の為の椅子などがほぼほぼ設置し終えており作業の早さが見て取れた。

 

「それにしてもマスターも派手な事をする」

 

「えぇ、本当に。でも嫌いじゃ無いわ」

 

現在キャロルはガリィと共にウェディングドレスの制作中。普段のムスッとしたよう顔ではなく、ドレスを選ぶ姿は真剣そのものだった。

 

「さて。飾り付けも殆ど終えたから、出迎えにでも行きましょうか。無理矢理にでも連れてこいとの命令ですもの……フフ」

 

ファラは妖艶な笑みを浮かべる。

 

「私に地味は似合わない……派手に出迎えに行くとしよう」

 


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