やっとこさ固まったので、ここから初めていきます。
めざせ、完走!
ある教室の前で桜色の髪の青年--日向歩が躊躇していた。
「……大丈夫……いける……今度は参考書も三十七回も読み返したから、大丈夫……ハズ……」
自分に言い聞かせ、教室のドアに手をかける。
「し、失礼します!!」
少し声が上ずっているものの勢いよく教室のドアを開ける。視界に広がったのは整列された椅子と机、談笑する他の生徒等様々だったが、最も目を奪われたのはとある生徒の行動だった。
「その月のように輝く琥珀色の瞳に秋の夜空を彷彿させる茶色がかった綺麗な黒髪……その可愛らしい姿は俺の心を薄命にする美しさだ……しかし、出会えた事は運命に違いない……どうか、俺と付き合っ--」
そっと、教室のドアを閉めた。
そして日向は目の前に起きた状況を思い出した。
“茶色がかった綺麗な黒髪の持ち主である女性が黒髪セミロングで黒いマスクを着用した男性に告白されていた”。
……もしかして……告白……!? 入学初日に!?
男性の行動の早さに驚きながらも大きく深呼吸し、早くもエイトビートで刻む心臓の鼓動を落ち着かせる。
……落ち着け……参考書にも書いてあった……恐らくあれが“アオハル”というヤツなんだ……!!
どこかズレた事を自身に言い聞かせながら落ち着きを取り戻した日向は教室のドアを再び開けた。
「俺と一緒に渚の純愛ロードを走ろうぜ」
「増えたッ!?」
予想だにしなかった展開に驚く日向。もう一度開けたら、今度はサングラスにニット帽、そしてマスクという十人中十人が不審者と答える恰好の青年が同じ女性を口説いていた。
違う部分と言えば、先程の男性よりもセンスが低下している事だろう。
唖然としていた日向だったが、二人の男性に口説かれていた女性が動いた。やや赤みがかった頬になっている女性が指をオーケストラの指揮者のように動かすと、彼女の頭から少し上の高さから何もない空間に爆弾が現れ、そのまま爆弾がミサイル状に変形した。
「と、とと、と……とりあえず、離れてくれ!!」
照れたような言葉と同時にミサイル状に変形した爆弾が威力の一部を減耗させながら二人の男性に飛来する。
二人は飛来するミサイルをなんなく避けた。
そう、
「……え?」
そのままミサイルは二人の後ろにいた日向に向かって突撃し、呆然としていた日向は反応が遅れ、教室のドアに飛来したミサイルが着弾し、そのまま爆発に巻き込まれた。
「ちょ、誰かいなかった!?」
「え!? まさか当たったのかよ!?」
「おい! 大丈夫か!」
「……な……なんとか……」
心配する三人の声に絞り出して無事を伝える日向。幸いにも爆発に驚いて尻餅をついてしまったのが幸をなしたのか、髪が少し焼けた程度ですんだようだ。
日向が無事である事を確認して安堵する三人は歩み寄る。
「僕はエヴァ・ノベルティア。さっきはごめんね……少し……周りが見えなかった」
「
「俺はアラン・ザックフォード。よろしく頼む……そういや、何か用があったのか?」
茶色がかった綺麗な黒髪の持ち主である女性--エヴァ・ノベルティアが自己紹介を皮切りにサングラスにニット帽、そしてマスクという十人中十人が不審者と答える恰好の青年--明森誠二が手を振り、黒髪セミロングで黒いマスクを着用した男性--アラン・ザックフォードが訪ねると、日向は服を整えて自己紹介した。
「じ、じじ、自分は日向歩と言います!! ここのC組のクラスメイトになります! 一年間よろしくお願いします!!」
廊下に大声が響き渡り、数人が教室から廊下を覗き見る。日向の大声に三人は目を点にし、代表としてノベルティアが答えた。
「……ここ……B組だけど……」
「……えっ」
ノベルティアの言葉に呆然としながらも視線を動かす日向。プレートにはC組ではなくB組と書かれていた。
「……」
「……」
緊張ゆえに発生してしまった間違いに沈黙する日向。その様子を見つめるB組の三人。
「……し、失礼しました!!」
「待て待て待て待て!!」
勢いよく立ち上がって去ろうとする日向をザックフォードが止める。それでも去ろうとする日向だが、力の差はザックフォードの方が大きいのか微動だにしない。
「離してください! そしてできればですが忘れてください!!」
「気持ちはわかるが少し待てって! C組まで案内してやるから落ち着け!」
「で、ですが……」
「このままほっといたらトラブル起こしそうだし、案内されたらどう?」
ザックフォードの提案に言いよどむ日向に明森の援護に迷う様子を見せる日向。しばらくして、大人しくなる。
「……お……お願い、します……」
頭を下げる日向に三人はC組まで案内する。
「……その……す、すみません。迷惑をかけてしまって……」
「気にしない気にしない。ヒマだったし、仲良くなったクラスメイトも本読んだり眠ってるからね」
「僕は君たち二人の告白に驚いたんだけど……」
「そういや、お前って何か目標があって偉能者を目指してるのか?」
謝る日向に気にしてない事を伝える明森とノベルティア。ふと、ザックフォードが気になった事を質問すると日向の表情が曇る。
「……自分は……望んでここに来た訳じゃないです」
「……?」
「着いたよ。ここがC組」
小さく呟きが聞こえなかったのか首を傾げるザックフォード。ノベルティアが指した方向に目的の場所が近い事を知る。
「……ありがとうございます……」
「いやいや、気にすることないよ。こんど飲み物奢ってくれるぐらいでいいからさ」
「奢れるような事をしてないけどね」
日向の礼を明森とノベルティアは軽く受け止める。扉に手を伸ばそうとした日向は不意にその手を止めて三人に声をかける。
「あ、あのっ! よかったら……自分と――」
何か言おうとした瞬間、日向が手をかけようとした扉が大きな音と共に外れ、そのまま勢いよく後ろの壁とサンドイッチよろしくに巻き添えで挟まった。
「ちょ、日向ァ!?」
「流石はアタシが認めたライバルね」
明森が日向を心配していると教室の方から一人の少女がバックステップで現れた。視線の先には一人の男子生徒が佇んでいた。
「僕的にここではなく、別の場所で戦いを行いたいのですが……先に仕向けたのはそちらなので、文句は言わせませんよ」
「上等よ! アタシの方が上って証明してやるんだから!!」
「いやいや、戦っちゃダメだからね! 君とボクはA組でしょ!」
黒の七三分けで銀縁の眼鏡をかけた温和な印象を抱く男子生徒に水色のサイドテールに赤い眼、可愛い系とクール系の両立した勝ち気な美少女が噛みつくように言う。
その少女の言葉に茶髪のショートヘアとやや暗い翠の瞳で中性的な顔立ちの青年が止めるように止めるも少女が突っ込んできた。
「止まらない! アタシの情熱はノンストップよ!!」
「ならば良し! 来るもの拒まずの精神で迎撃するのみ!!」
「一旦止まって周りを考えて!?」
そのまま勢いよく黒の七三分けの男子生徒に飛びかかる水色のサイドテールの少女が周囲を巻き込みながら騒ぎが大きくなった。
『ちょ、こっちに来た!?』
『キャハハ、やべぇなおい!』
『くらいなさい! シェスタコフスペシャル!!』
『なんの人身御供!』
『え、ちょ、まブッ!?』
『田中がやられたぁ!! 死ぬな田中ぁ!!』
『……勝手に……殺す……な……』
「ある意味カオスだな」
「少なくとも戦場になってるクラスには入りたくないなぁ……」
耳を済ませば聞こえる大乱闘に苦笑いするザックフォードとノベルティア。すると、吹き抜けになった教室の出入り口から別の女子生徒が顔を出した。
「……あの……大丈夫?」
黄緑髪を白いカチューシャでおさげにしており、瞳の色は青色で若干眠たげ。どちらかと言うと服の上からでもわかる豊満な体つきの女性が恐る恐るこちらを覗き見る。
「どうか君のような可憐な花に触れる罪を許して欲しい」
「前前前世から一目惚れでした!!」
速攻でナンパした。
その手際は素晴らしく早業で黄緑の女性は目を点にしており、驚いた表情を見せている。
「………………」
しかし、ノベルティアは静かな物々しい怒気を二人――正確には明森とザックフォードに向けている。
まぁ、ナンパされたのは恥ずかしさもあったが嬉しくないと言えば嘘になるが、自分よりもスタイルが良い人物に迅速な動きでやられたら良い気分ではない。
「し、衝動のせいなんだ……」
「本能に従っただけなんだ……」
「……ふーん……そっかぁ……」
すぐさま言い訳する二人に少し拗ねたような口調で呟くノベルティア。しばらく沈黙が流れ、耐えきれなくなった二人はC組に飛び込み、それをノベルティアは二人を追うかのようにC組へ入っていった。
『逃げるなぁ!!』
『ご、ごめんって! でも、あんな大きい女の子出てきたらナンパしないのは失礼になるでしょ! なぁザック!』
『よければこの後、お茶なんてどうかな?』
『ナンパするなってヤバいヤバい! 爆弾を大量に出して来た!!』
『ぬ! 新手か!!』
『丁度いいわ! 全員かかってらっしゃい!!』
『だからダメだって! 二人とも、なんとか止めれない?』
『キャハハ、無理無理。俺ちゃん毒ぐらいしか出せねぇし』
『私も鍵を開けるぐらいしか……』
もはや混沌の二文字が合う程に騒動が膨らんでいく。爆発音や悲鳴等が飛び交い、近所迷惑で訴えられても言い返せない騒々しい音が聞こえる。
その教室の前で黄緑色の女性に日向は治療されていた。
「……治った」
「ありがとうございます……あの……止めなくていいんですか?」
治療を終え、女性に礼を言う日向は騒動を止めなくて良いのか質問すると女性は首を横に振る。
「……無理。止めれない」
「……そうですか……」
そのまま会話が終わり、彼女と日向の間に沈黙が流れ始める。C組から聞こえる騒動をBGMに日向はなんとか話題を作ろうと彼女を横目に見る。黄緑色の髪に青い瞳が特徴でミステリアスな雰囲気を纏う物静かな性格、ふと
「……どうしたの?」
「い、いえ、な、なんでもありません!!」
「でも、こっち見てた」
「あ、えっと、その……」
「おーおー、青春してるねぇ」
なんとか誤魔化そうとするも否定して顔を近付けて来る彼女にあたふたする日向。すると後ろから茶化すような声が聞こえて振り向く。
紺色のシャツに焦げ茶のチノパン、その上から白衣を着た全体的にくたびれている印象の男性がこちらを見て、クラスの方に向けてため息を吐いた。
「……はぁ……毎年毎年よく騒ぐモノだな」
そういって男性は懐からピンク色の小さなパイナップルのような物体を取りだし、何かのピンを引き抜いたと同時に教室へ投げた。
数秒後、教室内に大きな爆発音と眩しい光と同時にピンク色の煙が大量に溢れ出した。
『『『ギャァァアァァァァァ!!』』』
大きな悲鳴と断末魔が聞こえ、騒々しかった声が嘘のように静まり返る。
「……怪我人いないか確認しないと……」
「光と音と煙幕だけだからケガは無いって行っちゃったよ……」
黄緑色の女性は教室内に怪我人がいないか確認する為に入り、くたびれた男性がいないと言っても我関せずに確認しにいった。
すると、近くにいた日向に気付き、後頭部を軽くかいた。
「……あー……先に君だけでも言っておくとしよう」
どこか仕方なさそうに呟いた男性は日向に向けて言った。
「ようこそ、超人だらけの学園生活へ」
この言葉から、騒々しくも忘れなれない学園生活の始まりだと、この時の彼は知らなかった。
~歴史トリビア~
中世ヨーロッパでは女性が告白する際脇の臭いを染み込ませたリンゴを好きな男性にあげていた。
ちなみに名前は『ラブアップル』。