誰が為に花束を   作:ハレル家

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 コロナウイルスで湿っぽい空気が流れていますが、あえて言おう。コロナがなんぼのもんじゃい!! こちとら、朝起きたらパンイチなってたんだぞ! ある意味恐怖だわ!!

 今回はアレが出てきます。


3史:出会い

 

 C組の担任である葉隠の発言から数時間後、外はすでに夕方となり、校舎の敷地内にある中庭。

 景色はオレンジに染まり、日向と久楽は自販機から飲み物を購入し、近くのベンチで腰を降ろす蛇崎とザックフォード、何かを思案する空元。

 

「……どうぞ」

「お、サンキュー」

 

 ザックフォードに飲み物を渡す日向。久楽は蛇崎と空元の側に飲み物を置く。買った飲み物を喉に流し込むと冷えた清涼感が体内を冷やすかのように広がっていく。

 

「いやぁ、にしても……圧倒的に負けたね」

 

 久楽の一言にその場にいた全員が沈黙する。

 それは、全員が肯定する自分達の実力差を痛感した事と同意だった。

 

「あそこまで実力差を見せられたら逆に清々しいよな」

「……同時に、悔しく思った」

 

 蛇崎が教師との戦いを振り返り、ザックフォードは苦々しく思いを口にした。

 その言葉を皮切りに五人は偉業訓練所での戦闘を思い出す。

 

 辺り一面に土埃が舞い、地面には死屍累々の言葉が似合う程に倒れたクラスメイト。そのクラスメイト達を一瞥する一人の教師--葉隠が言った。

 

『俺が今回、多対一を提案したのはお前達のような浮き足立ったヤツを萎縮させる為だ……超常の力を持ち、意図せず力に取り憑かれる事を防ぐ為だが……それは表向きの理由だ。実際は出た杭を打つ事を目的とした教師と生徒の格の差を教える為の合理的な組手だ』

 

 それを聞いていた生徒達は自分達が『格下である事』と『取るに足らない相手』だと理解するも全身に力が入らず、ただただ黙って聞くしかなかった。

 

『この後はホームルームまで自由行動だ。各自、教室の机の上に置かれた資料を目に通しておくように……明日から通常授業だ。遅れるなよ』

 

 その言葉を最後に葉隠は部屋から出ていった。

 

 動けるまで回復したクラスメイト達は各々の教室に帰ると自身の机の上に電話帳だと見間違うような厚さの資料が置かれており、内容は学校の規則から卒業後の進路先の電話番号まで書いてあった。

 疲れから読まない人もいたが、葉隠との戦闘を思い出し、嫌々読む人が殆どだったのは余談である。

 

「見た目とは裏腹にかなりの実力者でしたね。指を向けられた時に力が抜ける感覚になりました」

「それだけではないです……急に偉業が使えなくなりました」

 

 久楽が葉隠との戦闘中に感じた自身の変化を口にすると、先程まで考えていた空元が自身の意見を口にする。

 

「俺もそうだった。となると、偉業を封じるタイプか?」

「何にせよ、鍛えないとな……負けっぱなしは性じゃねぇ。もう一度勝ってやる」

 

 ザックフォードが空元の意見を肯定し、あれでもないこれでもないと意見交換を重ね、最終的に自分達が強くなればいいと結論を出した。

 

「そういや、誠二ちゃん何処行ったよ?」

 

 ふと、明森がいない事に気付いた蛇崎。途中まで一緒だったのを覚えているが、いつの間にかいない事に首をかしげた。

 

「明森さんなら、『夢と冒険のナンパに行ってくるぜ』と言い残して校舎に駆け出して行きましたよ」

「……あいつのそこだけは強いって認めるわ」

 

 日向の言葉にザックフォードは呆れたように言った。

 

「明森君の前向きな考えは見習いたいです」

「いや、見習ったらダメだろ。俺も人の事言えねぇけど」

「遅れてゴッメーン」

 

 日向がどこか尊敬したような目で言った事にザックフォードが異議を申し立てると、明森が帰ってきた。

 

「いやぁ、全滅だったわ」

「服がボロボロになってますが、どうしたんですか?」

 

 しかし、明森の上着がボロボロになっており、まるで追い剥ぎにあったような姿に驚いた日向は質問する。

 

「いやさ、先輩をナンパしたけどその先輩(ひと)が赤兎馬の偉能者だったんだよね。召喚系の偉業で集団を召喚されて、思いっきり轢かれちゃった」

「赤兎馬って……あの赤兎馬ですか!? 動物の偉能者なんているんですか!?」

「うん。いるよ……数は偉人よりも少ないけれど、過去に何度も確認されている」

 

 明森の事情を聞き、自業自得にザックフォードと蛇崎は呆れるが、日向は動物の偉能者がいることに驚いた。日向にわかりやすく久楽が説明すると、空元が明森にお願いする。

 

「赤兎馬……三国志で最強と言われた呂布の愛馬ですか……明森くん。よろしければ、その人を紹介して頂けないでしょうか?」

「やめといた方がいいよ。猪突猛進ロリオカンが鬼になるって」

「なんと! 彼女はまだ力を隠していたのですか! しかし、どうして先輩を紹介してもらうだけで鬼になるのですか?」

 

 とある少女が怒るのでやめた方が良いと言うも、空元は少女が怒る理由に見当つかず首を傾げる。その様子を見て、空元を除く五人が一ヶ所に集まった。

 

「……マジか……あんなわかりやすいのに気付いてないの……」

「彼女本人も気付いてない様子だし、彼は戦闘狂な事もあって分かりにくいと思うよ」

「どこの主人公だよ。そういうのお腹一杯なんだよ!」

「……あの、宇井さんと空元君に何かあったのですか?」

「……日向(コイツ)もかよ……」

「いきなり話し合ってどうしたのですか?」

 

 こそこそと話し合う蛇崎と久楽、恋愛に疎い様子に嘆いて愚痴を溢す明森、状況がわからず首を傾げる日向にザックフォードはため息を吐いた。

 自分を除いて話し始めた五人に空元は声をかけると、校内にチャイムが響き渡った。

 

「チャイム……あ、そうだ。先生から指定の寮の前に集合しなきゃいけなかったっけ?」

「あぁ、言われてたな。そろそろ行くか」

 

 帰りのホームルームで言われた事を思い出し、資料に書かれた地図を見て寮に行こうとする久楽とザックフォード。周りにいた空元と明森も同じように行こうとする。

 

「……あれ?」

「ん? どしたよ日向ちゃん?」

 

 不意にカバンを漁る日向に蛇崎が声をかけると日向は立ち上がって、校舎の方に走っていった。

 

「すいません。忘れ物したみたいなので取りに行ってきます!」

「行くって……あまり時間ないよ。明日にすれば……」

「急いで取りに行きますので、先に行ってください!」

 

 久楽が止めるも日向はお構い無く駆け出した。

 

「……行っちゃった……」

「……なんつーか……要領が悪いよな……」

 

 その後ろ姿に久楽とザックフォードは小さく呟き、五人は寮に歩き始めた。

 

 

 --■--■■--■--

 

 

 一年C組。教室の扉を閉じた日向は駆け出した。幸運にも忘れ物は机の上に置きっぱなしだったので時間はかからず、急いで寮に走り出している。

 いつもなら廊下を走らない彼だが、放課後で誰もいない事を祈っている。

 

「よし、ギリギリ間に合いそうだ」

 

 時間を確認し、間に合う事に安堵する日向。そのまま玄関で靴を履き替えようと手を伸ばし、素早く駆け出した。

 

『……ケ……テー……タ……』

「……ん?」

 

 ふと、何かの声が聞こえて足を止める。声の方向は寮の方向とは別だが、気になった日向は無視できず、声のする方向へ走る。

 しばらく走ると、さっきまで自分達が休憩してた中庭にたどり着くと人影が見えた。

 

「湊さん」

「……日向くん」

 

 そこにはクラスメイトの湊が立っていた。

 

「どうしました。ここで?」

 

 日向が訪ねると、湊が目の前の空き缶入れに向けて指を指す。指された方向を向けると何かがゴミ箱に某サスペンス映画で有名な逆さ死体よろしくに上半身が空き缶入れにハマり、抜けなくなった存在が両足をジタバタしていた。

 人物ではなく、存在と説明したのはジタバタと動かす足が人ではなく動物のそれだったからだ。

 

「タスケテー!」

 

 空き缶入れは倒れないように固定されており、出ている足を忙しそうに動かすも微動だにしない。その様子を見ていた日向は呆然としていたが、湊に肩を軽く叩かれて意識を戻す。

 

「……抜けなくて、困っている」

「タスケテー!」

 

 湊の声に反応してさらに足を動かす様子に日向は動いた。

 

「助けますね。引っ張ります」

「オネガーイ!」

 

 動いていた足を掴み、力強く引っ張るも中々抜けず、しばらく拮抗する。

 

「ふんぬぬぬ……」

「ピューイィィィ!!」

 

 予想よりもハマっているのか全く抜けず、体力を失うばかりである。

 

「……はぁ、はぁ……抜けませんね」

 

 一旦休みを入れるが、簡単に抜けない様子に困った表情を見せる日向と湊。こうしている間に時間は進んでいくだけだった。

 

「……先生、呼んでくる」

「大丈夫。次で抜けます」

 

 湊が誰か呼んでこようとするが、日向はそれを止めてもう一度足を掴んだ。

 

 ……集中……集中……

 

「……あの、無理しなくても……日向くん?」

 

 さっきと同じ結果になると思った湊が止めようとするが、日向は聞こえていないのか返事を返さず、低く腰を落とし始める。

 

「……せー……のぉ!!」

 

 瞬間、日向が勢いよく引っ張る。するとさっきは抜けなかったが、勢いよくスポン、という音と共に抜けた。

 

「抜けた……ッ!?」

 

 抜けた事に日向は喜ぼうとするが、急に強い頭痛に襲われた。まるで脳内から金槌を叩かれているような痛みに悶え、苦しむ最中に視界がテレビの砂嵐のように荒れだし、何かの人影が映りだした。

 

 --…………、………………--

 

 何かを喋っているが声は聞こえず、姿も鮮明に映らないまま次第に視界が元に戻っていく。

 

「--がくん。日向くん。返事して!」

「あ、はい!?」

 

 元の視界に戻ったら湊の端整な顔立ちが目と鼻の先だった事に勢いよく後ろに退いた。

 

「……急に頭を押さえて、呼び掛けにも答えなくなって……どこか悪いの?」

「……大丈夫。少し頭痛がしただけで……」

「アリガトー!」

 

 心配してくれた湊に日向が礼を言うと、後ろから声がした。声からして空き缶入れにハマってしまった人だと察した日向は声の主に顔を向ける。

 

「……」

「……え……」

 

 しかし、顔を向けて言葉を失った。遅れて湊も顔を向けるが同じように言葉を失った。日向は鳥の偉能者だと思っていたが、その正体は違った。

 それは、人ではなかった。

 見た目は生後から五カ月経ったオウサマペンギンの雛とそっくりだが、全身の羽毛は茶色ではなく雪のように白い鳥だったからだ。

 

「……あなたは?」

 

 雛とは言え、全長九○cm近くもある大きさに驚きながら恐る恐る訪ねる湊。湊の声に目の前の雛は大きな声で返事を返した。

 

「ボク、クックルー! アリガトー!!」

 

 大きな白い雛--クックルーは二人に大きな声で感謝する。

 二人は名前よりも喋った事に驚くしかなく、担任に名前を呼び出される放送が流れるまで、目の前の不思議な生物と見つめあうしかなかった。

 そして、この出会いが波乱を呼ぶ事を二人はまだ知らない。

 

 




 この小説のマスコットキャラです。
 意外にオウサマペンギンの雛ってデカクてビビります……カラスも意外に大きいですよね……


 ~歴史トリビア~
 ナイチンゲールは生涯で少なくとも60匹の猫を飼ったそうです。
 ある時期には17匹の猫を同時に飼っており、その中でも特にナイチンゲールが愛したのは大きなペルシャ猫で名前はミスター・ビスマルク。

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