誰が為に花束を   作:ハレル家

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 初の連投! 力尽きる鼓動!

 ……語感が似てない? 似てない。そう……


4史:クックルー

 

 学園の敷地内に設立されている寮の前で入学したての一年生が集まっていた。

 しかし、妙にザワザワとして落ち着きが無いように見える。

 

「遅いな……時間厳守だと言うのに何をやっているんだアイツらは……」

 

 まだ来ていない二人に苛立ちを隠せない葉隠。その様子にC組の数人が縮み込んだ。

 

「何かあったのかな……」

「一緒に行きゃ良かった」

 

 来ていない日向を心配する久楽と蛇崎。

 

「遅れてすみません!!」

 

 後ろから大きな声が聞こえ、振り向くとこちらに走ってくる人影が見えた。

 

「遅いぞ! 時間通りに集合しろと伝え……たは……ず……」

 

 遅れて来た事を叱る葉隠だったが、日向と湊の後ろからついてくる存在に気付き、言葉を失った。

 正確には、日向と湊の後を追うクックルーの姿に戸惑う様子を見せた。

 

『『『……』』』

 

 他の人も謎の生物と一緒に来る事は予想外だった為に葉隠と同じように言葉を失った。

 

「……日向……湊……そのペンギン擬きはなんだ……?」

「……えっと……」

「……その……」

 

 あまり直視したくない現実なのか、それとも幻覚を見ているのか眉間のシワを濃くして後ろの白い生物を睨みながら二人に説明を促すと、その生物が二人の前に出た。

 

「コンバンワ! クックルーダヨ!!」

 

 その言葉に答える者は、いなかった。

 

 

 --■--■--■--

 

 

「つまり、あの鳥を助けてたら遅れ、懐かれてしまったという事かい?」

「……はい……」

 

 しばらくして、葉隠からお叱りを受けた日向と湊は他のクラスメイトと合流し、寮内の説明を受けた後に男女別の部屋へ別れていった。

 クックルーが気になったステッキを持った緑と青のオッドアイの青年--フレデリック・エインズワースに説明を求められ、日向は最初から説明した。

 

「コレ、ナーニー?」

「これはテレビだよ」

 

 テレビに興味を持つクックルーをイヤホンを着けたもっさりした黒髪目隠れヘアーの少年--加賀(かが)天馬(てんま)が面倒を見ており、その様子は親戚の家に来た甥とおじさんのように見える。

 

「……喋るデカイペンギンにしか見えないな」

「自分には白い鳩に見えますけど」

「いや、それはないだろ」

 

 しかし、見たことない生物にしか見えないと刀傷が目立つ少年--十神(とがみ)刹那(せつな)が呟くと日向には白い鳩に見えると答えるもザックフォードが否定する。

 

「まぁ、先生もペットに関しては厳しくないが自己負担と言っていた。面倒を見るなら責任を持つことだ」

「はい」

「ただいま戻ったぜ!」

 

 エインズワースが責任を持って面倒を見るよう日向に伝えると、青のセミロングヘアの美男子が声を挙げながら入ってきた。

 

「おう、お前が日向歩か! 俺は八雲純だ。よろしくな!」

「あ、は、はい」

「そんで、お前がクックルーか……よろしくな!」

 

 ガハハと豪快に笑いながら青のセミロングヘアの美男子--八雲(やくも)(じゅん)が日向の背中をバシバシと叩き、日向は八雲の雰囲気に負けて萎縮する。

 クックルーを見つけた八雲は挨拶すると、クックルーはしばらくして、叫んだ。

 

「ピューイ! アセクサーイ!」

「ぼふぅっ!?」

 

 まさかの言葉に十神は吹いた。不意打ち気味に放たれた言葉は彼の腹筋に大きなダメージを与えたようだ。

 

「あ? シャワー浴びたんだけどな……臭うか?」

「あ、あの、大丈夫ですか?」

「……わり、まさかストレートに言うとは、思ってなくてな……不意、突かれた……」

 

 クックルーの言葉を気にして、自身の臭いを嗅ぐ八雲。それを横目に震える十神を日向が心配するとクックルーが日向に声をかけた。

 

「ヒュウチャーン! ボウケンニイッテクルー!」

「ヒュウチャン!? あ、冒険ってどこまで……」

 

 寮内を探検してくると伝えるクックルーに日向がどこまで行くか訪ねる前にクックルーは走り出す。

 

「ジョセイノトコロー!」

 

 廊下に反響して聞こえた言葉にその場にいた二人が反応した。

 

「怒られたらヤベェ! ちょっと止めてくるな!」

「手を貸すぞ明森!」

 

 明森と八雲がクックルーの後を追うように部屋から出ていく。その様子に日向は安堵の表情を浮かべる。

 

「あの二人……優しいんですね」

「どう思うアラン」

「完全に私欲だな。明森はわかるとして、八雲は会う口実を作る為だろ」

 

 日向に聞こえないように蛇崎とザックフォードがコソコソと話し合う。一人は下心、もう一人は期待で駆け出して行った事を日向に伝えないのは彼らなりの慈悲かもしれない。

 

「ま、すぐに帰ってくるさ」

「なぜ帰ってくるとわかるんですか?」

 

 クックルーの面倒から解放された加賀の言葉に空元が訪ねる。

 

「この寮って経費削減の為に例外除いて大部屋で集団生活なんだよ」

 

 加賀の言葉に空元と日向が頷く。

 

「男性と女性の二棟に別れてて、境界線として赤い線が張ってあるんだ。その線を越えてしまうと--」

WEEEBEEEEEEE(ウィィィビィィィィィィィ)!!』

 

 加賀が続きを言おうとした直後に野太い声が寮内に響き渡った。その声量は凄まじく、窓や扉がガタガタと震えていたと言えば迫力が伝わるだろう。

 その声が静まり、先程とは嘘のように沈黙する日向達。やがて、部屋の扉が開いた。

 

「……」

 

 バニー衣装を身に纏った全長二mを越える山のような筋骨粒々のマッスルボディの持ち主である男性が気絶している明森と八雲を左右片手で俵担ぎしていた。

 

「……」

「……」

 

 その光景に周囲も言葉を失っていたが、男性は明森と八雲を床に降ろし、何事もなく去っていった。

 日向は何かを訴える瞳で加賀を見る。加賀は日向の言おうとしている事を理解し、続きを言った。

 

「……バニー衣装を着たガチムチの男達に連行されるんだ」

「どんな偉業(レコード)なんですか!?」

 

 思わず地面を力強く叩く日向。その様子に周囲のクラスメイトも納得の表情だった。

 

「謎に包まれてて、この学園の七不思議の一つとして数えられている……余談だけど懸賞金もかけられている」

「……本当にどんな能力なんだよ……」

「……うぅ……」

 

 加賀の言葉に蛇崎が呆れていると、明森が目を覚ました。

 

「あ、あの、大丈夫ですか? 明森くん?」

「……ちくせう……なんでだよ……」

 

 心配する日向に明森は小さく言葉を溢し始め、次の瞬間に大声で叫んだ。

 

「どうして、どうして俺は楽園(シャングリラ)へ入れないんだぁぁぁぁ!!」

「そろそろボクは寝るとしよう。もうすぐ就寝時間だしね」

「いいよなフレデリック。首席合格者は個人部屋を貰えるなんて知ってたら、もう少し頑張ってたのによ」

「ふふ、ボク以上に努力を重ねる者はいないと自負しているよ」

 

 心からの嘆きだが、周りはしょうもない事だと判断して就寝準備に取りかかる。エインズワースは十神と軽く言葉を交わして部屋を出ていった。

 

「……少しぐらい反応してくれよ……」

「……あの、お疲れ様です」

「うぅ、味方は日向だけなのかよ……」

 

 心配する日向の優しさに明森は少しだけ感謝し、そのまま就寝準備に入った。

 ちなみに、就寝時間となって部屋の電気を消した直後、一人を除いたC組の男子と数人がショッキングピンクに光輝き、その姿を見た数人が腹筋崩壊して眠れない夜が始まったのは余談である。





 ~歴史トリビア~
 伊賀忍者の頭領服部半蔵は部下の忍者部隊にストライキを起こされたことがある。

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