祖龍だけど、一人は寂しいのでハンターになります。 作:やいやいのやいの
「せぇぇいッ!!!」
「うおおおおおッ!!!」
「はぁああああッ!!」
何て気迫だ…とミラはサーシャが決めた自分のパーティー3人を眺めながら思った。
1人はサチだ。彼女の使用武器は片手剣で、初心者御用達だと一般市民からは思われている『超高難易度』武器である。
確かに片手剣は他の武器と違い、片手にしか剣を持っていない為抜刀中でも道具の使用や調合を容易に行える利点はあるのだが…何せ火力不足なのだ。
勿論、そんな片手剣にも救いはある。もう片方の手に持つ盾の存在や、『刃薬』と呼ばれる片手剣専用のドーピングがあるのだが、初心者に使いこなせる筈もない。
だからハンターの間では片手剣とは武器の中でも最上位レベルで扱いづらい物なのであった。
そしてもう1人はヒビキという青みのある黒髪ショート女子である。
ショートと言ってもよくある男並みの短さではないが、その体型は男並みにスランとまな板だ。本人は気にしているので触れないであげよう。
そんな彼女の武器は元気印のハンマーである。
片手剣とは違い、扱いは単純。ただモンスターの頭を狙って集中的に攻撃するだけでいい…が、頭以外はハンマーより他の武器の方が火力が出る為パーティーを組むのならずっと頭を狙い続けなければいけない。
扱いは単純とは言え、何も簡単な武器ではないのだ。だけどその分リターンは大きく、頭を集中的に殴ると言うことは脳が揺れると言う事に他ならないので、ハンマーだけでなく打撃系の武器で頭部を叩き続ければいつかはモンスターがスタンする。
スタンとはその名の通りなので説明は省くが、つまりハンマーとは頭特攻の超脳筋武器だと言うことだ。脳筋ヒビキ乙。
最後の1人はアーシャだ。彼女は受付嬢ミーシャの妹で容姿も似ているのだが、姉とは違って髪の毛は長く、後頭部で一つに纏めておさげにしている。ミーシャと似ていると言っても比較的おっとりとした印象を受ける姉より、妹である彼女の方が全体的にキリッとしているようだ。
所謂真面目ちゃんと言うやつか。
真面目ちゃんの武器は世界中で大人気、太刀である。
長いリーチを生かしモンスターとの間合いを常に把握しながら立ち回る必要のある刀は、モンスターだけではなく味方の位置にも気を配らなければならない。
その理由は武器の刀身の長さにある。刀ではあるが、突きではなく斬る事をメインとする武器なので勿論振らなければならない。
だけど振り回すとなれば、どうしても味方との距離を把握しておかないとモンスターではなく自分の味方を斬ってしまう事に繋がるのだ。
一方でその間合いさえ確実に掴めれば太刀がモンスターへ与える攻撃力や、攻撃と攻撃の間に存在する隙の無さなどは武器の中でもトップクラスである。太刀強い。
とまぁ、長くはなったがミラは現在その3人とパーティーを組んでランポスを相手しているのだ。
他の2組はミラ達より前に終了しているので、この組が最後の挑戦組ということになる。
冒頭に戻るのだが、そんなランポス相手にどれだけ本気を出しているのか、とミラは呆れている訳だ。
1つ、3人を擁護するとすれば、まだ彼女達は新米であり対モンスターの経験がないのだからランポスとはいえ油断は出来ないのは事実で、本来ならば彼女達の対応が正しい。
こんなアホ白髪少女のようにのほほんとボウガンを眺めていられるような余裕などない筈なのだ。
「…っ!ちょっとあんた!手伝いなさいよ!」
「えー…。だってランポスですよ?的が小さいから撃つに撃てないんですよ」
「大丈夫!ガンナーが居なくてもあたし達ならできるぜ!!なぁ!?」
「ええ、早いとこ終わらせちゃいましょう」
いい加減痺れを切らしたアーシャに怒鳴られるミラだが、撃てないと言う。要するにお前ら邪魔と言っているのだ。
そんなミラは放っておいて、3人はランポスをいじめ…いや、体力を削っていく。
何だかんだと言ってもランポス一頭だ。普段は群れで行動をするランポスだが、一頭となればただの雑魚モンスターに過ぎない。
…いや、群れても雑魚は雑魚だが。
「んー?でもあのランポス、やけにタフねぇ…」
他の8人とサーシャは、講習生4人の邪魔にならないように観客席へ離れている。
何故ドームのような観客席があるのかと言うと、アイナではモンスター対ハンターの試合が都名物となっているからだ。流石はハンター達の楽園、ハンター以外の一般人にも娯楽を与える精神を忘れない。
「なーんか、トサカが大きい気もするし…」
バン!!
「さ、サーシャさん!!」
「え、な、何ですか!?」
突然、外とこの観客席を隔てた扉が係の者によって開かれる。
彼女はこの第3闘技場管轄の者であり、ここに捕獲されているモンスターの管理を主な仕事としているのだ。
「た、大変です!!こちらの手違いで…ランポスの檻に“奴”が紛れ込んでいました…!!今彼女達が戦ってるモンスターは…!!」
「ま、さか……!!」
サーシャは背中に手を伸ばし、空を切る。
無意識のうちに武器を取る動作をしてしまったが、これは彼女が数年前まで現役のハンターだった頃の名残なのだ。
「…くっ、今すぐ実践講習を中止します!!あなたも手伝って!武器を早く用意して下さい!!」
「は、はい!!」
ドタドタと慌しくその場を後にするサーシャを、残された8人はポカンと見送るしか無かった…。