活動報告にアイディアを下さったぷっち0035様、藤村紫炎様、この場を借りてお礼申し上げます。まだ募集は締め切ってないので、そちらもヨロシクお願いします。
向田
「始まった──!」
冥琳
「落ち着け。まだ火の手が上がってはおらん」
向田
「う、うん」早くなった鼓動を抑えようと、深呼吸を繰り返しながら、俺は冥琳に尋ねる。
向田
「……ところでさ、雪蓮と祭さんの2人が突入した後、総仕上げをするって言ってたけど。具体的に俺は何をどうやったら良いんだ?」
冥琳
「別段難しい事ではない。お前は部隊を率いて、城門の上から突入部隊を狙撃しようとする敵兵を、徹底的に排除すれば良い」
向田
「……というと?」
冥琳
「弓兵に号令を掛けるだけで良いという事だ」
向田
「……なるほど」つまり……俺の命令で敵を殺せって事か。
??
『ホホウ。お主も一端の指揮官らしくなってきたのぅ』突然、頭の中に声が響いた。
向田
『デミウルゴス様!』
デミウルゴス
『それで良い。お主はただ、お主の決めた道を進むのじゃ。それがひいてはその大陸の為になるからのぉ。では儂は失礼するぞい』
向田
『えっ?ちょ、ちょっと待って下さいよ、デミウルゴス様ぁーっ!』何がしたかったんだ、あの創造神様は……。
冥琳
「……どうした向田?」
向田
「あ、ああスマン」デミウルゴス様とは念話で会話していた為、声は出してなかったけど、取り乱した様子は冥琳にバッチリ見られていた。
冥琳
「まぁ良い。それよりさっきの話だが……」
向田
「ああ。部隊を率いて指示を出すって事か」
冥琳
「……出来んか?」
向田
「いや……やるよ」責任を取るって誓ったんだ。自分で吐いた言葉を翻したくはない。……例えそれが俺の身勝手な感覚だとしても。何よりデミウルゴス様のお墨付きも貰ったしね。
冥琳
「そう言ってくれると信じていた。ならばお前には左を任せよう。潜入部隊の合図を──」打ち合わせの途中で、兵士さんから通達が入った。
兵士(モブ)
「周瑜様!城で火の手が上がりました!」明命、思春、ドラちゃんか。首尾よくいったみたいだな。
冥琳
「よし!向田は左翼前線に進め!」
向田
「了解!」
冥琳
「周瑜隊は右翼前線へ!黄巾党を殲滅するぞ!」
兵士達
「「「「応ぅーっ!」」」」
明命
「敵の大将旗が倒れました!」
雪蓮
「よし!今こそ決戦の時!皆の者、雄叫びと共に猛進せよ!」
兵士達
「おおぉぉーっ!」雪蓮の言葉に応えるように、各所で兵士さん達の雄叫びが上がる。
祭
「殺せ殺せぃ!賊を人と思うなよ!餓えた獣を狩り尽くせぃ!」
思春
「甘寧隊、追撃する!」
兵士達
「「「「応っ!」」」」
明命
「周泰隊は敵側方に回り込み、横撃を掛けます!我が旗に続いて下さい!」
兵士達
「「「「はっ!」」」」各所で闘っていた兵士さん達が、それぞれの指揮官の旗の下に集まっていく。その集団が、逃げる黄巾党の残党に、怒濤のような勢いで追いすがり、追い散らし──無造作に命を奪っていった。やがて、黄巾党は全て殺し尽くされ──長く感じられた闘いは、ようやく終結した。
雪蓮
「皆の者!勝ち鬨をあげよ!」
兵士達
「おおおぉぉぉーっ!」天に木霊する兵士達の雄叫び。その雄叫びを聞きながら、恐怖か、興奮か……自分でも分からない感情の渦に、俺は戸惑いを覚えていた──。
闘いに勝利した俺達は、本拠地に向かって凱旋の途につく。その途中──
向田
「ふぅ……」すっかり軍の料理担当にされてしまった俺は、兵士さん達とウチの食いしん坊トリオの晩飯を作ってから、ようやく人心地吐いていた。何だろう……闘いに勝利した時の興奮が、未だに身体を火照らせている。
向田
「眠れないなぁ……」グースカ眠るトリオを尻目に、俺は恐怖、興奮、安堵……そんな別ベクトルの感情が渦巻いて、頭の中は混乱状態だった。──と、そんな中。
孫権
「……また一人で考え事?」昼と同様、孫権が傍に歩み寄ってきた。
向田
「ん?ああ、孫権か……仰る通り、色々と考え事の最中だよ」
孫権
「何を考えているの?」
向田
「何だろね……自分でも良く分からない」
孫権
「ふ~ん……?」
向田
「ただ、まぁ……戦が終わって、生き残る事が出来て。良かったなぁって気持ちが、頭の中の大部分を占めているのかも?」
孫権
「その割には浮かない顔ね」
向田
「んー……勝利の興奮っていうのもあるんだけど、そこに恐怖とか、安堵感とか、そういった感情があってね……自分でも、今の自分の感情を計りかねてるんだ」
孫権
「そう……案外、色々と考えているのね、あなたって……」
向田
「ははっ、一応ね」デミウルゴス様が俺に何をさせたいのかも気になるし。流石にそれは黙っていたけど。
孫権
「……」
向田
「……それより。孫権はどうしてここに?眠れないのかい?」
孫権
「あなたに言いたい事があったから……」
向田
「俺に?」
孫権
「……(コクッ)」小さく頷いたまま、孫権は黙り込んでしまう。
向田
「あー……と。言いたい事って何でしょう?」
孫権
「あ……あなたの、その、闘いぶりはしっかりと見させてもらったわ」
向田
「闘いぶりって……まぁ、剣を持って闘うって事は出来なかったけどさ。はは……」
孫権
「それでも。安全なところに隠れる事もなく、闘い抜いたでしょう……少し見直したわ」まぁ実際、【絶対防御】のスキルがあるからね。あれで、相手が魔物とかだったらスタコラと逃げていただろうけど、人間相手だと、不思議と平気だったなぁ。
向田
「ありがとう……」ここは素直に褒められておくとしよう。今はまだ、俺の事を全て話す時機じゃない気もするし。
孫権
「それで、その……失礼な事を言った事に対して謝罪しようと思って……」
向田
「謝罪?良いよそんなの。孫権が言っていた事だって、当然の事だと思うし」むしろフェルの不遜な態度を、改めて俺が謝るべきじゃないか?
孫権
「いいや。私が悪かったのだ。お前や従魔は悪くない」
向田
「いやいや。孫権は悪くないってば!」
孫権
「むぅ……そんな風に言われてしまうと、謝る事が出来ないじゃない……」
向田
「謝らなくて良いんだよ……孫権は孫家の一員として、王となるべき人間として、気を張ってるんだって知ってるから。最初に会った時に言われた言葉も、俺は別に気にしてないよ。当然だって思うし……だから謝らなくても問題なし!だろ?」
孫権
「……」
向田
「な?だから孫権も気にしないでくれ」
孫権
「気にしないでくれと言われて、そうかって納得出来るほど、私は薄情じゃない。だから……私の気の済むようにさせて欲しいの……ダメかしら?」
向田
「いや、その……うーん……ホントに気にしなくても良いんだけど?」
孫権
「それでは気が済まないの」
向田
「……分かった。なら孫権の好きにしてくれ」
孫権
「ありがとう」微かに微笑みを浮かべた孫権が、ゆっくりとした動作で手を差し出してくる。
孫権
「私の真名は蓮華という……この名、お前に預けたいと思う」
向田
「え、ええっ!?ちょ……良いのか?」
孫権
「ああ……これが私のケジメの付け方だと、思ってくれ」
向田
「……分かった。じゃ謹んで真名を頂戴するよ……改めて。向田剛……よろしく、蓮華」言いながら、差し出された手をゆっくりと握りしめる。
蓮華
「よろしく。剛……」俺の瞳をジッと見つめ、月明かりを浴びながら柔らかな微笑みを浮かべた蓮華の姿に、俺は言葉を発する事も忘れ、見惚れるしかなかった──。
蓮華。誇り高き王族か……全く、最初にこの世界へ俺を召喚したレイヘセル王国の連中にあの娘の爪の垢を煎じて飲ませたいよ……イヤ、爪の垢でもあいつらには勿体ないな。そういやあの国って王族共があまりにバカ過ぎて、結局滅んだんだっけ?まぁ過去の事はどうでも良いか。
蓮華と本音で話せたおかげか、さっきまでのモヤモヤが解消されて、俺はスッキリした気分で床についた。
本拠地に戻った翌朝、俺はいきなりトリオに起こされた。
フェル
『帰り道の途中でダンジョンを見つけた。早速行くぞ』
ドラちゃん
『この前の闘いは今一つ暴れ足りなかったからなぁ。ダンジョンで憂さ晴らししようぜ!』
スイ
『ダンジョン♪ダンジョン♪』君達、気楽に言うけどね、今の俺達にはそう簡単な話じゃないんだよ。そもそもここの人達がダンジョンという存在を理解してるのかどうか……まずは冥琳辺りに相談しないとな。朝から重い気分で自室を出る俺。
冥琳
「だんじょん?魔窟の事か?」ここではいわゆる[横文字]が通じないからな、ダンジョンはそう訳されるのか。
向田
「ああ。フェル達がその魔窟に行きたいそうなんだけどさ」ダメと言われる覚悟で一応、許可を申し出たんだけど……
冥琳
「……ふむ。丁度良いかもしれん」えっ、何が?
雪蓮
「なーに?二人で楽しそうね」
祭
「面白そうじゃの。儂らにも一枚噛ませてもらおうか」雪蓮と祭さんが話に割り込んできた。うわぁ、2人共悪い笑み浮かべてんなぁ……
冥琳
「向田が従魔達を魔窟へ連れて行きたいと言うのでな。ついでに兵達も一緒に鍛え直すのはどうかと思うのだが?」冥琳、そんな事考えてたんだ。うん、それ自体は賛成かな。
向田
「けどさ、そのダン……魔窟がどれだけ危険か分からないだろ?だから先にフェル達と色々確認したいんだ」
冥琳
「それもそうだな、向田。お前達は一足先に行ってこい。我らも準備が整い次第そちらへ行く」
雪蓮
「当然私達も行くわよ」
祭
「勿論じゃ」ちょ、ちょっと!国の首脳陣がみんな留守になっちゃマズいでしょ!?
冥琳
「安心しろ。ここには蓮華様と穏、思春が残る」あ~良かった。うん、蓮華なら問題なし!と、いう訳で俺とトリオは江東から離れた、孫家の管轄地にある魔窟ことダンジョンにやってきた。
向田
「とりあえず最下層まで進んでみよう。俺も解説役としてダンジョンの様子を見なくちゃならんし」
フェル
『あい分かった。しかしこの大陸にきて、初めてのダンジョン。実に興味深い』
ドラちゃん
『どんな仕掛けが待ってんだろうな?ワクワクしてきたぜ』
スイ
『ワ~イ♪ダンジョン楽しみ~』もう好きにしてよ君達……
思っていた通り、この大陸のダンジョンも中は魔物でいっぱいだった。ゴブリンにオーク、巨大な蟲系の魔物と、内容は向こうのダンジョンと変わらずスタンダードなモノだったが。いや、ホント勘弁して欲しいんだよな。
そんな階層が地下3階まで続く。ここまでボスクラスは現れず、
ドラちゃん
『何だよ、雑魚ばっかじゃねえか』
スイ
『楽チンだね~』と消化不良気味のスイとドラちゃんに、フェルが待ったをかけた。
フェル
『スイ、ドラ、油断するな。そろそろボスのお出ましだ。しかも今回は我も見た事のない魔物のようだぞ』1000年以上生きてるフェルが見た事ないって……どんな魔物なんだよ?もう不安しかないよ。
フェル
『お主は下がっていろ。スイとドラは気を引き締めろ』フェルが注意すると、奥からドスン、ドスンと耳だけじゃなく全身に響く、デカい足音が聞こえてきた。
出てきたのは、フェルの10倍ぐらいデカい巨人。しかも首がなくて、胸に目が、腹に口がある化け物だ。オイオイ、フェルにスイにドラちゃん。あんなの相手に勝てるのかよ?俺は物影に隠れながら、こっそり鑑定のスキルを使った。
【刑天】
SSランクの魔物。両手に持った斧と盾で攻撃を仕掛ける。魔法は特に使わない。
フェル
『良いか2人共。あれは我らが今まで闘ってきた中でも、恐らく最強の魔物だ。だが決して勝てん相手ではない』
ドラちゃん
『ったり前じゃん。俺達ゃ絶対負けねぇってーの!』
スイ
『あの巨人さんをやっつけるんだね~。スイ頑張るよ~』あんなのを目の前にしても、怖いもの知らずのトリオは果敢に闘いを挑みに行ったよ。あ~もうどうとでもなりやがれ!
果たして勝つのは?