とんでもスキルで真・恋姫無双   作:越後屋大輔

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ダンジョン編は今回で終わります。次回から恋姫の原作に少しずつ戻る流れになります。


第十三席鶏天と、久し振りにカレーリナに帰るのこと

フェル

『フンッ、一捻りにしてくれる!』

ドラちゃん

『あんな木偶の坊、俺達の敵じゃねぇ!』

スイ

『いっくよーっ!』

 

ザシュ!ザシュ!

 

ドゴッ!ドゴッ!

 

ビュー!ビュー!

 

 フェルの爪斬撃、ドラちゃんの氷柱を落とす氷魔法、スイの酸弾が刑天に炸裂しまくった。最初は全く怯まない巨人だったが徐々に攻撃が効いてきたようで、30分ほどで遂に膝をついた。

フェル

『よし、奴はもう動けまい。スイ、ドラ、腹にある口に集中攻撃だ』

ドラちゃん

『窒息させるんだな。やってやるぜ』

スイ

『分かったよ~フェルおじちゃん』スイが触手を伸ばして、ホースのように水を噴射させて、刑天に飲ませる。息が詰まったところへフェルが雷を落として、炎を纏ったドラちゃんが口の中を目掛けて突撃した。

 ズッシーンッ!刑天は轟音と共にその巨体を地面に叩きつけた。一瞬後、その体は消滅し、ドロップ品に姿を変えた。ここまで所要時間37分と、このトリオにしてはかなり長く闘っていた。つーか、普段が異様に早いからね。

向田

「魔石と皮が出たな。後は持っていた斧と盾か」でもここって魔石を使う施設とかないんだよな。皮や武器もあまり役に立たなそうだし、【ど○でも○ア】でカレーリナに戻って、冒険者ギルドで売ろう。そして宝石に換えるか、買取金で物資を買うなりしてこっちへ帰って来れば良いかな?などと、俺が有効利用する方法を考えていたら

フェル

『大暴れして腹が減った。メシだ』

ドラちゃん

『そうだよ!メシメシ!』

スイ

『ご飯~』ヤッパリね。そう言うと思っていたから、ちゃんと用意してあるよ。

 今日は大分県名物、鶏天を用意した。何でかっていうと、久し振りに俺が天ぷら食いたかったから。勿論、トリオが普通に野菜天ぷらで満足する訳ないから鶏天にしたんだけど。野菜天は俺1人で楽しむ事にしよう。

フェル

『ん、これはカラアゲか?』

向田

「天ぷらだよ。みんなにはコカトリスの鶏天、俺は野菜オンリーだけどね」カツやフライはともかく、ヤッパリ天ぷらは野菜が一番旨いよな、魚も好きだけど(個人の感想です)。鶏天に大根おろし入りの天つゆを絡め、トリオに出してから早速玉ねぎのかき揚げにかぶりつく俺。

「くぅーっ!ヤッパかき揚げ旨ぇよなぁ」これはビールが欲しくなる。けど、この大陸のダンジョンにセーフエリアがあるかどうか分からないし、今は我慢するか。そうなれば、白飯の出番だな。続いて茄子天にさっきの天つゆを絡めて白飯をかきこむ。更に秘密兵器。抹茶塩をカボチャ天にサッと振りかけて、これはそのままパクついた。

向田

「最高~。カボチャの甘さと抹茶塩の仄かな苦味がマッチしてるよ」

フェル

『その緑の粉は旨いのか?』

向田

「う~ん、少し好みが分かれるかもな。俺は好きなんだけど」試しにみんなの鶏天に振りかけてやったけど、苦いって拒否されたよ。

向田

「フェル達にはこれが良いかな?」俺はこのあと使うつもりで購入したカレー塩を提供した。こっちは好みに合ったようで、

フェル

『カレーとは以前食ったヤツだな。あれとはまた風味が違うが、これはこれで旨い』

スイ

『あんまり辛くな~い♪スイこれ好き~』

ドラちゃん

『さっきのサッパリしたテンツユも旨いけど、これもピリッとしてて鶏天ってヤツに合うな』辛いのが苦手なスイも喜んでいる。さて、魔導コンロと食器を片付けて、更に下へ進みますか。

 

 その後、地下6階に下りると再びエリアボスに遭遇した。どうやらこのダンジョンには3階毎にボスが存在しているようだけど、その異様な姿に俺は言葉を失った。何だこれ……?ミノタウルスの牛の部分が馬になったバージョンの魔物だ。

 

馬頭(めず)(別名ミノヒッポス)】

SSランク。武器は鉄製の杵。

雑食だが、特に肉を好む。

 

 イヤ馬だろ!?普通草食じゃねえのかよ!?何で肉好きなんだよ!?突っ込みだしたらキリがねえよ!

フェル

『お主……少し落ち着け』フェルに諭されて、我に返った俺は大きく息を吸い込み呼吸を整えた。

向田

「さっきの刑天ほどデカくはないけど、SSランクって事はかなり強いんだろうな」

ドラちゃん

『お前ホンット心配性だなぁ。大丈夫だっつーの!』

フェル

『一気にたたみかけるぞ』

スイ

『お馬さんやっつける~♪』そして数10分で消え去る馬ミノヒッポスこと、馬頭。こいつからもドロップ品として皮と魔石が手に入った。それとこれは……背骨?鑑定してみようか。

【馬頭の背骨】

武器に適した素材。

剣にすればミスリル鉱石も切断可能。

 

 ……とんでもないモノ手に入れちゃったよ……これもカレーリナで売るか。それまでアイテムボックスにしまっておこう。俺達は飯を食ってから、また下の階に進んでいった。

 

 結局、ダンジョンの最下層は地下12階で終わっていた。エリアボスの(ほう)(これがまた、フェルの30倍ぐらいはありそうなデッカい鳥系の魔物だった)を1時間ほどかけて倒したトリオと俺はその奥に扉を見つけた。その先を進むと裏口っぽい場所に出た。ぐるっと回って反対側を見ると、ダンジョンの入口がある。俺達、最下層まで下りていったんだが……ダンジョン、恐るべし。

フェル

『あの扉は転移の魔法が付与されていたようだな』

向田

「そうだな。とにかく無事に帰ってこれて良かったよ……」

ドラちゃん

『それはそうと、あいつら遅えな』確かにな。俺達はあっという間に着いたけど、並の人間の足でも、本城からここまで半日もあれば辿り着く距離だからなぁ。それからしばらくして……

 

冥琳

「待たせたな。向田」冥琳が50人ぐらいの部隊を連れて、俺達が立ち尽くしているダンジョンの入口にやってきた。その後ろには雪蓮と祭さんが、やはり同じぐらいの数の部隊を引き連れている。

雪蓮

「さぁ~って、魔窟に入るわよ♪みんな準備は良い?」雪蓮の号令もいつになく軽い。まぁ今回は戦じゃないからな、あんな気合い入った号令も必要ないんだろう。

「良いか皆の者!魔窟の化け物共を根絶やしにしてやるのじゃ!」祭さんは随分張り切ってるな……。

冥琳

「……黄蓋殿。先ずは中の様子について報告してもらわいませんと。で、向田。どうだった?」冥琳に問われた俺はこのダンジョンについて話す。ついでにフェルと一緒に、ダンジョンつまり魔窟とはどういう存在か、レクチャーさせてもらった。

雪蓮

「……魔窟は生き物?」

冥琳

「ただの魔物の住み処ではなかったのか」

向田

「あの……祭さん。そういう事なので、根絶やしには出来ません」

「そういうモンかのぅ。しかし、そのぐらいの気概を持って挑むべきではあろう?」

向田

「それは言えてますね。最下層のボ……大将はフェル達でも、倒すのに二刻(約1時間)ほど掛かりましたし」俺がそう伝えると、兵士さん達の顔が真っ青になった。

兵士(モブ)

「フェル殿達でも苦戦するなんて……」

兵士(モブ)

「俺達が敵う訳がねえ……」こらこら。逃げ腰になってどうすんの?俺なんて、いーっつも怖い目に遭わされてるんだからね。

フェル

「臆する事もあるまい。ボスは我らが倒したゆえ、一週間は復活せん」フェルがそう言うと部隊から安堵のため息が漏れる。

雪蓮

「でも雑魚はもう復活しているのよね?」

向田

「そのハズだよ。だから人間が挑むには、丁度良いかもね」かくして雪蓮達を含む、呉の部隊総勢153,名はダンジョンへと潜っていった。くれぐれもムリはなさいませんように……

 

兵士(モブ)

「ギャーッ‼」 

兵士(モブ)

「た、助けてくれ~!」

兵士(モブ)

「お母ちゃ~ん(泣)!」次々とダンジョンの入口に逆戻りしてくる兵士さん達にフェルもドラちゃんも呆れている。雪蓮、祭さん、冥琳は先に進んだみたいだけど、結局2階層まで行って戻ってきた。そこまでの所要時間は、俺達が最下層を踏破したのとほぼ同じ長さだった。

 翌日も雪蓮達はダンジョンに挑み続けた。そして一週間後。兵士さん達もエリアボスさえ出てこなければ、3階層まで行けるまでに鍛えられていたよ。

冥琳

「当初の目的は果たせただろう。雪蓮、黄蓋殿。引き上げましょう」

雪蓮

「えぇ~?もっと居た~い」

冥琳

「いつまでも本城を空けてはおけないでしょう?我が儘言わないの」

雪蓮

「城には蓮華が居るから大丈夫よぉ。ねえ祭」冥琳に諌められ、雪蓮は祭さんに同意を求める。

「残念じゃったな。儂も公謹に賛成じゃ」

雪蓮

「ぶーぶー」あ~あ。へそ曲げちゃった。膨れっ面の雪蓮は渋々といった様子で冥琳、祭さんと共に馬に乗って、ダンジョンを後にする。俺達もその後ろをついていって8日振りに本城へ帰還した。

 

冥琳

「さて、魔窟の化け物共が変化したこれらについてだが……」休憩もそこそこに、俺達は冥琳主導でドロップ品をどうするかの話し合いをしていた。

雪蓮

「この石とか、色が綺麗よね。宝石商なら高く買ってくれそうじゃない?」魔石を1つ手にした雪蓮が明かりにかざしながら、じっくり眺めている。

「特に骨やら皮なんぞ相場以前に、売れるかどうかも分からん」

向田

「俺がいた大陸なら何らかの素材として重宝されそうですね」

冥琳

「よし行くぞ」冥琳?行くってどこに?

冥琳

「知れたこと。お前が住んでいたかれえりなとかいう所だ。行けるのだろう?」冥琳がカレーリナについてくるのか?別に良いけど。

 

 俺は【ど○でも○ア】を展開して、冥琳と一緒にカレーリナに来ると、自宅に戻る前に冒険者ギルドへ足を運んだ。

ヴィレム

「おおムコーダ。久し振りだな」ギルドマスターのヴィレムさんが受付で俺達を出迎えてくれた。

向田

「ご無沙汰してます。実は珍しい素材が手に入ったので、買取りをお願いしたいんですけど、良いですか?」

ヴィレム

「勿論だ。お主が持ってくるモノにハズレはないからな、ここじゃなんだから倉庫へ……ウン?」やっと冥琳に気づいたヴィレムさん。

冥琳

「初めまして。私は向田の嫁候補の一人で周瑜といいます」ちょ、嫁候補って!?何を口走ってるのこの(ひと)ぉーっ!

ヴィレム

「アッハッハ!いつの間にか、こんな別嬪さんを嫁にするとは。お主も中々隅におけんなあ」ヴィレムさん信じちゃったよ!

向田

(おい冥琳。変な事言うなよ)

冥琳

(ん?間違ってはおるまい。あの日雪蓮に子作りしろと言われただろ?その中に私も入っているぞ)そんな気はしてたけどね。こうも表だって嫁と言われると、ハズいのを超して恐怖すら覚えるよ……。

 まあ、何だかんだで倉庫へ連れていかれた俺達は例のダンジョンで手に入れたドロップ品を出していった。

ヴィレム

「これはミノヒッポスの背骨か。良い剣の素材になる。後は魔石と……この斧は、随分デカいな。スプリガンの上位種が使っていたのか?」あ、刑天は知られてないのか。

向田

「スプリガンより図体のデカい、刑天とかいうのが持ってました。フェルが鑑定したので、魔物の詳細は分かりません」

冥琳

(鑑定はお前が'すきる'とやらでしたんじゃなかったか?)

向田

(俺が鑑定スキルを持ってるのは秘密にしているから、フェルがしたって事で通しているんだ。実際にフェルも鑑定スキルを持ってるしね)冥琳に改めて色々説明していると、

ヴィレム

「2人共。イチャつくのは後にしてくれんかのぅ」盛大な誤解を受けてしまった。恥ずかしくて、そそくさと屋敷に帰ったよ。買取り代金はこれから査定して、それからだと3日後になるそうだ。

 

 屋敷に帰るとアルバン一家とトニ一家、元冒険者の虎人3姉弟とドワーフのバルテルが、俺が女連れなのにスッゲえ驚いていたよ。ここでも冥琳は俺の嫁候補と自己紹介して、大騒ぎになった。しかもみんなが「嫁さんなら一緒が良かろう」と言って、俺は冥琳と一晩同じ部屋で過ごす事態になった。え?勿論何もなかったよ。そんな勇気、俺にある訳ないっつーの。正に針のむしろとはこの事だね。ハァー、今回は精神的に疲れたよ……【ど○でも○ア】で明日の、朝一番に帰ろう。こっちには金を受け取る日にまた来れば良いよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱりムコーダさんは甲斐性なし(笑)。これからに期待?

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